12月9日に種苗法の改正が公布された。しかし、調べれば、調べるほど、訳が分からない法律改正である。
日経 12月2日 改正種苗法が成立 参院本会議 公布の官報は ここ にある。
1)自家増殖の扱い
自家増殖を一部制限と報道されている。しかし、この部分こそ今回の種苗法改正の争点であった。 具体的には、 種苗法第21条2項で「農業を営む者で政令で定めるものが、・・・登録品種等の種苗を用いて収穫物を得、その収穫物を自己の農業経営において更に種苗として用いる場合には、育成者権の効力は、その更に用いた種苗、これを用いて得た収穫物及びその収穫物に係る加工品には及ばない。」を全て削除してしまったのである。但し、21条1項は、そのままなので、新品種の育成その他の試験又は研究のためにする品種の利用は大丈夫である。
農業とは、種子をまいて、育て、収穫物を得て、次世代のための種子を得る。何世代も繰り返し、交配したりして、品種改良に努める。自分の田畑の土、風土、気候等に適した種を開発していく。そんなことするよりは、病害虫や自然災害に強く、収穫量も多いと期待される種苗を金を払って購入した方が、賢いかも知れない。多分、楽ではあるだろう。
ちなみに農水省は、ほとんどの品種は一般品種であり、今後も自由に自家増殖ができると言っている。一般品種とか登録品種と聞いてもぴんと来ないが北海道の米で例を挙げると「きらら397」は一般品種で「ななつぼし」は登録品種である。
いずれにせよ、この議論の行き着く先は、農家の権利は守られ、同時に品種開発に関する正当な報酬を受ける権利も守られ、正常な状態にあるべきと考える。しかし、今そんなことが危ぶまれているわけではないのに、何故こんな法改正をするのだ。バカかと思う。ちなみに、現行法でも登録品種の種苗は金を払わないと手に入らない。売買契約において、必要なら、自家増殖の禁止を盛り込み、そこに巨額の違約金を定めれば良いのである。こんなことに刑事罰を導入すべき理由が理解できない。
2)優良品種が海外に流出防止
優良品種の海外への流出防止が種苗法改正の理由と説明されている。しかし、これも本末転倒である。優良品種の海外流出で損をするのは、一般国民よりも、むしろ種苗を開発した育成権者である。韓国で、日本のブランドいちご「レッドパール」とか「章姫」が栽培されている。しかし、「レッドパール」や「章姫」は、日本の育成権者が韓国の生産者に利用を許諾して始まった。その後、勝手に増殖・栽培され、日本への逆輸入されたそうである。この例なんか、自分の落ち度を世の中のせいにするバカじゃんとなる。
その他流出経路不明があるが、密輸出の可能性はある。しかし、密輸出の防止は、法の問題より、税関のチェック体制の問題のはず。法改正で望むのはアホである。
今回の改正に21条の2、21条の3の追加があり、育成権者は保護が図られないおそれがある国や産地を形成しようとする地域を指定できることとなった。こんな改正なら、自家増殖禁止とセットにする必要なんかないと思う。それでも、密輸出には無力である。農家からすれば、農家を密輸の犯人とみたてて自家増殖を禁止したのかとなる。
3)穀物メジャー・遺伝子組換え農作物
Wiki(ここ )には、世界の穀物流通の70%を五大穀物メジャーが扱っているとある。ここ にトウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネとワタの輸入量の農水省の説明がある。例えば、年間のトウモロコシ輸入量は米国から1450万トンあり、そのうち92%が遺伝子組換え作物と推定される。これを見ると、トウモロコシ、ダイズ、セイヨウナタネとワタは95%程度が遺伝子組み換え作物なんです。
2018年に「国は、毎年度予算の範囲内で、・・・・指定種子生産者に対しては、主要農作物の種子を生産するために必要な経費の一部を補助することができる。」という内容の種子法が廃止されてしまった。
これから先、どのようになっていくのやらと思ってしまう。ここ に国際連合食糧農業機関(FAO)のFAO's role in seeds(種子に対する役割)と言うのがある。次の文章で始まり、そうだよねと思ってしまう。
FAO plays a lead role in strengthening the conservation and sustainable use of plant genetic resources for food and agriculture through policy assistance, technical support and awareness raising.
In the broadest sense, this encompasses the whole range of actions involved in the conservation, diversification, adaptation, improvement and delivery to farmers through seed systems.
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