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2016年8月15日 (月)

四国電力伊方原発再稼働に関する財務計算

四国電力伊方原発3号機が8月13日に臨界に達し、稼働を始めた。

日経 8月13日 伊方原発3号機が臨界 15日にも発送電開始

その経済効果を分析したいが、事故を起こしす確率を予測し、その賠償額や社会的損失を評価するなんて簡単ではないし、仮に事故はないとの前提であっても、使用済み核燃料の処分費用や高濃度放射性廃棄物の処理費用も、そもそも方法すら確立されていないのだから、とりあえずそのような難しい計算は別の機会とする。(注:以下の分析でも電気事業会計規則による核燃料再処理費用、放射性廃棄物処理費用、廃炉費用等は含んでいる。但し、その金額で可能という保証はない。)

一方、四国電力の2017年3月期の損益に対する影響はとなると、ほぼ確実なことが言えるので、2017年3月期の損益に対する影響を分析してみたい。

四国電力の伊方原発の発電コストを2008年度から2015年度までの8年間についてグラフにしたのが次である。

Ikata20168a

四国電力の個別財務諸表からのデータにより作成したのであるが、2016年度の予想についても次のように計算した。

1) 2015年度は発電していない。しかし、伊方原発の費用として72,108百万円が計上されている。

2) 2016年度は72,108百万円に発電量1kWhあたり1.475円の燃料費(核燃料減損額他)が発生するとし、9月1日から2017年3月31日までの間890MWでフル稼働するとして、伊方原発の2016年度発電コストを78,788百万円と計算した。

3) 2016年5月10日に伊方1号機は運転を終了したが、原発の場合は運転終了により直ちにコストがゼロになるとは考えられず、とりあえず2015年度と同一のコストをこの計算では想定している。

2016年9月1日から2017年3月31日までの間890MWでフル稼働した場合の発電量は4,528,320MWhである。所内動力を停止中の原子炉分も含めて4%+100,000MWhとし、送配電損失を5.48%と想定すると伊方原発から消費者に届けることができる電力は4,014,441MWhと計算される。78,788百万円に対しては、19.63円/kWhとなる。

四国電力の四半期報告書によれば、2016年4-6月の電力販売額は135,866百万円であり、その量は6,302GWhである。即ち、平均販売単価は21.56円/kWhとなり、19.63円/kWhはそれよりほんの少し低い。

しかし、忘れてはならないのは、伊方3号機が4,528,320MWh発電した場合、他の発電設備の発電量を抑えることができることである。水力発電は発電量を押さえてもコストは変わらず、火力発電を押さえた場合の燃料費の削減である。具体的には2015年度の四国電力の火力発電量(発電端)は15,142,537MWhであった。このうちの半分近くが石炭火力と想定され、重油・原油とLNGによる発電において伊方3号機による4,528,320MWhに相当する燃料費が節約できると考える。

2015年度の四国電力の石炭費・運炭費は30,868百万円、燃料油費35,874百万円、ガス費26,258百万円であり、その合計は93,000百万円である。火力発電量15,142,537MWhに対しての燃料費はkWhあたり6.14円である。但し、重油・原油とLNGによる発電については、9円-10円程度と想定される。もしkWhあたり9円の燃料節約ができれば、伊方3号機による4,528,320MWhは407億円の燃料節約をもたらす。現在原油価格が下がっており、kWhあたり6円の燃料節約であるとしても270億円の燃料費削減が可能となる。

この財務分析では、伊方3号機の9月以降の運転によるコスト増は67億円であり、一方期待できる火力発電の燃料節約は270億円-400億円となった。

原発に限らないのでしょうが、一旦設備を保有すると、稼働させないとコストばかり嵩む結果となり、経営者は稼働を目指すこととなります。原発反対なり、脱原発の運動をするなら、原発の運営を誰とすべきか、どのようなルールとすべきか、簡単に答えを得ることは難しいが、そのようなことについても検討をする必要があると考えます。

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