« 2015年5月 | トップページ | 2015年7月 »

2015年6月30日 (火)

車両火災事故がリニア新幹線であったなら

6月30日にあった新幹線「のぞみ225号」の火災事件は、放火自殺が原因と思えるが、もしリニア新幹線であったとするなら、更に恐ろしい事態になっていた可能性があると思う。

読売 6月30日 突然の火災、新幹線車内緊迫…乗客逃げまどう

中央リニア新幹線は全長438kmのうち約86%がトンネルである。同じことが、リニア新幹線であったなら、90%近い確率でトンネル内での発生となるのである。今回の事件は、地上部分だったから、すぐにドアを開いて換気ができた。もし、トンネル内だったら、出口までの距離が短ければトンネルを出た出口付近で停車できただろう。しかし、トンネルを脱出する余裕がない場合は、パニックになったかも知れない。

90%近くがトンネルである列車には余り乗りたいと思わない。まして、リニア新幹線は車両の左右にガイドウェイがあり浮上・推進用の地上コイルも設置されている。車外脱出も容易ではないと思う。救急車も小田原とは異なり、近くに来ることも不可能である。

中央リニア新幹線のこのような事故対策としては、飛行機なみに荷物検査・身体検査を実施することが考えられる。そうすると、当然のこととして、見送りは禁止だし、介助を必要とする人は、ある程度前から申込みをして介助の依頼をする必要がある。そうなると中央リニア新幹線を利用する価値があるのかとの疑問が出てくる。

現状で、東京から名古屋までは、11時発のぞみ225号が名古屋12時40分着である。中央リニア新幹線の東京から名古屋までの所要時間が67分であるから23分短縮される。しかし、地下駅への所要時間と到着しての地上出口までの所要時間に荷物検査の時間を足し併せ、これらの時間が合計20分とすると、中央リニア新幹線は3分早いだけ。しかも、現在ほぼ10分間隔でのぞみが運行されており、中央リニアが1時間3本なら、絶対現在ののぞみが早く、安く、便利で安心・安全と全ての面で有利である。エネルギーは、現在の新幹線の3倍も必要とするし、どう考えても、中央リニア新幹線は中止すべきとの結論になる。

そんな私と同じような意見を持つ人達もおられるようで、この2014年6月19日の日本弁護士連合会の意見書も多くの問題点を書いている。なお、中央リニア新幹線を中止すれば、JR北海道は生き残れるし、日本の多くの鉄道を生かすことができることを、記しておきたい。すなわち、現在の東海道新幹線の収入を中央リニア新幹線のためではなく、日本の鉄道と交通機関が人々の生活と産業に真に貢献するために使用することを考えるべきである。

| | コメント (4) | トラックバック (0)

2015年6月29日 (月)

ギリシャ銀行業務停止・ギリシャ危機の今後

ギリシャ危機は、今に始まったのではないが、国内の銀行の営業停止という措置に踏み切った。

日経 6月29日 ギリシャ、銀行業務7月6日まで停止 資本移動を規制

6月30日弁済期日の国際通貨基金(IMF)への15億ユーロ(約2000億円)の返済は行き詰まった。不履行確実と思う。日経記事に、首相はテレビ演説で返済猶予を改めて要請したことを述べたとあるが、返済できるなら、そんなことを言う必要はないし、一方でIMFに対してでフォールトとなっても、IMFからの支援がなくなる訳ではない。

7月5日の国民投票で欧州連合(EU)の財政改革案を受け入れることになっても、年金支給額のカットを含む政府支出の削減と共に増税をすることとなり厳しいこととなる。しかし、EUの財政改革案を拒否することとなり、ユーロ離脱となれば更に悲惨な状態になるのは間違いがないと思う。国内にしか通用しない通貨で、ユーロを初め外貨に交換するとなるとメチャ交換率が悪い通貨なんて、その国の人にとっては悲惨です。

政府が今できることは、国内の銀行の営業停止措置だった。さもないと、皆ユーロを引き出してしまう。ユーロ通貨から離脱することとなれば、新たにユーロを引き出せなくなる可能性も高い。ギリシャ独自の通貨を使うことになれば、輸入品が高くなり、物価は急上昇する。

EUの財政改革案を受け入れて、ユーロ通貨に止まるとしても、年金の大幅削減と不況が待っているし、銀行預金の引き出しに関しては、限度額が設定されることになると思う。ギリシャ政府の財政再建の実行は避けて通れない。財政再建のためには、ギリシャ政府の銀行借入金や国債の一部債務切り捨てが実施される場合に、国民の預金は金額では保証されても、引き出し制限はあると思うからである。

ギリシャでの銀行業務停止は、チプラス首相の最後の切り札だったのかとさえ思う。チプラス首相は2015年1月27日の総選挙で反緊縮財政を掲げて第一党となって勝利した急進左派連合(Syriza)の党首である。(参考:Huffington Post 2015年04月08日)だから、年金支給額減額策を簡単に合意し、実施することは、完全な公約違反でありできない。ユーロ通貨からの離脱が、破滅に向かうなら、国民に選択の機会を与えるとして、解散・総選挙ではなく、EUの財政改革案についての国民投票をチプラス政権は選んだのだと思っていた。7月5日の国民投票前に銀行の営業停止措置を採った訳で、これから先の政策実施の選択幅を広げ、危機から再建に向けての政策実施を容易にすることにつなげたと思った。

日本はどうなのだろうか?株価が下がるぐらいだと考えて良いのだろうか?世界一の政府債務大国だが、ギリシャ同様年金支給額大幅削減と増税そして不況という状態に何時なるのか?カウントダウンが始まってやしないか、よく考えないといけないと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月27日 (土)

事実なら大変遺憾! でも事実ですよね

次のニュースです。

日経 6月22日 自民勉強会 与野党が批判 首相「事実なら大変遺憾」 「マスコミ 広告で圧力を」「沖縄2紙つぶさないと」

6月25日に開かれた自民党の文化芸術懇話会での話とのことで、次の朝日の記事に発言者と発言内容の概要がある。

朝日 6月26日 「マスコミ懲らしめるには…」文化芸術懇話会の主な意見

他の報道もほぼ同じであり、朝日もきちんと取材をした上で記事を書いていると思う。本ブログの「事実なら大変遺憾」は、今度は安倍晋三首相自身に「事実であるが、ではどうするのか?」、と逆に質問が戻ると考える。(遺憾と言って、終わるだけですか?)

「本当に沖縄の二つの新聞社は絶対つぶさなあかん。」との百田氏の発言について、沖縄タイムスと琉球新報は両編集局長の連名で共同抗議声明を出している。

6月26日 百田氏発言をめぐる沖縄2新聞社の共同抗議声明

ヘイト・スピーチと同じ程度の発言であり、百田氏とは、どうしようもない人と思うのだが、これも百田氏のつぶやきなのでしょうか?

それにしても自民党文化芸術懇話会のメンバー全員かどうか知りませんが、レベルの低い議員もおられるのだと思った。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月24日 (水)

安全保障関連法案におけるPKO協力法の改正案

国会会期が9月27日までの95日間延長となり、その理由は安全保障関連法案の成立を期するためであるとの報道です。

日経 6月23日 「安保」成立に万全期す 国会9月27日まで延長

安全保障関連法案に関しては、5月31日のブログでも書いたのですが、10の法律改正と新たに国際平和支援法(我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律)を制定する法案です。

このうち、PKO協力法(国際平和協力法:国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律)は、集団的自衛権の範疇ではなく、国連平和維持活動に日本が参加するための法であり、集団的自衛権とは異なるレベルの話であると考える。PKO協力法の範疇における改正であれば、特段問題はないように思えるのであるが、一番問題がないと思えるPKO協力法の改正案の内容をチェックしてみたい。(なお、内閣の提出時法案は衆議院のこのWebで読むことができる。PKO協力法は第2条)

1) 防衛を防護に改正(新25条:現24条)

小型武器使用について「生命又は身体を防衛するためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には」との文章の防衛防護に改正することがある。この改正については、これで良く、防護の方が、適切であろうと思う。

2) 国際連携平和安全活動の追加(2条、3条、6条)

国際連携平和安全活動という新しい範囲が追加されている。現行法ではこの外務省のWebのように「国際連合平和維持活動」への協力、「人道的な国際救援活動」への協力及び「国際的な選挙監視活動」への協力の三つの柱に加えて、「物資協力」である。現行法では国際連合平和維持活動とは、「国際連合の総会又は安全保障理事会が行う決議に基づき、・・・国際連合事務総長の要請に基づき・・・」となっている。改正案でも、この国際連合平和維持活動は残っており、国際連携平和安全活動が追加された。

法案を読むと国際連合平和維持活動と国際連携平和安全活動の違いは、似通っていてまぎらわしいのであるが、国際連携平和安全活動に関しては「国際連合の統括の下に行われる活動であって」や「国際連合事務総長の要請に基づき」のような修飾語が入っていない。

国連の決議と事務総長の要請に基づきPKO活動を実施すると言うのが、これまでの日本のPKOであった。改正案でも紛争当事者の同意があることやいずれの紛争当事者にも偏ることなく実施される活動と言ったような制限も記載されている。しかし、国際連携平和安全活動を追加することにより、その時の内閣の判断によっては、どのような解釈がなされるか不明な部分があると思う。やはり国民の意見を聞いて、このような追加改正を行うべきかを考えるのが良いと思う。

3) 米国軍隊に対する支援を追加(新33条)

PKO協力法に米国軍隊等(米国とオーストラリア)に対する支援の条文を追加することに私は違和感を感じるのである。大規模な災害に係る救助活動、医療活動(防疫活動を含む。)その他の災害応急対策及び災害復旧のための活動となっており、武器の提供は含まないとなっているが、わざわざPKO協力法に追加することの意味である。

自衛隊が他国の軍と大規模災害に係る救助活動を行って良いと思うし、その他国の軍に物資や役務を提供して良いと思うが、それはPKOではなく、別の範疇と考える。

4) 安全保障関連法案

詳細に読んだのは、PKO協力法の部分のみであるが、時間をかけて国民的な議論の上で法改正を実施すべきと考える。やはり今国会では成立を見送るか、国民の多くが支持できる部分に限定すべきと考える。

[追記]

内閣提出の法案は、7月16日に衆議院を通過した。6月24日のこのブログを読み返し、読みやすくするため、記述した項目におけるPKO協力法の改正が提案されている条の番号を追加記載した。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2015年6月22日 (月)

マイナンバーはもっと有効活用を

読売に次の記事があったのですが、マイナンバーはもっと有効活用を図るべきと考える。

読売 6月22日 マイナンバーで医療費控除、活用へ手続き簡素化

2017年度以降、医療費控除の申告手続きを簡略化するとの内容で、所得税の申告書に添付する必要がある領収書をマイナンバー制度で集積する医療費のデータを使うことで省略できるということと理解する。(参考:日経 6月19日

しかし、もっと活用範囲を広げるべきと考える。例えば、所得税の申告書案を税務署から各人に1月末頃に送付するようにする。もし、それでOKなら、各人が署名・捺印して税務署に送付するなり、持参するなりする。間違いがあれば、訂正して、訂正した申告書を提出すればよい。勿論、税務署の申告書案には、その所得の収入原泉別内訳や納付済み源泉税内訳等の明細説明が添付されていなければならない。

そんなことは簡単に実現可能と思うのである。何故なら、支払者が税務署に提出する法定調書には、マインバーを記載する義務が生じるからである。例えば、2006年1月以後支払いに関わる給与所得の源泉徴収票は次のイメージとなる。(この国税庁のパンフレットより)

Ntakyuuyogensen20156

源泉徴収票には扶養家族の申告をした配偶者や子どものマイナンバーも記載されるのである。個人情報保護は、保護として十分配慮すれば良いのである。例えば、医療費控除や住宅借入金控除等も全て税務署案の通りで正しければ、本人のマイナンバーと記名・捺印をするだけで所得税申告が完了するようにすればよいと考える。

全ての支払いが法定調書のマイナンバー制度で当面カバーされる訳ではない。仲介業者を通さずに直接に不動産を売却したような場合もある。税務署の所得税申告書案で抜けている所得があり、これ幸いと増額訂正しなかったら、やはり後でバレれば脱税となるのであり、正直に訂正して申告すれば良いのである。

是非検討して貰いたいと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月19日 (金)

子連れ無理心中は最後の手段ではない

ダイヤモンドOnlineに次のみわよしこ氏の記事があった。

中2娘殺害へと母親を追い詰めた、強制退去という貧困刑

無理心中をすべく、中学2年の長女を母親は窒息死させ、自分も死ぬつもりだったが、県営住宅立ち退き強制執行の為に鍵を開けて立ち入った執行官に発見された。そして、殺人罪で第一審懲役7年という事件である。

この事件に関する報道については、次の2015年3月27日の朝日の記事と第一審判決日2015年06月12日の判決直前の毎日の記事を紹介します。

朝日 2015年3月27日 県営住宅立ち退きの朝、娘の首を… 生活困窮、救う道は

毎日 2015年06月12日 生活困窮:強制退去の日、娘を殺害 千葉地裁で12日判決

生活困窮者に対する市町村の相談支援が機能していないことの問題は確かにある。しかし、何故に機能しなかったのかを考えることは重要と思う。

毎日の記事に「別れた夫は借金を残した。娘の制服を買うためにヤミ金融にも手を出した。ヤミ金から7万円を借り、少なくとも5業者から違法な高金利で返済を強いられた。実家の土地を無断で借金の担保にしたため両親とは絶縁状態だった。友人からも借金を重ねた。」との記述もあり、市町村を初め公的支援制度や市民ボランティアからの支援活動のカバー範囲からは抜け出てしまう。自立を目指そうとしたが最終的にこのような結果になってしまったのであろうと思う。嫌な言葉である自己責任を思い出してしまう。

そこで、私はあえて言いたい。子殺しは恐ろしい罪である。夫の借金なんか、他人の負債である。保証人になっていても、合法的に踏み倒せ。毎日の記事にある月給4万~8万円なら、借金なんか返せる訳はない。自己破産をすればよい。そして生活保護をどうどうと申請すればよい。日本は、法治国家である。法治国家であると言うことは、本当は弱者にこそ保護と権利を与える。弱者が保護を受ける権利を得られないことは、法治国家ではないことである。

第一審判決の懲役7年が確定するのかどうか分からないが、母親にとっては、どのような罪であっても、厳しい一生をおくるのだと思う。刑を終えた後も、心が晴れる日はないのだろう。せめて、誰かに相談をしていたらと思う。同じような人がいたら、法テラスでもどこにでも相談して、自己破産で借金をなくし、生活保護の需給を相談して欲しいと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月17日 (水)

国立大学改革に関する読売社説の懸念に同感

6月17日に読売新聞が次の社説を掲載していた。

読売社説 6月17日 国立大学改革 人文系を安易に切り捨てるな

文部科学省が出したという通知は、次の通知である。

文部科学大臣通知 平成27 年6 月8日 27文科高第269号

この通知には「別添1のとおり決定した」とあり、その別添1には「国立大学法人については別紙1」、「大学共同利用機関法人については別紙2のとおり」とあり、更に「今後、第3期中期目標・中期計画が本決定に沿った内容となるように国立大学法人及び大学共同利用機関法人に求めるとともに、所要の措置を講じることとする。」なんて書いてある。

6月16日に、文部科学大臣が86校の国立大の学長らに、入学式や卒業式での国旗掲揚と国歌斉唱を実施するよう述べたとのニュース(例えばこの47ニュース)があったばかりである。真理を教え、学び、研究するのが大学である。それ故、政治の都合で揺り動かされてはならない。民主党独裁政権でさえ、大学教育に口を挟まなかった。大学の自主性を尊重することで真の発展がある。

そこで、6月8日通知の別紙1を読むと3ページに次の文章がある。

特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする

私は、これは大学への権力干渉と考える。言うことを聞かねば、予算を大幅に減額すると言外に述べている脅かしと思える。国立大学だから政府・与党の言いなりになれは、無茶苦茶である。

野党も国会で追及して、文部科学大臣に通知の内容を変更させるよう頑張って欲しいと思う。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

日本年金機構への不満

日本年金機構は、ここその続きで書いたように解体すべきと考えていますが、本当に嫌になってしまいます。

何がと言えば、未だに日本年金機構ホームページ が復旧作業中となっており、公的年金関連の説明は読めず、パンフレットのダウンロードもできない状態が続いていることです。公開情報を公開せずに遮断を継続することは、大罪である。

年金に関する制度について調べようとしても、調べられない。例えば、マクロ経済スライド制により年金は単純計算で計算できないのが今の制度である。このマクロ経済スライド制に対して憲法違反だと集団訴訟を適している人達もいる。しかし、一方でこの問題は、若年者が現行制度においても不利な状態にあり、高齢者の年金こそ減額して年金の持続性を確保すべきであると全く逆の主張も可能である。高齢者優遇は、制度改正の適用特例による結果であるが、法律を読んでもほぼ全てが附則で処理されており、解明には膨大な作業時間を要し、パンフレットがなければ困難がつきまとう。

世代間の対立を引き起こすことで解決はできない。現行の制度は、どのような制度であり、どのようにして持続可能な又豊かな社会を形成していけるかを研究・検討し議論することにより解決があり、年金の制度を整備することができる。保険料に加えて税金が財源となる公的年金であるから、政府の収入(税)・支出のありかたについても検討は及ばざるを得ない。

そのような重要な制度についてまで、Webからの情報入手を不可能とすることは、許せないと考える。公的年金を支えているのは、年金加入者である。公的年金は任意の制度ではない。故に、国民の全てが情報入手可能なようにしておくべきである。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月15日 (月)

石炭火力新設に関する環境省の意見について

環境省は6月12日に山口宇部パワー株式会社による宇部興産株式会社構内における120万kWの石炭を火力発電所新設に関して、現段階において是認しがたいとの意見を提出した。

日経 6月12日 山口の石炭火力、環境相「是認しがたい」 正式表明

環境大臣の発表はこの環境省のWebにある。

この問題を考えるには、現在日本において火力発電所で、どれだけの発電を行い、CO2を幾ら排出しているか、そのうちの石炭火力からの排出量はといったような数字を押さえた上で議論をする必要がある。そこで、資源エネルギー庁の統計データから2014年度の火力発電の発電量、発電所からの送電電力量、石炭、LNG燃焼量、CO2排出量を計算した結果が次の表である。

Japaneseelectricityco22014a

10電力会社と電源開発の11社の火力発電(資源エネルギー庁のカテゴリーでは汽力発電)を対象として作成した。発電所送電端供給量あたりのCO2が一番多いのは電源開発の856g-CO2/kWhである。次いで、北陸電力、北海道電力、沖縄電力となり、LNGを燃料としていない電力会社のCO2排出量は多い。逆にLNGを多く使用する東京電力、関西電力、中部電力のCO2排出量は低い。

(注)電力会社各社が発表しているCO2排出量とは多少異なっている。上表は火力発電(統計項目としては汽力発電)のみについての計算であり、電力各社は水力発電等からの電力も含めた総販売電力量に対して計算しているからである。

更に、参考例を用いて計算することとする。その際、上記の表における計算で使用した係数と同じ2013年度以降適用の炭素排出係数を使用する。(このWebからダウンロードできる。)

電源開発のこの説明からは、熱効率は42%程度と読める。LHV基準としてあり、HHVに補正の上、発電端計算と推定されることから、所内動力比を6%と想定してCO2排出係数を計算すると850g-CO2/kWhと計算された。上表の電源開発の数字とほぼ同じである。

LNGに関してはコンバインドサイクル発電設備を想定する。この電気事業連合会のWebには「世界最高水準の59%(低位発熱量基準)(高位発熱量基準で53%)という高い熱効率を実現しました。」とある。コンバインドサイクル発電設備の所内動力比を3%としてCO2排出係数を計算すると352gCO2/kWhとなる。東京電力の475g-CO2/kWhよりも相当低いが、東京電力の設備には最新設備以外も存在すること、また、ほとんどのコンバインドサイクル発電設備は夜間運転をせず毎日起動・停止するような運転となっていることから最高熱効率ではない運転が含まれている。

参考例の計算結果を直接比較すると石炭火力発電所はLNGコンバインドサイクルの2.4倍ものCO2を排出する。LNGコンバインドサイクルのCO2排出量を425g-CO2/kWhであるとしても2倍のCO2を排出する。やはり石炭火力発電所のCO2排出量は大きいのである。

もう一点、述べておきたいことがある。日本の電力消費は近年毎年減少しているのである。日本の国民と産業の努力の結果であろうと思うし、省電力消費型の知識産業へと移りつつあるのかも知れないと思う。電力消費が減少しているなら、石炭火力発電所新設の必然性はないと思う。2010年度以降の日本の電力消費のグラフと表を最後に掲げる。なお、自家発電も含めており、総消費量で押さえている。

Japaneseelectricity2014a

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月11日 (木)

小選挙区制は傲慢政治家を生む

日刊ゲンダイに次の記事がありました。

日刊ゲンダイ 6月10日 不破哲三共産党前議長「70年代の自民党は傲慢ではなかった」

安倍内閣は安全保障関連法案を、会期を延長してでも今国会で成立させようとしている。5月31日にここに書いたが10の法律を改正し、新たに1つの法律を制定する案であり、しかも重要な事柄に関する法案である。議論に国民を交え、国民が納得できるようにして成立させるなら成立させる。廃案にするなら廃案にすべき、あるいは修正をすべきと考えるが、今の与党政治家は傲慢と言いたい。

前の民主党政権も独裁政権と感じたが、安倍内閣同様に傲慢であったと考える。普天間基地移設の2転・3転、八ッ場ダムの訳の分からない解決、福島第一原発の場当たり処理、当初の原発積極推進政策の代案なしの変更・・・様々あった。

何が酷いのかと言えば、小選挙区制である。勝つか負けるかの小選挙区制では、選挙民を如何にたぶらかせて、誤魔化して票を得るかの競争になっている。政権交代がなくても、国民の意見を代表していると考えられる代議士が選出され、選挙の勝敗の為に国会で議論するのではなく、国民のために国会で議論し、立法を行う。この原則こそ、最も重要なことである。

選挙制度って大事だな。何とか早く小選挙区制を終了して欲しいと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月 7日 (日)

日本年金機構解体論のつづき

6月2日に日本年金機構解体論を書いたが、やはりそうですかと言いたくなるニュースです。

日刊ゲンダイ 6月7日 許されるのか 年金情報流出の“後始末”に国民負担「年50億円」

今更、塩崎厚労相や日本年金機構水島藤一郎理事長に負担しろと言っても、限度があるし、法的に損害賠償責任を問うことは難しいと考える。

この問題は、メールの添付ファイルをうっかりクリックしてしまった担当者の責任ではなく、外部からのメールを受信しても、情報流出につながらないシステムを構築していなかった日本年金機構の責任であり、理事長他の責任は重大と考える。しかし、結局は日本年金機構なる変な独立行政法人の設立を許してしまった国民の責任にもつながってしまうのではないかと思う訳で再度考え直す必要があると思う。

そもそも独立行政法人とは、国立大学のように政府とは補助金だけの関係で運営は独立して行われるべき場合等が適切と思うし、総務省はこのWebで次のように説明している。

『独立行政法人制度とは、各府省の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務・事業を分離し、これを担当する機関に独立の法人格を与えて、業務の質の向上や活性化、効率性の向上、自律的な運営、透明性の向上を図ることを目的とする制度です。』

日本年金機構は、この目的に適合しておらず、解体すべきである。そして、年金保険料徴収にあたっては、歳入庁を創設し税金と併せて徴収し、不正がないように、また徴収漏れは税の滞納と同様に扱い、年金が徴収においても、支給においても公正になされ国民が支持できるようにすべきである。現在の年金制度は、厚生年金では、雇用者の申告で被保険者の保険料納付と支給が決定する。もし、虚偽の申告がなされたら、少ない年金支給額となってしまう。悪意があれば、給与から天引きした額より少ない額を日本年金機構に申告することが可能である。犯罪であるが、うまくよそおえば、簡単にばれないと思う。もし、歳入庁であれば、所得税とも連携しているから、ハードルは高くなる。

年金支給は、厚生労働省が責任を持って管理・運営すべきである。年金が信じられないことは、その国の破綻につながると考える。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月 6日 (土)

2020年東京オリンピックの準備程度

2020年東京オリンピックの準備は、着々と進んでいると思うのだが、次のニュースを読むと、どうなのかと思ってしまう。

日経 6月5日 新国立競技場騒動に見る「64年五輪」の呪縛 

記事冒頭の文章を要約すると次のようになる。

国内スポンサー集めは絶好調だというのに、新国立競技場の建設は総工費の膨張などで大幅に見直され、大騒動。いくつかの競技なども、当初の会場新設計画は頓挫し、東京都以外の既存施設で実施される方向だ。五輪の資金は十分か、足りないのか両極端なニュースに、疑問を抱く人もいる。

オリンピック招致をしたプレゼンテーションの時は、そんな準備をいつの間にしていたのかと思っていたが、やはり嘘八百をプレゼンした人が多かったのかとも思う。ちなみに、このオリンピック委員会のWebに2013年9月7日のプレゼンのハイライトが残っており、誰がどのようなプレゼンか嘘かを発表したか分かる。そのうちで、私なりに、これは何と思った部分を引用すると次のようになる。

猪瀬直樹(東京都知事/招致委員会会長)

『45億米ドルもの大会開催準備基金がそれを可能にします。』

2013年9月は98-99円が1米ドルでした。従い、45億米ドルとは、4400億円程度です。これは何であったのだろうかと思う。4400億円は何に使われようとしているのか、今でもあるのか、色々な疑問が湧いてくる。冒頭の日経記事の新国立競技場は、新国立競技場の工事費膨張である。この6月5日の毎日記事は、設計変更すれば1625億円以内に収まるとあり、文科省の変更案が建設費は2700億円超に、可動式屋根建設費300億円なら合計3000億円超で収まり、4400億円の範囲内と思う。しかし、新国立競技場は国立であり、日本政府の予算で建設されるのであり、東京オリンピックの予算とは関係ないのである。もっとも、この6月4日のハフィンポストの記事のように組織委員会会長は、東京都が費用を支出するのは当然と語ったとのニュースもある。それにしても4400億円の謎は解けない。

安倍晋三(内閣総理大臣)

どんな競技場とも似ていない真新しいスタジアムから、確かな財政措置に至るまで、2020年東京大会は、その確実な実行が、確証されたものとなります。』

すごい応援演説と思います。

竹田恆和(招致委員会理事長)

東京に投票してください。それは、保証された開催への投票です。
東京に投票してください。それは、あらゆる意味で素晴らしさを経験できる大会への投票です。
東京に投票してください。それは、今日から2020年まで、そしてその後何十年にも渡ってスポーツに恩恵をもたらす大いなるビジョンへの投票です。』

何が保証されていたのかと思います。用語は適切に使用すべきであり、この人がビジネスマンやセールスマンであれば、私なんかはすぐに首にしたくなります。過大な保証をしては、会社は倒産するからです。

滝川クリステル (招致"Cool Tokyo"アンバサダー)

ファントレイルやライブサイト等のチケットを必要としないイベントが共有スペースにおいて行われ、それらが多くの競技会場を結び、街全体で素晴らしい雰囲気を作り出します。』

この部分、私にとっては、意味不明です。交通機関が無料になるのかと思ってしまうが、深く考えると眠れなくなることを述べていると思う。文章の主語が誰で、この人はAmbassadorとするなら、JOCのAmbassadorとしか解釈できず、JOCも嘘八百の組織かと思う。

金をかけることではなく、4年に一度の世界規模のスポーツの祭典が安全に実施されるようにすることが最も重要と考えます。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年6月 2日 (火)

日本年金機構解体論

こんな事件が起こると、日本年金機構解体論をぶちたくなる。

日経 6月1日 年金機構125万件流出 職員、ウイルスメール開封

日経記事には、この約125万件の年金情報外部流出について「今回の情報流出は国内の公的機関としては過去に例のない大きな規模」とある。情報システムを適切に構築し、管理しなかった最低の経営である。幹部職員は直ちに解雇し、退職一時金は不支給としてよいと思う。電子メールのウイルスを言い訳にしてはならない。例え、電子メールにウイルスがあっても、重要情報は流出しないようなシステムにしておけば良かったのである。電子メール送受信PCは、重要情報サーバーにつながらないようにしておくような対策もあったはずである。

日本年金機構は、年金記録問題が生じたときに、当時の小泉政権が打ち出した社会保険庁解体論に始まる。国民の目と批判を、でっちあげてかわそうとしたのである。民間ができることは民間にとか、政府は信じられないとか。政府の行政事務を国民の高い信頼を得られるように最大限尽力すべき人物が変なことを言っていたのである。

年金は高い信頼性を持って運用管理されなくてはならない。しかし、日本年金機構は、腐った組織であるようで、理念には「提供するサービスの質の向上を図るとともに、業務運営の効率化並びに業務運営における公正性及び透明性の確保に努める。」と述べている。年金支給額を上げる、人金保険料を下げる、年金資金運用益を拡大するのいずれについても関与しない組織が、このようなことを言うのは詐欺商法だと思う。

日本年金機構は解体すべきである。とりあえずは社会保険庁を創設すればよいのである。そして、近いうちに歳入庁をつくり、税金とともに管理するのである。

今回の年金情報外部流出は、消えた年金記録よりたちが悪い面がある。海外サーバーをいくつも経由して攻撃され流出していた場合に、犯人発見は相当困難と思うし、どのような罪に問えるのか、また日本法は適用されるのか疑問である。仮に海外で情報が売買され、日本で振り込め詐欺に悪用されても、海外での情報売買について日本の警察は直接捜査できず、大変である。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2015年5月 | トップページ | 2015年7月 »