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2022年4月21日 (木)

相続マンションの路線価認めなかった最高裁判決から考える税の公平性

まずは、日経ニュースから

日経 4月19日 相続マンション、路線価認めず課税「適法」 最高裁判決

最高裁判決はこの裁判所のWeb Page にあり、判決文を読んで分析しました。

1) 本件相続の内容

被相続人(死亡した人)は、平成24年(2012年)6月に94歳で死亡。残した財産は、国税庁と争ったマンション以外に6億円以上を保有する大資産家であった。従い、今回の争点となっているマンションの購入価格は13億87百万円であったことから、相続財産の総額は20億円近いのである。これを、相続税ゼロで申告をして、相続しようとした。更には、このマンションを相続人が売却しても、所得税や住民税もゼロ。勿論消費税もゼロなんて、徹底的に税を払わないように仕組んだ。そう考えると、札幌南税務署は庶民の味方・正義の味方としてよく頑張ってくれたと思う。

2) 本件税逃れの方法

相続税は札幌南税務署に申告したと思われることから、死亡した人は札幌市に住んでいたと思う。死亡する3年前の平成21年1月と12月にマンション(日経によると東京で)を837百万円と550百万円で購入した(合計13億87百万円)。借入金は630百万円と378百万円の合計10億008百万円。不動産購入が可能であったことから認知症にはなっていなかったと思うが、おそらく当人も家族も死期が近いと認識していたと思う。少なくともいずれ死ぬ。6億円の税産があるなら、相続税対策に突っ走る。簡単な方法は、債務控除と路線価評価の利用である。

お見事!相続税をゼロにする方法を編み出したのである。どのようにして、そうなるかは分からないが、路線価を使えば837百万円と550百万円のマンションが200百万円と133百万円になるそうな。約10億円も下げたのである。実態価格は、2013年3月に550百万円で購入したマンションを515百万円で売却しているので、路線価は実態より382百万円も低かったのである。

当然この仕組みは、税理士、銀行、不動産屋等関係者が知恵を出した可能性はあると思う。誰かが、首謀者であり、それにありが群がったのかも知れない。

3) 税務署の賦課決定処分

税務署は837百万円と550百万円で購入したマンションを不動産鑑定士による評価額である754百万円と519百万円との評価を行い、10億円近い金額を債務控除して888百万円を相続税の課税価額。そして、これに基礎控除他を控除した上で、税額を計算した結果として240百万円の相続税の賦課決定を行った。

相続税のみならず贈与税もそうであるが、相続税法第22条は、次であり、不動産に関する評価額は、不動産鑑定士の鑑定が有効である。不服があるなら、別の不動産鑑定士を起用し、争えば良いのである。路線価なんていうことがバカである。

相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

4) 相続した財産を売却したとき

財産を売却した場合は、売却額から取得したときの取得費(購入価格と購入手数料等)ならびに売却時の費用を差し引いた金額が所得金額となり、これに税率をかけて所得税を計算する。

本件の場合、不動産屋等の手数料を無視すると、購入価格である837百万円と550百万円が取得費であるが、これに建物についての減価償却計算を行い、累計原価償却額相当を差し引く。すなわち、相続税の評価額は、売却したときには関係しない。唯一、相続から年数を経過していない場合に、相続税相当額を取得費に加えることができるのみ。

当初のもくろみは、相続税はおろか、売却時の所得税も逃れ、さらにはマンション以外の相続財産6億円についても相続税を逃れようと企んだのではと思えるのです。

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2022年4月14日 (木)

2023年1月は東京地方電力不足となるのか?

次のニュースがありました。

・NHKニュース 4月12日 来冬の電力需給見通し 東京電力管内の予備率はマイナスと予測

・日経 4月12日 冬の電力、逼迫のおそれ 東京など7地域の23年1~2月

このニュースについて、検討を加えてみました。なお、ニュースの情報ソースは次です。

・ 経済産業省 4月12日開催 第47回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会

・ 電力広域的運営推進機関 4月12日 第72回 調整力及び需給バランス評価等に関する委員会 です。

1) 2023年1月、2月の東京地方電力需給見通し

Tokyogrid20223winter

上の表が2023年1月、2月、3月の電力需給見通しの表です。H1の意味は、10年に一度程度と予想される厳冬となった場合と言うことで、1月、2月の需要予測5,443万kWを、東京地方のみ供給力が2月は90万kW、3月は84万kW下回る(不足する)と予想している。供給力 5,353万kWと5,359万kWに対して、この不足分が1.7%と1.5%に相当する。需要予測5,443万kWに供給力を3%マージンを確保しておくとすると、3%相当の163.3万kWに追加して2月は90万kW、3月は84万kWを加えることとなるので、不足分は254万kWと247万kWになると計算される。

以上が、電力不足の計算であるが、10年に一度程度と予想される厳冬年の電力需要はということで、本冬で一番需要が大きかった1月6日16時が5,374万kWであった。このことからすると、10年に一度の厳冬予想5,443万kWは更に69万kW大きい。供給力として可能性があるのは、建設中のJERA姉ヶ崎火力(LNGコンバインドサイクル)である。1号機と2号機の運転開始は2023年2月と4月の予定であることから、早めに運転できれば、供給力の増加として期待できる。1号機と2号機とも各65万kW。

2) 2022年1月-3月の状態

電力は貯蔵されないため、需要に応じて、供給することとなる。この物理法則を持つ電力を実際にどのように供給されているかを東北の地震の影響と寒波が重なった3月22日、電力需要最大を記録した雪の1月6日、そして春のような暖かい日になり日照にも恵まれた3月28日の3日についての時間毎の需要と供給源をチャートにしたのが次である。

Tepco2021janmar

需要カーブが、それぞれ大きく異なる。そして3月28日は太陽光発電が多い。3月22日の太陽発電の最大は174万kWであったが、3月28日は1,381万kWの8倍近い。需要に対して太陽光発電が占める割合は、3月22日5%で3月28日は40%である。3月22日と3月28日を火力発電で比べると、3月22日は出力3,700万kWであったが3月28日は1,700万kWで運転している。46%も発電出力を低下させた。

3) 需給逼迫による停電回避に向けて

電力は貯蔵されないことから、停電回避には供給を増加させる必要がある、あるいは需要を減少させるという2つの方法がある。バッテリーは、蓄電時が需要であり、放電時が供給となる。停電回避は、政府の義務だなんて言っても解決にはならない。社会のルールとして、合理的に需給が均衡し、合理的なコスト負担と便益享受が計られることが理想である。

その意味で、社会主義国で行われていた国家の電力管理等は欠点が多い。電力自由化をしてきたのであり、その中での合理的な仕組み作りが重要である。この冬の電力逼迫状況で、自家発電設備をフル稼働させて売電収入を享受できた企業も多いのではと思う。それは、良いことである。自家発電設備は自社工場の電力供給のみならず、社会への電力供給に貢献できたのである。対価は、マーケットが決めた。

エネットにEnneSmart(エネスマート)(Webはここ )と言うのがある。エネットからの節電リクエストに応じてタイムリーに節電に協力すると電気料金の割引が受けられると言うのである。節電できなくても、デメリットはなしとの事である。興味ある仕組みである。

東京電力エナジーパートナーが、くらしTEPCO webサービスというインターネットで電気使用量を見ることができるWebサイトを運営している。このWebサイトで最近、データのCSVダウンロードができなくなっている。他の方法でも良いが、データダウンロードはできず、例えば30分ごとのデータはグラフ表示のみである。グラフのスケールは、その時の最大値を基準にするから、他の日にちとの比較は簡単ではない。

日本最大の電力小売り事業者である東京電力エナジーパートナーが、データのCSVダウンロードを中止するなんて、世の中に逆行するようなことをして、どうするかと強く抗議します。

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