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2017年6月21日 (水)

尼崎脱線事故を考える

JR西日本宝塚線尼崎脱線事故で検察審査会の議決の結果、業務上過失致死傷の罪に問われた井手正敬元会長他2名は、6月12日最高裁で無罪が確定した。判決文は、ここにあります。

刑事罰を求めて、どうなるのだろうかと思うが、この朝日の記事のような報道もある。

2009年7月9日の私のブログで次のグラフを示しました。赤の0.2Gの横Gより大きくなると転倒するという分析です。最高裁判決も転覆限界速度は時速105kmから110km程度と表現しており、304mカーブで赤を上回るのは、同じような速度であり、ほぼ一致します。なお、カントは、97mmとしています。

Jrwamagasaki20096

航空・鉄道事故調査委員会の鉄道事故調査報告書(平成19年6月28日)に次の図(付図25)があります。

Jrwamagasaki20176

上り1k800mというのは、尼崎駅からの距離が1k800mの意味であり、問題の電車は尼崎の方向(上の図の左から右)に走行していた。1k800m地点が事故地点であり、緑の線が電車の速度です。問題の半径304mのカーブが始まるのは、1k949mからで、上の図では70km/h速度制限と書いてある横の青線が始まる所です。緑線からすると115km/hで304mカーブに突入した事になる。1k900mを過ぎたあたりから、速度が低下し始めたが、十分ではなく、転倒しマンションに衝突という信じられない事故が発生した。

この事故を起こした電車は伊丹駅9時14分50秒発の予定であった。しかし、伊丹駅には15分5秒に到着し、これが所定位置より72mオーバーランしていたので、バックして、出発したのは16分10秒であり、1分20秒の遅れであった。たったの1分20秒ですが、運転手には違ったのでしょう。これを取り戻すために、ブレーキをギリギリまでかけずに頑張り、このカーブを乗り切ろうとしたのだろうと思います。

問題の半径304mのカーブは70km/hが制限速度であった。(標識参照。)

Jrwamagasaki20176b

この標識があるのは1k949m地点なので、ここを110km/hで走っていったのです。日勤教育というのを恐れたのでしょう。乗務から外され、乗務員手当は払われず、13日間の日勤教育なら4万7千円ぐらい賃金が減少するというものです。

ブラック企業そのものみたいで。しかも、乗客の安全を脅かすことになるから、恐ろしいと思う。国鉄という組織には、信じられないような労使対立があった。尼崎事故は、労使対立の行き着いた一つの結果なのだろうと思う。国鉄分割民営化も組合つぶしの目的があったと思う。国鉄の労使対立はあまりにも、根深かったと思うわけで、誰か研究してレポートを書いてくれないかと思うぐらいである。

尼崎脱線事故って、明るい部分が一つもなく、あえて言えば、事故発生時、近くの人が救助に携わり、その結果、助けられた人も多くいるのではと思う。刑事罰を問うのではなく、原因をよく考える事の重要性を思う。

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