本日のNHK日曜討論で自民党高村氏と共産党志位氏との間で憲法に関して「公共の福祉」と「公益」についての議論があった。ご承知のように、「公共の福祉」は、現憲法が使用している言葉であり、一方自民党憲法案には「公益」という言葉が使われている。
まず、高村氏が述べた事を紹介すると「公共の福祉とは意味が曖昧であり、公益とすべきである。」との意見であった。
一方、志位氏が述べたのは、「公共の福祉とは、国民からの発想に基づいており、公益は上から目線の施政者側からの発想であり、現憲法がふさわしい。」との意見であった。
私の意見は「公共の福祉こそ守るべきものであり、基本的人権の一つとして死守すべきである。」との考えです。
以下に、私の意見を書きます。
1) 現憲法の条文
第12条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
2) 現法制定に至る前のGHQドラフト
GHQドラフトは、1946年2月13日に日本政府に提示され、26日の閣議でこのGHQ案に必要な修正を加え新しい憲法草案を起草することを決定したのですが、GHQ案には公共の福祉という言葉はなかったのです。
第10条 此ノ憲法ニ依リ日本国ノ人民ニ保障セラルル基本的人権ハ人類ノ自由タラントスル積年ノ闘争ノ結果ナリ時ト経験ノ坩堝ノ中ニ於テ永続性ニ対スル厳酷ナル試練ニ克ク耐ヘタルモノニシテ永世不可侵トシテ現在及将来ノ人民ニ神聖ナル委託ヲ以テ賦与セラルルモノナリ
第11条 此ノ憲法ニ依リ宣言セラルル自由、権利及機会ハ人民ノ不断ノ監視ニ依リ確保セラルルモノニシテ人民ハ其ノ濫用ヲ防キ常ニ之ヲ共同ノ福祉ノ為ニ行使スル義務ヲ有ス
GHQドラフトは当然英語であり、原文の英語版も掲げておきます。(これらは国立国会図書館のWebからの資料です。)
Article X. The fundamental human rights by this Constitution guaranteed to the people of Japan result from the age-old struggle of man to be free. They have survived the exacting test for durability in the crucible of time and experience, and are conferred upon this and future generations in sacred trust, to be held for all time inviolate.
Article XI. The freedoms, rights and opportunities enunciated by this Constitution are maintained by the eternal vigilance of the people and involve an obligation on the part of the people to prevent their abuse and to employ them always for the common good.
3) 公共の福祉
GHQドラフトにおいては”common good”となっていた言葉を「共同ノ福祉」と訳し、現憲法では「公共の福祉」になったと理解します。
「公共の福祉」とは何を意味するか、相当幅広い意味を持ち、国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、最大の尊重を必要とすると憲法13条にあり、幅広い意味を持たないとならないのです。
一方「公益」とは何でしょうか?私は、税法上の言葉だと思っています。所得税、法人税等で非課税にする扱いがあって良いわけで、その際、公益目的であれば非課税とする考え方はごく一般的であります。公益法人という言葉も税法ではよく使われます。
例をあげます。農業は、生産者、流通関係者も利益を生むのが正常であり、事業として成立するからこそ消費者に食材を供給できる。農業における生産も流通も公益事業とは呼びません。しかし、公共の福祉に反していないし、社会に貢献しています。全ての企業活動もそうです。一方、企業の違法行為や適法ではあるが、公共の福祉の目的に合致しない行為・活動もありうるかも知れない。不適切会計も、その一つかと思います。医療は一般的には公益事業ではなく、課税事業です。しかし、医療行為は公共の福祉に合致する行為です。
4) 憲法の重要性
憲法97条から99条の第10章は最高法規という章であり、憲法の重要性を定めている。憲法を解釈するのは、政治家、議員あるいは官僚もしくは学者ではありません。国民が解釈するのであり、制定するのも国民です。私に言わせれば、憲法に曖昧な部分があっても構わない。良いと考えることは、良いのである。国民の解釈と違った勝手な解釈をする政治家がいれば、落選させる。
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