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2019年10月15日 (火)

関西電力経営幹部金銭受領問題と原子力発電

関西電力経営幹部を含む20人が、3月死去している福井県高浜町の元助役から2006~18年に約3億2千万円相当の金品を受け取っていた。この産経記事(10月2日) によると、受領最高額は鈴木聡常務執行役員で1億2367万円、次いで豊松秀己元副社長の1億1057万円となる。明らかに、常識を越えた金額であり、通常の交友関係ではないと言える。

1) 関電で金銭等を受領したのは全て原子力関係者

贈与したのは、関西電力高浜原発(826MWx2基と870MWx2基の合計3,392MW)が存在する地元高浜町の元助役なので、その贈与理由は原子力発電所であるはず。

2) 原子力発電のコスト

原子力発電とは、金のかかる設備です。単に、存在するだけで、費用が発生するのです。発電が終了し、廃棄するのに、費用が掛かり、その廃棄物処理には、廃棄方法すら不明な部分があり、いくら発生するか分からないという厄介者であります。そんな訳の分からない費用ではあるが、財務諸表では相対的な妥当性と言わざるを得ないが、原発を保有している各社は原子力発電のコストを発表しており、次の表の通りです。

Nuclear201910a

日本全体で年間1兆4千億円という金額です。発電をしているかどうかと余り関係がなく、変動費が少なく、固定費がほとんど言う構造です。次のグラフを見てください。2014年度は、日本における原子力発電の発電量はゼロでしたが、費用は1兆5千億円以上が計上されています。

Nuclear201910b

原子力発電費用の内訳として何が計上されているかを関西電力の2018年度の資料から書いたのが次のグラフです。

Nuclear201910c

3) 原発の地元に落ちるお金

関西電力の2018年度の費用から、考えると諸税163億円のうちの固定資産税63億円、修繕費424億円のうちの地元企業分、委託費246億円のうちの地元企業分が地元に落ちるお金です。関西電力の原発は、美浜、大飯、高浜であり3箇所の合計は6,578MW。うち半分強の3,392MWが高浜町にある。高浜町の地元企業に直接・間接に流れゆくお金がいくらかは分からないが、相当の金額になると思える。そして、原子力関係の物品や人件費は、一般向けより相当単価が高いのです。危険手当的な部分もある。放射線漏れのような事故があってはならないので高品質が求められる。作業員や技術者の年間放射線被曝量の規定があるから現場就労時間に制限があること等による。しかも、上で示したように、発電しているかどうかに拘わらず、変動が少ない。

もし、地元業者がうまく電力会社を取り込むことが出来れば、安定した収入と利益が得られることとなる。食い込む先は、原発に関わる主要人物・部門で良いのです。ここに、この関電金品受領事件の一つの原因があると私は思います。

4) 電力会社(原発発電会社)の都合 

日本原電は、東京電力、関西電力のような電力会社が90%以上の株式を保有する会社であるが、それ以外は全て一部上場の株式会社である。上場している会社の義務として社会的責任もあるが、一つ明白なのは、利益を計上することがある。赤字部門があっても良いが、その場合は、その原因を説明し、黒字にする展望を示すのが経営者の義務と言える。

この株式会社の原則を原発発電部門に当てはめると、経費はほぼ一定なのだから、発電して、例え利益計上できなくとも、収益を増加させ赤字幅を減少させることである。そうなると、経営者にとって、避けるべき事態は、反対運動が起こり、発電できなくなることである。

そんな利害関係に陥った関電原子力会計の幹部と地元のボスであった高浜町の元助役だったのだろうと想像するのです。互いに、「おまえの会社には発注を止めるぞ」とか「反対運動に火を付けるぞ」と言えたとしても、言うことが出来ない関係だっただろう。

5) 今後の日本の原子力発電の仕組み

原子力発電の仕組み、すなわち、組織や法の問題です。上場株式会社という制度に優れた点は多い。しかし、固定費が大半であり、運転・発電するには、余りにも多くのことが関係する。放射線漏れを起こしてはならないと要求しても、人間がすることに100%はない。しかし、100%に近づけるべく、また万一事故が起こっても被害を許容範囲に食い止めるような技術的・社会的・法的な仕組みをつくることは出来ると思う。それが、許容範囲になっているかどうかを判断する仕組みをつくることも重要である。そのようなことを考えると、やはり現状の上場株式会社による原子力発電事業は無理だと思う。

一つ思うのは、公社のような組織だろうか。但し、既存の公社の制度ではダメである。多くの専門化等が集まり、公開の場で議論をし問題点を洗い出し、修正し、仕組みを練り上げて作っていくのである。そんな、苦労をしていかないと、日本のエネルギー政策・原子力政策はできあがらないと思う。原子力政策と述べたが、その中には原子力をエネルギー供給の選択肢から外すことも含まれる。そのような検討を実施するための資金は存在するのである。何もしなくても、現状年間1兆4千億円の支出が存在する。しかも、この状態が今後とも何10年間と継続するのである、この一部から捻出すれば良く、単に支出を継続するより、効果が期待できる。

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