2024年8月12日 (月)

私も賛成です「ふるさと納税」の制度改定

日経が8月2日に次の社説を出していた。

ふるさと納税の膨張を改めるときだ

寄附をして返礼品がもらえるなんて、論理的におかしいのである。 所得税法78条が寄付金控除に関する定めであり、地方公共団体に対する寄付金は特定寄付金とされている。 しかし、「その寄附をした者がその寄附によつて特別の利益がその寄附をした者に及ぶと認められるものを除く。」とされており、返礼品が約束されている寄附は、そもそも寄附ではないと考える。

総務省が8月2日に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」がここにある。 令和5年度のふるさと納税は5895万件で1兆1175億円であったと記載されている。 平均では1件あたり1万9千円となる。 

ふるさと納税において、限度額はあるが、所得税と住民税の双方合計で2千円を超える額は戻ってくる。 その上、返礼品までもらえるなんて、道徳性ゼロ・倫理観ゼロの制度である。

寄附(ふるさと納税)を行った人が居住する市町村・都道府県は、住民税を低くすることから税収は減少する。 一方、寄附を受けた市町村・都道府県は寄付金収入を得るとともに返礼品関係の費用が発生する。

更に、地方交付金制度が関係するのであるが、地方自治体のほとんどは国から普通地方交付金を受領している。 各地方自治体の地方交付金の額を算定するにあたり、寄付金の受領は計算には関係しない。 一方、税収減は75%が普通地方交付金で補填されるのである。 市町村毎のふるさと納税に係わる収支が日経電子版の実質収支全国マップ ふるさと納税のリアルというマップ(地図を見るというボタンクリックが必要かも知れません)に掲載されていた。 

総務省8月2日発表の「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和6年度実施)」を使って、以下に、順位表等を作ってみました。

1) ふるさと納税受入額

令和5年度のふるさと納税の受入額を表にしたのが、次の表1であり、大きい順から30位までを記載し、最下欄は合計です。 寄附を受けた金額が受入額であり、1位は193.8億円の宮崎県都城市でした。 100億円以上受領したのが10市町あり、30位の佐賀県唐津市は54億円でした。 

Furusatonozei20248a_20240808231801

返礼品の金額(調達額)は寄附受入額の30%以内とされているが、返礼品に係わる経費が平均で受入額の21.5%(返礼品金額に対しては79.3%)なので、結構高い経費率と思います。 表2は、全自治体のふるさと納税に関する返礼品に係わる費用の合計金額です。 返礼品に関する経費は相当な金額になっており、返礼割合は30%以下として運用されてはいるが、経費とあわせると50%近く、受入自治体に残る寄付金は平均51.4%以下というのは釈然としない。

なお、30%を越えるとこの兵庫県洲本市の発表のように、ふるさと納税対象団体の指定が取り消され、令和5年度洲本市ゼロです。

送付・決済・広報・事務費用・その他経費が全平均で受入額の21.5%であるが、その内訳は表2の通りです。

Furusatonozei20248b_20240809080201

2) ふるさと納税に関する地方税の仕組み

ふるさと納税に関する地方税は複雑怪奇です。 ふるさと納税をすると寄付金控除による所得税の減額に加え、住民税が安くなり、実質2千円の負担でふるさと納税を行うことができると言われています。 ふるさと納税をするには、住民税の所得割課税の対象となっていることが前提ですが、所得割の住民税額の20%を上限として、所得税の税負担軽減に加えて、道府県民税と市町村民税により40:60の比率で税減額を行い、ふるさと納税を行っても実質負担は2千円となるようにする。 すなわち、住民税所得割額の20%までのふるさと納税は2千円の負担というマジックです。 よくもこんな地方税制度を考えたと思います。

道府県民税と市町村民税が40:60の比率で税減額を実施するのは、住所地の都道府県と市町村であり、寄付者の実質税負担を2千円とするのでそれなりの税減収となる。 そこで、国が補填する制度が働くのです。 地方交付税法で普通交付金が定められており、規準財政収入額が基準財政需要額に満たない場合は、国が地方自治体に普通交付税を交付するのです。 ふるさと納税の受入額は、基準財政収入額にカウントされません。 一方、ふるさと納税をした納税者の住所地の地方自治体では実質2千円負担とするために税収が減少する。しかし、税収減は、その75%相当額額が規準財政収入額の減少として扱われ、結果、税収減の75%は普通交付金で補填されるのです。

なお、規準財政収入額が基準財政需要額より大きい自治体には、普通地方交付金は交付されず、このような不交付団体は令和6年度86団体あります。 都道府県では東京都のみ。 市町村85団体のうち、東京都には12。 愛知県には19あります。 不交付団体には、普通交付税の趣旨からして、普通交付税は交付されず、その自治体では住民がふるさと納税をすると税収減となります。

3) 地方自治体の損得勘定

本来から言えば、損得勘定などないのですが、ふるさと納税を受入れた自治体はその額の財政収入が増加するが、返礼品に伴う支出が発生する。 ふるさと納税を行った人が住んでいる市町村と都道府県は住民税を減額する分の税減収が発生する。 但し、地方交付税不交付団体でなければ減収分の75%相当は普通地方交付税の受取額が増加する。 各市町村毎に計算し、地図で表示したのが日経電子版の実質収支全国マップ ふるさと納税のリアルというマップである。 実質収支で大きい順から30自治体とマイナスが大きい30自治体を表にしたのが次の表3である。 日経電子版のマップでは、都道府県は表示されないが、表3では都道府県も含めた。

Furusatonozei20248c_20240810002601

実質収入が上位となる自治体は、表1のふるさと納税受入額の順位とほぼ同一である。 一方、表3において下方にランク付けされている実質収支のマイナス幅が大きい財政悪化となる自治体には大都市の都道府県が多く含まれている。 都道府県の場合、ふるさと納税の受入は、市町村より少なく、一方で、ふるさと納税の寄附を行う住民に対する住民税減税は市町村と都道府県の双方から行われる。 市町村と都道府県に区分して収支を合計すると表4のようになった。

Furusatonozei20248d

地方交付税補填額は、都道府県において補填率が低いのであるが、特別区を含む東京都のみで1651億円がふるさと納税の実質負担となっている。 

<提言>

ふるさと納税という制度については、書いていても嫌気がさすし、全く楽しくない。 税金の無駄使いの最たるものと思う。 地方産業の育成なら、育成としてどの産業分野を育成するか、どのような方法で育成するか、まじめに研究をして実施すれば良いのである。

表4で記載のように、返礼品とその関連費用で5429億円が発生していた。 ふるさと納税を行った人に対して2000円の税負担で止めるために地方交付税が地方自治体に交付される。 補填額3958億円とは、その為に国から地方に支払われた金額である。 

一方、国と地方自治体を一体としての連結ベースで考えると、地方交付税は資金の内部移動である。 従い、ふるさと納税の収支計算は収入が受入額の11175億円で、支出は7682億円の住民税の減収であり、その差引は3493億円のプラスである。 そこに、返礼品関係の支出5429億円が加わると、1936億円のマイナスとなる。

返礼品をなくすれば、地方交付税で調整する額は減少し、本来の姿に近づくと考える。 3958億円の地方交付税をふるさと納税の関係で交付しているが、これも、返礼品制度を中止すれば3958億円は小さくなり、相当の財源が国に生まれるのである。 既に、稼働している制度をいきなり中止するのが難しければ、返礼品とそれに係わる経費率の割合を何年間かをかけてゼロにするようにすれば良いのである。 一方、自治体は、地域の特産品のネット販売を支援する等して、地域の活性化に取り組めば良い。 2千円の実質負担適用の所得上限についても、段階的に引き下げて、適正な所得制限の金額にすべきと考える。

| | コメント (0)

2024年4月 4日 (木)

小林製薬の「紅麹」問題

小林製薬の「紅麹」に関しては、現在のところ、死亡者数5人とのことである。 

しかし、この問題に関して最も驚いたのは、次の日経ビジネスで報じられている「海外向けについては厳しい品質管理が適用されており「ロットごとにシトリニンの分析を実施していた」(記事の最後の文末部分)との記述である。

日経ビジネス 4月4日 小林製薬「紅麹」問題、機能性表示食品制度の怪 海外向けでは厳しい品質管理

日本の消費者を馬鹿にしたような記述であるが、そうなるに至った原因が当然ある。

小林製薬が健康被害を発表したのは、3月22日のこのニュースリリースである。 「機能性表示食品」という事業者の責任で特定の保健の目的が期待できるとする食品である。 だから、この消費者庁の措置命令発表のような景品表示法違反の事態が発生する。 政府・政府機関・第三者による検査・審査がないわけで、ウソのつき放題と思える。 

2013年当時、安倍晋三首相時代に規制改革の一環として「世界で一番企業が活躍しやすい国の実現」と言うことで制度が創設された。 しかし、問題を安倍晋三の責任として片付けても解決にはならない。 現状、日本は安全に対する規格が緩いのである。 口に入れる物について規制を緩くしては本末転倒になると思えるが、日本では特定分野の産業を有利にし、それを規制改革・経済発展への貢献と称されることがある。 関係者のみが利益を得るのであるが、大々的に宣伝されると、そうなのかと思ってしまう。 関係者には政治家や当該事業に直接・間接に関係する人達も含まれるので単純ではないが。

なお、安全についての本質は日本も海外も同じである。 「海外向けの紅麹原料は、ロットごとにシトリニンの分析を実施」は、何故かと言えば、その国の法律がそのような検査を義務づけ、そうしないと流通販売ができなかったからのはずである。 日本も主権国家であり、日本でもロットごとの分析を求めることは可能である。 そんな法律をつくれば良いだけである。 主権者たる国民が求めれば簡単に制定できる。 そう考えると、結局は我々自身のことである。 自分が自分の健康に責任をもつ。 勿論、自然界にも毒キノコはあるのであるが、サプリメントに依存せず、食事で生活するのが本来の姿であり、健康に過ごす方法だと思う。

| | コメント (0)

2024年2月 6日 (火)

自民党の税制改正大綱の分析になるほどと思った

国会での税制改正審議が、間もなく始まるが、2023年12月14日に自民党が発表した令和6年度税制改正大綱 (pdfはpdfはこちら )には、なるほどと思う分析の記載がある。

それは、10ページ目の中段辺りから始まる法人税に関する次の文章である。

 しかしながら、わが国においては、長引くデフレの中での「コストカット型「経済」の下で、 賃金や国内投資は低迷してきた。 賃金水準は実質的に見て30年間横ばいと他の先進国と比して低迷し、 国内設備投資も海外設備投資と比して大きく伸び悩んできた。 その結果、 労働の価値、 モノの価値、 企業の価値で見ても、いわゆる 「安いニッポン」 が指摘されるような事態に陥っている。 その一方で、 大企業を中心に企業収益が高水準にあったことや、 中小企業においても守りの経営が定着していたことなどを背景に、 足下、 企業の内部留保は555兆円と名目GDPに匹敵する水準まで増加しており、 企業が抱える現預金等も300兆円を超える水準に達している。こうした状況に鑑みれば、 令和4年度税制改正大綱において指摘した通り、近年の累次の法人税改革は意図した成果を上げてこなかったと言わざるを得ない。

企業の内部留保は555 兆円や企業が抱える現預金300兆円は、ほとんどが大企業に属するのであろうが、法人税は赤字企業に負担はない。 法人税は企業の利益から算出する課税標準を元にするのであり、合理的と考える。 税制が全てではないが、重要なファンクションであり、良い税制を追及することを緩めてはならない。

| | コメント (0)

2024年2月 1日 (木)

これが本当なら、総務省って、やはりろくでもない役所だと思う

次のニュースを読んで、やはり、ろくでもないと思いました。

日経XTECH 2024.01.26 住民税決定通知書の電子化はまさかの暗号化ZIPファイル配布、「紙より不便」の声

 政府が採用したのは、通知書本体のPDFファイルをZIP形式で圧縮・暗号化したうえで、復号用パスワードの取得方法を記した別のPDFファイルとともに従業員に社内システムを使って配布するという方法だった

とあるのです。 これだと、PPAPです。 例えば、これをご覧頂いても良いし、このようなウイルス付きファイルの警告にもZIPファイルの恐ろしさが書かれています。 ZIPファイルは、クリックして何が出てくるか不明なのです。 名前と中身が異なることは、世の中、しばしばあるのでしょうが、ZIPファイルの嫌なことは、クリックしないと中身が分からないことです。

それでも、信頼できる相手から受領したファイルなら大丈夫ではないかと考えられるが、メールにおいて送信者の偽装もありえますから。

総務省とは、旧総務庁、旧自治省、旧郵政省が統合されて発足したのであるか、私なんか統合理由なんて全く理解できない。 役所とは、管理が重要な組織である。 管理がおぼつかなくなるような組織は、役所の場合、絶対に作ってはならない。 民間だったら、倒産して終わるが、役所は倒産できず、負の遺産を引きずってしまう。 ふるさと納税なんかも、早く中止すべきであるが、廃止できずにいる。

| | コメント (0)

2024年1月17日 (水)

SNSでデマを流す発信者には厳しい対応を求める

能登半島地震に関連して「ニセの救助要請」や「細工した偽画像や動画」あるいは「人工的に起こされた地震」と言ったような偽情報がSNSで等であったとのこと。 消防等による救助活動が攪乱させられるのみならず、災害被害に対応している人達や関係者に不必要な負担をかけ、余分な費用を発生させるのみならず、救助できたチャンスを逸すことにもなりかねない。

警察・消防等は発信者情報開示請求を行い、発信者を特定して、民事並びに偽計業務妨害としての刑事罰を求めるべきだと思う。 もし、不確かであるが、発信したい・伝えるべき情報があるなら、不確かという全体を書いた上でXXXという情報に接したとSNSに書き込むことである。

なお、X(旧ツイッター)が2023年から課金ユーザーを対象に、投稿が一定回数以上表示されると収益を得られる仕組みを導入したことの関係が述べられていることがある。 しかし、Xに直接の責任はないと考える。 収益稼ぎで記事を投稿することは構わないが、記事に対する責任は書き手にある。

| | コメント (0)

2023年10月27日 (金)

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律についての最高裁違憲判断

10月25日の最高裁判所大法廷決定は、この裁判所のWebページ にあり、全36ページの長い文書であるが、9ページの結論を書き出すと、この言葉となる。

「よって、本件規定は憲法13条に違反するものというべきである。」

本件規定とは、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条1項4号のことであるが、第3条1項を書き出すと次の通りである。

第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

4項の「生殖せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にある」とは、生殖腺除去手術を受けることを要求することとなり、この要求は憲法13条の「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」で保障されている人格的生存に関わる重要な権利(自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由)を制約することとなる。

4項の規定は、現時点において、その必要性が低減しており、その程度が重大なものとなっていることなどを総合的に較量すれば、必要かつ合理的なものということはできないと最高裁は判断した。

第5項について

第5項についても、三浦守、草野耕一、宇賀克也裁判官が憲法違反・違憲無効であると反対意見を出しておられる。 第5項の「他の性別」とは、男の場合は女、女の場合は男である。 従い、男が女になるなら、外性器除去手術が、女が男になるなら、尿道延長手術及び陰茎形成手術が通常は必要となってしまう。 従い、第5項についても憲法第13条により保障されている権利を侵害するものであり、違憲であるとされている。 私も、同じように考える。外性器なんて、他人に見せたりしないじゃないか。

他人に迷惑をかけなければ、自分の選んだ生き方を、誰もがすることができる。 そのような世に暮らしてこそ、幸せがあると考える。

| | コメント (0)

2023年6月17日 (土)

LGBT法成立で考えさせられた

LGBT法成立で考えさせられたことがある。

日経 6月16日 LGBT法が成立「不当な差別」否定 自民の一部退席

法律の名称は「性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律」というわけで、ジェンダーアイデンティティとは何のことやと思ってしまう。憲法第14条の「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。」が私には、極めてすっきりする。性(ジェンダー)の区分(アイデンティティ)を複雑化(多様化)して訳の分からないことにするのかなとおもってしまう。

1) 訳の分からない修正がなされる国会

この日経ビジネスの記事にある松中権氏の指摘を読んで、酷い修正案が採択されたと同感した。「性同一性」を「ジェンダーアイデンティティ」と読み替え、訳の分からない日本語にしている以上に、松中権氏が懸念する第12条の追加である。気にしなければ、当然のことと思ってしまう。しかし、マイノリティー保護についての法律で、この条文があると、多数による少数のいじめ・圧迫・差別を助長する懸念を彷彿させる。憲法第14条のような差別禁止ではなく、これじゃ差別やむなしとなってしまう。その問題の12条とは、次である。

 この法律に定める措置の実施等に当たっては、性的指向又はジェンダーアイデンティティにかかわらず、全ての国民が安心して生活することができることとなるよう、留意するものとする。この場合において、政府は、その運用に必要な指針を策定するものとする。

この12条の追加修正案は、自民党・公明党で了承されたのであるが、この公明党のニュースを読むと、公明党ってそんな党なのねと思ってしまった。

2) オリンピック憲章における差別禁止

松中権氏は、オリンピック憲章の根本原則第6について触れておられる。オリンピック憲章も日本国憲法も差別禁止を謳っているのである。差別主義者には投票なんかしないぞと誓いたい。

このオリンピック憲章の定める権利および自由は人種、肌の色、性別、性的指向、言語、宗教、政治的またはその他の意見、国あるいは社会的な出身、財産、出自やその他の身分などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。
 The enjoyment of the rights and freedoms set forth in this Olympic Charter shall be secured without discrimination of any kind, such as race, colour, sex, sexual orientation, language, religion, political or other opinion, national or social origin, property, birth or other status.

| | コメント (0)

2022年7月 9日 (土)

安倍晋三元首相銃撃事件から思う銃規制

安倍晋三元首相が銃撃され死亡した事件は、まさかと思う衝撃の事件であった。次のニュースにもあるが使用した銃は手製の銃とのこと。

日経 7月9日 安倍元首相の死因は失血死 司法解剖終え、遺体は東京へ

銃の規制が厳しい日本では起こるとは思っていなかった事件である。殺傷能力を持つ銃が手製で簡単に作ることができるということを示している事件と思う。戦前のテロ社会のようになるとは思わないが、理由のいかんを問わず、他人を殺すことは正当化されない。

どのようにして今回のような事件を防止するかは、やはり銃規制しかないように思う。犯人は、どのような銃を使用したのか、爆薬はどうしたのか、銃弾はどうしたのか等を含め様々なことが分かれば規制に対する方策も見えてくるのではと思うのだが。

次の図は警察庁の銃器発砲事件の発生状況(これ )からであるが、令和3年において発砲事件10件のうち8件が暴力団等の関係であった。これまでとは違った分野の銃規制・取り締まりについても取り組んでいく必要があると考えた。

Gun20220709

| | コメント (0)

2021年2月 4日 (木)

新型コロナ対策特別措置法改正に関連して考えたこと

新型コロナ対策特別措置法、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)と検疫法の改正が成立した。

日経 2月3日 時短・入院の拒否に「過料」 改正特措法など成立

法律改正案が短期間に成立したのは、この1月28日のNHKニュース が報じている自民党と立憲民主党の修正合意が1月28日に成立したことがある。この修正合意により、感染症法72条の一年以下の懲役又は百万円以下の罰金から80条と81条の過料に修正されることになり成立した。

1月28日には、関連するもう一つの興味あるこのニュース(日経 1月28日 )がある。

「15日の厚生労働省の厚生科学審議会(厚労相の諮問機関)の感染症部会で、罰則を設けることに反対意見が多数出ていた。・・・共産党の小池晃氏は28日の参院予算委員会で、15日の感染症部会で「慎重意見が多数出ていた」と主張した。」

当該1月15日の第51回厚生科学審議会感染症部会 議事録は、ここ にある。参考となる次の様な発言が多い。読んでみると参考になることが多くある。

中澤参考人(全国衛生部長会 会長)の「報道では入院拒否で懲役や罰金刑という言葉ばかり目立ってしまうのですけれども、法の施行に当たっては、感染した患者さんやその周囲で感染拡大を心配している市民の皆さんに寄り添って対応していただくことを求めたいと考えております。それから、決して取締りや刑罰が先に立ってしまって法の趣旨がないがしろにされることのないように、社会にもきちんと説明をし、理解を得るように努めていただきながら見直しを進めていただきたいです。」

白井委員(枚方市保健所所長)「罰則規定について、特に保健所長の立場というか、保健所長会としても懸念をしているところではあるのですけれども、この対策の実効性が確保できるかといったところで、これが独り歩きするような形になると逆に保健所の仕事が増えるというか、どのようにどんな方に罰則というか、もちろん多数の方は協力していただける方が多いのですけれども、」

味澤委員(がん・感染症センター 都立駒込病院感染症科)「私は昔の伝染病予防法という時代から感染症をやってきたもので、伝染病予防法のときは、患者さんが病院から逃げますと法律上は交通封鎖までできるという法律だったのですが、実際に患者さんが逃げたらそれをしたかというと、そういうことはできなかったのです。むしろ患者さんを治ったから退院という形にしてしまったので、実際に今度は罰則規定をつくったときに、それをどう使えるか。なかなか非常に使いにくいのではないかと思うのです。伝家の宝刀というような意味はあるかもしれませんけれども、実質性を担保していくにはよく考えたほうがいいのではないかとは思います。その伝染病予防法の反省を踏まえて今の感染症予防法ができているので、その本質を生かしながらうまくやっていく方法を見つけるのがいいのではないかと個人的には思います。」

では、誰が刑事罰なんて言い出したのかであるが、地方自治体の首長達と思う。選挙民にアピールできるし、ダメなら保健所を初め部下に責任を押しつけられる。そんな構造を思ってしまう。

さて、ここ全国知事会の1月9日付新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言を受けた緊急提言がある。そこには、次の様な表現もある。

感染拡大を防止するためには、保健所による積極的疫学調査や健康観察、入院勧告の遵守義務やこれらに対する罰則、民間検査で陽性となった本人による保健所への連絡の義務化、宿泊療養施設や自宅での療養の法的根拠及び実効性の確保、クラスター等複数の陽性者が発生した場合の知事の判断による施設の名称等の情報の公表等に関する感染症法の改正を行うこと

| | コメント (0)

2021年1月31日 (日)

印西市の老人ホームでの睡眠導入剤による殺人並びに殺人未遂事件

一審千葉地裁での裁判員裁判では殺人並びに殺人未遂罪で懲役24年であった。しかし、2019年12月の東京高裁での控訴審では差し戻しとなっていた。そして、1月29日の最高裁で千葉地裁の懲役24年が確定した。最高裁の判決文はここ にあります。

どのような事件であったか、最高裁の判決文から抜き出すと次の様になります。

2017年2月5日、老人ホーム事務室において、被告人波田野愛子は、同僚女性山岡恵子さんに対し、ブロチゾラムを含有する睡眠導入剤数錠をひそかに混入したコーヒーを飲ませた。山岡恵子さん は、午後3時頃になると、意識障害等を伴う急性薬物中毒の症状が生じ、普段とは違う口調で脈絡のない発言をするようになり、机に突っ伏して寝た。この様子を見ていた被告人は、山岡恵子さんに帰宅を促した。山岡恵子さん は、仮睡状態等に陥り、約100m走行した地点で車を脱輪させて鉄パイプの柵に衝突させた。被告人波田野愛子は、その現場に駆けつけ、上記鉄パイプの先端が車に突き刺さっているのを目撃した。山岡恵子さん は、本件物損事故の状況を説明できず、フェンスに背中をもたれて立ったまま寝ている様子であり、被告人波田野愛子が両頬を両手で叩いて声をかけても、黙ってぼう然と立ったままであった。山岡恵子さんは,ふらつきながら同事務室に戻り、机に突っ伏して眠り込んだ。被告人波田野愛子は、午後5時30分頃、車が走行可能である旨を告げて山岡恵子さんを起こし、運転して帰宅するよう老人ホームから送り出した。山岡恵子さんは、その後間もなく、急性薬物中毒に基づく仮睡状態等に陥り、約1.4㎞走行した地点で車を対向車線に進出させ、進行してきた普通貨物自動車に車を衝突させた。この事故により、山岡恵子さんは胸部下行大動脈完全離断等の傷害を負い、同日午後7時55分頃、搬送先の病院において死亡し、対向車線の車の人は全治約10日間を要する左胸部打撲の傷害を負った。

以上が第1事件であり、第2事件は2017年5月15日に発生した。この第2事件では別の同僚女性(当時69)について、その夫(当時71)が自動車で本件老人ホームに送迎していることを知っていた。被告人波田野愛子は5月15日午後1時頃から午後1時30分頃までの間に、老人ホーム事務室において、両人に対し睡眠導入剤数錠をひそかに混入したお茶を飲ませた。両人は、意識障害等を伴う急性薬物中毒の症状が生じ、午後2時頃以降夫は椅子に座ったまま眠り込み、その後両人とも体調が悪化して同事務室等で休んでいたが、被告人波田野愛子は、この様子を見ていた。被告人波田野愛子は午後5時30分頃、事務室で寝ていた両人に対し、帰宅時間である旨を告げて起こし、夫が自動車を運転してその妻である同僚女性と共に帰宅するよう仕向けた。夫は、車の運転を開始したが、妻である同僚女性と共に急性薬物中毒に基づく仮睡状態等に陥り、午後6時頃、約4.7㎞走行した地点において、車を対向車線に進出させ、対向進行してきた普通貨物自動車に車を衝突させた。この事故により、助手席の妻である同僚女性 は全治約1か月間を要する両側肋骨骨折の傷害を、夫は全治約10日間を要する全身打撲傷等の傷害を、対向車貨物自動車の運転手は加療約3週間を要する頸椎捻挫等の傷害をそれぞれ負った。

最高裁判決を読むと、睡眠導入剤等を飲ませて、車を運転させて帰宅させようとする行為が、殺人や殺人未遂であることは、常識的な基準と考える。東京高裁の判断である、被告人波田野愛子の行為により事故の相手方が死亡する危険性は低かったとする評価や、被告人波田野愛子には事故の相手方が死亡することを想起し難たかったという論理は私には奇妙に思える。

東京高裁の論理が否定されて良かったが、それが通れば、睡眠導入剤を飲ませて、どうなろうが、そこまでは思わなかった。想定外との答弁がまかり通ることになると思える。

| | コメント (0)

より以前の記事一覧