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2021年12月14日 (火)

真珠湾攻撃から80年

80年前の12月8日午前7時に「大本営陸海軍部、12月8日午前6時発表。帝国陸海軍は、本8日未明、西太平洋においてアメリカ、イギリス軍と戦闘状態に入れり。」とNHKの臨時ニュースが伝えた。

米英軍と日本軍の衝突が偶発的に発生したとのニュアンスが読み取れてしまうが、実際にはだまし討ちと非難されても、反論できない軍事行動であった。

1)真珠湾攻撃の時間

第一次攻撃隊の真珠湾到着時間は現地時間12月7日午前7時55分であった。日本時間では12月8日午前3時25分であり、米国東部時間(首都ワシントン時間)では12月7日午後1時25分である。

2)日本政府の文書(覚書)交付時間

文書に書かれている内容については、3)で述べるので、日本(大使館)から米国(国務長官)への文書交付時間について記載する。外務省から在首都ワシントン大使館に文書を伝達したのは12月6日の電報901号、902号であった。長文のため、電報を打ち終わったのは7日午後4時(米国東部7日午前2時)であった。

外務省から更に要求としてタイピスト等は使わず、機密保持に慎重を期すようにと要求(電報904号、7日午後5時30分発)があった。更には、外務省より電報907号で12月7日午後1時に国務長官宛てに大使から直接手渡しをするようにと指示があった。

Yake Law School Lillian Goldmad Law Libraryのこの資料 によれば、12月7日午後1時に国務長官への面会アポイントを申し入れた。調整結果と思うが、時間は1時45分となった。野村大使と来栖大使が到着したのは、2時5分。会談の開始は2時20分であった。

1時25分に真珠湾攻撃が始まったのであるから、文書の交付は、約1時間の後であった。外交交渉継続中に軍事攻撃を開始したのであるから、だまし討ちである。

3)交付した文書

日本政府は対米覚書と呼んでおり、外務省が12月6日に電報902号で英文を送っているのであるが、そのタイトルは”MEMORANDUM”である。

そして文書の中身に宣戦を布告するなんてことも書いていない。日米交渉を打ち切ると述べているだけである。当時日本で権力を持っていた連中は非常識きわまりない連中だったようである。文書もだまし文書である。

なお、この覚書(MEMORANDUM)は、Yale Schoolの資料にもあるが、ここ にも置いておいた。文書中に長々と説明が続くが、交渉打ち切りの宣言は最終節であり、参考に次に記す。

仍テ帝国政府ハ茲ニ合衆国政府ノ態度ニ鑑ミ今後交渉ヲ継続スルモ妥結ニ達スルヲ得スト認ムルノ外ナキ旨ヲ合衆国政府ニ通告スルヲ遺憾トスルモノナリ
<参考>よって日本政府は合衆国政府の態度を鑑みるに、今後も交渉を継続し妥結に達すると考えることはできないと遺憾ながら通告する。

The Japanese Government regrets to have to notify hereby the American Government that in view of the attitude of the American Government it cannot but consider that it is impossible to reach an agreement through further negotiations.

史料は、特に記載ないのは、すべて外務省 日本外交文書デジタルコレクション からである。

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2021年12月13日 (月)

立憲民主党、日本維新の会、国民民主党がガソリン価格値下げバラマキ法案を提出

恐ろしいものであります。減税による年間1兆円を越えるバラマキをする法案を提出したというのです。

立憲民主党 12月7日発表   日本維新の会 法案提出のお知らせ 12月6日

日本維新の会の発表に国民民主党共同でとあるので、2党の内容は同一です。3党同一かというと、立憲民主党案は「別に法律で決める日までの間、適用を停止」としており、維新と国民は完全に削除としている点が違いである。

1)何を適用停止し、削除するのか

次の「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」の44条です。

第四十四条 租税特別措置法第八十九条の規定は、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する。

そこで、租税特別措置法第89条を読む必要が出てくる。

第89条 前条の規定の適用がある場合において、平成22年1月以後の連続する3月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき160円を超えることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同条の規定の適用を停止する。

前条の規定とは、
2 前項の規定により前条の規定の適用が停止されている場合において、平成二十二年四月以後の連続する三月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき百三十円を下回ることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同項の規定にかかわらず、同条の規定を適用する。

極めて読み辛いのですが、トリガー条項と呼ばれており、ガソリンの平均小売り価格が3カ月連続で 160 円/ℓ を超えた場合、揮発油税を 53.8円/ℓ から 25.1 円/ℓを下げ、そして、停止後に3カ月連続でガソリンの平均価格が130円/ℓを下回った場合には、この措置を解除するというもの。

揮発油税の税収は年間2兆円強であり、3党は減収見込み1兆690億円と述べている。

2)税金を使ってガソリン価格を引き下げる意味があるのか

ガソリン価格が上がっているのは、原油価格が上がっているからです。下にある上のチャートは2017年1月以降の原油価格で、その下のチャートは11月10日以降の原油価格です。ニューヨークWTI Crudeですが、80ドルを超えていた価格も、70ドル強になっている。将来のことは、よく分からないが、マーケットに対してLong-Shortのビジネスをするのは、政府としてはしてはならないことである。まして、国民の税金でばくちをするのは、許されないことです。

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さて、国内のガソリン価格はというと、次の通り。2019年1月からのレギュラーガソリンの小売価格全国平均です。

Gasolineprice202112_20211213005102

車に関しては、政策として取り組むべき課題が多い。例えば、道路や橋、トンネル等の老朽化対策がある。災害強靱化と言う取り組みも重要である。或いは、過疎化地域、地方においても一定のインフラ整備は必要である。例えば、地方においてガソリンスタンドが減少しており、車の給油に苦労する。或いは、暖房用の燃料確保も苦労するようになってきている。また、CO2排出削減を達成するには、ガソリンの消費削減が重要である。これに対する全く逆の政策であり、本来ならEVの為の急速充電ステーション整備のための調査や計画そして補助金が検討されるべきと思うが、逆行も甚だしい。

日本にはバカ政党がいるのだと思った。なお、OECD諸国のガソリン税の比較がこの財務省のサイト にあるが、日本のガソリン税は安いのである。

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2021年12月12日 (日)

小型モジュール式原子炉(SMR-Small Modular Reactor)

日立GEニュークリア・エナジーは、小型モジュール式原子力発電プロジェクトのテクノロジーパートナーに決定したと12月2日に発表した。会社による発表は次です。

日本語の発表

英語の発表

日本語の発表は日本法人である日立GEニュークリア・エナジーである。英文は米GEであり、日立GEニュークリア・エナジーをallianceと表現しており、法人格は持たない企業連合の意味でしょうか。なお、カナダではGEH SMR Technologies Canada, Ltd.というオンタリオ法人が存在する。

1)日本の報道

比べると結構おもしろい。

日経新聞は、ここ にあり、有料記事であるが、小型モジュール炉(SMR)に関するまとまった記事と思う。

読売新聞は、ここ にある。NHKはここ にある。朝日新聞はここにあるが、私は支離滅裂の感ありと思ってしまう。 記事には「放射性廃棄物が出ることは従来の原発と同じだ。」なんて記述があるが、プルトニウム問題も含め原発の本質は変わっていないにも拘わらず、これでは混乱を引き起こすだけと思える。なお、日立GEニュークリア・エナジー による発表は、 テクノロジーパートナーに決定したという表現であるが、報道各社は受注したと発表している。私は、電力会社Ontario Powerからの単純なプラント請負工事の受注ではないと思っている。

2)オンタリオハイドロの小型モジュール炉(SMR) BWRX-300

BWRX-300という小型モジュール炉(SMR)についての契約であるが、この記事(Power Engineering) からBWRX-300は電気出力300MWで熱出力1,500MWのBWR(沸騰水型原子炉)と理解する。原子力百科事典(ATOMICA)に掲載されている沸騰水型原子炉(BWR)の基本仕様(02-03-01-02) によれば電気出力460MWの熱出力は1,356MWで、800MWが2,381MWとなっている。即ち、同じ電力を得るための熱出力は従来型のBWRより大きい。熱効率で考えれば、燃料を多く消費する効率の悪い発電所である。また、そうなるとプルトニウムや使用済み核燃料も多く出るように思える。但し、電気出力を抑えることにより、安全性を高めている設計を採用しているのかも知れない。核兵器原料であるプルトニウムが生産されることに変わりはない。

建設されるのはOntario Powerの Darlington原子力発電所であり、4基が稼働中。合計出力3,512MW。原子炉はCANDUである。その位置は、次の地図の地点である。 トロントの東方約55km。直線距離で米国ニューヨークまで520km。首都ワシントンまでは570km。東京から青森または熊本までの距離である。

3)日本での小型モジュール式原子炉(SMR)の建設

私は、慌てふためく必要はないと思う。30年後の2050年ゼロエミッションを目指して、と言うより、この標語=かけ声を利用して、各社は競争を繰り広げており、この競争は益々激しくなる。トランプさんのような人が現れて巻き返しがあることもあり得る。まっすぐな直線の道とは余り思えない。そんな中で、SMRがどうなるか、所詮原発である。使用済み核燃料を含め高レベル廃棄物は発生する。

使用済み核燃料には1%程度の燃え残りウラン235が1%含まれ、さらにウラン238が変化したプルトニウムが1%程度存在すると言われている。日本原子力文化財団のこのページの説明 によれば、高レベル放射性廃棄物は数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があるととのこと。年間1.4トン発生しているとある。

じっくりと考える必要があると思います。

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