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2023年9月28日 (木)

秋本議員贈賄罪で在宅起訴 日本風力開発」から依頼を受領

秋本真利議員、賄賂7280万円受け取った罪で起訴とのニュースが飛び込んできた。

読売新聞オンライン 9月27日

秋元議員の国会質問に対する謝礼金受領との報道。 7280万円を、どのようにして受け取ったのか、この読売ニュースは、秋本議員と馬主組合を設立。秋本議員が実質的に管理していた組合に対し、今年6月までに計約3000万円を提供と書いている。 すぐバレるような直接の現金授受ではなく、複雑な偽装のようなことが行われていたと想像する。 秋元議員vs検察庁の今後を見ないといけないが、読売報道には「日本風力開発前代表取締役塚脇氏は国会質問への謝礼と供述 」とある。

現代の複雑な贈賄関係と思えるが、国会での質疑は議事録に残っており、以下国会(衆議院の委員会)での秋元議員の質疑を以下に簡単に書きだしてみた。発言の全てや前後の質疑等は、それぞれの委員会の名称と開催日をもとに国会議事録で検索いただければと思う。

なお、日本風力開発も参加した第1回洋上風力とは、2020年11月27日から2021年5月27日迄公募が実施され、2021年12月24日に発電事業者の選定が経産省・国交省より発表された(この発表 )。「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」の3案件で、3案件全てが発表にあるように三菱商事エナジーソリューションズ株式会社、三菱商事株式会社、株式会社シーテック(由利本荘市沖は株式会社ウェンティ・ジャパンもメンバー)に決定した。規模は、3案件合計で1,742MWである。金額では、年間700億円、売電全期間の予想総合計収入は1兆5000億円になる。これが手始めで、将来の脱炭素発電の主力になると予想されることから、そのビジネス規模は年間数兆円以上になるとも予想される。 次図が、第1回洋上風力の選定結果をまとめたものであり、秋田県の2案件に失注業者がそれぞれ4社あり、それぞれコンソーシアムであるが、メンバーに日本風力開発がいたと聞く。

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第198回国会 衆議院 環境委員会 第7号 令和元年(2019年)5月31日 での質問
秋本委員 ・・・・・・・・入札にするわけですけれども、最低制限価格を入れて、これ以上下に行ったら欠格ですよという事項を設ける方が私はいいのではないかと。

電気料金に直ちに反映するわけで、最低制限価格制度なんて、消費者の敵だと私は考える。

第208回国会 衆議院 予算委員会 第七分科会 第2号 令和4年(2022年)2月17日 での質問
秋本委員 ・・・・・・・・今回、エネ庁が、二〇二八年、三〇年で運開するところを、価格に点数をつけて、定性面に点数をつけて選んだわけですけれども、一方で、もし四年も五年も前に運開しますよというところがあって、それが若干高かったとしても、それはかなり手前になるわけだから、高いのは当たり前だと思うんですよね。

秋田県由利本荘市沖は845MWで13MW風車が65基あることからと思うが、2030年12月の運転開始となっている。 4年前、5年前となると2023年、2024年となるが、そんな業者って信頼できるのだろうかと思ってしまう。 秋元議員とはエクセントリックな人だなと思った。だから、競走馬をして競馬をするのが趣味なのかな?

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2023年9月23日 (土)

ジャニーズ問題を考える

ジャニーズ問題って、頭の中がかき乱され、混乱の窮地に陥って、正常な神経では対応できなくなる感覚である。 しかし、記録にとどめ、.問題の本質を知り、問題発生を防ぐ努力をする必要性を感じる。

1) ジャニー喜多川の性加害とは(1950年代から始まっていた)

性加害というが、そこには被害者が存在する。 見て見ぬふり、知っていて知らぬふりをしていた関係者もいるはずと確信する。

本問題については、ジャニーズ事務所が調査報告書をWebで公開しており、このページから報告書と概要版がダウンロード出来ます。 報告書は、事件に関して、かなり突っ込んで調査・報告しています。(事件との表現はマスコミ等で、ほとんど使われていないが、加害者と被害者が存在するからには、刑法・その他の法で犯罪とならなくても事件と言えると考える。)

ジャニー喜多川は、1931年10月アメリカで生まれ、1933年に日本に帰国した。 1962年ジャニーズ事務所を個人開業。 1975年1月に株式会社として法人化したのであるが、性加害が1950年代から始まっていたとなると、ジャニーズ事務所を始める前からである。 報告書19ページは次の様に記載がある。

特別チームは、上記のとおり、特別チームへの調査協力を承諾した被害者のヒアリングを実施し、各被害者からジャニー氏による性被害について以下のような話を聴取することができた。
・1950年代、ジャニー氏が小学校低学年男児であった被害者の自宅に泊まった際に、あるいは遊びに来た同級生の男を自宅に送る車の中で、口腔性交などの性加害が繰り返された(ジャニー氏20歳頃)

21ページには、次の様にある。

ジャニー氏は、古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては、1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、上記のような性加害を長期間にわたり繰り返していたことが認められる。 

ジャニーズJrとは、デビューを目指してレッスンを行いながら芸能活動を行っているジャニーズ事務所所属タレントで、アイドルを目指す少年達である。1980年代当時は10~20人程度であったが、2000年頃には200名程度になり、2017年から2019年当時は全体で300人くらいのジャニーズJr.がいたとのこと。ジャニー喜多川が、自宅や合宿所や公演先の宿泊ホテル等において、ジャニーズJr.のメンバーを含む多数の未成年者に対し、一緒に入浴したり、同衾した上、キスをしたり、身体を愛撫したり、性器を弄び、口腔性交を行ったり、肛門性交を強要したりする、などの性加害を行っていた。(報告書21ページ)

被害者は、当然「自分の中で蓋をして終わらせていた過去で、ニュースなどを見るたびに当時のことを思い出して、フラッシュバックし、嫌な思いをする。」という当然のことが生じる。 報告書の24ページから26ページに書けて被害状況に関する調査報告があるが、未成年の時に受けた性被害の深刻さを感じる。例えば、次の様な記述もある。

度重なる幻聴やフラッシュバックで、自殺願望も抱くようになった。
女性と性交をしている時もジャニー氏の性加害を思い出して恐怖感を抱いたり、食事中にもそのような場面を思い出して吐きそうになったりしたこともあった 。
社会に出て仕事を始めるようになってからも、同性不信があり、権力がある人やジャニー氏と同年代の人を見ると恐怖を覚えました。
人に話せば、自分のことも「変態」「お前やられたんだろ」とからかわれるのがオチだろうと思って、家族にも誰にも話しませんでした。
私は、性欲はあり、マスターベーションはできますが、この年になるまで女性と関係を持ったことはありませんし、性風俗に行ってもできません。

男が男にする性被害は、妊娠とか相続とかの問題を生じさせないと簡単に扱うことができない、心の中に傷跡を残す甚大な犯罪だと思う。

(2) 報道等はどうだったか

ジャニーズ問題は、BBCが本年3月27日に報道した後、急展開を見せ、6月も立たないうちに、今のようになった。 BBCが報道したのは動画であったが、この2023年3月7日のBBC NEWS JAPAN の内容とほぼ同一であったと思う。

では、それ以前はと言うと、この弁護士ドットコムニュースによれば、やはり様々に報道や証言はあったのである。

  • 1965年の『週刊サンケイ』(3月29日号)
  • 1967年『女性自身』(9月25日号)
  • 1981年『週刊現代』(4月30日号)

1988年にはジャニーズグループ「フォーリーブス」のメンバーだった北公次氏が『元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』(データハウス)を出版し、この本の中で、ジャニー喜多川から自身が受けた性被害を赤裸々に綴り、これを受けて、1年ほどの間に『アサヒ芸能』、『週刊文春』、『FOCUS』、『週刊大衆』、『微笑』などで、北氏や匿名の元タレントらの証言の掲載があった。

(3) 1999年週刊文春キャンペーン

週刊文春は1999年10月から14週にわたってジャニーズ事務所とジャニー喜多川に関する報道キャンペーン記事を掲載した。 この中で、ジャニー喜多川の破廉恥犯罪行為についても触れられていることから、ジャニーズ事務所とジャニー喜多川は計8本の記事について、文藝春秋を名誉毀損で提訴した。どのような記事であったかは、文春オンライン期間限定無料公開としてここにあり、読むことができる。

2002年3月27日、東京地裁は「少年らの供述は、ジャニー喜多川のセクハラ行為を真実であると証明するのは、なお足りるものではない」とし、文春側が敗訴。文春に事務所と個人に合計880万円の支払を命じた。

二審東京高裁では改めて証人調べをしたわけではない。 一審の記録を全て読み判断し、一審で『真実相当性は認められない』としたが、二審では『セクハラに関する記事の重要な部分について真実であることの証明があった』とした。

地裁と高裁が全く逆の判断となったわけであるが、証言者はすでにジャニーズ事務所からも芸能界からも離れている少年2人で、証言は別の裁判所で非公開の形で行われた。 証言者とジャニー喜多川との間には衝立が立てられ、お互いの姿は見えない。しかし、声は聞こえるので、ジャニー喜多川には証言者の特定は可能であったはず。判決は「セクハラ被害」の真実相当性が認められ、ジャニーズ側から文春に対し計120万円の支払い命令となった(2003年5月15日)。

ジャニーズ側は上告するが、最高裁は2004年、棄却。高裁判決が確定した。

(4) 2000年4月13日衆議院 青少年問題に関する特別委員会

ここにその会議録があるが、ジャニー喜多川の性加害問題は衆議院の特別委員会でも取り上げられていた。

議事録の038から077まで、阪上善秀委員の質問とその答弁を読むと、国会で23年前にここまで取り上げられていたんだと感心してしまう。 社会の状況もあるが、2000年4月国会、2003年5月高裁判決より、BBC報道が世の中への影響が大きいのかと思ってしまう。なお、阪上善秀委員の最初の質問は、次であった。

038 次に、最も深刻な問題であるジャニー喜多川社長のセクハラ疑惑についてお聞きしたいと思います。
 報道によれば、ジャニー喜多川社長は、少年たちを自宅やコンサート先のホテルに招いて、いかがわしい行為を繰り返しておるという内容のものであります。なぜ少年たちがこんな行為に耐え忍んでいるかといえば、ジャニー喜多川社長に逆らうと、テレビやコンサートで目立たない場所に立たされたり、デビューに差し支えるからというのであります。
 私は独自の調査で、ジャニーズ事務所に所属していたことのある少年の母親の手紙を手に入れました。少し長くなりますが、御紹介をさせていただきます。
  うちの現在高校二年生の息子も、中三の冬にオーディションに合格し、約一年間ジャニーズジュニアをしていましたが、事務所からのコンタクトがなくなり、自然にやめたような形になりました。ずっと後になって息子から聞いたのは、オーディションに受かってから初めてレッスンに行ったとき、先輩のジュニアから、もしジャニー喜多川さんから、ユー、今夜はホテルに泊まりなさいと言われたとき、多分ホモされるかもしれないけれども、それを断ったら次から呼ばれなくなるから我慢しろと教えられたそうであります。息子はジャニーさんの好みでなかったらしく一度も誘われなかったので、清い体でやめることができましたが、何人かはこの行為を受け、お金をもらっていたそうであります。今テレビでにこにこして踊っているジュニアたちは、陰ではそんなつらい思いをしておるかと思うとかわいそうです。
 こういう内容であります。こういうことが事務所でまかり通っているわけであります。
 ジャニー喜多川氏は、親や親権者にかわって児童を預かる立場であります。児童から信頼を受け、児童に対して一定の権力を持っている人物が、その児童に対して性的な行為を強要する。もしこれが事実とすれば、これは児童虐待に当たるのではありませんか。

 5月15日の報道藤島ジュリー景子社長の謝罪が、私が気づいたこの事件の最初の報道で、何が何だかよく分からなかった。 ジャニーズ事務所やそこに属するタレントに関する知識は少しだけあったが。 陰で多くの人権侵害があり、それを社会は救うことができなかった。 野放し犯罪があった。 そんな教訓なのかなと思う。

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2023年9月21日 (木)

黒部ダム(6)日本のダム順位 

黒部ダムの高さ186mは、日本一であり、これからもこの高さを超えるダムは日本では建設されないであろうと思う。ちなみに、現在世界で一番高いダムは305mの高さがある中国のJinping-I Dam(锦屏一级水电站)の様である。

ダムは、高さを競うものではなく、人々にどれほど役に立っているかが評価のポイントであり、評価にはマイナス評価も含めてですが、とりあえず、単純に高さ、総貯水量、有効貯水量についての日本のダムのベスト10を作成してみた。

1) 日本のダム高さ順位トップ10

次の表が高さ順位トップ10です。

Japandamhight

2) 日本のダム総貯水量順位

総貯水量で順位を付けると、高さとはやはり異なってきた。 黒部ダムは18位で、11位から17位には、玉川、雨竜土堰堤、雨竜第一、手取川、高見、有峰、矢木沢が入いる。

Japandamgvolume

3) 日本のダム有効貯水量順位

有効貯水量と総貯水量の違いは、名前の通りで、黒部ダムを例に取ると、利用水深は60mなので、186mのダムであるが、ダム基盤から120m迄は水を利用できない。利用できるのは、120mから180mの間の60mであり、この60mの水深幅が148,843,000m3の水を貯水する。 もし、水供給ダムなら水供給に利用可能な貯水量であり、洪水緩和目的なら洪水時に貯水し、下流側の水を抑制できる能力となる。

Japandamnvolume

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2023年9月17日 (日)

リビアのダム決壊の原因は? 日本でもおこるか?

リビアのデルナ(Derna)を大洪水が襲い、街が押し流され、壊滅的な被害をもたらした。様々なニュースを総合すると、死者は1万人以上で、2万人以上になるとの話もある。被害状況を伝えるニュースとしては、このBBCニュースが動画もあり、また線を動かして、被害前と後を見れる航空写真もあります。

1) リビアのデルナとダムの位置

デルナは、東西約1300kmのリビアの東部に位置し、デルナからエジプト国境までは直線距離約270kmです。 地図に、崩壊した2つのダムを表示したが、下流側の北の方へのダムはデルナ市街地から1400m程度で非常に近いところにあり、それから上流約12kmのところにもう一つのダムがある。 

2) 2つのダム

上のGoogle Mapで衛星写真の方を拡大して見ると分かるが、2つともコンクリートダムではなく、フィルダムと呼ばれる土砂や岩石を盛り立てて建設した構造のダムである。日本では、河川堤防のほとんどがこの形式であり、河川からの取水箇所、ダムでは下流への放流箇所はコンクリート等を使い取水・放流等を可能とし又洪水等非常時の配慮もなされている。

Google Earthで3Dイメージを作成してみた。 (上がデルナ市街地に近いダム)

Abu-mansour-dam-libiya_20230917024001

Al-bilad-dam-libya

3) ダムの目的

崩壊原因はやがて究明されるであろうが、このダムの目的はなにであったかと言うと、おそらく洪水対策と水供給であったと私は思う。 次のグラフはトリポリの平均月間降水量を示しており、6、7,8月はほとんど雨がない。また年間降水量も330mmであり、サヘル地方の典型である。2023年9月に降った雨は3日間で100mmを超え、200mmを超えた所もあるかもしれない。 夏場は、水供給・水確保が重要であり、一方今回のような豪雨も発生する。 水供給と洪水対策のためのダムであったと考える。

Tripolirainfall

4) ダム崩壊の原因

ダム崩壊の原因として、このGuardianの記事は、検察がダムメンテナンスの予算確保を含め、メンテナンスに問題がなかったか調査すると報じている。 これらのダムは1970年代にユーゴスラビアにより建設され、メンテナンス工事もトルコ業者に相当前に発注されていたとの話もある。どこまで真実か、確認できていないが、いずれにせよダムはメンテナンスが必要なのである。 日本の河川の土手も、管理者が亀裂や変形、沈下等がないか調査し、必要な場合は、改修工事を実施している。 あらゆる建築物はメンテナンスが必要であり、メンテナンスをすることにより、長期の利用が可能となる。

1300年以上の歴史がある香川県仲多度郡まんのう町にある満濃池は決壊と修築を繰り返しているが、現在も存続し農業用水供給を担っている。 但し、この満濃池も鎌倉や戦国の戦乱機には洪水決壊後の修復は実施されず放置されていたようである。

5) 復旧・復興の目途

リビアとは、どのような所かである。 ここに外務省海外安全ホームページのリビアがあり、次の様に書いてある。

【危険度】
●全土:レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)
【ポイント】
●リビアでは、民兵組織など武装グループによる武力衝突・テロ・誘拐事件が発生しており、全土に「レベル4:退避勧告」を発出しています。リビアへの渡航は、どのような目的であれ止めてください。また、既に滞在されている方は直ちに退避してください。

危険だから行くな! 行っている場合は、帰れ!である。 しかも、デルナを含む東部地域は、政府GNUの影響が及ばないLNAの影響が濃い地域である。在リビア日本大使館も、2014年7月21日で一時閉館し、現在はチュニジアの首都チュニスで業務をしている状態である。 カダフィ後の混乱の中、トルコ、カタール、イタリアは国連が関係したGNAを、そして対抗するLNAをエジプト、フランス、UAEが支援し、これにロシアが加わり、ワグネルも参加している。 この状態が現在どうなっているか、調べようとしても、調査しきれなかった。

赤十字・赤新月社は、頑張っておられるようだが、どうされているのか、赤十字・赤新月社だから支援可能なのかな。アフリカ最大の原油・ガスの埋蔵量を持つリビア。 だからこそ、利権が渦巻き、恐ろしい世界が口を開けて待っている。 確実なことは、平和が重要ということ。 戦乱(戦争のみならず内乱や暴動を含め)を無くすることこそ重要と考える。 その実現に向け努力することが重要と思う。

 

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2023年9月11日 (月)

黒部ダム (5) 水力発電

黒部ダムは高さ186mの発電用ダムであります。 黒部ダムで貯水し、発電する水力発電の概要を考えてみます。

1) 黒部ダムの貯水量

7月21日のブログに次のグラフを掲げました。

Kurobedamcapacity

黒部ダムは、ダム基礎岩盤から186mの高さがあり、水深高180mから120mまでの水深差60mが設計利用水深となっている。 標高では、基礎岩盤が1268mであり、最低水位は1388m、最高水位は1448mとなる。 設計有効貯水量は最低水位の時はゼロ、最高水位の時は148,800,000m3である。

2) 黒部ダムの水による水力発電

黒部ダムの水による水力発電と言うと、黒部第四発電所と考えてしまいがちであるが、実際には下流にある全ての水力発電所を含めて考える必要がある。 しかし、多少複雑であることから、今回は、黒部第四発電所のみを対象として考える。 

黒部第四発電所の場所は次の地図の赤丸点にあり、黒部ダムからは直線距離約9km北方の位置である。 発電所は地下にあり、水平面で回転する発電用ペルトン水車の羽根の位置は標高858.5mである。 ダムの最高水位は1448mなので、水力発電の最大総落差は589.5mである。

水車発電機を回転させた水は仙人谷ダム貯水池・黒三沈砂地・連絡水槽を経由して黒部第三発電所と新黒部第三発電所へ供給される。 仙人谷ダムは黒部第四発電所の約850m北西の黒部川下流に位置し、仙人谷ダムの最高水位は黒部第四発電所の水車中心から7.5m低い標高851mである。 次の地図上で黒部第四発電所を赤点で示した。 河川断面図で示すと、その下の図となる。

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現在の黒部川第四発電所の最大発電出力は、この2022年3月1日付電気新聞の記事にあるように337,000kWであり、この出力は72m3/秒の水をダムから水車に供給した場合に得られる。 最大総落差の589.5mに対しては発電効率81.02%であり、記事記載の有効落差545.5mに対しては発電効率は87.55%となる。 総落差と有効落差の差は、ダムから発電水車までの水路トンネルや水圧鉄管を通っての発電水供給であることから、それらによる損失である。 なお、黒部川第四発電所完成時の発電所出力は258,000kWで、水量は54m3/秒で、水車・発電機3基であった。1973年6月に4号機の増設が完成し、出力と使用水量が増加した。 

3) 黒部ダムから黒部第四発電所の発電水車への水供給

水車発電機はダムからの水量を調整することにより出力のコントロールを行っている。 一方、ダムへ流入する水量は自然の流れであり、一定ではない。 流入水量は、ダムより上流における降雨量により変化し、黒部ダムの場合は上流地域の融雪からの水もある。 融雪以外にも涌き水も関係する。 黒部川の河川流量であるが、1964年5月号の発電水力70「黒四特集号」19ページに昭和3年度~昭和24年度平均の毎月の黒部ダムの地点における自然流量の数字が掲載されており、これを図示したのが次である。

Kurobeflow_20230910001201

2月は最も流量が少なく、20,000,000m3にもならない。一方、6月は2月の8倍以上の160,000,000m3を越える。グラフには月間流量を単純平均した1秒間の流量も右のスケールとして表示した。 54m3/秒で黒部ダムから水車発電機に水を流せば258,000kWの出力が得られ、40m3/secなら191,000kW、30m3/secnなら143,000kW、20m3/secなら95,000kW、10m3/secなら47,000kWの発電出力となる。 

上のグラフの1月から12月の月間流量を合計すると年間流量831,237,000m3となり、年平均は26.4m3/secとなる。

4) 黒部ダムによる流量調節

流入する水量を、発電用に供給するのに、月ごとの変動をなるべく小さくなるように調整をすることとして、シミュレーションを行ってみた。 シミュレーションの前提として、流入量は上の図の通りとし、ダムの貯水量は148,800,000m3であり、これ以上の貯水は不可能とする。 この前提でシミュレーションを行った結果の毎月の発電供給水量とダム貯水量のグラフは次図となった。

Kurobeflow_20230911015301

11月から翌年3月にかけては流入量より発電供給水量の方が大きく、特に1月-3月は流入水量が少ないためダム貯水からの発電水の供給が大きく、ダム貯水量は減少する。 上図は青線が流入水量で、黄線が発電供給水量であることから、青線が黄線より下にあれば、差分がダムからの水供給であり、逆に青線が上にあれば、差分がダムへの貯水量の増加となる。 なお、100,000,000m3/月は、平均38m3/秒程度になり、発電出力では175,000kW程度、50,000,000m3/月なら20m3/秒程度であり、発電出力94,000kW程度である。

5) 黒部ダムは日本一高いダム その高さを変えてみた

ダムの位置はそのままで高さを高くすれば貯水量は増加し、低くすれば減少する。 高くした場合、低くした場合を考えるため、ダム高さに対する有効貯水量を次の表のように推定した。

Kurobedam20239a

ダムへの流入水量は4)の通りであるとして、有効貯水量が上表のようになった場合の発電用水の供給を、ダムの貯水量の限度が上表の有効貯水量になるとして、4)と同じシミュレーションを実施してみた。 各ダム高さの場合の結果について発電供給水量のグラフで比較したのが次図である。

Kurobedam20239c

貯水量が少ないと、流入量カーブと発電供給水量のカーブは、その差が小さい。 一方、現在の黒部ダムの高さ186mを196mへと10m高くしても、効果はそれほど大きくなく限定的と思える。 196mのダムにすれば、環境への負荷は増加する。 また、建設費も増加する。やはり、186mで有効貯水量148,800,000m3の黒部ダムが適切であるように思える。

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