東芝の問題
東芝の粉飾事件は、日を追う毎に、問題が膨らんできているような気がする。時事ドットコムは、米国における東芝株の株価急落に起因する損失についての裁判について報道している。
時事ドットコム 7月22日 東芝に賠償請求=集団訴訟に発展も-米
米国の法廷での裁判であり、私は、陪審員制と理解します。陪審員制の場合、情状による判断が入りやすく、弱者救済に向かうことが多いと聞いたこともあり、東芝にとっては、厳しい判決となりうるように思う。
しかし、東芝は、何故こんなバカな粉飾をしてしまったのだろうと不思議に思う。日経は7月21日に、東芝、不適切会計問題を読み解くという記事を出しているが、社長の指示でそんな簡単に社員が粉飾決算に手を染めるのだろうかと疑問に思う。義侠心が多い社員もいる。最も、上の意向を汲んで行動する人もいるだろうが逆に社会的正義感が強い人もいる。社内監査部門もあるし、社内制度・組織では不正が生じないようガバナンスが働くようになっていると思う。そう考えると、社長が犯人ではなく、社員・就業者全員が一丸となって粉飾をしたのではとさえ思ってしまう。そうなると、会計監査人新日本監査法人は、どうなのだろうか?会社法423条の役員等の株式会社に対する損害賠償責任には会計監査人も含まれている。日本で、株主代表訴訟が提起された場合には、新日本監査法人が含まれる可能性もあると思う。
ところで、ウェスチングハウス(WH)は、どうなのだろうか?東芝の有価証券報告書(2014年3月期)を見ると、WHの全部の持分は東芝エナジーホールディングス(米国)が保有し、この87%を東芝が保有しているとの記載がある。東芝がWHの67%を買収したのは英BNFLからで2006年。(この東芝発表2006年2月6日には、54億ドル(約6,210億円、115円/ドルで換算)で契約を締結とある。但し、54億ドルは、米ショー・グループ(20%)、カザフスタンの国営原子力事業会社カザトムプロム(10%)と日本IHI(3%)の合計である可能性はある。2011年のWH20%持分追加取得はこの東芝発表2011年9月6日であり、米ショー・グループから。金額はこの日経2015年7月22日によれば、1250億円であるが、東芝の発表にもショーのプットオプション行使の決定とあり、ショーが6,210億円の20%で東芝に売却するオプションを保有していたと想定される。
そこで東芝のWH取得の投資額を考えると、6,210億円の87%である5,400億円と想定される。2014年3月末連結財務諸表におけるWHの資産は259億円が計上されており、のれんは全社合計で5800億円計上されている。東芝は米国基準で財務諸表を作成しており、のれんは規則的な償却の対象ではなく、5,400億円がほぼそのまま資産計上されている可能性はある。
どうなのだろうか?原発に明るい未来は考えられるのだろうか?特にWHの加圧型軽水炉の将来は、どうなのだろうか?仮にWHの持分を東芝が売却しようとして買い手が現れるのだろうか?米国政府・米議会や米国民にしてみれば、変な相手先への売却を認めないはずである。東芝のWH投資は更に混迷を深める問題である。
| 固定リンク
コメント