福島原発事故から10年の教訓(3)
2011年3月11日に福島原発事故は発生した。この事態に関する、東京電力福島第一原理力発電所の3月11日発表(これ) は次の様なことを伝えている。
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次の文章は国会事故調報告書143ページからの抜粋です。
地震発生から約50分後に来襲した津波によって、多くの非常用ディーゼル発電機や冷却用海水ポンプ、所内配電系統設備、直流電源設備等が浸水した。 以上の結果、1、2、4号機では全電源を、3、5号機では全交流電源を喪失するに至った。さらに、3号機も3月13日2時42分には直流電源が枯渇し、全電源を喪失した。 |
1) 事故の深刻さ
福島第一原発は地震と津波で大きな被害を受けたが、直流電源(バッテリー電源)を失ったことは、致命傷だった。原発とは、原子炉の中に運転中に人は入れない。温度、水位、圧力等の計器を現場で見れない。電線や途中の中継器を伝わってきた信号が運転室・制御室の計器に表示・記録される。更に一部の重要な機器(例えばバルブ)は、複数の手段で操作が行えるようになっている。直流電源も喪失した事の意味は、お手上げ状態になったことと等しい。
福島第一原発の原子炉の核分裂の継続は停止することができた。その意味では最悪の事態の回避は地震直後の14:46に達成した。残るは、核分裂の結果蓄積されている放射性物質の崩壊熱の除去を続けることである。核分裂もそうであるが、崩壊熱も空気なしの密閉状態で発生するので、冷やされていないと温度は天井知らず。2000°C以上にもなるし、核燃料まで融解してデブリとなっているので3000°C以上にもなったのではと思う。また、水素爆発の水素も高温金属が水と反応して発生したのである。
私は今でも思っているのがが、自衛隊を何故災害派遣により、福島第一原発へバッテリーや電源車を運搬することと福島第一原発の最低限度の作業エリアの津波・地震がれき撤去をしなかったのかと残念である。1号機水素爆発の発生までは、放射線量も高くはなかった。
参考まで、国会事故調報告書の同じ143ページには次の様にある。
電源喪失によって、適時かつ実効的な原子炉冷却も著しく困難になっていた。なぜなら、原子炉冷却、すなわち、高圧注水や原子炉減圧、低圧注水、格納容器冷却又は減圧、最終ヒートシンクへの崩壊熱除去といった、冷温停止へ向けた各ステップの実行とその成否は、電源の存 在に強く依存しているためである。また、前述した発電所構内のアクセス性の悪化は、消防車による代替注水や電源車による仮設電源、格納容器ベントのライン構成及びそれらの継続的な運用において、大きな障害になった。 |
2) 関係者の義務
当時、政府の原子力災害対策本部長であった首相は3月12日に福島第一原発にヘリコプターで自ら飛んでいくという必要性・有効性を考えるのではなく大衆アピール性を考える人であったし、当時の与党は「政治主導」と言って、役人の言うことを聞かない人達であった。不幸な時代であったと思う。今年も国会議員選挙があるが、投票基準は「政権交代」であってはならない。本質的な「国民のために働く人を選ぶ」を基準にすべきである。
さて、最近公務員の辞職が相次いでいる。本当は、「政治主導」と言っていたバカ内閣での公務員だって、事業仕分けと言ってつるし上げられていた公務員だって、自ら正しいと思うことは、国民のためなら自らの主張を通すべきである。 結果、冷や飯を食わされるかも知れないし、辞職に追い込まれることになるかも知れない。公務員は、憲法12条2項を貫いて、自らの職務において国民に奉仕する者であるべき。
なお、東京電力で原子力に関係した人も同じである。例えば、非常用ディーゼル発電機を地下以外に敷地内の屋外に増設しておけなかったか、或いは電源車をスタンドバイとして敷地内に置いておけなかったか。福島第一原発は、当時としては米GEの設計指針に依存せざるを得ず、津波には弱い面があるレイアウトとなっていたと私は思う。しかし、途中改造は東京電力がすれば良いのであり、どのような検討がなされていたか私は興味がある。
吉田調書には「官邸のバカヤロ」てきな発言があるが、官邸と東京電力との間はどうだったのだろうか?電力会社でも人により政府に頭が上がらない人もいるし、その逆もいる。しかし、福島第一原発事故のような場合には、電力会社としても、これは実現して欲しいということもあると思う。会社を辞める事になっても良い。
3) 危険な原発だからこそ
原発は危険である。だからこそ、運転するなら、廃炉をするなら、廃棄物処理をするなら、危険性を考えて業務・仕事をして欲しい。
原発は危険であると述べた。しかし、考えれば多くの側面を持っている。原爆であり、水爆の元である。原発無くして、原爆無し。核保有国は皆原発を持っている。原発はCO2を発生しないと言うが、厳密には核分裂に酸素も炭素も必要ないのでCO2とは無関係。しかし、建設やウラン採掘、運搬、保守の時には化石燃料を使っている。CO2もリスクであるが、放射性廃棄物もリスクである。核分裂がCO2を出さないとして優れていると単純には言えない。
やはり、様々なことを考えざるを得ないようです。
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