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2024年10月27日 (日)

政府財政の立て直しに向かっていって欲しい

衆議院選挙の後に期待したいこと。 それは、政府財政の立て直しである。

1) 令和6年度歳出予算(省別)

令和6年の歳出予算を省毎の金額にすると次表の通りである。

Budgetr6a

総額は、112兆5717億円であり、GDPを615兆円と想定すると対GDP18.3%である。 112兆円のなかで、金額が大きいのは厚生労働省33.8兆円、財務省30.2兆円と総務省の18.2兆円がいずれも10兆円を越える歳出予算である。 ちなみに、この3省に続くのは、防衛省7.9兆円、国土交通省6.1兆円となる。

2) 3省合計73%(82兆3千億円)の歳出は何であるか

3つの巨額の歳出がある省の予算の中で金額が大きい歳出を抜き出してみる。 厚生労働省については、次の表である。

Budgetr6b

医療保険の関係が8.7兆円、介護関係が2.5兆円、生活保護が2.7兆円、障害者関係が1.6兆円、基礎年金が12.7兆円である。 医業・介護での11.2兆円も基礎年金の12.7兆円の国庫負担も双方とも重要である。

総務省の18兆3814億円のうち16兆6543億円は地方交付税交付金の歳出予算である。 地方交付税は、規準財政収入額が基準財政需要額に満たない地方自治体(と言ってもほとんどであり、例外は東京都他の金持ち自治体)に対する地方交付税の予算である。 これも現在の地方自治制度に関係し、現状を変更することは容易ではない。

財務省の30兆2777億円のうち27兆90億円は、国債費であり、17兆2957億円が債務償還費、9兆6910億円が利子・割引料で、その他は224億円である。 なお、財務省の30兆2777億円には、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費として1兆円、そして予備費1兆円の合計2兆円が入っている。

3) 国債残高

令和5年度末(2024年3月末)の普通国債残高は1068兆円の見込みである。 そして令和6年度末(2025年3月末)の見込みは1105.4兆円と財務省は発表している。 37.4兆円残高が増加する訳だが、国債残高を維持するためには、総額112兆5717億の歳出を37.4兆円減額し、75.2兆円にする必要がある。 3省合計で82兆3千億円なので、75.2兆円にはできない。 但し、歳入を増やせば可能であり7兆円の増税をすればとなるが、現状の政府歳出を維持するなら37.4兆円の増税が必要となる。

なお、令和5年度末(2024年3月末)および令和6年度末(2025年3月末)の国債残高のGDP比は178.8%と179.6%である。

4) 医療費と年金

令和4年度(2022年度)の医療費は46兆6967億円(保険対象外医療や差額ベッド料等は除く)であった。 そして、支給された公的年金(厚生年金、国民年金、公務員共済等)の合計は53兆3986億円である。 

次の図は、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測(出生中位・死亡中位)から作成した人口分布予測図である。 高齢化は、ますます進むのである。

Budgetr6c

75歳まで働いて、75歳から年金生活というのが、間もなくやってくるような気がする。 いずれにせよ、そのような時代に幸せに生きることができる体制をつくらねばならない。 現状では望めず。 財政基盤がしっかりした政府をつくらねばならない。 選挙が終わったので、増税と国債残高の減少を目差し、あかるい未来を切り開いて行って欲しい。

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2024年10月26日 (土)

あやしい医療は避けるべし

次のニュースです。

読売 10月25日 再生医療を受けた2人が重い感染症で入院…厚労省が医療一時停止求める緊急命令、細胞加工物からは微生物

厚生労働省の発表は、次の所(pdfファイル)にあります。

再生医療等の安全性の確保等に関する法律に基づく緊急命令について

この医療法人輝鳳会のホームページはここにあり、「医療法人輝鳳会では、患者様の状況に合せた治療を実施しております」と書いてあります。 このページには、1クール(6回)264万円とか、色々書いてあります。 この輝鳳会は、NK療法(免疫細胞療法)を行っていると言っており、私なんか、そもそもNK細胞なんてよく分かりませんが、エクソーム治療であろうと思っています。

エクソーム治療に関しては、次の京都大学iPS細胞研究所の10月25日のニュースを紹介しておきます。

エクソソーム治療に関する規制整備の必要性を指摘した論文が発表されました

次の様な記述もあります。

・ 日本では特に、未だ確立された科学的エビデンスがないにもかかわらず、エクソソーム等は治療として既に提供されており、有害事象が生じても、適切な追跡ができない状況にあります。
・ 日本では科学的エビデンスが確立されていない治療であっても医師の判断で提供することができます。
・ 科学的エビデンスの確立されていない治療が患者さんに高額で提供されている問題について研究を深め、一般の方々にもこの問題を正しく理解していただけるよう、研究活動と情報発信に努めたいと考えています。

 

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2024年10月25日 (金)

ボーイングのストに思う

昨日24日の日経は「ボーイング労組、35%賃上げ案を否決 スト継続へ」と伝えています。

ボーイング労組、35%賃上げ案を否決 スト継続へ

米国の労働関係に関する知識については、それほど持っていないのですが、思うところを少し書いてみます。

1) 労働組合

報道では「ボーイング労組」との名前になっているが、正式には「International Association of Machinists and Aerospace Workers(IAM))」(ホームページはここ )です。 組合員数は退職者会員を含め60万人。 ボーイング以外にロッキード・マーチンやハーレー・ダビッドソンで働いている会員労働者も存在する。 なお、ボーイングで働く組合員は33,000人。

2) 賃上げ35%拒否の理由

まずは、35%賃上げとは、日経の記事本文にあるが、4年間で35%の賃上です。 組合の要求は40%であるので、差は5%。 年率に換算すると、それぞれ7.8%と8.8%です。

現在の米国消費者物価指数の1年前から上昇率は2.3%であり、3年前からの上昇率では年率4.4%、5年前からだと年率4.1%となります。

35%賃上げでも良いではないかと思えるのですが、話は簡単ではないはず。 ボーイングの業績は2019年以後5年間連続の赤字続きであり、2023年は22.2億ドルの純損失でした。 世界的な航空機メーカーであり国防・宇宙関係も手がけているボーイングであり、存続することに疑問の余地はない。 しかし、不採算部門の売却・切り離し、あるいは米国だったら実施可能である人員整理は十分に考えられると思う。 なお、ボーイング・ワシントン州工場での雇用人数は2020年以降減少していない。 しかし、労使双方の予想・見解・もくろみからすれば、大変なしのぎあいがあると思う。

3) 確定拠出年金401K

これは、ボーイングの401(k)に関するチラシであり、ボーイングは確定拠出年金に年間4160ドル(60万円強)を拠出するとしている。 組合の主張は、401(k)から約10年前まで存続していた年金制度も選択適用可能にすることも含まれているようです。 401(k)は万能ではなく、労働者に不利になる場合も、当然存在すると考えます。

4) 雑感

日本では、ストライキという言葉をTV、新聞、その他マスコミで最近はほとんどお目にかかっていない。 ボーイング・ワシントン州工場を一つの企業だとするなら労働者33,000人の企業ですから、大企業のストライキ。 赤字続きで様々な問題あり。 労働者が賃上げを求め、権利を守ろうとストを実行し、既に1月と10日余り経過している。 

日本でも、このようなストライキがあっても良いと思う。 ストライキ(同盟罷業)を遠慮してしまう日本の風土を感じてしまうのである。 力と力がぶつかって、しのぎあって、発展していく。 それが正常であり、発展の原動力であると、その重要性を感じる。

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2024年10月 9日 (水)

金銭面からの分析で見る日本の原子力発電

2011年3月の福島事故から13年以上を経過したが、日本の原子力発電の現状について、冷静に分析しておくことが重要と考えました。 分析と言っても、巨大な対象であり、金銭面を主体として分析を試みます。

1) 日本の原子力発電所

日本において原子力発電所を保有している会社は次の表1に記載の10社です。 そのうち、稼働状態にあり、現在発電を行っているの3社で6カ所の発電所です。(本ブログの表はクリックで別ページ拡大表示)

Nuclear20249a

原子力による発電が、日本において占める割合を現したのが表2です。

Nuclear20249b

表2の発電量は、発電機が発電した電力の量ではなく、発電所が送電した電力量としています。 揚水発電は水力に含めています。 また、自家発電による発電については、発電して自家消費した電力量と外部送電・供給した電力量の双方を含んでいます。 表2の電源構成割合を2015年以後について示す日本の電源構成の割合の推移グラフを作成しました。

Nuclear20249c

再生可能エネルギーは、風力、太陽光、地熱、バイオマス、廃棄物による発電としました。 2023年度の再生可能エネルギーによる発電量は200,562,466MWhであり、原子力発電80,283,706MWhの2.5倍でした。

2) 保有会社の原発に関するコスト

表3が、表1に掲げた原発保有会社の原子力発電の発電費(発電原価)です。 上側の表3Aが直近の2023年4月から2024年3月までの1年間で、下側の表3Bは、その1年前の2022年4月から2023年3月までの1年間です。 これら発電費は、各社の有価証券報告書(日本原子力発電は会社概況書)からです。

Nuclear20249d

様々なことが言えるが、幾つかについて以下に記述します。

2-1) 運転(発電)していなくても、高い維持費・固定費

上の表1の通り、日本全体で稼働している原発は3分の1。 運転・稼働している3社の原子力発電費合計は2023年度8195億円で、2022年度は6590億円である。 これを表1の発電量で割り算して発電コスト単価を計算すると、2023年度関西電力10.04円/kWh、四国電力13.39円/kWh、九州電力9.79円/kWhとなり、2022年度はそれぞれ12.65円/kWh円、10.15/kWh、12.61円/kWhとなる。

発電していなかった7社の原子力発電費の合計は2023年度1兆1270億円、2022年度8204億円である。 10社を合計して、日本全体で1社の原子力発電会社であると仮定して、その費用合計を発電電力合計で割り算して発電コストを計算すると2023年度24.2円/kWh、2022年度27.6円/kWhとなる。

なお、10社合計で2023年度の発電コストが2022年より高いのは、東京電力の原賠・廃炉等支援機構特別負担金2300億円(福島原発の賠償費関係)の影響が大きい。 このことについては、「3) 原賠・廃炉等支援機構負担金(福島事故の賠償支援) 」で更に記述する。

2-2) 原発の安い燃料費

原発とは、ウラン235やプルトニウム239が核分裂する際に発生するエネルギー(熱)を利用し、蒸気を発生させ、蒸気タービンを駆動させ、発電する。 燃料棒と呼ばれている燃料集合体は、原子炉の運転開始後約1年で、その4分の1~5分の1取り替える。 この取り替え分を、燃料費(核燃料減損)として計上しており、火力発電の燃料費に相当する。 取り替え分(減耗分)を金額で示したのが、核燃料減損費であり、火力の燃料費に相当する。 発電した電力量で除して燃料費相当額の単価を計算すると、2023年度関西電力0.79円/kWh、四国電力0.78円/kWh、九州電力0.86円/kWhとなり、2022年度はそれぞれ0.75円/kWh円、0.86/kWh、0.86円/kWhとなる。

参考として、火力発電の場合の、燃料消費量を算出してみる。

資源エネルギー庁の電力統計によれば、発電に使用した石炭は、2024年度湿炭で101,131,690トンであり、LNGの発電消費量は37,814,308トンであった。 石炭火力とLNG火力の発電量は、表2に記載の通り282,223,316MWhと295,206,203MWhであった。 この数字を使って、kWhあたりの平均燃料消費量を計算すると、石炭火力は321g/kWhであり、LNG火力は128g/kWhとなる。

価格については、石炭もLNGも全量輸入であり、通関統計から推定が可能である。 結果、本年(1月-8月)の燃料価格は石炭25,000円/トンであり、LNGは95,200円と得られる。 そうすると、石炭火力の321g/kWhとLNG火力の128g/kWhは、金額で表示すると石炭8.96円/kWhとLNG12.19円/kWhとなる。 燃料費のみで考えた場合、原子力は非常に安いのである。

なお、表3A、3Bで燃料費のすぐ下の行に「使用済燃料再処理等拠出金費」が、更にその2行下に「特定放射性廃棄物処分費」と表示されている。 これについて、2-3)及び2-4)で記述する。

2-3) 使用済燃料再処理等拠出金費

この費用は、電力会社が「原子力発電における使用済燃料の再処理等の実施及び廃炉の推進に関する法律」に基づき「使用済燃料再処理・廃炉推進機構 (NURO)」に対して支払った「使用済燃料再処理等拠出金費」です。 金額はこのように、拠出金単価の発表があり、毎年度決定されている。 NUROは、受け取った拠出金を日本原燃株式会社に全額支払っている。 日本原燃における核燃料再処理代金は、MOX燃料への再処理加工設備が、未だ完成しておらず、全額前受金として計上されている。 2024年3月末の前受金残高は1兆5382億円である。

日本原燃は株式会社である。 株主は表1の原発保有電力会社10社が約90%、その他74社が約10%である。 資本金と資本剰余金合計が5771億円であり、負債は合計2兆8536億円で、そのうち1兆5382億円が前受金である。 一方、年間再処理能力800トンUのMOX燃料加工設備は、2024年度上半期に完成予定であったが、2024年8月発表の結果、2028年3月末竣工・2028年夏頃からの操業開始と延期された。 株式会社ではあるが、核燃料サイクル用のMOX燃料製造を担う国策会社であり、日本の核燃料サイクルの方針の下での会社経営であり、通常の株式会社のようには運営できないことがほとんどと思う。

使用済燃料再処理等拠出金を拠出し、それを電力会社が原子力発電費用として処理することについて、その拠出資金単価の妥当性、あるいは核燃料サイクルへの疑問もあるが、情報公開を正しく継続して欲しい。

2-4) 特定放射性廃棄物処分費

この費用は、電力会社が「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」に基づき「原子力発電環境整備機構(NUMO)」に対して支払った拠出金である。 NUMOは、発電用原子炉の運転に伴って生じた使用済燃料の再処理等を行った後に生ずる特定放射性廃棄物の最終処分の実施等を行う法人であり、この法律により設立されている。

NUMOが受領した拠出金は最終処分業務の費用支出に充てるため指定法人となっている「公益財団法人原子力環境整備促進・管理センター」が資金管理を行っている。 その残高は2024年3月で1兆1241億円となっている。

特定放射性廃棄物とは、使用済燃料の再処理の際に有用物質を分離した後に残存する放射性廃棄物であり、高濃度の第一種とそれ以外の第二種に分類されている。 「最終処分」とは、地下300メートル以上の政令で定める深さの地層において、特定放射性廃棄物及びこれによって汚染された物が飛散し、流出し、又は地下に浸透することがないように必要な措置を講じて安全かつ確実に埋設し、処分することである。

一体、どれくらいの期間で安全と言えるレベルになるかですが、次の図は電気事業連合会の高レベル放射性廃棄物の地層処分というWebページにある図です。 天然のウラン鉱石が放出する放射線のレベルにまで達するには、数万年を要するのです。 

Nuclear20249e

特定放射性廃棄物処分費は、核燃料再処理の結果発生する廃棄物の処理費であり、再処理の対象でない原子炉や様々な機器・建物・構築物等の廃棄処分費はこれに含まれません。

特定放射性廃棄物処分費に該当しない費用は、表3の4行目の廃棄物処理費または、原子力発電施設解体費になると理解します。 次の工程図は、この東海発電所廃止措置状況の4ページ目にあった工程表ですが、2001年に廃止措置に着手してから20年以上経過するが、未だ原子炉本体の解体には至っていない状態である。 安全が第一であり、原発廃止は時間を要するが、同時に費用もかさむと言えます。

Nuclear20249f

3) 原賠・廃炉等支援機構負担金(福島事故の賠償支援)

この負担金は、福島事故後の2011年8月に公布された「原子力損害賠償・廃炉等支援機構法」により設立された「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」への支払である。 法の第1条に目的が書いてあるが、(1) 1200億円を超える賠償が発生した場合に賠償のための資金交付等を行うこと、及び(2) 地震、火災その他の災害により原発の廃炉を実施をする際の支援が法の目的であり、機構が担う業務となっている。

法は、表1の原子力事業者10社と再処理会社日本原燃が、機構に一般負担金を納付することを義務づけられている。 表3Aで10社合計1923億円(2023年度)の原賠・廃炉等支援機構一般負担金がこの負担金であり、2011以後納付された金額は合計2兆1008億円である。 負担金等の収入の残余は国庫に納付することになっており、2011年以後に国庫へ納付された納付金合計は2兆8055億円となっている。 一方、国から4340億円の交付金も受けている。

原賠・廃炉等支援機構特別負担金は、東京電力のみ納付しているが、福島事故の賠償等の為に、機構から資金援助を受けたことによる。 2011年以後に東京電力が機構より受けた資金交付額は11兆945億円である。 一方で、負担した特別負担金は7800億円である。 東京電力は、機構に支払う負担金は費用としているが、機構からの交付金の受取は特別利益に計上し、それに見合う費用(特別損失)として原子力損害賠償費として計上したりで非常に分かり辛い。 なお、11兆945億円は巨額であり、東京電力より損害賠償費と除染費用として支払われたのであるが、毎年度の支払額を表4として掲げる。

Nuclear20249e_20241007010901

11兆円を東京電力は、どのように使途したかであるが、機構の第四次総合特別事業計画(抄)(令和6年4月26日改定。令和6年9月10日軽微な変更) にある項目別賠償額を見ると、次の表がある。

Nuclear20249g

賠償の支払いは、個人に対する賠償等で2.2兆円、法人や事業関係の賠償で3.3兆円、その他の賠償で2.0兆円であり、賠償額合計は7.6兆円。 これに、除染等で3.6兆円を支出し、2024年2月現在で合計11.2兆円となる。 2024年9月現在で、見込額合計は13兆4千億円となっている。

機構は機構法で設立された法人であり、設立に際して、政府と政府以外の者で出資するとされ、政府70億円と民間出資社12社(表1の10社に加え日本原燃と電源開発)で合計して140億円の資本金である。 機構は、株式会社でなく、株主総会は存在せず、運営委員会の議決により重要事項を決定する。 運営委員は主務大臣の認可を受けて任命される。 機構は、福島原発事故に関連する賠償金支払い支援と廃炉支援をしている。 東京電力ホールディングスに1兆円の出資・資本注入による資金の供与も行っている。 なお、この出資により機構の議決権割合は50.09%となっている。

4) 廃炉費用

「原賠・廃炉等支援機構負担金」は賠償と除染関係であり、廃炉費用は該当しない。 東京電力は原子力損害賠償・廃炉等支援機構に廃炉等積立金として、法55条の3~55条の10により、2018年より毎年積立を行い、同時に廃炉に必要な額を取戻している(参考令和6年9月27日の機構による発表 )。 2018年4月から2024年3月までの6年間に積立てた金額は合計1兆8234億円で、取戻した金額は合計1兆1861億円であり、6731億円が2024年3月末現在の積立金残高となっている。

1兆1861億円は、2018年4月から2024年3月までの6年間に東京電力と機構が適切と認めた金額であるが、2018年3月以前にも廃炉費用は発生している。 機構からの資本注入は、汚染水対策を含め廃炉関係に充当されたと思う。 廃炉、賠償、除染の総額で33兆円(2020年までの期間で11兆円、それ以後に22兆円)必要であるとする次図の概算予想もあった。 (文書のタイトルは第四次総合特別事業計画(抄)で2021年8月4日認定、2023年4月26日変更認定とあり、作成者は機構と東京電力)

Nuclear20249h

総額33兆円の費用であり、日経 2023年12月15日東京新聞 2024年3月4日の報道のような23.4兆円より10兆円多い33兆円と考えるのが妥当なのだと思います。 

5) 感想

原子力発電について金額面から考えることも重要である。 イメージや感覚での議論で方向性が出されることは、良くない。 原発は、建設地を選定・決定することも容易でない。 しかし、2-4)で書いた特定放射性廃棄物処分のための最終処分地の選定は、それ以上に困難なのだろうと思う。 もしかしたら、処分地が決まらず、地下処分ではなく暫定保管地での保管となることもあり得るのかもと思う。 そうなると、万一事故があれば、福島第一の放射性物質飛散よりはるかに酷い事故がありうるのか、リスクも考えて適切な判断をすることが重要である。

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