« ウラジオストク港利用が可能となった中国 | トップページ | 黒部ダム(2)環境影響評価 »

2023年6月29日 (木)

黒部ダム(1) 観光放水始まる

多くのニュースが、黒部のダムでの観光放水が始まったと伝えています。その中から、6月22日の信濃毎日デジタルニュースです。

夏を呼ぶ迫力の水しぶき 60周年の黒部ダム、観光放水始まる【動画・写真複数付き】

どの報道でも、黒部ダム60周年と伝えており、これを機会に黒部ダム、黒部水力発電開発、富山県水力開発に関しても、断続的になりますが、機会を見つけ、おりにふれて書いていきたいと思います。

なお、60周年と呼んでいるのは、1963年(昭和38年)6月5日に竣工式を行っており、竣工式から60年となるので60周年と理解します。なお、黒部第四発電所で発電を開始したのは、2年少し前の1961年1月15日からで、当初計画の3機の水車発電機全てが発電を開始したのは1962年8月1日でした。

1) 観光放水って何?

まずは、観光放水とは何であるのかですが、1956年(昭和31年)6月30日の厚生省富国第420号の黒部ダムに関する許可がその根拠であり、「XXXX申請の中部山岳国立公園特別地域内工作物の新築及び水位水量の増減を来たす行為の件は、次の条件を附してこれを許可する。」とある(出典:注1)。 当時と今では省庁の組織や役割分担も異なっている部分があるが、国立公園に関する行政事務は厚生省であった。

許可書の第1項目目に記載されているのが、次の条件である。(御前沢堰堤とは黒部ダムの当時の名称である。)

1 黒部峡谷の景観維持のため、御前沢堰堤から次のとおり放流すること。

(1) 放流時間

6月26日から7月31日まで、午前6時から午後5時30分まで
8月1日から9月10日まで、午前6時30分から午後5時まで
9月11日から10月15日まで、午前7時から午後4時30分まで

(2) 放流期間及び放流量

6月26日から8月15日まで、毎秒15立方メートル以上
8月16日から10月15日まで、毎秒10立方メートル以上

ただし、その日の放流停止後その日のうち又はその翌日にかけて、御前沢堰堤地点において、降水量が50mmに達したときは、その翌日中又は翌日の残余の時間の放流量は減ずることができるものとする。

放流の目的としては、黒部峡谷の景観維持とされている。ダム自体の観光目的ではなく、河川水の発電利用による減水区間の流水量維持がその目的である。具体的には、黒部ダムから黒部第四発電所・仙人ダムまでの黒部川の河川水維持である。

2) 黒部ダムー仙人谷ダム間(下廊下)

観光放流により水量維持をする区間には、下廊下と呼ばれている登山道があり、終点である仙人谷ダムから直線距離で約900m下った付近にある阿曽原温泉小屋があり、そのWebの (阿曽原温泉小屋Webアルバム)というこのページに、年間通行期間は平年だと9月下旬からで、10月末で小屋は営業終了と書いてあり、通行できるのは極めて短期間です。 阿曽原温泉小屋のWebに2023年の下廊下開通情報は未だないが、2022年はこの記事のように10月20日で「慎重に歩いてもらえれば通行できるまでに作業が進んでいます。」とのこと。2022年は通行可能約10日間だったということでした。

下廊下とは、どのような所かはこの富山県警地域部山岳安全課のYou Tubeを見ると迫力があり、よくわかります。

阿曽原温泉小屋のWeb (阿曽原温泉小屋Webアルバム)には、ルート整備について この区間は、関西電力が黒部ダム建設時に、旧厚生省(現環境省)との間で交わされた付帯条件として、ダム建設後もルートの整備を行なうこととなっております。
毎年、転石の除去・丸太桟道の補修や取替え・手すりの補修・迂回路の整備などなど、多額の費用と手間を掛けて地元業者が整備に当たっております。

下廊下ルート整備については、厚生省富国第420号の許可条件として、次の様にあります。

12 黒部川左岸旧日電歩道は、国立公園歩道としてこれを維持し、公衆の利用に供すること。

当時も今も関係者の方々が見守り、尽力していることにより成立しているプロジェクトだと考えます。但し、自然に手を加えたことに相違はなく、自然保護・環境保全の観点も忘れてはならない。黒部ダムに関連して、様々な角度から、この続きを書いてみたいと思います。

(注1) 国立公園協会発行「国立公園」81 AUG. 1956

|

« ウラジオストク港利用が可能となった中国 | トップページ | 黒部ダム(2)環境影響評価 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« ウラジオストク港利用が可能となった中国 | トップページ | 黒部ダム(2)環境影響評価 »