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2023年7月21日 (金)

黒部ダム (3)環境影響

黒部ダムの環境影響について、気になるのはダム湖。すなわち、ダム湖となり水没して失われた地域の自然・環境である。残念ながら黒部ダムが存在しなかった以前の状況は戻ってこないと考える。

1) 黒部ダム建設前のダム湖地域

黒部ダムの位置は黒部下廊下の上端位置であり、この地点から下流部分が下廊下となる。黒部ダムが満水となった場合は、その満水位標高は1448mであり、黒部川が標高1450mにある位置とは、黒部川が上廊下となる付近に近い。違った表現をすれば、黒部ダムとは、上廊下と下廊下に挟まれた部分を貯水池となるように建設されたダムであるとも言える。

ダム建設前のダム湖予定地域の写真を探したが私には見つけることはできなかった。 そこで、国土地理院(地理調査所)の黒部ダム建設以前である昭和30年7月30日発行の5万分の1地形図「立山」の謄本を入手して、観察した。次図がその謄本であり、中央付近で青の円弧で示したのが黒部ダム付近。中央下部で青円で囲んだのが平ノ小屋・平渡場付近である。

Kurobe1

ダム湖となったのは黒部ダムの上流(南)であり、満水時の湖面水位は1448mであるから、標高がこれより低い部分がダム湖となっている。ダム湖の上流端(南端)は、上の地形図では黒部川が図外となる付近である。ダム湖は黒部川の上廊下と下廊下に挟まれた部分であり、地形図で見ても廊下と呼ばれる垂直に切り立った渓谷ではない比較的穏やかな部分と推定される。

現在の地理院地図で計測した場合、黒部ダム湖が満水になった時、その上流付近はダムから直線距離で約7kmである。一方、下流にむいて直線7kmは十字峡の少し下流である。その川面標高は約940m。ダムの基礎面が標高1268mなので、ダムより下流に7km下がると標高は328m低くなる。一方、ダムより上流側は7km登って1448mなので、ダムの基礎面1268mとの差は180m。ダムから下流部分は1.8倍以上の急勾配・急流なのである。

満水位1448mに相当する黒部川川面地点に相当する上廊下の下流端付近から7km上流に遡った地点は薬師岳の金作谷が合流する付近であり標高1650m程度。上廊下も7kmで河川標高差202mである。ダム湖となっている黒部川の部分と比べると急流である。

2) 平の渡し

1956年(昭和31年)6月30日の厚生省富国第420号の黒部ダムに関する許可の第10項目は次であった。

十 針ノ木谷ー平ノ小屋間の歩道及び釣橋の代替として無料渡船を設けること。

無料渡船は関西電力が山小屋「平乃小屋」に委託して運営していると了解するが、平乃小屋の紹介は山の月刊誌PEAKSのこのページにありました。また、山のSNS Yamarecoに平の小屋に関しての投稿記事として黒部の「平の小屋」の元祖と、弥三太郎伝説がありました。この記事に、平の小屋付近は川幅が広がった「黒部平」と呼ばれていたと書かれている。

3) 黒部ダム湖

平の小屋から3km程上流に行った地点が黒部ダム湖の最上流部であり、そこから少し更に上流に行った地点付近から黒部上廊下が始まる。黒部ダムは黒部下廊下と上廊下の間に挟まれた直線距離で7km程度の黒部川上流でも急峻な渓谷ではない部分が貯水池となるようにダム位置が選定されている。そして、黒部ダムは高さ186mで、総貯水量199,300,000m3、利用水深60mで有効貯水量148,800,000m3を確保している。なお、満水位での湖水面積は1,489,000m2である。黒部ダムの湖面標高と貯水量の関係は次のグラフに近いと推定する。
Kurobedamcapacity

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