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2016年10月23日 (日)

不良資産の恐ろしさ

10月23日の朝日新聞は、次の社説を掲載していた。

核燃サイクル 高速炉の虚構を捨てよ

既に1兆円以上の金額を支出している。政府は廃炉を含めて見直すことを決定したと言うが、これだけ多額の支出をしたわけであり、しかも廃炉にしたとしても、ナトリウムの安全な保管や放射性物質の廃棄を初め、相当な支出は今後も続く。一方、もんじゅを建設し研究成果として何が得られたのか、得られた成果と支出ならびに返済が必要な負債や今後の費用の見通しについて政府および関係者は発表すべきである。

もんじゅは、1兆円を超える支出であった。しかし、よく考えると、豊洲新市場も「もんじゅ」に相当似通っていると思える。この産経の2016年8月30日の記事は、総事業費5900億円で維持費1日700万円と報道していた。

この築地市場概要 平成27年度版によれば、築地市場の年間取扱金額は5214億円(水産物4350億円と青果物864億円)である。10月16日のブログに書いたように東京都卸売市場すべての総収益は200億円である。すべての市場の取扱金額は2016年9月は1058億円であった。単純に12倍すると1兆2700億円となる。市場手数料を金額あたりのパーセントであるとすると、1.6%弱である。仮に、市場手数料を上げると、小売価格の上昇になりかねないし、市場を経由しない産地直送のような取引が増加すると予想される。豊洲新市場6000億円は、どのようになるのだろうか、考えねばならない。補助金があるので、6000億円より低い金額で考えても良いのかも知れない。しかし、豊洲新市場の維持費は築地より高い可能性もある。

仮に5000億円を50年で回収すると考えても年間100億円である。これを築地の年間取扱金額のパーセントで考えると2%である。豊洲新市場を経由した場合に2%価格上昇するとしたなら、ほとんどの関係者は市場を経由しない取引を考えるだろうと思うが。どうだろうか?

経済学の「いろは」ができない人が考えたとしか思えないようなことである。最近”Stranded Assets”(埋没資産)という言葉が使われたりしている。もんじゅや築地新市場以外にもたくさんありそうで、よく考えねば、子孫に不良資産と負債を残すだけになりかねない。

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2016年10月16日 (日)

柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な米山氏が当選確実

新潟知事選は柏崎刈羽原発の再稼働に慎重な米山氏が当選確実とNHKニュースは報じました。

新潟県知事選 米山氏が当選 NHKニュース 10月16日 22時52分

原発の稼働・停止をきちんとした議論もなく方向付けることが間違いだと思うのです。安全性以外にも高濃度放射性廃棄物の処理問題、プルトニウム問題、気候変動対策の課題等々様々あるわけで、どのような問題であるか、何が問題か、うやむやにして安全性一本に絞り「規制委員会が安全と判断した原発は再稼働する」というのは安直すぎて、稼働するにしても、多くの課題をどう対処するのか示さないとどうしようもない。

柏崎刈羽原発の場合も、いくら安全だと言われても、発電した電力は新潟県には供給されず、首都圏に送電されてしまうわけで、新潟県民からすれば「電源関連の交付金にごまかされて、電気は首都圏に送られ、首都圏のためにリスクを負うのはやだよ」となるのも当然と思う。

原子力発電こそ、沖縄を除く9電力プラス日本原電の体制を解体して、いくつかの原子力発電会社に再編すべきと考えます。

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泥沼の豊洲市場移転問題

次から次へと新たな問題発生の報道があります。

日経 10月15日 豊洲市場、地下空間の空気に水銀 指針の7倍検出  専門家会議が初会合

また、こんな記事もありました。

この現状では、食品を扱う卸売市場の豊洲への移転は、当分実現しないだろうし、当分ではなく永遠の可能性もあるのではないかとさえ思う。

東京都中央卸売市場は、卸売市場法に基づき東京都により設置されている。運営にあたっては、業務の運営に関する中央卸売市場開設運営協議会がある。また、学識経験者、消費者団体、市場業界、都議会議員他により構成されている市場審議会があったり、附属機関、連絡調整会議、専門家会議がある。財政面では卸売市場業者が支払う使用料を収入とする独立採算を原則として運営されている。設備投資に関しては、企業債を発行しており、国庫補助金を受けての財源もある。

このような複雑な制度による仕組みが豊洲市場問題の背景にあると考える。独立採算原則であり、協議会や審議会他があるが、会社の場合における取締役会や社団、財団、NPO法人における理事会ならびに総会に相当する組織は存在せず、経営責任者は設置者である東京都であると考える。これは、東京都の責任ではなく、卸売市場法他日本における卸売市場の法・制度も関係していると考える。但し、土壌汚染問題については、従来から何度も指摘があったのも事実である。参考まで、次は2003年5月13日開催の第57回東京都売市場審議会議事録から矢田委員(中央区長)の発言の一部である。

・・・私はこれまで新市場移転に伴う七つの疑問、一年四カ月ほど前の前回もそうでしたけれども、七つの疑問につきまして質してきたわけでございます。すなわち、豊洲地区の土壌汚染です。・・・・・そこでまず、今最大の問題となっております豊洲地区の土壌汚染問題について質問したいと思うわけでございますが、この今の説明でも食品衛生上の良好な環境を維持するための施設構造、あるいは建物全体の温度管理など、衛生対策を充実させるのであるという考えが示されましたけれども、しかし、その前提としてやっぱり、この豊洲の敷地自体の土壌汚染が改良していなければならない、そういうふうに思うわけでございます。そういう意味におきまして、これまでの答弁にございましたような環境確保条例に基づき、環境局が東京ガスを指導しながら土壌改良に当たっているから問題ないといったこと、あるいは購入する際に確認するから心配ないということでは、この疑問はなかなか払拭できないわけでございます。・・・・

豊洲市場移転問題については、消費者を含む関係者の大多数による支持が得られる解決でないと、解決しないと思う。土地があるからでは駄目で、消費者にとって食の安全は高い関心事項である。

最後に総務省の地方公営企業年鑑から抜き出した東京都中央卸売市場の財務諸表(2014年度)を掲げておきます。建設仮勘定は豊洲が大部分と思うが、3000億円を超えています。一方、売上高は200億円弱で収支ほぼゼロです。どうやって、企業債を返済するのだろうか、所詮東京都の税金で返済してもらうことになるのだろうかと思ってしまいます。

Tokyotukijitoyosu201610

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2016年10月12日 (水)

東京電力10月12日大停電の原因究明の必要性

東京電力10月12日大停電の原因究明は必要だと考える。次のGoogleMapの中心付近が火災事故現場である。

この東京電力のプレスリリースが伝えているが、事故現場は洞道と呼ばれている地下トンネルであり、上のGoogleMapでも分かるように国道254号のほぼ真下である。どのような施設であるかは、東京電力プレスリリースの中のこのリンク先にあるが、地下送電線のケーブルの接続箇所である。ここには275,000ボルトの送電線(OFケーブル)が合計6回線。ケーブルの数では18本あったのである。

電柱地中化とか送電線地中化とは言われているが、送電線を地中化した設備であり、新座変電所から豊島変電所への275kVの3回線と新座変電所から練馬変電所への275kVの3回線の計6回線が地下トンネルの中に設置されていた。参考はこの東京電力の写真

大停電の原因究明と書いたが、この究明には、送電線地中化と事故が関係しているか?地中化することによりリスクが増大した可能性はないのか?といったような点を含めて欲しいのである。OFケーブルは、信頼性は高いと考える。しかし、送電鉄塔に架設したACSR(アルミ電線)と比較すると火災の可能性はあると考える。むやみやたらと電線地中化を進めるのではなく、リスクやメンテナンスを含めたコストと効果についても正しく検討し、結果が国民に提供されるべきと考える。

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現代奴隷法

現代奴隷法とは、名前を聞くと、それ何?と思うのですが、現代奴隷法に関する声明を出しておられる会社もあります。

三菱商事株式会社 2016年8月3日 英国法「Modern Slavery Act 2015」に関する声明の開示について

三菱商事の声明にもあるが、2015年3月に制定された英国法(Modern Slavery Act 2015)で、同年10月より施行されている。一定の要件を満たす企業に対して、奴隷労働、人身売買等の人権侵害の発生を防止する為の取組みの発表を求めている。(法の条文はここ)罰則もあり、奴隷行為(Slavery, servitude and forced or compulsory labour)に係わっていると名指しをされるようなことにならないように企業は注意を払う必要が今や生じていると考えます。参考に次がForbes Japanの記事です。

Forbes 2016年4月25日 英国で成立した「現代奴隷法」 人身売買報告書の作成義務も

ブラック企業とかブラック残業なんて言葉があったり、ひどい場合は、海外からの研修生を低賃金で使い、逃げ出さないようにパスポートを取り上げたりとの報道があったりする。小企業で該当しない場合でも、自分の会社の孫々請けとかにあったら・・なんて大変です。

10月7日のブログで書いたパリ協定ですが、やっと日本では10月11日に閣議決定となった。

日経 10月11日 パリ協定承認案を閣議決定 政府、同日中にも国会提出 

気候変動対応に関しても、世界から出遅れている。世界をリードする日本は、ある一時の夢だったのでしょうか。

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2016年10月 9日 (日)

弁護士はどう思うのだろうか

直前の「非常識が通用する白紙の領収書」を書いての雑感です。

弁護士で議員になっておられる方も多くおられ、この件のご当人も弁護士である。弁護士法の第1条は次の様になっています。

(弁護士の使命)
第一条  弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
   弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

私なんかは、白紙領収書と弁護士法第1条とは、相反するように感じるわけで、弁護士の人たちは、どのように思っておられるのだろうと思うのです。

このニュースにあるような弁護士も存在するわけで、問題ある弁護士もいる。しかし、議員になっておられる弁護士にとっては、このニュースのような弁護士と混同されては、大いに迷惑な話だろうと思う。

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2016年10月 8日 (土)

非常識が通用する白紙の領収書

極めて当然のことですが、この毎日新聞の社説もあまりにも当然のことを述べていて、おもしろくも何ともないと感じる。

毎日社説 10月8日 白紙の領収書 政治家の非常識に驚く

高市早苗総務相は国会で法律上の問題は生じないとの見解を示したってのは、この人達の法感覚と言うべきか、社会常識と言うべきか、そのようなものが抜けている人達だと思わせる。

法律を作ったり、大臣等政府高官として活躍するには、ふさわしくないと感じざるを得ない。

何故このような人々が議員となり政府高官になるかと言えば、利権にうまく絡む、利権の調整能力に優れているから、選挙で票を集め、議員になり政党内でも力を持つという関係である。勿論、選挙に強い人イコール問題ある人ではないし、選挙以外に良い方法があるわけではない。

しかし、改善は可能である。小選挙区制を廃止することと、国民自身の政治参加が増加する仕組みをつくることである。

ところで、今回の白紙領収書とは、政治団体が政治団体へ発行した領収書である。何のために、政治団体間で金銭のやりとりが必要なのか、マネーロンダリングをしているとさえ思える。

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2016年10月 7日 (金)

気候変動対策「パリ協定」11月4日発効の決定

2015年12月12日に署名された気候変動枠組条約(UNFCCC)のパリ協定(Paris Agreement)は、2016年10月4日に全署名国地域191のうち批准国が55国以上で排出量が全世界の55%以上という条件を満たし、30日後の11月4日に発効することが決定した。(10月5日現在74国が批准し、批准国の排出量合計は58.82%である。)

日経 10月6日 パリ協定11月4日発効 排出量条件満たす

UNFCCC発表 2016年10月5日 Landmark Climate Change Agreement to Enter into Force

パリ協定については、ここに日本語仮訳文と英語がある。パリ協定の骨子は、第2条1項(a)にあり、次のようになっている。

世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏二度高い水準を十分に下回るものに抑えること並びに世界全体の平均気温の上昇を工業化以前よりも摂氏一・五度高い水準までのものに制限するための努力を、この努力が気候変動のリスク及び影響を著しく減少させることとなるものであることを認識しつつ、継続すること。

Holding the increase in the global average temperature to well below 2°C above pre-industrial levels and pursuing efforts to limit the temperature increase to 1.5°C above pre-industrial levels, recognizing that this would significantly reduce the risks and impacts of climate change;

京都議定書では、1990年の温室効果ガス排出量を基準として、2008年-2012年の排出量を取り決めていた。日本は6%削減。

パリ協定は、温室効果ガスの排出量ではなく、世界全体の平均気温の上昇という単位で取り決めている。合理的であると言えるが、そのために各国がそれぞれどのようなことをする義務を負っているかは曖昧でもある。第22回モロッコのマラケシュでの会議が11月7日より開催され、いよいよ国際間の交渉が激化すると予想される。日本は、未だ批准の見通しは不明であり、臨時国会での審議は日程が厳しいとなると日本はマラケシュ会議に未批准国としての出席となり、発言力も国際的地位も失うだろうし、信用も失うと思う。それは、政府のみならず、日本企業の信頼も低下していくと思う。ちなみにヨーロッパ諸国が批准したのが、10月5日であるが、それ以前に米国、中国は9月、インドとカナダは10月である。日本は炭素税すらない後進国である。

工業化以前よりも2℃高い水準という表現に触れておきたい。次のグラフは気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第5次評価報告書統合報告書の図2.3であり、縦軸は1861年-1880年頃の気温をゼロとする温度上昇で、横軸は1870年以降の人為的温室効果ガス排出量累計であり単位は炭素換算の十億トンである。(クリックで拡大します。)

Temperaturevsco2cumemissionipcc1861年-1880年頃とは、産業革命の頃。即ち、工業化以前である。実は、現在その当時より既に1℃世界全体の平均気温は上昇している。そして2℃の上昇に止めるためには、産業革命以来の温室効果ガス排出量累計を1000十億トン(1兆トン、CO2換算で3兆6500億トン)に押さえなくてはならない。パリ協定に従えば、人類が今後排出できる温室効果ガスは1兆8千億トン程度である。現在の世界の温室効果ガス排出量は年間約500億トンである。世界で現状を維持したとしたなら、後35年で行き詰まる。

日本で石炭火力全面禁止が直ちには無理なら、高い炭素税を導入して、石炭の税を高くし、その税収で再生可能エネルギーの拡大(再生可能エネルギー発電の変動吸収対策も含め)を実施する必要があると考える。

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