日本の現状打開策
これで解決するという妙案や特効薬は簡単にはないが、せめて思うことを書きつらねます。
まず、日本の現状認識としては、次に書いた私のブログで取り上げた日本経済の伸び悩みです。
5月14日のブログ IMF統計での一人あたり日本GDP第34位に思うこと
バブル崩壊以後、あるいは21世紀になり2000年頃から、ドル建てのGDPや実質賃金は、年によるバラツキはあるものの、ほとんど伸びていない。
1) 衆議院小選挙区・比例代表選挙が関係しているのではないか
1996年10月20日の衆議院選挙で小選挙区比例代表並立制選挙が始まった。 日本のGDPや実質賃金の伸び悩みが始まった時期と似かよっており、関係があるのではとの疑問を持つのである。
小選挙区制が導入された最大の理由は、政権交代が起こりやすくすると言う制度整備であったと理解する。 少数党では選挙で不利となることから政党は2大政党化する。 また、政権交代のためには相手政党批判もさることならがら、国民の利益に適合した政策を考え、立案し、政策をアピールすることが選挙で重要となり、政治の健全化が期待されたと思う。 そのような結果として、政治や日本の産業そして国民の生活が良くなると期待されたはずである。
しかし、世界のなかで比較をすると、日本の成長・発展 が取り残されていることは、残念ながら否めないと思う。 議会や議員にその責任の一端があるとしても、制度面について考えることも重要と思うのである。
日経ビジネスに「チガサキから世間を眺めて」という連載を書いておられる松浦晋也氏が、6月28日の選挙をおもちゃにする人々が教えてくれることで、日本には中選挙区制が合っていたのではと疑問を投げかけておられた。 朝日新聞7月11日のインタビュー記事(全文は読めませんが) 小選挙区制が招いた政治の劣化 田中秀征さん語る「中選挙区連記制」において、同氏は中選挙区制を提唱しておられた。
私が思う小選挙区制の欠点は、小選挙区制では、個人の力だけでは当選可能な得票数の獲得はハードルが高すぎ、政党からの支持・応援を必要とすることである。 中選挙区制でも、政党なり支持団体なり相当程度の人々の支援を受けていなければ当選はできないのであるが、小選挙区制の場合は、選挙民・国民と対話をするよりは、政党からの公認取り付けに時間と労力を割く必要が生じる。
議員活動は、企業勤務とは異なる。 企業勤務なら、その企業の為に働くが、議員は所属政党のためではなく、第一の目的は国民のためであり、政党は手段である。 小選挙区制では、大政党の力は大きい。 その結果、ボス・実力者の力が大きくなりすぎ、歪みが生じることがあると思う。 例えば、政党の党首・総裁がワンマン主義であった場合、党内対立派には選挙で公認を与えず、刺客候補を立てるなんて変なことも生じる。
2) 政党交付金も廃止して議員個人宛に支給
政党交付金の交付は1995年に始まった。 令和4年分政治資金報告の概要がこの総務省のWebにあるが、政党交付金の総額は、315億3千7百万円です。 交付金受領額が一番多いのは自民党で160億円、第2位は立憲民主党67.9億円、第3位は維新の会31.7億円となる。 特記すべきは、政治家女子48党というNHK党が名称を変更した党(今は更に別の名称)で、1億98百万円の政党助成金が交付されている。 都議選で24人の候補者を擁立し、ポスターで物議を醸し出した政党である。
政党に交付金が交付されると、政党の中で権力を持つ者程、配分の際にその決定に関与できることになるはず。 本来、団体や政党は意思も感情も持たない存在であり、意思や感情は人間である個人が持っている。 個人一人では、力の弱い場合もあり、同じような考えの人が集まって行動することは多い。 政党の分散・離合や仲違い、再集合等は政治活動の自由を尊重せねばならず、禁止することは不適切である。 本来の姿は、個人による思想、主義、主張が出発点である。
従い、政党交付金は、政治活動支援金として議員個人に交付することにすれば良いと考える。 議員一人あたり年間3千万円以上となる。 基本的には、政策研究に使われるべきと思うが、政党本部への寄附に使っても良いし、政策研究のために研究秘書を雇用したり、コンサルタントやシンクタンク等外部へ政策研究を委託しても良い。 研究結果の報告書を発表し、自分が実現したい政策を研究結果を発展、展開して行ってもらえばと思う。
なお、議員個人に対する政治活動支援金は、税の対象とすれば良い。 そして、委託費を含め研究活動やその他議員活動の為として認められる支出は経費として認めれば良いのである。 課題解決や問題点の鋭い指摘を行った報告書を公表した議員は高い評価を受け、その結果、次の選挙では高い得票率が得られ当選する可能性が高くなるはずである。 好循環が生み出せるのではと期待する。
3) 選挙における投票は個人の重要な政治参加
NHKが7月14日午後9時からNHKスペシャル「永田町”政治とカネ”の攻防 ~改革のゆくえは~」という番組を放送していた。
この番組の中で、二階俊博氏がインタビューに答えて、次の様に述べていた。
『今度選挙に出るそうだけど、どういう政策に力点を置こうとしてんのか』って、そんなこと聞く人誰もいないんだよ。 みんな『金があるか』 |
地縁・血縁何でもありが、現実の選挙とすれば、収賄・贈賄は刑事罰になるが、政治活動を支援する純粋の寄附は支援者の夢や希望の実現手段である。 政治資金規正法では、政治活動に関する寄附について、企業や団体からの寄附は、政党等以外には禁止されている。 一方、個人による寄付は禁止されておらず、自由である。 但し、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く)に関する寄附は禁止されている。 公職の候補者とは選挙で候補者として届出があった者である。
日本の政党政治の現状は、現与党の自民・公明と共産以外は離合集散を繰り返している。 言ってみれば、人と政党はなじめないことがしばしばあると言うことだろう。 政治家を志し、自分の夢を人々のために実現したいと思ったなら、その時々協力できる人達と政党や仲間を結成し、目標の実現に向けて努力を続けるという生き方が賛同を得ても良いはず。 選挙では、政党ではなく、この人ならと信じる人に投票する人物主義の選択でも良いと思う。 このような場合、中選挙区制が、なじむと思う。
4) ポピュリズムから脱出
冒頭に書いたバブル崩壊以後、あるいは21世紀になった頃からの日本経済の低迷には、ポピュリズムに陥った日本の政治が関係していると思う。 本当に必要な政策を実施するのではなく、与党は次に控えている選挙で勝つための政策を主導してしまう。 政権交代が生じると与党議員達は、冷や飯を食わざるを得なくなる事態を避けねばと、必至になって政権与党であることを死守する。 その方法は、ポピュリズム・バラマキであり、八方美人政策である。 本質的問題解決からは遠ざかり、解決はおざなりとなる。 やはり、中選挙区制の採用だろうと思うのである。
日本の国の成り立ちを考えると、国の行政機関・執行機関である内閣を頂点とした組織である行政府とその執行についての定めをつくる立法機関である国会が大きな骨格である。 税の支出を定める予算は、国会の議決に基づかねばならない。(憲法83条、85条)
ところで、内閣総理大臣について考えると、その権限も大きいのである。 国会への議案提出権権(憲法72条 )と予算提出権(憲法73条5項)を保有する。 衆議院で多数を占めると、内閣総理大臣の指名(憲法54条)と予算の議決(憲法60条)においては、参議院に優越するので、衆議院で過半数を制すれば、相当なことは実行できると考える。 (注: 議員立法は可能であるが、国会法で賛成者の人数の定めがある。)
衆議院で多数を占めると、相当なことは実行可能である。 政権喪失の懸念、恐れから良い政策を追及することにつながれば良いのだが、現実は政権喪失を恐れて、ポピュリズムに陥っている。 長期的視点からの立て直しや改革は重点施策にはならず、世界の中で発展から取り残されているのが現状ではないかと危惧するのである。
5) オープンガバメント、デジタルガバメント
米国で2009年1月にオバマ大統領が就任し、1月21日にTransparency and Open Governmentと題したMemorandum(ここ にあり、日本語では覚書と呼ばれている)を発表した。 このMemorandumでは、下記のようなことを述べている。
”Government should be transparent. Transparency promotes accountability and provides information for citizens about what their Government is doing. Information maintained by the Federal Government is a national asset. ”(政府は、高い透明性を持つべきである。 透明性は説明責任を促進し、政府が何をしているかについての情報を国民に提供する。 政府が保有する情報は国の資産である。)
”Government should be participatory. Public engagement enhances the Government's effectiveness and improves the quality of its decisions.”(政府は参加型であるべきだ。 国民の関与は政府の効率性を高め、決定の質を改善する。)
”Government should be collaborative. Collaboration actively engages Americans in the work of their Government.(政府は協働型であるべきだ。 政府の業務に国民の積極的な関与を得る。)
オバマさんの提唱したオープンガバメントの3原則に私も賛成する。 開かれた政府、誰もが参加できる政府が未来の目差すべき政府であり、その構築に向けて努力をしたい。
日本でも、インターネットを活用して政府を開かれた国民参加型を目差して改革してきていると考える。 オープンガバメントの動きは世界の多くの国や国際機関でも取り組まれている。 オープンガバメントは、デジタルツールの発展と共に、現在の制度や姿を補完し、よりよい未来社会の発展に向け寄与していくと期待する。
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