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2017年1月12日 (木)

福島県広野町の高野病院長の死が問うもの

日経BPが次の記事を掲げていました。

日経BP 1月12日 常勤医不在の高野病院院長に36歳都内医師 被災地が浮き彫りにする地方医療の課題

1月11日の東京新聞の記事には次がありました。

東京新聞 1月11日 原発被災地の医療 病院長の死が問うもの

高野病院の高野院長の死が問いかけていることは多いと思うです。

1) 避難指示と個人の権利

福島県広野町(現在人口は5000人)はいわき市のすぐ北に位置し、町の北端が福島第一原発から丁度20kmである。町には広野発電所とそれに隣接してJビレッジがあり、事故後は福島第一原発事故対応の重要拠点となった。事故2日目の2011年3月13日に全町民に対して避難指示が発令され6月余り後の9月31日に緊急時避難準備区域の解除、1年経過して2012年3月31日に避難指示の解除となった町です。

避難指示は、立ち入り制限や禁止あるいは撤退命令と比較すると緩やかな市町村長の指示と理解するが、やはりほぼ全ての人がそれに従うし、避難指示の期間中は広野町役場もいわき市内に移転していた。ちなみに、広野町のこのWebによれば、2011年9月1日当時に広野町に残っていた人は275人(事故時の人口を5500人とすると5%)である。

避難と言っても、高齢者や弱者にとって、体育館のような避難所に行くのは大変である。まして入院中の患者にとっては、避難なんてしたくないはずである。そう考えると、高野病院長は自らも広野町に留まることを選択し、患者に寄り添う事を決断したのだから、もしかしたら、勝手な言い分になるが、医師冥利を選んだのだと思う。1億総活躍社会の最先端であったのでしょうか?

2) 小さな髙野病院

髙野病院は、精神科・神経内科・内科・消化器内科を診療科目とする精神科病床53床(16室)、その他の病床65床(16室)とする2階建ての小さな病院です。経営的には、極めて厳しいはずです。隣接して花ぶさ苑という特別養護老人ホーム(入所定員36名)がある。

しかし、広野町の人口を5000人と比較して考えると、1000人当たり精神病床10.6、その他病床15となる。これを東京都と比べると東京都は1000人当たり精神病床1.94、療養病床と一般病床合計で8.14であり、広野町の半分近く(54.3%)である(2007年10月1日データ)。1000人当たり療養病床と一般病床合計で最も高い都道府県大分県で12.7、大都市・中核都市データと比較すると高知市が24.49と非常に高いが、高知市の場合は療養病床10.94と特異な状況にある。

地方の医療は、どうあるべきなのか、何が求められているのか、それは医療だけの問題ではないと思います。消費税増税もできず、医療も福祉も切り捨てていく方向に向かいつつあるように思える。高齢者と地方は切り捨てざるを得ない時代になって行きつつある。

最低限、死守すべきは何であるか、切り捨てる際に代わって提供するものは何であるかを考えていく必要があると思う。

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