リニア新幹線 無意味な資産を残す可能性
次のようなニュースがあった。
日経 11月11日 リニア融資へ改正法成立 全線開業、最大8年前倒し
政府が、鉄道建設・運輸施設整備支援機構を通じて、JR東海に2016年度と17年度に1.5兆円ずつ計3兆円をリニア中央新幹線の建設資金として貸し付けることが国会で決まった。(国交省の説明はここにある。)しかし、成立した法律の中に3兆円という文言はない。この財務省の説明のように予算の中で処理されていくのである。
3兆円の税金が使われるかも知れないのに、こんな軽い乗りで良いのだろうか?JR東海の純利益は2016年3月期3287億円、連結純利益3310億円の会社である。しかも収入の90%以上は東海道新幹線からである。11年後の2027年に品川―名古屋間が完成して誰がこんなリニア新幹線を利用するのだろうかと思う。もの珍しさに1度ぐらい乗る人はいるだろう。しかし、東京オリンピックがある2020年からは日本経済は大不況と言うより、貧困人口の増大に悩む国になっていると思う。
東京ー大阪間の建設費を9兆円として50年で償還すると年間1800億円となる。しかし、次の表のように維持運営費と設備更新費で年間4300億円を必要とする。合計6000億円であるが、この金額はJR東海の利益より大きい。もし現状の利益額を維持するなら6000億円の増収を計る必要がある。2016年度の収入は1兆7000億円なので、2兆3千億円と35%増加させねばならない。人口減社会で旅客輸送量は減少することを考える必要性を感じるのだが。
民間上場企業であるJR東海が、リニア新幹線を自社の信用力や企業の力で自らの判断により投資を実施することで、事業実施に賛成しておられた方もおられると思う。政府融資の恐ろしさは、事業が失敗しても破綻とはならず、泥沼になってしまう恐れである。しかも今回は、国民には気がつかないうちに法律の改正(しかも補足部分での改正)が行われ、融資金額も3兆円で上限とされている訳でもなく、無限大の可能性もある。
まことおそろしにほんの政治であります。参議院の投票結果を見ると賛成は自民、民進、公明、維新、こころ、無所属で反対は共産、自由、社民、沖縄でした。国民による議論の場を奪った政治家たちでありました。
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コメント
南アルプスルート(リニア対在来型新幹線)
輸送需要 416億人 219億人
建設費 90300億円 68300億円
設備運営費+更新費 4290億円 2350億円
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運賃を同額とすると、輸送需要がリニアは約2倍なので、2倍の収入があるはず、と考えれば、
設備運営費+更新費が2倍かかっても当然であり、建設費が2倍もかからないので、その分得である.
と、思える数値なのだけど、在来型新幹線219億人に対して、リニアは416億人の輸送需要を想定しているが、197億人の増加分がどこから来るのか?.
大部分は現在ある東海道新幹線から移ることになるのだと思うけど.....
(それ以前に、数字自体を全く信用しませんが)
投稿: rumichan | 2016年11月12日 (土) 18時38分
rumichanさん
コメントをありがとうございます。
ご指摘のように、需要予測とその需要予測による収入が楽観的・非現実的な数字になっているこの手のプロジェクトや事業は多いですね。
民間企業であれば、その企業や融資銀行がプロジェクトを精査し、社債発行においては目論見書が出され、非現実的な案件は実現しないはずが、政府融資が絡むと経済性審査とは違う観点の政治と選挙の観点で推進される事となる。
輸送需要416億人となっているは、どの資料でしょうか?そこまで、私は掴めていませんでした。ちなみに、人口減と高齢化の日本では、リニアと東海道新幹線の合計でも、現在の東海道新幹線の輸送量を下回ると思うのです。
投稿: ある経営コンサルタント | 2016年11月13日 (日) 12時05分
輸送需要量 416億人/キロ
東京-大阪が 438kmになっているので、全てのお客が東京-大阪間を乗るとすると、年間おおよそ1億人の乗客数と言うことだと思いますが.
投稿: rumichan | 2016年11月13日 (日) 20時06分