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2018年7月29日 (日)

山林の豪雨崩落への備え

西日本豪雨の記憶が生々しく残っているが、また台風12号がやってきた。気になる一つが、山林の豪雨による崩落である。自然災害と言ってしまえば、それまでであるが、人災が関係しているなら、人災部分は取り除く必要がある。日経に次の記事があった。

日経 7月22日 山林 放置の危うさ(風紋)

平成29年度の森林・林業白書には、森林の整備・保全の章に「我が国の国土面積3,780万haのうち、森林面積 は2,508万haであり、国土の約3分の2が森林となっている。」とある。緑に恵まれた美しい日本である。実際、海外から日本に到着すると、緑の多い国に戻ったとほっとした事が多かった。

日本の森林は58%が私有林とのこと。森林が金を生む優良資産であるなら、問題はないとも言えるが、間伐等手入れをするにも林道から離れており、コストがかかる。手入れは不十分で、その結果、価値が低い立木しか育っておらず、伐採・運搬して販売するにも採算が取れず、放置せざるを得ない状態の森林も多いと思う。土壌の侵食や流出を防ぐ機能は低下し、洪水緩和や水源涵養機能も低くなる。

資産価値を持たなくなった場合、相続が発生しても、相続登記は行われず、所有者不明に近い状態となる。山林の場合、住宅地、農地よりも土地境界が不明確な事が多い。民法717条で損害賠償義務を訴えられる恐れがあるなら、相続したいとは思わない。

森林法は農林水産大臣による、森林・林業基本法の基本計画に即した、保安施設の整備の状況等を勘案した全国森林計画を、5年ごとに、15年を一期とする計画立案義務、都道府県知事は、全国森林計画に即した地域森林計画を、市町村は、その区域内にある地域森林計画の対象となつている民有林につき、五年ごとに、10年を一期とする市町村森林整備計画をたることを定めている。

災害対策と国土の保全の面からも、税金を使ってでも、森林・山林を守っていく必要性を感じるのである。但し、実情を完全には把握できておらず、そのために、更に不安に思う面もあるが。

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2018年7月27日 (金)

オウム事件全死刑囚の刑執行終了

オウム事件は悲しい事件でしたが、このニュースも悲しい思いに陥ります。

日経 7月26日 オウム事件死刑囚、残る6人の刑執行 全員の執行終了

麻原彰晃を尊士と仰ぎ、死刑判決を受け、死刑の執行を受けた12人。不幸な星の下に生まれた不幸な人たちだったと思う。幸せな人生、自分は恵まれていると思っていたならば、オウム真理教に救いを求める事もなかっただろう。

7月23日の日経BPの記事であるが、このインタビュー記事で、バフェッリ准教授は「小さな、1つのヨガ・グループとして始まった教団に何が起き、なぜ大きな犯罪を起こすことに至ったのか・・」と述べている部分がある。この問いかけに対して、研究が為されて良いように思った。

元信者達は、現在どうしているのだろうか?多くの自治体では、「オウム・アレフ信者お断り」で通常の生活はできていないのだろうと想像する。

死刑執行の結果としては、何も変わっていない。

やはり、自分は死刑制度反対論者なのだと思う。人の命を奪う事は神にしかできない。人は神になってはならない。

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2018年7月26日 (木)

地方自治体の合併と豪雨災害

朝日新聞の論壇時評に慶応大学教授の小熊英二氏が書かれた「豪雨災害を機に 地方行政の単位、見直す時」というのがあった。(無料で読めるのは、冒頭だけですが、登録すれば1日1記事が読むことができる記事です。)

朝日 7月26日 豪雨災害を機に 地方行政の単位、見直す時 歴史社会学者・小熊英二

豪雨災害があった倉敷市真備町も2005年(平成17年)に合併により真備町から倉敷市となった。市の人口集計表によれば、2018年5月現在の人口は倉敷市全域で482,909人であり、真備地区は22,788人である。市町村の合併の特例に関する法律(「旧合併特例法」)に基づき、平成11年から17年まで多くの地方自治体の合併があった。真備町の合併(倉敷には同時に船穂町も編入された。)も、平成の大合併の一つであった。平成11年3月当時3,232あった地方自治体の数は今やその半数近くの1,718程度のようである。

地方自治体の合併が悪いと決めつける事はできないが、同時に良い面ばかりとは限らない。小熊英二氏は、朝日新聞への投稿記事の中では、例えば、次のように述べておられる。

 広域合併は災害に様々な影を落としている。合併された町は、町議会や町役場がなくなり、意思決定機能を失う。物事を決めるのは、遠く離れた中心街にある県庁や市役所、市議会などだ。結果的に復興計画なども、地域の実情と乖離した巨大土木工事などになりやすい。
 とはいえ、市役所職員を責めるのは酷でもある。日本は公務員の数が少なく、人口千人当たりの公務員数は英仏やアメリカの半分程度だ。そのうえ広域合併で人減らしを進めたので、非正規職員を含めて業務に忙しく、合併で編入された周辺地域には行ったことがない職員も多い。この状況で、被災地域の事情を十分に理解するのは難しいことだ。

災害から逃れる事が難しかった場合でも、災害を軽減する事は可能であった可能性は大いにある。手段は、ダムや堤防のような土木構築物だけに限らない。地方自治体が災害軽減に対して大きな役割を果たせる可能性はある。倉敷市真備町の場合、もし合併していなければ、真備町役場は、真備町の境界から上流1kmに満たない距離にある小田川の水位観測所の水位を必死になって見続け、例え深夜であっても、避難を呼びかけていたかも知れないと思う。真備町の場合が、どうであったかは知らないが、合併に際して、併合される市町村役場は支所と名前が変わり、勤務する地方公務員の数は減少し、住民票や国民年金・国民健康保険・後期高齢者医療保険等の住民サービス関係が主体となってしまうことが多いと理解する。

日本は公務員の数が少ない国であると私もしばしば聞く。政府や地方自治体でないとできない仕事がある。一方で、政府や地方自治体の公務員数は数が多く削減できると声を大にして発言している政治家もいる。どちらが信用できるか?公務員自身も、実は、これだけ重要な仕事をしているのだとアピールすると共に、本当にそのように重要な仕事をし、その重要な仕事をするにあたっての適切な人員数や予算を国民・住民に示し、安心できる住みやすい豊かな社会を作っていくよう尽力願いたいと思う。

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2018年7月25日 (水)

ダムは洪水を緩和・軽減するが、無くしはしない

ダムに対する誤解なのか、原子力発電と同様で、安全神話なのかわからないが、ダムは洪水を防いでくれるとの誤解があるように思う。もしかして、ダムに対する反対運動に対抗して、作られた神話なのか、政治家が推進目的で広めた神話なのか、分からないことだらけですが。

そのようなことを思っている時に、このDiamond Onlineの記事 7月25日を読んだ。関西大学の特別任命教授が書かれおられるが、その3ページ目に次の記述があった。

(5)治水ダムの放流による氾濫
 ダムが洪水で満水状態になると、上流から流入する洪水をそのまま下流に流す必要がある。そうしないと、ダムが決壊してしまうからだ。ところが、この操作を実施することを下流住民は知らず、洪水氾濫に巻き込まれてしまった。愛媛県の肱川の野村ダムで起き、大洲市と西予市で犠牲者が発生した。

私の7月19日のブログで書いた事であるが、国交省野村ダム管理所は、午前2時半に西予市に対して、午前6時50分頃にダムが満水となる予想を連絡した。

そもそも、野村ダムの諸元はここにあるが、ダムの堤高60mであり、ダムの基部(基礎岩盤)から35mが設計上での貯水可能最低水面となっている。35mから60mの間が貯水能力となるが、ダムの上から1.8m下がった位置を洪水時最高水位としているので、35mから58.2mまでが貯水容量であり、23.2m水面を上下させる事で、野村ダムの活用可能な貯水容量は0m3から12,700,000m3まで変化する。

野村ダムは、かんがい容量10,200,000m3と水道容量1,700,000m3の合計を総貯水容量12,700,000m3から差し引くと、800,000m3が洪水調節容量となる。しかし、6月16日から10月15日の期間は、ダム水面をダムの基部から53.2mの位置とすることにより800,000m3ではなく、3,500,000m3のの洪水調整能力を持つように運用している。

3,500,000m3のの洪水調整能力で大丈夫かと言うと、野村ダムの諸元は、計画高水流量 1,300m3/sで調節流量300m3/sである。1,300m3/sのダムへの流入はあり得る前提であり、調節流量300m3/sなので、1秒間に1,000m3の割合で貯水量が増加する事があり得る。その場合は、3,500秒で満水となる計算なので、ほぼ1時間で満水となる。このような場合は、計画最大放流量1,000m3/sとなっているので、1,000m3/sの放流をすることもあり得るし、異常洪水流量は2,500m3/sと記載されており、異常時には2,500m3/sもあるとの前提である。

7月19日のブログで掲げたグラフを再度掲示するが、右軸が貯水量であり、8日午前8時に12,728,000m3の貯水量となり、12,000,000m3を超えている。野村ダムはコンクリート重力ダムであり、能力以上に貯水しても決壊はしない。ただ、能力以上に貯水する事はできないのである。午前2時半に市役所に連絡する事の対応で良かったのか、市役所はこの連絡を受けてどう対処したのか等検証すべき課題は多い。しかし、一方で、ダムの刻々と変化する貯水量はWebでも公表されていたのであり、誰もが見る事ができ、各自が自分で判断する事も不可能ではなかったと思う。

Hijikawa20187a

ダムの容量を大きくして、どのような規模で上流から水が流れ込んでも大丈夫なようにすることは不可能ではないだろう。しかし、膨大な建設費となるし、甚大な環境破壊ともなる。適正な規模の適正な開発・適正なダムの建設が重要である。ダムのみで洪水被害を防止するのではなく、情報伝達や適正な堤防の整備や緑化を含めた総合的な取組こそが洪水被害を最小限にする方法である。

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2018年7月23日 (月)

こんなことを倉敷市市長が言ったのでしょうか?

次の朝日新聞の報道です。

朝日 7月21日 小田川の支流、水位計なし 倉敷市長「あれば違った」

7月16日のブログ西日本豪雨から学ぶべきことにおいて、小田川の倉敷市真備町での浸水について書いたのですが、記事にあるように市長が「水位計があれば状況は違ったのではないか」なんて発言したとしたなら、唖然とするばかりです。

小田川が本流の高梁川に合流するまで倉敷市を流れている距離は10.8kmです。その約0.9km上流の地点(小田川の高梁川合流地点からは11.7km)に設置されているのが、7月16日のブログで取り上げた東三成の水位観測所です。この産経WESTの記事7月21日 決壊堤防の応急工事完了 倉敷・小田川は、堤防決壊地点を合流地点から上流3.4kmと6.4kmの地点と述べています。3.4km地点は、末政川が小田川に合流する地点付近であり、その北約600mにまび記念病院があります。いずれにせよ、これらの堤防決壊地点とは、東三成水位観測所から下流5.3kmと下流8.3kmの地点です。

堤防決壊地点より5.3km(8.3km)上流の河川水位という堤防決壊を予測に利用できる貴重な情報を倉敷は保有していた。にもかかわらず、それを利用・活用することなく46人以上の大勢の死亡者を出した。それとも、東三成水位観測所情報は不十分であったのだろうか?私は、そんなことはないと思う。甘い予測でいたのだろうと思う。必要な事は、東三成水位観測所情報は活用できなかったのか、何故多くの死亡者をだしたのかの検証であり、その上で水位観測所が更に多くあったら有効であったのかを検証するのである。

もし、朝日新聞の報道が誤報であるなら、倉敷市は反論を出して欲しい。本当なら、科学的な調査もなく、水位計が欲しいなんて言う市役所にふるさと納税などしたくない。真面目に災害と闘おうとする市町村役場にふるさと納税をしたい。

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2018年7月19日 (木)

参院定数6増法成立

やはり参院定数を6人増加する公職選挙法改正が成立した。

日経 7月18日 参院定数6増法成立 来夏参院選から比例代表に特定枠

来年夏の参議院選から当選者数が124人となり、3人増加するのである。この橋本聖子議員他11名発議の議員立法による改正法の中身は、マスコミ報道では、自民党による隣接県を1つの選挙区にした「合区」になった対象県から出馬できない候補者を特定枠の新設で、救済する改正案との報道もある。しかし、単純に言えば、1回の参議院選挙あたり埼玉選挙区の1人増加は、3人が4人になるので、自民が2人を取れるかどうか、不明と思うのである。

比例代表での1回の選挙での2人増加は、どこの党に有利か、結果であり、何とも言えないと思う。

政党その他の政治団体が持つ比例代表の特定枠の権利は、政党の当選者数を左右するものではないはず。但し、党内におけるボスの力を大きくすることにはなると思う。

この参院定数を6人増加する公職選挙法改正の内容は、マスコミ報道を見ても内容が分かりつらいのであるが、一番よく分かるのは、この参議院の議案情報(下の方の記述)であると思う。

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西予市野村町肱川氾濫と野村ダムについての検証

愛媛県西予市にある野村ダムの操作が悪くて基準量の約6倍の放流され、ダムから約2km下流の野村町で肱川が堤防を越え、約650戸が浸水し、住民5名が死亡したとのニュースがあった。

ダムの操作が悪かったのか?浸水が予想されるにも拘わらず、避難が遅れ、被害を大きくしてしまったのか?検証をしてみる。

1) 野村ダム

野村ダムは国交省が保有・管理するダムであり、1973年建設開始、1982年完成のダムです。堤頂長300m、堤高60mで有効貯水量12,700千m3のダムです。目的は洪水調節ならびに農業用水と水道用水です。洪水調節ならびに農業・用水の利水目的として有効貯水量は12,700千m3である。洪水期の6月16日から10月15日の期間は利水目的でダムに貯水しておく水量は9,200千m3であり、他の期間(秋・冬・春)は11,900千m3となっている。

宇和島市、八幡浜市、西予市、伊方町のミカン農家と住民に対する水供給を担っており、各農協や市町役場との協定も存在するはずである。野村ダムは肱川のダムであり、肱川の河川は野村ダムからは東に流れ、北に折れた後、予讃線伊予長浜駅付近の伊予灘で瀬戸内海に流れ込む。しかし、野村ダムの利水の多くはダム本体から少し上流側の文治が駄馬の取水塔で取水されて西方に水路トンネルを通じて供給される。例えば、27.2kmの水路トンネルにより八幡浜市布喜川にある布喜川ダムに供給されたり、更にその先は佐田岬の先端に近い三崎にも供給されたりしている。

野村ダムの目的は、渇水時のための水供給源を確保しておくことであり、利水側の権利者としては最低でも野村ダムにを9,200千m3を貯水しておく権利を持っている。そこで、洪水調節として利用可能なのは、6月16日から10月15日の期間3,500千m3であり、それ以外の期間は800千m3である。

2) 7月6日から8日の野村ダム

7月6日、7日、8日の野村ダムの貯水量、流入量、放流量のグラフを書いた。

Hijikawa20187a

このグラフの貯水量(右軸)を見ると6日の午前1時頃は7,500千m3であり、通常の利水容量確保を考えた9,200千m3より貯水量を抑えて、洪水調整能力を高めていた事が分かる。(7月1日の貯水量は9,464千m3であり、通常の利水容量を確保していた。)

流入量は7月6日午後2時頃から急に増加し始め250m3/秒を超え、6日午後10時には300m3/秒を超えた。上のグラフには7日午前7時の最大1,593m3/秒があるため300m3/秒は、あまり大きいと思わないが、放流をしていない場合は、1時間値は1,000千m3であり、野村ダムの通常の洪水調整能力3,500千m3は3時間半で満杯になる。

流入量は7日午前4時から急増し、午前4時571m3/秒、午前5時716m3/秒、午前6時1074m3/秒、午前7時1593m3/秒となってきた。放流量は、午前6時頃までは、なんとか300m3/秒程度以下とする事でコントロールしてきたが、午前6時には貯水量が11,423千m3となってしまい、野村ダムの有効貯水量12,700千m3にほぼ達してしまった。ここで、コントロールは及ばず午前7時の1593m3/秒は、そのままダムから下流に出て行った。貯水量が12,700千m3に戻るのは、翌日の7月8日午前9時の事であった。

3) 教訓

2)に書いたようにダムは、見事にその役割を果たした。野村ダムが放流したから洪水を引き起こしたというような報道もある。しかし、野村ダムは精一杯限界まで頑張ったのである。

野村ダム(国交省野村ダム管理所)は、ダム情報を適切に伝えたかであるが、7月12日のこの47ニュースによれば、7日午前2時半に西予市へ、午前6時50分の満水予想を連絡した。それ以前のコミュニケーションがどうなっていたか不明であるが、もう少し、早い時点でダム満水の危険性が予知できたかも知れないと思う。野村ダムの洪水調整無能力告知を午前2時に突然受けても、西予市役所は困ってしまった可能性もある。7日の午前5時10分から防災無線を通じての避難指示を出し、同時に消防団が各戸巡回を開始したとの報道がある。

洪水調整能力3,500千m3というのは、ダムの中でも小さい方である。近くにダムがあれば、そのダムが洪水を防いでくれると思ってしまうが、自然の脅威の中では、ダムの力なんて小さいのである。そのことを念頭に置いた安全計画(LCP)を考えておく事が重要と思う。

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2018年7月18日 (水)

倉敷市真備町の浸水被害から学ぶLCP

直前のブログ西日本豪雨から学ぶべきことにおいて、小田川が倉敷市真備町に流れ込む直前にある矢掛町東三成の水位観測所での観測データを使って、小田川の河川水位のグラフを書き、河川水位が上昇して危険が生じると予測された時点での避難決断ができないかを考えた。

今回は、上流での降水量を見て考える事とする。気象庁の気象データからで、倉敷市真備町の上流地域である矢掛(住所:岡山県矢掛町東三成)と佐屋(住所:岡山県井原市芳井町佐屋)の1時間毎の降水量のグラフである。

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7月5日午前3時頃から矢掛でも佐屋でも降雨量が増大していった。最大雨量は矢掛で7月6日午後10時に23mmを記録し、上流の佐屋では1時間前の午後9時に32.5mmを記録した。7月6日午前0時からの累計雨量は、次のグラフとなる。

Odariver2018719d

7月6日午前0時から7月7日午前9時までの累計雨量は矢掛では210mmであり、佐屋では279mmとなる。

このあたりでの夏期月間雨量は200mm程度と想定され、1月分の雨が1日半で降ったのである。近年の小田川での最大浸水被害は昭和47年7月の洪水であった。当時、床上浸水5,203戸、床下2,144戸、全半壊227戸、そして浸水農地3,765haであったとのことである。この昭和47年7月の洪水時の矢掛雨量観測所における最大日雨量は94㎜、9日から13日の4日間での総雨量は 210 ㎜を記録した。今回は同じ矢掛で33時間の間で210mmとなったのである。

真備町の小田川反乱について土屋信行氏がYomiuri Onlineに川の水位上昇が避難基準では逃げ遅れるという記事を書いておられる。この記事の2ページ目に倉敷市役所は小田川の南側の住民には6日午後11時45分に避難指示を出し、川の北側の住民にはその1時間45分後の翌日午前1時30分であったと書いておられる。北側が遅れた理由はあったはず。

6日の午後9時に佐屋で豪雨は32.5mmとなり、矢掛で午後10時に23mmとなった。午後9時、10時の矢掛での小田川水位は3.5mであり、同日午前4時の3.0mから0.5m上昇していた。豪雨の結果、小田川水位の更なる上昇が予想された。6日午後11時、午前0時の水位は4.09mであり3時間で0.5mの上昇であった。

将来に生かせる教訓は多いと思う。自分で自分の身の安全と財産被害も少しでも軽減する安全計画(LCP:Life Continuity Plan)を考えておくのが重要だと思う。

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2018年7月16日 (月)

西日本豪雨から学ぶべきこと

災害は、忘れた頃にやってくるのだろうが、災害から学んだ教訓を最大限に生かすことは重要である。学ぶためには、フィルターやバイアスのない現実を直視し、分析せねばならない。

この毎日新聞の記事7月15日は、死者212人不明21人と伝えている。この中国新聞の記事7月15日は、広島、山口、岡山、鳥取の4県で計163人。と伝え、岡山県の死者60人のうち倉敷市真備町の死者が50人と伝えている。

倉敷市真備町の死者の数は多かったのである。さて、倉敷市真備町を倉敷市のハザードマップで見てみると、浸水時の危険性(浸水時の目安)が、まび記念病院の付近は5.0mとなっている(当該ハザードマップはここ)。実際には、どうだったか、この山陽新聞の記事 真備でディスカウント店営業再開 8日ぶり、住民「とても助かる」は、「一時は高さ4メートルまで冠水し、全商品の廃棄を余儀なくされた。」とある。ハザードマップの浸水危険予測が、ほぼ的中しているように思う。

即ち、ハザードマップを一度は良く読んで、危険時の事を考えておく事が必要なのだと思う。BCP(Business Continuity Plan)ならぬLCP(Life Continuity Plan)を考え、適切に見直す事は重要だと思う。

この産経Westの記事 7月10日 真備町地区の避難指示、堤防決壊確認のわずか4分前は、6日午後10時に地区の全域に避難勧告を発表。午後11時45分に小田川の南側、7日午前1時半に北側にそれぞれ避難指示を出した。国交省はその約4分後の午前1時34分ごろ、小田川との合流地点近くの高馬川で堤防の決壊を確認。午前6時52分ごろには、すぐ近くの小田川の堤防決壊も確認した。

そこで、小田川の水位計測記録を見てみる事とする。小田川の水位計測地点は倉敷市になく、倉敷に入る前の1km上流の岡山県小田郡矢掛町東三成に水位観測所がある。この観測データにより水位変化のグラフを作成したのが次である。グラフのゼロメートル水位は海抜10.9mである。

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6日の午後6時から7日の正午までの部分を拡大したのが次である。

Odariver2018716b_2
小田川の堤防決壊が6時52分とのことで、一番水位が高く、堤防決壊により水位が下がったと思われる。7月5日午前9時頃までは水位は2m程度であり、それ以降水位の上昇が大きくなっていった。果たして、どう判断できたか、分からないが、矢掛町東三成での水位が3mを超えた5日の昼12時には避難に備える準備をし、4mになった6日の午後3時、あるいはその日の暗くならないうちのせいぜい19時前には避難をするという決断ができたのなら、被害はゼロにはならなかったが、やむを得ないという範囲内に押しとどめる事ができたのではと思う。危険地区に住居がある場合は、避難指示を待たず、避難勧告で避難をすることや、国土交通省の水位観測所のデータを見て、自分にあった判断をする事と思う。

ハザードマップを利用しての自分なりのLCPを考えておく事は重要と思う。

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