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2016年3月12日 (土)

福島事故から5年を経過しての原発問題・課題

2011年3月11日から5年、福島第一原子力発電所1号機の水素爆発があった3月12日15時36分から丁度5年を経過した。

日本の原発は九州電力川内原発1号機と2号機が稼働中。関西電力高浜原発3号機は1月30日より臨界状態となり運転中であったが3月9日の大津地裁による仮処分決定の結果3月10日に運転を停止。4号機は2月27日臨界状態後、2月29日に自動停止したが、大津地裁による仮処分決定の対象であり、停止中。

福島事故時に聞こえてきた声に、原子力神話に騙されていたというのがある。事故はないと受け止めてしまう説明を原子力関係者が多くの人にしてきたのは事実と思う。人間は神ではない。誤りや失敗を犯すし、完璧な物を作れない。従い、新規制基準で安全性が高くなったと言っても、絶対的な安全性ではないし、2011年の東日本大震災を100年に1度と当時の首相が表現していたが、何の理由にもならないバカの見本だと思った。南海トラフ地震の規模も同程度かそれ以上かも知れないと思う。それでも、あり得ることを考えて検討をし、妥当な対策をすべきである。

以下私が思うことである。

1) 原子力損害賠償法に政府を含め責任者の賠償義務を定めるべし

現行の原子力損害賠償法は第3条で「原子炉の運転等の際、当該原子炉の運転等により原子力損害を与えたときは、当該原子炉の運転等に係る原子力事業者がその損害を賠償する責めに任ずる。」となっており、不合理な条文となっている。

運転をしている電力会社は当然賠償責任がある。しかし、それ以外の会社はどうなのか?設計ミス、手抜き工事等色々考えられる。最近の傾斜マンションについて言えば、管理にあたっている管理組合に責任があり、賠償をしろと言っているような条文である。そもそも、原発導入時(具体的には現在廃炉作業中の東海1号)に日本側が事故の場合でも全責任を負うとしないと売ってくれなかったからの立法である。政治とは、無責任体制をつくるもので、日本原子力発電に責任をおっつけておいて実質それでよいのかの検討はなおざりにされる。

2011年福島第一原発1~4号機は津波発生の11日14:46から51分後の15:37に到達した津波により非常用発電機が使えなくなり、直流電源も3号機を除いて喪失した。直流電源までなくなると照明もなく計器を懐中電灯で照らしても正確な表示となっているのかさえ分からなくなる。糸が切れたたこになるのみならず、原子炉に近い部分は放射線濃度が高く人が近寄れない。その結果、1号機は12日15:36に水素爆発。3号機は12日深夜にバッテリーが枯渇し、14日11:01に水素爆発。停止中の4号機も3号機の水素が流れ15日6:04に水素爆発。2号機は水素爆発には至らなかったが、水位低下、炉心損傷、放射性物質の放出となった。

この福島第一原発1~4号機の事故経緯がやむを得ない現象の連続であったのかどうか、判断がつかない。しかし、2月11日の夜にでも自衛隊が大量のバッテリーを原発に輸送してくれていたら、現場で計器類の監視をし、状況をある程度は把握し、関係者と対策を検討できていたかも知れないと思う。直流電源喪失の恐ろしさは、プラントの設計や運転に携わった方々には痛いほど分かる。安全性の最後の砦なのだから。

自衛隊は4号機水素爆発後のヘリによる偵察飛行をしたのみで、後は意味のない空中からの水まきをしたのみ。

政府は、実質何もしなかった。放射性物質の飛散なんて頭の中に無かったわけではないが、責任は東京電力であるとして自らは動かなかった。

せめて、この原子力損害賠償法第3条がなかったなら、政府も真剣に対応策を考えたのだろうと思う。それは、地震や津波の前を含めてである。「みんなで渡れば怖くない」の逆の現象で「あいつに全責任が行くから怖くない。」で当事者は「万一の事態のことは、能力を超えるから考えない。」になっていたと考える。これを続けてはならない。原子力損害賠償法第3条を削除すべきである。

2) 核燃料サイクルの再検討

高速増殖原型炉もんじゅを放棄しても、核燃料サイクルの問題は残る。原発全てを直ちに廃炉にしても同じく問題は残る。しかも、相当やっかいな問題である。

低レベル放射性廃棄物の処理に困っているのに、解決可能であるのかとの問題であり、日本にある核兵器の原料をどう管理していくのかとの問題である。あれは、核兵器の原料ではなく高速増殖炉の燃料であると言っても言葉のお遊びであり、本質に入らない政治家のバカ言葉になってしまう。このあたりは、全滅を転進と呼び、本質の議論を避けた旧日本軍みたいである。それじゃ、日本は滅びるよと言いたい。

核燃料サイクルの問題に関しては、日経ビジネスのこの記事での田坂広志氏へのインタビュー記事が分かりやすく書かれていると思う。福島原発事故関連ではこの東京で力の冊子がまとまっていると思った。

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