将来の電力コストと電源構成
将来の電力コストと電源構成はと、問われたならば、そんな難しいことは私には分かりませんと答えるのが、この問題に対する正解であると考える。
しかるに、経済産業省は原子力発電比率を20~22%とし、原子力が発電として最も安いコストとする報告を出したとのマスコミ報道が多くある。例えば、次のような報道である。
日経 4月28日 原発比率、30年に20~22% 電源構成案を公表 経産省、再生エネは倍増
読売 4月28日 発電コスト、最安は原子力…経産省が試算示す
どの報道も同じような内容であり、他の報道は省略する。なお、問題はそもそも論にある。すなわち、日本の電力供給は計画経済・統制経済ではないことである。それなのに何故という疑問である。
役所がすべき仕事は、統計を整備し発表し、国民と産業に必要な電力が供給されるようにルールを整備する案を考えることである。この点を含めて本問題は考える必要がある。その為には、マスコミ報道ではなく、直接に経済産業省の長期エネルギー需給見通し小委員会と発電コスト検証ワーキンググループの資料を読む必要がある。双方共経産省のこのWebからダウンロードが可能である。その中で、マスコミ報道の元となっている4月28日資料の長期エネルギー需給見通し 骨子(案)はここにあり、4月27日の長期エネルギー需給見通し小委員会に対する 発電コスト等の検証に関する報告(案)はここにある。
資料は、報告書の体裁ではなくプレゼンペーパーの体裁であり、論理が明確ではなく、羅列状態である。当面は討議資料としてしか読むことができないが、計画経済ではないから、将来の電源構成を決めることは役所の仕事ではなく企業競争の結果である。しかし、一方で業界を意図的にリードしたいのだと読めてしまう気もする。国民としては、一つの参考資料である。豊かな日本を作るために、自らの意見を述べることが正しいと考える。
ちなみに、原子力について、経産省プレゼンペーパーは何と言っているかを参考として以下に記載する。
原子力発電コスト10.1円/kWhは本当か?
「各電源の諸元一覧」とするこれが全ての電源のコスト計算の前提となっている。原子力については稼働率を60%、70%、80%の3通りで実施したとあるが、10.1円が計算された根拠が結局は不明である。稼働率により原子力発電コストは、大きく変動するのである。次の表は、日本原電を含む原子力発電10社の原子力発電とコストの実績である。
今回のコスト予想計算は、10.1円であり、安全対策費等を見込んだ結果、2010年度の6.47円より高くなっており、妥当と思える。しかし、その2010年度でさえ稼働率は66.5%であった。即ち、60%、70%、80%の3通りは、いかなる根拠で選ばれたのか不明であり、希望数字を書いたと思える。
従来から原発は無事故を大前提とし、需要追従の運転はせず、常時設計出力で運転し、異常があれば停止する運転をしていた。定期点検でも徹底的に検査をし、稼働率を上げることよりも安全確保を最優先で管理していた。今後、運転する場合は、従来よりも更に一層の安全を目指すのである。そう考えると、70%、80%の稼働率はキチガイである。10.1円が稼働率80%の場合とするなら、40%となった場合は、20.2円である。そうなると石油火力や太陽光と風力に次いで高コスト電源となる。
原子力発電は、大リスクの塊である。従い、原子力依存度は可能な限り低くしておくのが、経済的に最も有利な選択であると考える。
実は、10.1円だって、80%の稼働率が実現できたとしても、そもそも不確実な数字である。核燃料再処理費が0.5円で高レベル廃棄物費用が0.04円としているが、六ヶ所村再処理工場の見通しも「もんじゅ」の見通しもないのに費用が計算しており摩訶不思議なのである。低レベルの除染廃棄物の処理場で困っているのに、どうして0.04円で高レベル廃棄物を処理できるのか、鬼が笑う以上のばかげた計算と思える。
数字には、前提や仮定がつきものである。考える際の一つの参考であり、また前提や仮定を別の数字に変化させて様々なことを考える必要がある。ビジネスとは数字は変化することを前提に考えねばならず、電力供給も一つのビジネスである。
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