京都市左京区の叡山電鉄線路内に乗用車が進入し、20m程走行し、運転士が気づいて非常ブレーキをかけ、車の約10m手前で停止したとのことです。
朝日 11月4日 叡山電鉄線路を車走行 90歳「なぜここにいるのか…」
優秀な運転士だと思います。10m手前で停止は至近距離だと思うし、まずは車が入っている事はありえない所だから、最初は何がどうしたかと思うが、とにかくブレーキをかけて大事故を防いだのだと思う。
この高齢者は「なんでここにいるのかがわからない」と話していると記事にあり、認知症と断定できると思う。
認知症高齢者の運転については、道路交通法改正により本年3月12日より更新時に義務付けられていた認知機能検査について、一定の場合についての臨時の認知機能検査が加わった。しかし、それまでも70歳以上の人の免許更新については運転適性検査があり、75歳以上の場合には、認知症機能検査もあった。(参考警視庁の高齢運転者に関する交通安全対策の規定の整備について)この高齢者は、認知機能検査で問題点は、なかったのだろう。
11月2日の日経記事で高齢ドライバー「認知症の恐れ」3万人 判定半年で 改正道交法施行施行後、警察庁まとめとの記事があった。
認知症問題は、社会をあげて取り組むべき問題である。しかし、自由を奪う事をしてはならない。対策の強化であるが、賠償責任の厳格化が必要と考える。JR東海共和駅構内認知症患者事故賠償事件では、最高裁は家族の賠償責任を認めなかった。最高裁の判断はともかくとしても、民法713条の精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わないとする無責任能力者に高齢認知症者が該当するのであろうか?認知症高齢者で高額の財産を保有している人もいる。例え、保有していなくても、自分の財産の範囲内においては、可能な限り被害者に損害を賠償すべきだと考える。
この叡山電鉄の事件の場合であるが、上下15本に遅れが発生し、乗客200人に影響が出たと記事にある。JR東海共和駅構内事件では、上下20本の列車に120分程度の遅れが発生し、振替輸送を実施した事もあると思うが、JR中日本が請求したのは720万円であった。今回のは、これより低い金額と思うが、金銭賠償はすべきであると考える。認知症の人の運転に対して、どのように解釈をするかであるが、運転適性検査の検査後の対応も判断材料とするのかがあると思う。
認知症の人の自動車運転に関する保険について考える。自賠責保険は自動車損害賠償保障法による賠償保険であり、目的は損害賠償を保証する制度の確立にある。但し、免責としては法律第3条に「自己及び運転者が自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと」がある。被害者救済を第一に考えて解釈・運用されると思うが、認知機能検査で認知症のおそれありと判断されていたが医師の診断書を提出せず免許取り消しとなっていた場合などは、保険金支払いは難しいと考える。しかし、一般の人には、運転をしている人が免許取り消し者かどうか判断はつかない。
任意の自動車保険については、保険会社により「被保険者の脳疾患、疾病または心神喪失によって生じた損害には保険金を支払わず。」と保険特約に明記をしているケースもあるようである。しかし、自動車保険を含め、ほぼ全ての保険には「故意もしくは重大な過失があった場合は保険金を支払わない」とする約款があり、認知症により運転免許取り消しとなっている場合、私は保険金の支払いは相当難しいと思うのである。
いっそのこと国民健保のように地方自治体が保険者となり認知症損害賠償保険を提供することが考えられる。地方自治体であれば、介護認定制度の関係から情報入手が可能であり、かつ独自の認知症対策を実施する事もできる。その地方に適した認知症対策と損害賠償制度を創設・運用する事も可能と思える。誰を保険金納付義務者とするか等細目は検討が必要であるが、保険金収入の一部を認知症対策に充当する事も可能である。
いずれにせよ保険制度で全てをカバーする事は無理と考える。やはり認知症高齢者は、自分自身で相当慎重になる事と、万一の場合のために賠償金支払いのための財源は確保しておく事である。財源が確保できない人は、車を運転してはならない。
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