働き方改革について
働き方改革が、今国会でもしきりに取り上げられている。働き方改革と言った場合、本来その範囲は広い。しかし、国会で取り上げられているのは、主に2015年4月に内閣が189回通常国会に提出し継続審議となってる「労働基準法等の一部を改正する法律案 」の中の「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」に関してである。
1) 働き方改革は必要である
産業構造は、大きく変化しつつある。ところが、日本の制度は、旧態依然としている部分が多い。例えば、主婦のパート労働である。一定以上働くと、年金・健康保険料の支払が必要となり、税金の納付も必要となる。主婦労働が、低賃金パート労働の基準となり、非正規労働による安い労働力の供給となっている部分がある。
安い労働力は、産業競争力を高めているとも言える。しかし、別の面では、日本人の労働所得水準を必要以上に下げており、低賃金労働者の給料が増えないこととなっている。
働き方改革とは、労働基準法の改正よりは、他の面の改革・改正が遙かに重要である。ちなみに、厚生労働省は、この「働き方改革」の実現に向けてというWebでは、「働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指す。」と言っており、また首相官邸のこのWebも同様に「働く方一人ひとりが、より良い将来の展望を持ち得るようにする。」と述べている。
このような考え方に賛成する。しかし、働き方改革の主人公は働く人・国民であり、政府ではない。労働者・国民が主体となって、働き方改革を進めていくべきである。
2) 特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)法案の問題点
労働基準法に新たに第41条の2の条文を付け加え、条件等を定める案である。基準年間平均給与額の3倍以上としているが、毎月勤労統計を基礎とするとしており、現状では1075万円程度のようである。1075万円で高度専門労働をしろと言われても、対価が低すぎる。勿論、ミニマムなので、実際には、それよりずっと高いも知れない。そして、同意を得ることが条件であるから、拒否する事は可能である。しかし、残業手当がある一般労働者や制度に該当しない管理職等の給与は上限が1075万円で運用されてしまう危険性がある。
働く者一人ひとりが、より良い将来が期待できるのではなく、先が明るくない働くのが嫌になるような状態をつくり出してはいけない。
1075万円ではなく、最低でも3000万円以上にすべきと思う。基準年間平均給与額の10倍にすれば良いのである。5000万円以上であっても良いように思う。少なくとも、試験導入期間を設け、その期間は5000万円以上とし、課題や問題点を抽出して、次の改良・改正を重ねていけばよい。
3) 日本で成長産業を発展させる
日本で成長産業を拡大・発展させることは重要である。人工知能(AI)が活躍する時代は、まもなくやってくる。AIが多くの雇用を代替する可能性があると同時にAIをつくったり、AIを使いこなしたりする技術が重要である。ITの世界の巨人(Google、Amazon、Facebook、Apple(GAFA))と日本のIT企業を比較すると、このままでは差が大きくなる一方だと思える。むしろ、中国勢やインド勢が日本勢より先を行っているのではないかと思う。
日本の高度成長期は、日本が主として米国企業から技術供与を受け最先端の製造設備を建設し稼働させ、日本の優秀で高度な安い労働力が低コスト生産を可能とし、GDP第2位を築き上げた。今や、途上国がかつての日本の状態にある。過去のモデルから抜け出し、新しいモデルを築かねばならない。そのことこそ働き方改革である。
企業は優秀な人材を雇用し、成長を成し遂げなければならない。今に、優秀な人材は、高給を出さねば雇用できなくなる。終身雇用の制度を引きずっていては、人材獲得競争に負けてしまう。中国やインド企業の雇用条件が良ければ、そちらに行くのである。中国、インドのみならず欧米企業も同じである。日本企業よりずっと高い給与や条件を示す企業は、これからは多いと思う。
勿論、そのような待遇を得られる人は、多くないと思う。しかし、優秀な人は、企業を発展させ、従業員に雇用や働きがいや高給をもたらすことが期待できる。
一方、優秀な人の給与が多くなっても、多くの人の給与額の増加は限定的で格差拡大になることが考えられる。従い、ベーシックインカム制度の導入検討も必要と考える。ベーシックインカム制度は、課題も多くある。また、増税なくしては難しいと思う。
働き方改革とは、広範囲に亘る改革である。日本は明治維新や戦後の民主化改革等多くの改革を実施してきた。働き方改革で今後の発展のための更なる改革を実施すべきである。その主体は政府ではなく、国民が中心となって実施すべきと考える。
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