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2019年12月11日 (水)

太平洋戦争開戦(その3)ハルノート

1941年12月7日(米国東部時間)の在米日本大使館から米国政府宛の通知(ここでは通知と称することとします。)は、ハルノートと呼ばれるハル 米国国務長官が在米日本大使館に11月26日に手渡した文書(ハルノート)が、12月7日以前の日米間の公式交渉文書です。ハルノートには、何が書かれていたのか、見てみることとします。日本側文書は、外務省の日本外交文書デジタルコレクション からの引用とします。

1) 真珠湾攻撃当日12月7日の日本からの文書においてハルノートに関して触れている部分

外務省から在米大使館宛12月6日の電報第902号は、英語による通告全文を伝えているが、この902号には付記として日本語も付いている。まずは、その日本語文でハルノートに関している部分は、次の通りである。

 帝国政府ハ日支間和平成立スルカ又ハ太平洋地域ニ於ケル公正ナル平和確立スル上ハ現ニ仏領印度支那ニ派遣セラレ居ル日本軍隊ヲ撤退スへク又本了解成立セハ現ニ南部仏領印度支那ニ駐屯中ノ日本軍ハ之ヲ北部仏領印度支那ニ移駐スルノ用意アルコト等ヲ内容トスル新提案ヲ提示シ同時ニ支那問題ニ付イテハ合衆国大統領カ曩ニ言明シタル通日支間和平ノ紹介者ト為ルニ異議ナキモ日支直接交渉開始ノ上ハ合衆国ニ於テ日支和平ヲ妨碍セサル旨ヲ約センコトヲ求メタルカ合衆国政府ハ右新提案ヲ受諾スルヲ得スト為セルノミナラス援蒋行為ヲ継続スル意思ヲ表明シ次テ更ニ前記ノ言明ニ拘ラス大統領ノ所謂日支間和平ノ紹介ヲ行フノ時機猶熟セストテ之ヲ撤回シ遂ニ十一月二十六日ニ至リ偏ニ合衆国政府カ従来固執セル原則ヲ強要スルノ態度ヲ以テ帝国政府ノ主張ヲ無視セル提案ヲ為スニ至リタルカ右ハ帝国政府ノ最モ遺憾トスル所ナリ

英語の正文では、次である。

 As regards China, the Japanese Government, while expressing its readiness to accept the offer of the President of the United States to act as 'introducer' of peace between Japan and China as was previously suggested, asked for an undertaking on the part of the United States to do nothing prejudicial to the restoration of Sino-Japanese peace when the two parties have commenced direct negotiations.
The American Government not only rejected the above-mentioned new proposal, but made known its intention to continue its aid to Chiang Kai-shek; and in spite of its suggestion mentioned above, withdrew the offer of the President to act as so-called 'introducer' of peace between Japan and China, pleading that time was not yet ripe for it. Finally on November 26th, in an attitude to impose upon the Japanese Government those principles it has persistently maintained, the American Government made a proposal totally ignoring Japanese claims, which is a source of profound regret to the Japanese Government.

2) ハルノートの内容

日本大使館野村大使と来栖大使は11月26日午後4時45分からの会談でハルノートを受領した。受領後の要旨報告(第1189号)は次であった。

米国国務長官との会談の際提示された米国案
要旨報告
ワシントン 11月26日後発
本省 11月27日後着
第一一八九号(極秘、館長符号)
二十六日午後四時四十五分ヨリ約二時間本使及来栖大使「ハル」長官ト会談ス
「ハル」ヨリ茲数日間本月二十日日本側提出ノ暫定協定案(我方乙案)二付米国政府ニ於テ各方面ヨリ検討スルト共ニ関係諸国ト慎重協議セルモ遺憾乍ラ之ニ同意出来ス結局米側六月二十一日案ト日本側九月二十五日案ノ懸隔ヲ調節セル左記要領ノ新案ヲ一案(a plan)トシテ(tentative and without commitmentト肩書ス)提出スルノ巳ムヲ得サルニ至レリトテ左ノ二案ヲ提出セリ
甲、所謂四原則ノ承認ヲ求メタルモノ
乙 (1) 付日米英「ソ」蘭支泰国間ノ相互不可侵条約締結
(2) 日米英蘭支泰国間ノ仏印不可侵並ニ仏印ニ於ケル経済上ノ均等待遇ニ対スル協定取極
(3) 支那及全仏印ヨリノ日本軍ノ全面撤兵
(4) 日米両国ニ於テ支那ニ於ケル蒋政権以外ノ政権ヲ支持セサル確約
(5) 支那ニ於ケル治外法権及租界ノ撤廃
(6) 最恵国待遇ヲ基礎トスル日米間互恵通商条約締結
(7) 日米相互凍結令解除
(8) 円「ドル」為替安定
(9) 日米両国カ第三国トノ間ニ締結セル如何ナル協定モ本件協定及太平洋平和維持ノ目的ニ反スルモノト解セラレサルヘキコトヲ約ス(三国協定骨抜キ案)
右ニ対シ我方ヨリ全然従来ヨリノ話合ニ惇リ東京ニ取次クコトスラ考慮セサルヲ得ストテ強硬応酬ヲ重ネタルカ「ハル」ハ到底譲ル気色ナシ
米側ニテ斯ル強硬案ヲ提示スルニ至レルハ英蘭支ノ策動ニ依ル外援蒋行為停止ノ我方要求ト数日未我国要人ノ英米打倒演説我対泰国国防全面的委任要求説等ニ影響サレ米側ノ妥協派力強硬派ニ圧倒セラレタル為カト推察ス

ハルノートそのものは、Oral Statement、OutlineそしてSteps to be Takenの3部構成であり、在米大使館より、要旨報告に続いて電報1192号、1193号、1194号として送られた。

ハルノートは、ここ に置きました。

次は、在米大使館が我方乙案と言っている乙案について見てみます。

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