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2019年8月31日 (土)

横浜市における鉄道事故から

次の様な事故があった。

日経 8月29日 横浜地下鉄、オーバーラン 回送が壁に衝突、居眠りか

引き込み線でオーバーランであったので、乗客にけがはなかった。運転士は「居眠りをしてしまった」との横浜市交通局の説明であったとのことであるが、乗客を降ろした後、折り返すために引き込み線に入る時であり、おそらく乗客を降ろした 数分後のことと思う。運転士は 緊張感から解放され、ほっとした。でも、引き込み線に車両を入れるまではと、運転をしたが最後の最後に居眠りをしてしまった。このようなことであろうか。

1) 本質的解決を

29日の横浜地下鉄引き込み線オーバーランを単純に、当該運転士の過失で片付けてはならないと思う。100人以上の人が死亡したJR西日本尼崎事故の背景には事故原因の当事者に対する不合理な制度である再教育(日勤教育)制度があった。事故があったカーブの制限速度は70km/hであったが、この速度制限ゾーンの手前は120km/hであった。事故があった電車の速度は、制限速度範囲内の116km/hであった(事故調査報告書13ページ)。すなわち、カーブの手前では制限速度範囲内で、カーブになったとたん、50km/hの速度超過となる。合理的な速度の規則をJR西日本は定めていなかった。なお、このカーブの転覆限界速度は105km/hであった。

長々と尼崎事故のことを書いてしまったが、尼崎事故の本当の原因は経営者にある。経営者は合理的な組織運営をし、働く人たちが正しく働ける環境をつくる義務がある。過去において、経営者が無能であっても、働く人たちの努力と工夫により企業は持続・発展していった。しかし、社会が複雑化すると、単純ではなくなる。現代は有能な経営者による合理的な経営が必要である。

ちなみに、JR西日本は、事故直後の発表では、尼崎事故地点の転覆限界速度を133km/hと言っていた。実際の、事故で転覆した電車の速度はそれ以下の116km/hであったし、速度超過で走行した距離も200mもなかったのである。

横浜市地下鉄問題も居眠りをしてしまった原因や因果関係を追求すべきである。運輸安全委員会の報告書を待ちたい。

2) 横浜シーサイドライン

株式会社横浜シーサイドライン は、新杉田駅構内での6月1日に発生した反対方向に進行し、線路終端部の車止めに衝突・停止し負傷者15名(うち重傷3名)を出した事故により運休している金沢シーサイドラインを8月31日から再開すると発表した。同社の発表はここ にあります。運転再開から6日間は保安要員を乗車させ、その後は新杉田駅と金沢八景駅のホームに保安要員を配置し、再開から1月後に全列車の重点点検をし、無人運転にこぎ着けるとの内容である。

事故の原因は、6月14日のこの日経記事 が報道しているように、信号回線のうちの一つ F線が切れていたことのようである。

しかし、本当に重要なことは、横浜シーサイドラインが、事故につながる可能性のあるそのような事態を認識していたのかである。すなわち、経営者も技術者も「無人運転の実施に必要な制御装置や安全装置がハード面でもソフト面でも完備されており問題ない」との認識で F線・R線すら理解していなかったのではと思う。同社の2019年3月期の営業収益は3,976百万円で営業費用3,539百万円であった。営業費のうち減価償却費が1,509百万円で42.6%を占める。諸税が182百万円であり、運送費、売上原価、一般管理費が1,847百万円である。従業員数は他社からの出向者14人 を含め119人 である。1人あたりの運送費、売上原価、一般管理費 の合計は15,500千円である。 14駅存在し、16編成(合計80両)を運行しているのであるから、無人運転による経費節減が達成されていると考える。(1989年開業から当初5年間近くはワンマン運転であった。)

日本には、同様な無人運転の新交通システムが7路線、事業者数で6事業者(数え方によっては5事業者)存在する。開業が一番新しいのが、東京都交通局の日暮里・舎人ライナーである。一番長い路線がゆりかもめの14.7km(但し、神戸新交通のポートライナー線と六甲ライナー線を合計すると15.3km)であり、それほど長くはない。路線によりシステムが微妙に異なると思う。開業時期が異なれば、新しい路線は、その時の最新技術を取り入れる。安全性を高め、コストも安くを目指すのは当然である。しかし、技術は万能では無いし、常に試行錯誤の発展途上であると言える。

私は、新交通システムを否定をするものではない。しかし、車なら大量生産なので、欠陥が発見されれば、リコールで回収される。バスも同様である。鉄道の場合は、有人運転である。無人運転の新交通システムについても、安心して利用できるように、仕組みが確立されて欲しいと考える。

なお、運輸安全委員会は横浜シーサイドラインの事故をこのページ にあるように調査中の鉄道案件としており、調査報告書が待たれる。

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