2024年7月24日 (水)

日本の現状打開策

これで解決するという妙案や特効薬は簡単にはないが、せめて思うことを書きつらねます。

まず、日本の現状認識としては、次に書いた私のブログで取り上げた日本経済の伸び悩みです。

7月19日のブログ 実質賃金が伸びていない

5月14日のブログ IMF統計での一人あたり日本GDP第34位に思うこと

バブル崩壊以後、あるいは21世紀になり2000年頃から、ドル建てのGDPや実質賃金は、年によるバラツキはあるものの、ほとんど伸びていない。

1) 衆議院小選挙区・比例代表選挙が関係しているのではないか

1996年10月20日の衆議院選挙で小選挙区比例代表並立制選挙が始まった。 日本のGDPや実質賃金の伸び悩みが始まった時期と似かよっており、関係があるのではとの疑問を持つのである。

小選挙区制が導入された最大の理由は、政権交代が起こりやすくすると言う制度整備であったと理解する。 少数党では選挙で不利となることから政党は2大政党化する。 また、政権交代のためには相手政党批判もさることならがら、国民の利益に適合した政策を考え、立案し、政策をアピールすることが選挙で重要となり、政治の健全化が期待されたと思う。 そのような結果として、政治や日本の産業そして国民の生活が良くなると期待されたはずである。

しかし、世界のなかで比較をすると、日本の成長・発展 が取り残されていることは、残念ながら否めないと思う。 議会や議員にその責任の一端があるとしても、制度面について考えることも重要と思うのである。

日経ビジネスに「チガサキから世間を眺めて」という連載を書いておられる松浦晋也氏が、6月28日の選挙をおもちゃにする人々が教えてくれることで、日本には中選挙区制が合っていたのではと疑問を投げかけておられた。  朝日新聞7月11日のインタビュー記事(全文は読めませんが) 小選挙区制が招いた政治の劣化 田中秀征さん語る「中選挙区連記制」において、同氏は中選挙区制を提唱しておられた。

私が思う小選挙区制の欠点は、小選挙区制では、個人の力だけでは当選可能な得票数の獲得はハードルが高すぎ、政党からの支持・応援を必要とすることである。 中選挙区制でも、政党なり支持団体なり相当程度の人々の支援を受けていなければ当選はできないのであるが、小選挙区制の場合は、選挙民・国民と対話をするよりは、政党からの公認取り付けに時間と労力を割く必要が生じる。

議員活動は、企業勤務とは異なる。 企業勤務なら、その企業の為に働くが、議員は所属政党のためではなく、第一の目的は国民のためであり、政党は手段である。 小選挙区制では、大政党の力は大きい。 その結果、ボス・実力者の力が大きくなりすぎ、歪みが生じることがあると思う。 例えば、政党の党首・総裁がワンマン主義であった場合、党内対立派には選挙で公認を与えず、刺客候補を立てるなんて変なことも生じる。

2) 政党交付金も廃止して議員個人宛に支給

政党交付金の交付は1995年に始まった。 令和4年分政治資金報告の概要がこの総務省のWebにあるが、政党交付金の総額は、315億3千7百万円です。 交付金受領額が一番多いのは自民党で160億円、第2位は立憲民主党67.9億円、第3位は維新の会31.7億円となる。 特記すべきは、政治家女子48党というNHK党が名称を変更した党(今は更に別の名称)で、1億98百万円の政党助成金が交付されている。 都議選で24人の候補者を擁立し、ポスターで物議を醸し出した政党である。

政党に交付金が交付されると、政党の中で権力を持つ者程、配分の際にその決定に関与できることになるはず。 本来、団体や政党は意思も感情も持たない存在であり、意思や感情は人間である個人が持っている。 個人一人では、力の弱い場合もあり、同じような考えの人が集まって行動することは多い。 政党の分散・離合や仲違い、再集合等は政治活動の自由を尊重せねばならず、禁止することは不適切である。 本来の姿は、個人による思想、主義、主張が出発点である。

従い、政党交付金は、政治活動支援金として議員個人に交付することにすれば良いと考える。 議員一人あたり年間3千万円以上となる。 基本的には、政策研究に使われるべきと思うが、政党本部への寄附に使っても良いし、政策研究のために研究秘書を雇用したり、コンサルタントやシンクタンク等外部へ政策研究を委託しても良い。 研究結果の報告書を発表し、自分が実現したい政策を研究結果を発展、展開して行ってもらえばと思う。

なお、議員個人に対する政治活動支援金は、税の対象とすれば良い。 そして、委託費を含め研究活動やその他議員活動の為として認められる支出は経費として認めれば良いのである。 課題解決や問題点の鋭い指摘を行った報告書を公表した議員は高い評価を受け、その結果、次の選挙では高い得票率が得られ当選する可能性が高くなるはずである。 好循環が生み出せるのではと期待する。

3) 選挙における投票は個人の重要な政治参加

NHKが7月14日午後9時からNHKスペシャル「永田町”政治とカネ”の攻防 ~改革のゆくえは~」という番組を放送していた。

この番組の中で、二階俊博氏がインタビューに答えて、次の様に述べていた。

『今度選挙に出るそうだけど、どういう政策に力点を置こうとしてんのか』って、そんなこと聞く人誰もいないんだよ。 みんな『金があるか』

地縁・血縁何でもありが、現実の選挙とすれば、収賄・贈賄は刑事罰になるが、政治活動を支援する純粋の寄附は支援者の夢や希望の実現手段である。 政治資金規正法では、政治活動に関する寄附について、企業や団体からの寄附は、政党等以外には禁止されている。 一方、個人による寄付は禁止されておらず、自由である。 但し、公職の候補者の政治活動(選挙運動を除く)に関する寄附は禁止されている。 公職の候補者とは選挙で候補者として届出があった者である。

日本の政党政治の現状は、現与党の自民・公明と共産以外は離合集散を繰り返している。 言ってみれば、人と政党はなじめないことがしばしばあると言うことだろう。 政治家を志し、自分の夢を人々のために実現したいと思ったなら、その時々協力できる人達と政党や仲間を結成し、目標の実現に向けて努力を続けるという生き方が賛同を得ても良いはず。 選挙では、政党ではなく、この人ならと信じる人に投票する人物主義の選択でも良いと思う。 このような場合、中選挙区制が、なじむと思う。

4) ポピュリズムから脱出

冒頭に書いたバブル崩壊以後、あるいは21世紀になった頃からの日本経済の低迷には、ポピュリズムに陥った日本の政治が関係していると思う。 本当に必要な政策を実施するのではなく、与党は次に控えている選挙で勝つための政策を主導してしまう。 政権交代が生じると与党議員達は、冷や飯を食わざるを得なくなる事態を避けねばと、必至になって政権与党であることを死守する。 その方法は、ポピュリズム・バラマキであり、八方美人政策である。 本質的問題解決からは遠ざかり、解決はおざなりとなる。 やはり、中選挙区制の採用だろうと思うのである。

日本の国の成り立ちを考えると、国の行政機関・執行機関である内閣を頂点とした組織である行政府とその執行についての定めをつくる立法機関である国会が大きな骨格である。 税の支出を定める予算は、国会の議決に基づかねばならない。(憲法83条、85条)

ところで、内閣総理大臣について考えると、その権限も大きいのである。 国会への議案提出権権(憲法72条 )と予算提出権(憲法73条5項)を保有する。 衆議院で多数を占めると、内閣総理大臣の指名(憲法54条)と予算の議決(憲法60条)においては、参議院に優越するので、衆議院で過半数を制すれば、相当なことは実行できると考える。 (注: 議員立法は可能であるが、国会法で賛成者の人数の定めがある。)

衆議院で多数を占めると、相当なことは実行可能である。 政権喪失の懸念、恐れから良い政策を追及することにつながれば良いのだが、現実は政権喪失を恐れて、ポピュリズムに陥っている。 長期的視点からの立て直しや改革は重点施策にはならず、世界の中で発展から取り残されているのが現状ではないかと危惧するのである。

5) オープンガバメント、デジタルガバメント

米国で2009年1月にオバマ大統領が就任し、1月21日にTransparency and Open Governmentと題したMemorandum(ここ にあり、日本語では覚書と呼ばれている)を発表した。 このMemorandumでは、下記のようなことを述べている。

”Government should be transparent. Transparency promotes accountability and provides information for citizens about what their Government is doing. Information maintained by the Federal Government is a national asset. ”(政府は、高い透明性を持つべきである。 透明性は説明責任を促進し、政府が何をしているかについての情報を国民に提供する。 政府が保有する情報は国の資産である。)

”Government should be participatory. Public engagement enhances the Government's effectiveness and improves the quality of its decisions.”(政府は参加型であるべきだ。 国民の関与は政府の効率性を高め、決定の質を改善する。)

”Government should be collaborative. Collaboration actively engages Americans in the work of their Government.(政府は協働型であるべきだ。 政府の業務に国民の積極的な関与を得る。)

オバマさんの提唱したオープンガバメントの3原則に私も賛成する。 開かれた政府、誰もが参加できる政府が未来の目差すべき政府であり、その構築に向けて努力をしたい。

日本でも、インターネットを活用して政府を開かれた国民参加型を目差して改革してきていると考える。 オープンガバメントの動きは世界の多くの国や国際機関でも取り組まれている。 オープンガバメントは、デジタルツールの発展と共に、現在の制度や姿を補完し、よりよい未来社会の発展に向け寄与していくと期待する。

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2024年7月19日 (金)

実質賃金が伸びていない

実質賃金が26か月連続マイナスとの報道がなされている。 長期間の比較や他国との比較も行って考えてみます。

日経 7月14日 実質賃金とは 過去最長の26カ月連続マイナス

1) 長期間の実質賃金の推移

26か月とは2年2か月であり、もっと長期で実質賃金がどうなっているかを考えるべく、1970年以降の毎年の実質賃金の推移を2020年を100とした実質賃金指数と前年比上昇率を表示したチャートを作成すると図1の通りとなった。

データ元は、毎月勤労統計調査の季節調整済実質賃金指数の製造業30人以上であり、その1月~12月の合計を12で割って年ごとの実質賃金指数として年ごとの指数とした。

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結果、2006年が107.2で最も高かった。 1997年頃より、停滞していると言えると考える。 なお、2023年は99.3としたが、この数字は1月~4月の4月単純平均である。

2) 購買力平価 (国際比較)

賃金を国際比較するに際しては、単純に為替レートを使って比較をするより、購買力平価(PPP : Purchasing Power Parity)による換算で比較する方が、適切と言える。 購買力平価(PPP)とは、同一物を日本と外国で購入した際の価格により換算したレートであり、同じビックマックが日本で750円で、米国で5ドル70セントなら、ドル・円のPPPレートは131.6円/ドルというような具合です。

OECDの統計データに年平均賃金(Average annual wages)というデータがあり、このうちの2022年米ドルベース購買力平価(US dollars, PPP converted, 2022)を使いました。

購買力平価(PPP)なので、物価変動や為替変動からの影響が基本的には除外されていると考えられる。そこで、図1の日本の賃金指数を米ドルベース購買力平価(PPP)を同じチャート上で表現したのが次の図2です。 

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日本の賃金を2つの単位を使って、1つのチャート上に記載したのであるが、相当似通っている。 結果、OECD統計の購買力平価(PPP)による米ドル換算を使って各国の賃金国際評価を実施して大きな問題はないと考える。

3) OECD加盟国の中の17国について比較

OECD加盟国の中の17国の1990年以降の賃金について、2022年米ドルベース購買力平価(US dollars, PPP converted, 2022)による1990年から2023年までの推移をチャートにしたのが図3です。 (クリックで拡大します。)

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図3からすると、日本は17国の中でギリシャを別にすれば、唯一賃金上昇がほとんどない国です。 各国の購買力平価(US dollars, PPP converted, 2022)による賃金を大きい方から並び替え、賃金の数字も記載したのが表1です。 1990年、2000年、2010年と2022年のみを記載しています。

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韓国の賃金を見ると、1990年24,740、2000年33,114、2010年40,804、そして2022年48,056と順調に賃金が上昇している。 それぞれ、年率換算すると1990年から2000年は平均3.0%、2000年からは2.1%、2010年からは1.4%です。 1990年から2022年までの賃金上昇率を比較すると韓国の32年間の平均上昇率は年率2.10%で日本は0.13%です。

バブル崩壊後1990年代中頃以降、日本は賃金が上昇しない国になっていると言わざるを得ない感覚になります。 賃金が上昇しない国は、魅力のない国であり、解決策を考えていかねばと思います。

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2024年5月14日 (火)

IMF統計での一人あたり日本GDP第34位に思うこと

IMFは毎年4月と10月に経済統計(World Economic Outlook)を発表している。 2024年4月の発表文はこのページであり、そのデータは、同ページのリンク先からpdfで見たり、Excelやcsvでダウンロードすることも可能である。

1 IMF World Economic Outlook (April 2024)による各国の一人あたりGDP

長期間の各国GDPを比較することにより見えてくるものがあると期待して、1990年からの35年間について各国の一人あたりGDP(米ドル換算)を図1として表示した。 数字はIMFの統計数値であり、各国の名目GDPを米ドル為替レートで米ドル換算し、人口で除しているとIMFは説明している。

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(図はクリックで拡大表示されます。)

図内右に掲示している凡例の各国名は2023年における一人あたりGDP金額の大きい順から並べてあります。

1995年頃において、日本はルクセンブルグ、スイスに次いで第3位であったのです。 そこで、1985年からの順位表を作成した。 それが、表1です。 なお、2010年までは5年ごとの順位表で、2010年以後は毎年の順位表とし、2024年の順位はIMFの予測値による順位です。(クリックで拡大)

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2000年当時、日本の一人あたりGDPは世界第2位であった。 2005年以後は14位から18位程度の位置であったが、2013年から2021年頃は24位から27位となった。 しかし、2022年からは33位、34位と随分後順位となり、2024年は台湾、韓国より後ろの38位と予想されている。

2 対内直接投資の残高

対内直接投資とは、外国から日本に対する投資であり、外国人にとっての日本の魅力度の結果が日本の対内直接投資と言える。 IMF統計データから作成した各国の対内直接投資残高(Inward Direct Investment Position)が図2である。 図1のGDP比較と同じく、図中右の凡例は金額順の表示としている。 日本の外国からの直接投資受入残高は2022年で30位、2,250億米ドルとなっている。

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日本はイスラエルより外国からの投資受入残高は少なく、アジアでも、中国、シンガポール、香港やタイ、韓国より小さな金額しか外国からは投資が、なされておらず、魅力のない国としての評価を受けているようである。

図3は、金額ではなく、対内直接投資残高(外国からの投資受入額残高)をGDPに対するの比(パーセント)で表示している。

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日本の対内直接投資受入残高はGDP比5.33%であり、48位となっている。 なお、最大受入国ルクセンブルグは1460%であり、第2位のオランダ275%とアイルランド264%の3国は図の範囲外上方である。 

日本の5.33%は、アジアの諸国比べても、韓国13.79%(2021年の数字)や中国19.46%、インド14.73%より低い。 米国43.16%や英国88.55%には遠く及ばず、フランス32.22%やドイツ26.76%よりも大きく離れている。 資源埋蔵国の場合は、資源開発に関係・関連する外国からの投資が生じる。 インドネシアの20%も資源開発関連が含まれていると考える。

3 日本のGDP推移

1980年以後における日本の名目GDPの推移を示したのが図4である。 単位は兆円(左目盛り)と米ドルに換算した兆米ドル表示(右目盛り)である。 

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図4を見ると、1992年に名目GDPは500兆円に達し、20年以上を経過して、今やっと600兆円に達しようとしている。 1992年はバブル絶頂期が1989年であるとすれば、崩壊が進みかけた頃である。 当時、景気対策の一環として、日銀は公定歩合を1991年7月に6%から5.5%に引き下げ、以後順次引き下げを行い、1993年には1.75%としている。 しかし、公定歩合引き下げによる景気刺激策は、図4からすればその効果は限定的であったように見える。

更に、ドル・ベースで見ると、1995年頃にピークがあり、その後2011-12年頃に6兆ドルを超えたが、この20年間低迷を続けている。

4 GDPと対内直接投資

国際間の投資とは、冷酷なものである。 投資先の国に魅力がなければ、投資をしない。 大きなリターンが期待できれば、投資をするが、リスクが大きいと判断されればしないか、投資規模を縮小する。 1980年からの対内直接投資残高を図4のGDPグラフに付け加えたのが図5である。 (2004年以前については、対内直接投資残高の数値を示した統計資料が把握できなかったので省略した。)

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また図4のドル・ベースのGDP推移を見ても、日本へのドル・ベースでの投資リターンには相当のリスクがあるように思える。 投資資金は米ドルでの調達とは限らないが、国際的な金融・資金マーケットにおける投資とリターンについて、自国の都合や論理は通用しない。

5 経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)における対内直接投資

2024年度は取りまとめ中であり、2023年6月16日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2023」は、ここにある。 その7ページに次の様な文章があるので紹介をする。

・・・ 海外からヒト、モノ、カネ、アイデアを積極的に呼び込むことで我が国全体の投資を拡大させ、イノベーション力を高め、我が国の更なる経済成長につなげていくことが重要である。 対内直接投資残高を2030年に100兆円とする目標の早期実現を目指し、半導体等の戦略分野  ・・・

2030年の100兆円実現の前倒をめざすとの宣言である。 2022年末では29.9兆円であった(図5)。

6 真の問題は赤字国債

図4に示したように日本のGDPはバブルが崩壊した1990年以降停滞している。 GDP停滞の原因と赤字国債発行が関係している可能性を考えるため、図6を作成した。 国債の発行を継続し、2007年の時点で発行残高がGDPを越えた。

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外国に投資するのは、その国に魅力があり、かつリスクが低いと判断されるからであり、悪材料が少ないことが望ましい。 国債とは政府の借金である。 国債償還の財源は、その国の税金であり、国債残高が大きいことは、将来の増税が予想される。 投資をする際には、投資先国の税制や税率を調査する。 投資リスク要因としては、将来の増税の可能性も対象となる。 いずれにせよ、政府債務が大きいことは、投資先の国としてのマイナス材料である。 同じ条件なら政府財政の健全な国を選ぶ。

7 国別の国債残高を比較

国債残高を金額で比較しても良いが、その国のGDPの額と対比して政府財政・債務の健全性の指標が得られる。 GDPは、その国で産出した付加価値の総額故、債務返済資金の源泉であり、返済能力であるとも言える。 日本の国債残高のGDP比のカーブを図6に加えたのが図7である。

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図8は、政府債務残高をGDP比のパーセントで表示してのOECD諸国の比較である。

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OECD統計は、国債残高ではなく政府債務という言葉を使用しており、図6や図7における国債発行残高より範囲が広い。 その為、GDPとの比率に於いても大きくなっている。 しかし、OECD統計は比較対象国について同一基準で作成・報告している。 日本の債務・国債発行残高は飛び抜けて大きいのである。 

8 雑感

国債発行残高は1000兆円を越えているが、逆に言えば、これまでに1000兆円の支出をしてきたわけで、その負担を今後・将来の世代が背負うことになる。

国債は固定金利であり、現状発行残高の50%以上を日銀が保有しており関係ないと思うかも知れない。 しかし、日銀の負債で一番大きいのは一般銀行の日銀への当座預金である。 もし、円の金利が上昇したなら、新規国債の利払いが大きくなるのだが、インパクトとしては一般銀行の預金者の利息や日銀金利の上昇になるのであり、日銀にとっては資産(貸付サイド)741兆円のうち587兆円が国債という状態で、どうなるのやらと思う。 日銀が倒産するわけはないが、かと言って、日銀当座預金を現状で保持すれば、一般銀行へ大きすぎる負担が生じると考える。 金利が上昇した状態で国債を売却すれば、国債額面割れで日銀に損失が発生。 いずれにせよ、円の信用力が落ちると思う。 誰も投資しない国・日本になる可能性があると思う。 もっとも、そんな状態になると、新規国債は発行できない。 しかし、国債の償還と利払いは続く。 将来、多額の税金を国債の利払いと償還に充当せねばならず、その分実質支出できる政府財源は少ない。

そんな悪夢をよそに、令和6年度の一人あたり4万円(所得税と住民税の合計)の特別定額減税をする税法改正が成立した。 対象者を8千万人とすると総額3.2兆円となるが、こんなばらまきは、許されるのかと思う。 ばらまき税制改正と同時に28.9兆円の赤字国債発行を決めているのであり、本来は赤字国債の発行額を減少する歳入予算とすべきである。 防衛費にしても令和6年度は5117億円を建設国債でまかなうとした。 建設国債は、本ブログ記事に於いては、カウントしていない。 矛盾だらけの予算を組み、支離滅裂な説明を行うことは信用失墜になる。

今の日本の政治はポピュリズムの罠に陥っているように思う。 コロナ給付金なんて所得に関係なく10万円支給とか酷い仕組みだった。 もっと遡れば、政府の無駄使い削減で財政再建が可能であるとウソを言ったり、どの政党も増税は口にしない。 でも、小さな政府とも言わず、大盤振る舞いの政府の政策を全政党が訴えている(競争している?)と思う。

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2024年3月 3日 (日)

大阪万博2億円トイレについて

引き続き2億円トイレについて、書きます。 この3月1日の朝日新聞の記事には「「高すぎる」との批判が出ている会場内の「2億円トイレ」について、政府が外部有識者に対し積算根拠を説明し、妥当との考えを示した。」とある。

外部有識者とは、誰であるのか、固有名詞が示されていない。 もしかしたらこのリストの人達かなと思うが、建築の専門家はおらず、価格の妥当性を判断する能力はない人達である。 勿論、外部の専門家に独立した意見を表明してもらい、報告書を書いてもらって判断することはできる。 その場合は、その報告書を公開願えれば良いのである。 

と言うことで、探してみると、万博予算執行監視委員会というのがあり、3月1日にこの委員会で経済産業省商務・サービスグループが大阪万博のトイレについて説明した資料がここにありました。 2億円トイレを受注したのは、日本土木建設(株)と(株)東建設です。 もう一つトイレ5というのが予定価格1.9億円となっているが、まだ落札者は決まっていない。

経済産業省商務・サービスグループの説明は、一般的な公衆トイレの単価が約74万円であり、2億円トイレは単価では70万円と58万円であり高くないとしている。 大阪万博は2025年4月中旬から10月中旬までの6月間であり、そんな高価なトイレが必要なのかと思う。 6月間のトイレなら、災害時に被災地へ移動させることができるトイレを開発したら良いと考える。 移動ではなく、移設が容易であるトイレでも良いのである。

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2024年2月17日 (土)

日本経済深刻なのでは?

2月15日内閣府より2023年10-12月期の四半期GDP速報値が発表された。 内閣府の発表はここにあります。

既に発表されている1-9月の間の3四半期分のGDPを合計すると2023年1年間のGDPが計算され、その結果は591兆4821億円になり、ドイツに抜かれ世界第4位になったと報道された。 日経記事「名目GDP、ドイツに抜かれ4位 23年4兆2106億ドル」はここにあります。

1) 比較対象国を広げてみると

対象国を拡大し15カ国で米ドル換算した名目GDPを比較してみました。 なお、数値はIMF World Economic Outlookからです。 2022年以降はIMFによる予測値です。(図1のみならず図2、図3についても)

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米国と中国が抜きんでており、3位から15位が分かり辛いので、3位から15位の部分を拡大して図2を作成しました。

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日本は、2022年に落ち込んで、その後は幾分かは回復・上昇に転じたが勢いは、それほどでもないという感じに思えます。

2) 一人あたりGDP

重要なのは、一人あたりのGDPであるとの考えで、世界34カ国の一人あたりGDPの2020年以後の推移と2022以後の予測値です。

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2023年で日本は34位で$33,950なのです。 アジアのトップはシンガポール$87,884です。 ドイツは$52,824で日本の1.5倍です。 成長する世界の中で、低迷を続けているように思えます。 新型コロナ・ウィルスの影響を受けて、活動を自粛、結果世界の成長から取り残されている。 そんなことは、ないのか、じっくりと考えてみたいと思います。

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2023年12月17日 (日)

年金減額を正しいと判断した裁判所に賛同する

12月15日に最高裁は年金減額を違憲として争っていた裁判に対して、上告を棄却した。

日経新聞の記事「国の年金減額「合憲」確定 最高裁判決、受給者ら敗訴」はここにあります。 また、最高裁の判決はここにあります。

次の図は、日本における年金保険料納付世代の20歳から64歳の世代と年金を受給する65歳以上の世代の人口をグラフにしたものです。

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19歳以下の人口は含んでいませんが、50年で40%減少して、60%になると予想されています。 データは、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位(死亡中位)推計からです。 

現在の基礎年金の制度である20歳からの納付義務世代と65歳以上の受給権世代の人口対比をグラフ化したのですが、今現在の制度では確実に破綻すると予想されます。 2070年には納付世代と受給世代の人数が同数になるのです。 無理のない納付金額にしないと納付できません。 受給者は制度維持に協力すべきです。 破綻したなら、受給者は年金を受給できなくなるわけで、責任論では解決にはならない。

年金の制度に100年安心なんてあり得ないのである。 納付額は今よりあがるのでしょうね。 受給開始は遅くなり、金額も減少する。 そんなことが予想されるが、一度シミュレーションをして報告します。 最高裁は、政治家とは異なり、信頼できる人達であると思いました。 正しいか、間違っているか、それは表面のことのみではなく、深い部分も考慮して判断すべきであります。

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2023年10月11日 (水)

頭が混乱の年収の壁

次は、9月25日の岸田首相による「経済対策についての会見(このWeb )」の中での発言ですが、これが理解ができた人は、知識・造詣が相当深い人だと思います。

130万円の壁」については、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中ですが、まずは「106万円の壁」を乗り越えるための支援策を強力に講じてまいります。具体的には、事業主が労働者に「106万円の壁」を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当、これを創設いたします。こうした手当の創設や、賃上げで労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の新メニュー、これを創設いたします。こうした支援によって、社会保険料を国が実質的に軽減し、「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するようにしてまいります。政府としては「106万円の壁」を乗り越える方、全てを支援してまいります。このため、現在の賃金水準や就業時間から推計して、既に目の前に「就労の壁」を感じておられると想定される方々はもとより、今後、「壁」に近づく可能性がある全ての方が「壁」を乗り越えられるよう機動的に支援できる仕組みを整え、そのための予算上の措置を講じてまいります。

1) 106万円の壁

パート労働者が年収106万円を超えると社会保険(厚生年金と健康保険)の適用となり、社会保険料の負担により収入ダウンになるという話であります。 何故収入が減少するかというと、社会保険料の負担からです。 事業所所在地が東京である場合には、保険料率は厚生年金保険料(18.3%)と健康保険料(協会けんぽの場合10%(40歳以上は11.82%))です。 この保険料の負担は、雇用者と労働者が50/50の折半です。 もし、年間給与額が106万円を超えると費用負担が発生する。 仮に、110万円だと、雇用者も労働者も155,650円の負担増であり、106万円で費用負担なしの時と比較すると、収入総額は4万円増加しても、手取りは944,350円であり、115,650円減少する。時給1,000円だとすると116時間分も損をする計算になる。 一方、雇用者にとっても155,650円の負担増となり人件費は1,255,650円となる。

もし時間給単価が同じだとするなら106万円の手取り給与を得るためには、1.165倍働く必要が出てくる。今まで8時間働いていたなら9時間20分働かないと同一賃金額が得られない。

2) 106万円の壁の根拠

労働者は全員が社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険)のカバーを受け、雇用主は社会保険の付保義務がある。本来なら、パート労働者も社会保険の対象であるが、週20時間未満で賃金月額8.8万円未満であれば、厚生年金と健康保険の適用対象外となり、保険料納付の必要がないとなる。8.8万円を年間分とするため12倍にすると、105万6千円で、106万円という訳である。

3) 130万円の壁

現在は106万円の壁が適用されるのは、500人超の事業所であり、2024年10月に50人超の事業所となる。現在500人以下の事業所では、1週間の労働時間および1月の労働時間が正社員の4分の3未満のパートやアルバイトの短時間労働者は厚生年金・健康保険の適用対象にならない。 短時間労働者の場合であっても、正社員の4分の3未満の短時間労働でないなら、社会保険の対象となる。

では、130万円の壁とは、何かであるが、3号被保険者(国民年金法第7条1項3号)の対象者が恒常的な収入が130万円未満となっていることである。130万円以上の収入があっても、厚生年金で対象外となれば国民年金に加入し年金保険料を納付する必要が生じる。 毎月16,520円の保険料である。 130万円の年収の場合、厚生年金保険料は19,825円であるが、労働者分だけなら半額の9,912円で済む。 国民健康保険料は、市区町村により異なるが、月々10,000円以上になるのではと思う。年130万円の給与なら、協会けんぽで年153,660円だから、労使折半なら76,830円であり、本人負担は年12万円より安い。

この計算では、130万円の壁は、おそろしく大きく、国民年金と国民健康保険の保険料の年間負担は318,240円であり、24.5%になり、結構大きな壁である。 厚生年金と協会けんぽの場合の、労働者負担額は130万円の場合、183,950円(40歳以上で介護保険料も加算される場合195,780円)である。 

4) フリーランスの場合

フリーランスの場合は、どのようになるか考えてみたいと思います。 20歳以上は国民年金1号被保険者であり、国民年金の加入義務があり、3)で書いたように毎月16,520円の保険料を支払う必要がある。 但し、前年の所得に応じて、保険料免除を受けることは可能である。 例えば、前年所得が32万円以下は全額免除、168万円以下は25%免除。 免除を受けた場合、免除額に相当する将来受給を受ける年金額は減少するが、それでも50%以下にはならない。 何故なら、国民年金は50%が税金を財源として支払われることになっているからである。

国民健康保険料について、3)で月々10,000円以上と記載したが、住民税の課税所得の10%程度と思う。 最高保険料は年100万円程度である。 保険料率は、協会けんぽと比較すると、雇用者・労働者の合計額では安いが、労働者負担額で比べると国民健康保険の方が高いと、言える。

フリーランスや個人自営業者は、雇用主が存在しないわけで、全額自己負担になる。法人化しても、雇用主のオーナーが自分であれば、合算すればかえって費用は高くなると言える。

5) 厚生年金の受給額予想

健康保険の場合、その医療費カバー率は同一と考えれば、差は保険料である。 一方、年金は国民年金の場合、65歳から年間795,000円の年金を受給できる。 厚生年金の場合は、年間795,000円に加えて、次の計算式で計算した金額との合計額が年金額となる。(クリックで拡大)

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10万円、20万円、30万円、40万円、50万円を報酬の月額とし、ボーナスは年間3月相当額が支払われ、加入月数を480月とすると次の様になった。(クリックで拡大)

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年金受給期間を85歳までとしたのは、25歳の時の平均余命男55.2年、女61.8年からすれば、男80.2歳、女86.8歳となるが、これを男女の区別なく85歳までの受給とした。

6) 国民年金の受給額予想と厚生年金との比較

国民年金の保険料支払い義務は20歳から60歳までであり、毎月16,520円を12月・40年間払うと総額7,929,600円となる。受取年金額は厚生年金の基礎年金額と同じ795,000円。 65歳受給開始で85歳まで21年間受け取ると合計は16,695,000円になり、払込総額の2.1倍に相当する。

国民年金は保険料が高いが、給付される年金額は高くなく不十分との感覚を持ってしまうが、実際に計算をすると、極めて高利回りの投資と言える。 何故、そんな高利回りになるのかと言えば、保険料と同額が税金で補助されるからです。 NISAよりも、はるかに高利回りで、リスクも低い投資と言える。

それでは、厚生年金は月額報酬が高くなるほど、受給額へのリターンが悪くなるが、これは何故か? 一つは、定額支給となる基礎年金と報酬比例年金の2つの合計であり、基礎年金は報酬がゼロに近くても満額支給となるからである。 (なお、実際には年1500時間程度の労働になると思うので、時間1200円として年180万円(月15万円程度かと思うが)

もう一つの理由が、3号被保険者である。 3号被保険者は、保険料の負担がなく、基礎年金を満額受領できる訳で、投資ゼロで毎年795,000円が受け取れる。 (厳密には2号被保険者の配偶者なので、配偶者でなかったときは、国民年金保険料か厚生年金保険料を納付していることが必要である。)

保険料を払わずとも、年金を支払えるようにするには、誰かの分を減額するしかない。 厚生年金の中の高額所得者の受給額を減額して、それを保険料を支払わない3号被保険者の年金支払いに回しているのである。 専業主婦の場合の配偶者が高所得者であれば、丁度辻褄が合うようにも思える。 しかし、男女平等社会において、3号被保険者制度は配偶者の一方(多くの場合は女)の働き方に制限を加えることとなっている。 これこそが、大問題と言える。 また、配偶者を持っている場合は、配偶者が3号被保険者制度の恩恵を受けるが、配偶者がなければ恩恵は得られない。 独身者は106万円、130万円の壁に無縁であるだけでなく、壁のために調整している3号被保険者の年金資金まで負担しているのである。

なお、自営業者(やフリーランス)は国民年金であるから、その配偶者は3号被保険者とはなれず、夫婦でそれぞれ年金保険料を納付する。

7) 3号被保険者という悪制度が生まれた理由

1980年(昭和60年)改正で3号被保険者制度が創設された。 それ以前、専業主婦は国民年金任意加入であり、加入しない人もいた。 離婚をすると、無年金の恐れあり。 この解消とも言われているが、基本的には当時の社会は、国民全員が支える国の年金制度として歓迎したと思う。 夫はモーレツ社員で妻は専業主婦のスタイルが支持を集めていた時代には、そのようなスタイルを支援する制度が共感を得、支持される。 それが、3号被保険者制度が生まれた理由であると私は考える。

多様化した現代に3号被保険者制度は合わない。 多様化する社会、グローバル化で国境を越えて分業・競争が行われ、下手をすると簡単に取り残される。 1980年から半世紀近くになる現在、社会の仕組みをどしどし変えていかなくては、我々の生活を維持できなくなると考える。 どう改革すべきか、議論が必要である。

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2023年6月22日 (木)

ウラジオストク港利用が可能となった中国

次の様なニュースがありました。

5月29日 47NEWS 中国、極東ウラジオ港利用へ 物流でロシアと関係強化

こちらのタイトルは、衝撃的な表現です。

東洋経済 6月20日 中国がロシアの港を奪還? 極東権益を侵食中 ウラジオストク港の使用権を165年ぶりに回復

ウラジオストク港の使用権を165年ぶりに回復とは、愛琿条約が1858年5月であったので、1858年は今から165年前となる。しかし、ねえー、と思うわけです。

アムール川流域にはもともと狩猟と牧畜を営むシベリア先住民である遊牧民が住んでいた。そして、川の南側(右岸)にはさまざまなモンゴル族や満州族がいた。1689年にネルチンスク条約が清とロシアで締結され、アムール川流域は清(中国)領とすることで合意された。しかし、それ以前の17世紀頃からロシアの探検家や商人がアムール川以北の地域に入り始め、アムール川以北(西岸)で定住するロシア人もいた。

1858年の愛琿条約でウスリー川の東(右岸)は中国とロシアの共有となり、その2年後の北京条約でロシア領となった。当時の国力では、自然な結果と考える。戦争があって、決まった国境ではない。清(中国)にすれば、国力の差により認めざるを得なかった国境を確定する条約ではあったが、川口や海岸を調査し、ウラジオストクが天然の良港であることを発見したのはロシアであった。

今回の中国のウラジオストク港利用権取得は中国のウクライナ戦争でのロシアに対する支持の結果との見方があるが、逆に何故今まで利用できなかったのだろうかと思う。ウラジオストク港は軍港であったため、1992年までは外国船はおろか外国人も立ち入り禁止であった。だから、シベリア抑留者の帰還もナホトカ港からであった。

このブログ日露戦争 その5 中国・ロシアの関連で思ったことです。

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2023年3月12日 (日)

21世紀に入ってからは長期低落の日本経済

一つ前のブログ「税と社会保障の国民負担」(このブログ )で、日本の国民所得(NNI:Net National Income)はOECD統計によれば、OECD35カ国中24位であることを書きました。(OECD統計には、EU諸国とEuro諸国という分類もあるが、これらEU諸国とEuro諸国は除外しての順位です。)35カ国中24位とは、上位、中位、下位で分けたなら、下位グループの先頭と言うような感じです。

果たして今後中位から上位、さらには上位グループの先頭に並べるくらいに発展することができるのか、30年前の1990年からの国民所得の各国比較をしてみました。比較する対象は、税と社会保険料合計の比較をした9カ国としました。結果は、次のグラフの通りです。

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一番上の突出しているラインは米国であり、1990年では10,000ドルに満たなかったが、順調に増加してきたのは韓国です。日本は、1990年の時点では悪くなかった。グラフを見ると2000年位までは悪くはなかった。2008年9月にリーマンショックがあったのですが、21世紀に入って日本経済はだんだんと低迷状態となり、リーマンショックではどの国も落ち込んだのであるが、日本はいよいよ落ち込んだ。その後、多少の回復はしたが、低迷は続き、イタリアより2013年-2015年は少し上であったが、2016年にはイタリアより下位となり、2017年には韓国に並ばれて、その後は9カ国中では最下位となっている。

失われた30年なる言葉があり、バブル崩壊後の1990年頃から現在までの約30年間を指すようであるが、実は2000年まではそれほど悪くはなかったと言える。実は2000年からの森内閣、小泉内閣の頃から日本経済は低迷したと言えるように思う。規制改革と言って、市場競争を取り入れるのは良いが、行きすぎた面があれば、成長を阻害する。社会として保護をして、発展に結びつけるような誘導策も必要ではなかったかと思う。日銀の異次元緩和も経済発展には寄与しなかったのではないか。種々の政策を各国の政策と比較し、日本の政策では取り込んでいないものは何か、取り込んでいたらどうなっていたか等を研究し、その研究成果が発表されることを期待したい。

103万円の壁とか130万円の壁と言う言葉を耳にすることが多い。収入を得ても、税と社会保険料を支払わなくて済むという奇妙な特権を残していては、日本社会の経済発展を阻害すると思える。これが正しいとは誰も思わないはずが、存続を希望する人がいると報道されている。誰が、利益を得ているのか?パート労働の女性だと思うかも知れないが、実は低賃金労働により利益を得ている産業が最大の受益者であると思う。一方、日本経済全体で考えてみれば、低付加価値産業から高付加価値産業への転換を阻害していると思う。その結果が、国民所得低位低迷になっている一因と言える気がする。調査・研究をした報告を待ちたいと思う。

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2023年3月 9日 (木)

税と社会保障の国民負担

ポピュリズム政治が進むと政府によるバラマキが増加する。或いは、所得(生産物)の国民への配分を合理的なものにし、社会を発展させるには政府の必要な関与は不可欠であると言える。さあ実態は、どうなのかと言うことで、先日の2月21日に次のニュースがあった。

日経 2月21日 国民負担率、23年度は46% 国民所得拡大で2年連続低下

財務省の発表は、このページです。

1月15日にOECDデータによる税の国際比較というブログを書いたのですが、1月15日のブログでは図3で日本の税と社会保障の負担率は2020年33%とした。今回の負担率は46%となっている。その原因は、母数であり、1月15日はGDPに対する割合を示したのですが、今回の財務省の割合は国民所得(Net National Income)に対する割合で計算していることからの差であります。

GDPが国民所得より大きいのですが、その理由は国民所得の場合、固定資本減耗(すなわち固定資産の減価償却費)を差し引いているからです。それ以外には、国外との利子配当の受取・支払を含んだのが国民所得となるが、金額的にはほとんどが固定資本減耗です。財務省の発表ページに推移を示したこのページ へのLinkがありますが、2021年度を例にとると国民所得は395.9兆円でGDPは550.5兆円。差は154.6兆円です。2021年度の固定資本減耗は138.7兆円でした。差の15.9兆円が海外からの利子・配当金受取純額となる。

33%が正しいのか、46%が正しいのかと言えば、減価償却費相当額を差し引いた国民所得に対する割合が、財務省発表に基準としているように正しいと考えます。昔で言えば、ほぼ五公五民。共産主義なら十公零民かと言えば、全員が公務員だとすれば、公務員給与やボーナスがあるわけで、その分が民になるのであり、五公五民ぐらいかなとも思える。公に分配された分も、社会資本、福祉、教育他民のために使われるのであり、表面的な数字より実態を踏まえた合理的な分析・評価・研究により決定されるべきです。

1月15日のブログはGDPに対する税と社会保険料の割合を示したグラフであったので、OECDデータによるGDPと国民所得に対する割合のグラフを作成しました。

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ところで国民所得(NNI)が所得を表し、重要であることから、OECD加盟国の一人あたり国民所得のグラフを作成しました。日本は24位です。成長戦略をまじめに取り組んでいく必要性を痛感します。(韓国は、日本より上位です。)

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