2023年10月11日 (水)

頭が混乱の年収の壁

次は、9月25日の岸田首相による「経済対策についての会見(このWeb )」の中での発言ですが、これが理解ができた人は、知識・造詣が相当深い人だと思います。

130万円の壁」については、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中ですが、まずは「106万円の壁」を乗り越えるための支援策を強力に講じてまいります。具体的には、事業主が労働者に「106万円の壁」を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当、これを創設いたします。こうした手当の創設や、賃上げで労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の新メニュー、これを創設いたします。こうした支援によって、社会保険料を国が実質的に軽減し、「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するようにしてまいります。政府としては「106万円の壁」を乗り越える方、全てを支援してまいります。このため、現在の賃金水準や就業時間から推計して、既に目の前に「就労の壁」を感じておられると想定される方々はもとより、今後、「壁」に近づく可能性がある全ての方が「壁」を乗り越えられるよう機動的に支援できる仕組みを整え、そのための予算上の措置を講じてまいります。

1) 106万円の壁

パート労働者が年収106万円を超えると社会保険(厚生年金と健康保険)の適用となり、社会保険料の負担により収入ダウンになるという話であります。 何故収入が減少するかというと、社会保険料の負担からです。 事業所所在地が東京である場合には、保険料率は厚生年金保険料(18.3%)と健康保険料(協会けんぽの場合10%(40歳以上は11.82%))です。 この保険料の負担は、雇用者と労働者が50/50の折半です。 もし、年間給与額が106万円を超えると費用負担が発生する。 仮に、110万円だと、雇用者も労働者も155,650円の負担増であり、106万円で費用負担なしの時と比較すると、収入総額は4万円増加しても、手取りは944,350円であり、115,650円減少する。時給1,000円だとすると116時間分も損をする計算になる。 一方、雇用者にとっても155,650円の負担増となり人件費は1,255,650円となる。

もし時間給単価が同じだとするなら106万円の手取り給与を得るためには、1.165倍働く必要が出てくる。今まで8時間働いていたなら9時間20分働かないと同一賃金額が得られない。

2) 106万円の壁の根拠

労働者は全員が社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険)のカバーを受け、雇用主は社会保険の付保義務がある。本来なら、パート労働者も社会保険の対象であるが、週20時間未満で賃金月額8.8万円未満であれば、厚生年金と健康保険の適用対象外となり、保険料納付の必要がないとなる。8.8万円を年間分とするため12倍にすると、105万6千円で、106万円という訳である。

3) 130万円の壁

現在は106万円の壁が適用されるのは、500人超の事業所であり、2024年10月に50人超の事業所となる。現在500人以下の事業所では、1週間の労働時間および1月の労働時間が正社員の4分の3未満のパートやアルバイトの短時間労働者は厚生年金・健康保険の適用対象にならない。 短時間労働者の場合であっても、正社員の4分の3未満の短時間労働でないなら、社会保険の対象となる。

では、130万円の壁とは、何かであるが、3号被保険者(国民年金法第7条1項3号)の対象者が恒常的な収入が130万円未満となっていることである。130万円以上の収入があっても、厚生年金で対象外となれば国民年金に加入し年金保険料を納付する必要が生じる。 毎月16,520円の保険料である。 130万円の年収の場合、厚生年金保険料は19,825円であるが、労働者分だけなら半額の9,912円で済む。 国民健康保険料は、市区町村により異なるが、月々10,000円以上になるのではと思う。年130万円の給与なら、協会けんぽで年153,660円だから、労使折半なら76,830円であり、本人負担は年12万円より安い。

この計算では、130万円の壁は、おそろしく大きく、国民年金と国民健康保険の保険料の年間負担は318,240円であり、24.5%になり、結構大きな壁である。 厚生年金と協会けんぽの場合の、労働者負担額は130万円の場合、183,950円(40歳以上で介護保険料も加算される場合195,780円)である。 

4) フリーランスの場合

フリーランスの場合は、どのようになるか考えてみたいと思います。 20歳以上は国民年金1号被保険者であり、国民年金の加入義務があり、3)で書いたように毎月16,520円の保険料を支払う必要がある。 但し、前年の所得に応じて、保険料免除を受けることは可能である。 例えば、前年所得が32万円以下は全額免除、168万円以下は25%免除。 免除を受けた場合、免除額に相当する将来受給を受ける年金額は減少するが、それでも50%以下にはならない。 何故なら、国民年金は50%が税金を財源として支払われることになっているからである。

国民健康保険料について、3)で月々10,000円以上と記載したが、住民税の課税所得の10%程度と思う。 最高保険料は年100万円程度である。 保険料率は、協会けんぽと比較すると、雇用者・労働者の合計額では安いが、労働者負担額で比べると国民健康保険の方が高いと、言える。

フリーランスや個人自営業者は、雇用主が存在しないわけで、全額自己負担になる。法人化しても、雇用主のオーナーが自分であれば、合算すればかえって費用は高くなると言える。

5) 厚生年金の受給額予想

健康保険の場合、その医療費カバー率は同一と考えれば、差は保険料である。 一方、年金は国民年金の場合、65歳から年間795,000円の年金を受給できる。 厚生年金の場合は、年間795,000円に加えて、次の計算式で計算した金額との合計額が年金額となる。(クリックで拡大)

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10万円、20万円、30万円、40万円、50万円を報酬の月額とし、ボーナスは年間3月相当額が支払われ、加入月数を480月とすると次の様になった。(クリックで拡大)

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年金受給期間を85歳までとしたのは、25歳の時の平均余命男55.2年、女61.8年からすれば、男80.2歳、女86.8歳となるが、これを男女の区別なく85歳までの受給とした。

6) 国民年金の受給額予想と厚生年金との比較

国民年金の保険料支払い義務は20歳から60歳までであり、毎月16,520円を12月・40年間払うと総額7,929,600円となる。受取年金額は厚生年金の基礎年金額と同じ795,000円。 65歳受給開始で85歳まで21年間受け取ると合計は16,695,000円になり、払込総額の2.1倍に相当する。

国民年金は保険料が高いが、給付される年金額は高くなく不十分との感覚を持ってしまうが、実際に計算をすると、極めて高利回りの投資と言える。 何故、そんな高利回りになるのかと言えば、保険料と同額が税金で補助されるからです。 NISAよりも、はるかに高利回りで、リスクも低い投資と言える。

それでは、厚生年金は月額報酬が高くなるほど、受給額へのリターンが悪くなるが、これは何故か? 一つは、定額支給となる基礎年金と報酬比例年金の2つの合計であり、基礎年金は報酬がゼロに近くても満額支給となるからである。 (なお、実際には年1500時間程度の労働になると思うので、時間1200円として年180万円(月15万円程度かと思うが)

もう一つの理由が、3号被保険者である。 3号被保険者は、保険料の負担がなく、基礎年金を満額受領できる訳で、投資ゼロで毎年795,000円が受け取れる。 (厳密には2号被保険者の配偶者なので、配偶者でなかったときは、国民年金保険料か厚生年金保険料を納付していることが必要である。)

保険料を払わずとも、年金を支払えるようにするには、誰かの分を減額するしかない。 厚生年金の中の高額所得者の受給額を減額して、それを保険料を支払わない3号被保険者の年金支払いに回しているのである。 専業主婦の場合の配偶者が高所得者であれば、丁度辻褄が合うようにも思える。 しかし、男女平等社会において、3号被保険者制度は配偶者の一方(多くの場合は女)の働き方に制限を加えることとなっている。 これこそが、大問題と言える。 また、配偶者を持っている場合は、配偶者が3号被保険者制度の恩恵を受けるが、配偶者がなければ恩恵は得られない。 独身者は106万円、130万円の壁に無縁であるだけでなく、壁のために調整している3号被保険者の年金資金まで負担しているのである。

なお、自営業者(やフリーランス)は国民年金であるから、その配偶者は3号被保険者とはなれず、夫婦でそれぞれ年金保険料を納付する。

7) 3号被保険者という悪制度が生まれた理由

1980年(昭和60年)改正で3号被保険者制度が創設された。 それ以前、専業主婦は国民年金任意加入であり、加入しない人もいた。 離婚をすると、無年金の恐れあり。 この解消とも言われているが、基本的には当時の社会は、国民全員が支える国の年金制度として歓迎したと思う。 夫はモーレツ社員で妻は専業主婦のスタイルが支持を集めていた時代には、そのようなスタイルを支援する制度が共感を得、支持される。 それが、3号被保険者制度が生まれた理由であると私は考える。

多様化した現代に3号被保険者制度は合わない。 多様化する社会、グローバル化で国境を越えて分業・競争が行われ、下手をすると簡単に取り残される。 1980年から半世紀近くになる現在、社会の仕組みをどしどし変えていかなくては、我々の生活を維持できなくなると考える。 どう改革すべきか、議論が必要である。

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2023年8月18日 (金)

ふるさと納税の廃止を

朝日新聞と読売新聞がふるさと納税の問題について社説を掲載している。

朝日新聞 社説8月23日 ふるさと納税 ゆがみ拡大 放置するな

読売新聞社説 8月17日 ふるさと納税 返礼品や節税目的でいいのか

ふるさと納税は、バカげた制度である。 寄附をすれば、2000円の負担で寄付金の30%相当の返礼品がもらえる。

経済原則無視である。 2000円を超えた金額は、誰が負担するかというと、税金であり、国民である。 寄付金を受け取った自治体は、返礼品に30%受け取ったとしても、経費が20%発生しているなら寄付金収入は実質50%である。しかし、もう一つの支出、即ち寄付金支出者は寄付額から2000円を差し引いた金額の税還付を受けるのである。この税は、国民(日本の納税者)の負担である。

しかも、貧富の格差の拡大となっている。住民税非課税者や住民税均等割のみの課税者は寄附をすると全額自己負担となる。一方すごいですね、この総務省のWebの下の方に目安としての2000円以外は全額税金還付となる所得のテーブルがある。このテーブルを見ると、給与収入500万円ぐらいだと4万円、5万円が上限金額です。しかし、1000万円の給与収入があれば16万円-17万円となり、2000万円なら55万円とか。

ふるさと納税とは、貧乏人からお金を分捕って、お金持ちにばらまく制度だなと思います。

 

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2023年3月 9日 (木)

税と社会保障の国民負担

ポピュリズム政治が進むと政府によるバラマキが増加する。或いは、所得(生産物)の国民への配分を合理的なものにし、社会を発展させるには政府の必要な関与は不可欠であると言える。さあ実態は、どうなのかと言うことで、先日の2月21日に次のニュースがあった。

日経 2月21日 国民負担率、23年度は46% 国民所得拡大で2年連続低下

財務省の発表は、このページです。

1月15日にOECDデータによる税の国際比較というブログを書いたのですが、1月15日のブログでは図3で日本の税と社会保障の負担率は2020年33%とした。今回の負担率は46%となっている。その原因は、母数であり、1月15日はGDPに対する割合を示したのですが、今回の財務省の割合は国民所得(Net National Income)に対する割合で計算していることからの差であります。

GDPが国民所得より大きいのですが、その理由は国民所得の場合、固定資本減耗(すなわち固定資産の減価償却費)を差し引いているからです。それ以外には、国外との利子配当の受取・支払を含んだのが国民所得となるが、金額的にはほとんどが固定資本減耗です。財務省の発表ページに推移を示したこのページ へのLinkがありますが、2021年度を例にとると国民所得は395.9兆円でGDPは550.5兆円。差は154.6兆円です。2021年度の固定資本減耗は138.7兆円でした。差の15.9兆円が海外からの利子・配当金受取純額となる。

33%が正しいのか、46%が正しいのかと言えば、減価償却費相当額を差し引いた国民所得に対する割合が、財務省発表に基準としているように正しいと考えます。昔で言えば、ほぼ五公五民。共産主義なら十公零民かと言えば、全員が公務員だとすれば、公務員給与やボーナスがあるわけで、その分が民になるのであり、五公五民ぐらいかなとも思える。公に分配された分も、社会資本、福祉、教育他民のために使われるのであり、表面的な数字より実態を踏まえた合理的な分析・評価・研究により決定されるべきです。

1月15日のブログはGDPに対する税と社会保険料の割合を示したグラフであったので、OECDデータによるGDPと国民所得に対する割合のグラフを作成しました。

Oecdtax20233a_20230309021601

ところで国民所得(NNI)が所得を表し、重要であることから、OECD加盟国の一人あたり国民所得のグラフを作成しました。日本は24位です。成長戦略をまじめに取り組んでいく必要性を痛感します。(韓国は、日本より上位です。)

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2023年1月15日 (日)

OECDデータによる税の国際比較

税は重要である。そして、税について考える場合、税を他の国と比較することで、参考になる情報は多くある。

OECDの統計に、税に関する統計があり、この統計データを利用して、日本、米国、英国、ドイツ、フランス、イタリア、デンマークと韓国の9カ国の税収データについて比較を実施した。その結果をここに報告をしますので、参考にして頂ければと思います。

1) 一人あたりの税額

国の税収を人口で割った金額を米ドル換算して比べてみた。税収額であり、所得税のみならず全税目の税収合計です。更には県民税、市民税等等の地方税を含んでおり、社会保険料(年金や保険料(健康保険、介護保険、失業保険、労災保険等)も個人負担・企業負担を問わず法律で支払義務があるもの) も税としてOECD税収統計はあつかい、税と見做して統計に含めている。なお、OECDデータは各国の通貨建てであったので、為替レートと人口により一人宛あたりの米ドル額を計算して算出した。

9カ国の一人あたりの税額については、次の図1である。OECDの最新税収データは2020年であり、本エントリーでは2020年の税収を比較する。

Oecdtax2020a

図1で、日本の一人あたりの税額は13,195米ドルとなっている。2020年人口と米ドル・円の換算レートをかけていけば、2020年日本の税収額となるが、その結果は177兆3千億円となる。一方、令和5年度政府予算案一般会計の租税・印紙収入は69兆4400億円であある。177兆3千億円は2.5倍以上の金額である。177兆3千億円の内訳は、次の表2であり、財務省の租税収入には含まれない地方税と社会保険料がOECDの税収額には含まれていることがわかる。

次の表2が日本の2020年税収額OECDデータの税分類別内訳である。

Oecdtax2020b

2) 対GDP比による比較

GDPとは、付加価値額の総和であり、各国のGDPに対する税収額を見れば、その国の総平均税率のような指標となる。図3は2020年の対GDP比の各国比較であり、図4は2010年から2020年にかけての過去推移ならびに1990年と2000年のデータです。

Oecdtax2020c

Oecdtax2020d

3) 税目別税収の割合

図1、図3、図4において一人あたりの税収や税収総額のGDP比について比較を行ったが、次に税収に対しての税目の構成比を比較したのが次の図5である。税目は、表2で記載している税目大分類を使った。

Oecdtax2020e

図5を見ると、多くの国で社会保険料の割合が大きいと言える。各国の税目別税収をGDPに対する割合で示したのが、図6である。

Oecdtax2020f

基本的には図5と図6は同じであるが、国別の差は現れている。デンマークは、社会保険料がゼロに近い。しかし、年金等の政府による社会保険制度が存在しないのではなく、年金保険料の徴収がなく、一般財源から社会保障制度の給付を行っている。そのこともあり、所得税の負担はデンマークに於いては大きい。米国は、社会保険料負担が低いと言えるが、その理由には健康保険において民間保険制度を利用している企業・個人が多いからと理解する。

4) 社会保険料の10年間推移

社会保険料は図6に於いてピンク色線で表したが、2010年以後の年次推移を見てみたのが、次の図7である。

Oecdtax2020g

図7を見てもそうであるが、日本はフランス、ドイツ、イタリアと同じようなカテゴリーの国になるような印象を受けます。一方、図3の税収のGDP比からすると日本は33%であり、フランス45%、ドイツ38%、イタリア43%と比べて、日本は5%から12%低いと言える。税が高いことが良いことではないが、国債残高が大きいことは、いずれ税に跳ね返ってくる。国債とは国民の借金である。国の借金だとまやかしを述べている説がある。政府は、国民のために様々な機能により様々なサービスを提供している。税収がなければ、その機能を発揮できない。サービスを低下せざるを得ない。必要な適度な適切なサービスが政府から受けられるように政府を維持していかなくてはならない。そのための税であると私は考える。

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2022年4月21日 (木)

相続マンションの路線価認めなかった最高裁判決から考える税の公平性

まずは、日経ニュースから

日経 4月19日 相続マンション、路線価認めず課税「適法」 最高裁判決

最高裁判決はこの裁判所のWeb Page にあり、判決文を読んで分析しました。

1) 本件相続の内容

被相続人(死亡した人)は、平成24年(2012年)6月に94歳で死亡。残した財産は、国税庁と争ったマンション以外に6億円以上を保有する大資産家であった。従い、今回の争点となっているマンションの購入価格は13億87百万円であったことから、相続財産の総額は20億円近いのである。これを、相続税ゼロで申告をして、相続しようとした。更には、このマンションを相続人が売却しても、所得税や住民税もゼロ。勿論消費税もゼロなんて、徹底的に税を払わないように仕組んだ。そう考えると、札幌南税務署は庶民の味方・正義の味方としてよく頑張ってくれたと思う。

2) 本件税逃れの方法

相続税は札幌南税務署に申告したと思われることから、死亡した人は札幌市に住んでいたと思う。死亡する3年前の平成21年1月と12月にマンション(日経によると東京で)を837百万円と550百万円で購入した(合計13億87百万円)。借入金は630百万円と378百万円の合計10億008百万円。不動産購入が可能であったことから認知症にはなっていなかったと思うが、おそらく当人も家族も死期が近いと認識していたと思う。少なくともいずれ死ぬ。6億円の税産があるなら、相続税対策に突っ走る。簡単な方法は、債務控除と路線価評価の利用である。

お見事!相続税をゼロにする方法を編み出したのである。どのようにして、そうなるかは分からないが、路線価を使えば837百万円と550百万円のマンションが200百万円と133百万円になるそうな。約10億円も下げたのである。実態価格は、2013年3月に550百万円で購入したマンションを515百万円で売却しているので、路線価は実態より382百万円も低かったのである。

当然この仕組みは、税理士、銀行、不動産屋等関係者が知恵を出した可能性はあると思う。誰かが、首謀者であり、それにありが群がったのかも知れない。

3) 税務署の賦課決定処分

税務署は837百万円と550百万円で購入したマンションを不動産鑑定士による評価額である754百万円と519百万円との評価を行い、10億円近い金額を債務控除して888百万円を相続税の課税価額。そして、これに基礎控除他を控除した上で、税額を計算した結果として240百万円の相続税の賦課決定を行った。

相続税のみならず贈与税もそうであるが、相続税法第22条は、次であり、不動産に関する評価額は、不動産鑑定士の鑑定が有効である。不服があるなら、別の不動産鑑定士を起用し、争えば良いのである。路線価なんていうことがバカである。

相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による。

4) 相続した財産を売却したとき

財産を売却した場合は、売却額から取得したときの取得費(購入価格と購入手数料等)ならびに売却時の費用を差し引いた金額が所得金額となり、これに税率をかけて所得税を計算する。

本件の場合、不動産屋等の手数料を無視すると、購入価格である837百万円と550百万円が取得費であるが、これに建物についての減価償却計算を行い、累計原価償却額相当を差し引く。すなわち、相続税の評価額は、売却したときには関係しない。唯一、相続から年数を経過していない場合に、相続税相当額を取得費に加えることができるのみ。

当初のもくろみは、相続税はおろか、売却時の所得税も逃れ、さらにはマンション以外の相続財産6億円についても相続税を逃れようと企んだのではと思えるのです。

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2021年12月13日 (月)

立憲民主党、日本維新の会、国民民主党がガソリン価格値下げバラマキ法案を提出

恐ろしいものであります。減税による年間1兆円を越えるバラマキをする法案を提出したというのです。

立憲民主党 12月7日発表   日本維新の会 法案提出のお知らせ 12月6日

日本維新の会の発表に国民民主党共同でとあるので、2党の内容は同一です。3党同一かというと、立憲民主党案は「別に法律で決める日までの間、適用を停止」としており、維新と国民は完全に削除としている点が違いである。

1)何を適用停止し、削除するのか

次の「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」の44条です。

第四十四条 租税特別措置法第八十九条の規定は、東日本大震災の復旧及び復興の状況等を勘案し別に法律で定める日までの間、その適用を停止する。

そこで、租税特別措置法第89条を読む必要が出てくる。

第89条 前条の規定の適用がある場合において、平成22年1月以後の連続する3月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき160円を超えることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同条の規定の適用を停止する。

前条の規定とは、
2 前項の規定により前条の規定の適用が停止されている場合において、平成二十二年四月以後の連続する三月における各月の揮発油の平均小売価格がいずれも一リットルにつき百三十円を下回ることとなつたときは、財務大臣は、速やかに、その旨を告示するものとし、当該告示の日の属する月の翌月の初日以後に揮発油の製造場から移出され、又は保税地域から引き取られる揮発油に係る揮発油税及び地方揮発油税については、同項の規定にかかわらず、同条の規定を適用する。

極めて読み辛いのですが、トリガー条項と呼ばれており、ガソリンの平均小売り価格が3カ月連続で 160 円/ℓ を超えた場合、揮発油税を 53.8円/ℓ から 25.1 円/ℓを下げ、そして、停止後に3カ月連続でガソリンの平均価格が130円/ℓを下回った場合には、この措置を解除するというもの。

揮発油税の税収は年間2兆円強であり、3党は減収見込み1兆690億円と述べている。

2)税金を使ってガソリン価格を引き下げる意味があるのか

ガソリン価格が上がっているのは、原油価格が上がっているからです。下にある上のチャートは2017年1月以降の原油価格で、その下のチャートは11月10日以降の原油価格です。ニューヨークWTI Crudeですが、80ドルを超えていた価格も、70ドル強になっている。将来のことは、よく分からないが、マーケットに対してLong-Shortのビジネスをするのは、政府としてはしてはならないことである。まして、国民の税金でばくちをするのは、許されないことです。

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さて、国内のガソリン価格はというと、次の通り。2019年1月からのレギュラーガソリンの小売価格全国平均です。

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車に関しては、政策として取り組むべき課題が多い。例えば、道路や橋、トンネル等の老朽化対策がある。災害強靱化と言う取り組みも重要である。或いは、過疎化地域、地方においても一定のインフラ整備は必要である。例えば、地方においてガソリンスタンドが減少しており、車の給油に苦労する。或いは、暖房用の燃料確保も苦労するようになってきている。また、CO2排出削減を達成するには、ガソリンの消費削減が重要である。これに対する全く逆の政策であり、本来ならEVの為の急速充電ステーション整備のための調査や計画そして補助金が検討されるべきと思うが、逆行も甚だしい。

日本にはバカ政党がいるのだと思った。なお、OECD諸国のガソリン税の比較がこの財務省のサイト にあるが、日本のガソリン税は安いのである。

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2021年10月15日 (金)

衆議院解散 19日公示・31日投開票となったが

衆議院が解散され、選挙は19日公示―31日投開票の予定となった。衆議院解散を宣言する天皇の詔書(官報号外)はここ にある。日本国憲法第7条によりというのは、 憲法第7条3項による天皇の国事行為解散である。法律には記載なく、天皇が内閣の助言と承認により、国民のために行う行為である。法律に条文があっても良さそうだが、法律はなく、またこの部分の憲法改正も話題にはなっていないと思う。

政党の選挙公約を読み比べてみたいところであるが、今回の選挙はよく分からない。とりあえず眼についたものについて。

1) 消費税率引き下げ

そんなことをすれば、大混乱になると思うだが、しかも民主党政権政策2021には「時限的」なんて言葉も入っている。事業者によっては、5%の税率で仕入れたとしても10%で仕入れたとして、納税額を誤魔化す会社も出てくるように思ってしまう。しかし、それ以上にやはり問題なのは今や税収で一番大きく20兆円の収入が見込まれているのが消費税である。10兆円の国債を発行してやりくりするという案なのだろうか。なお、共産党も同じような政策と思ったが、Webを見ると「税制(準備中)」となっており、分からなかった。

2) え・・・年収1000万円程度までの所得税ゼロと給付金

民主党の政策2021に書いてある。結構な政策だけど、実現可能なのだろうか?そうであるなら、当該政策による税収減の数字とそれを埋め合わせる収入確保手段と金額を示して欲しい。ここ に厚生労働省の平成21年国民生活基礎調査における所得の分布状況がある。これでは1000万円以上は12%である。 所得税の歳入予算額は19兆円弱である。給与所得者だと250万人程度が1000万円を越えるようである。この国税庁の統計 からすると、1000万円以下の所得者が払った給与所得に対する税額は538億円。一方、1000万円超の給与所得者が支払った所得税額は379億円。1000万円を越える人達からは所得税を今の2.5倍徴収することとなるが、そんなのできるのだろうか? 日本を捨てる人が大勢出てきやしないだろうか?その中には、優秀な頭脳を持ち、将来の日本の救世主がいるかも知れないのに。適度な税制が良いと思います。

3) 現預金に課税する?

こんなこと(この毎日新聞の記事 )を言い出す人が出てきたようです。アホの税制としか思えないのです。企業が保有する現金と預金を対象にしているが、そんなことをしたら、現金と預金は極限まで少額の保有とし、国債とか外国証券を含め当然のこととして課税対象外の資産に保有を切り替える。そんなことをしたら経済全体の動きが悪くなるはずだが、バカには分からない。経済・金融・市場とかを理解して正常な社会をつくり出すようにしたい。

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2020年4月18日 (土)

1人10万円の給付が生む経済格差

1人10万円の給付を歓迎する声が多く聞こえる。しかし、この12兆円を超すバラマキは、経済格差・貧富格差を増大させ、日本を破滅に導くことになるように思える。

(1)所得制限はなく、高所得者にとっても非課税収入

この4月17日の日経記事 「1人10万円、非課税扱いに 給付のポイント」は、今回の10万円の支給は非課税にするとある。理由は、課税扱いの場合は、一時所得と解されることから50万円まで非課税であり、他の一時所得があった場合、複雑になると言う理屈である。一時所得なら50万円を超えても、税率は通常の2分の1だから、一時所得という扱いだけで、高所得者は優遇される。まして、非課税。所得制限がないから、高所得者でも申告をすれば、もらえる。それも家族の人数分。配偶者が働いているかどうかは、関係がない。ところで、安倍晋三さんは、申請をするのだろうか?個人情報だとして、開示されないと思うが。

(2)お金が天から降ってくるのではなく将来の税負担である

10万円の給付金は、高齢者のみならず、新型コロナでも収入が減少しない人にも支給される。例えば、年金生活者である。年金の減額はない。しかし、10万円の給付金の支給も受けられる。結局、誰が払う10万円かと言えば、若い働く人たちである。高齢者優遇で若者虐待の制度である。社会と産業が活動をする必要があるが、新型コロナで活動が阻害されている状態。阻害を取り除く、或いは阻害により収入減や産業活動の制限を受け、将来とも活動を持続すべきであるが、活動の持続が困難となっている事態の場合に、これを支援するのが本来の姿である。しかし、今回の 1人10万円の給付は、支援の名を借りたバラマキ政策であり、将来の貧富の差の拡大・更なる格差を社会に生んでいると思う。

(3)他国との比較

他国と比較して、ずば抜けた高所得者優遇政策をしたものだと思う。多分、こんな無策なことは、どこもしないと言うか、納税者が許さないと思う。

- 米国

年収7万5000ドル(約825万円)以下の大人1人に1200ドル。7万5000ドル以上あれば、減額され9万9000ドルでゼロになる。16歳以下の子どもがいれば、親に500ドル支給される。 参考

- 英国

ええこのTBSニュース は、労働者には賃金の80%を保障するとある。月2,500ポンド(約337千円)が上限。但し、条件が様々ある模様(この英政府のページ

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2019年10月22日 (火)

消費税10%時代になり20日以上経過したが

消費税10%時代になり20日以上経過したが、多くの人たちは、どう思っておられるのだろうか。2020年6月30日まで限定のキャッシュレス決済の場合の中小企業の5%または2%還元についてこの9月9日のブログ で書いた。期間限定については、それ以外にも2020年3月31日まで25000円の商品券が20000円で購入できるという低所得者および子育て世代向けのプレミアム商品券がある。


これらは、本質的なことを考えないごまかし政策の見本のようである。弁護士ドットコムニュースのこの記事 で取り上げているイートインコーナーの消費税10%適用は一時的な話ではなく、ずっと続く話であり、お店の方が顧客の便利さを考えてイートインコーナーを設置した結果、変なことになっているなんてのは、本末転倒である。


弁護士ドットコムニュースの記事は、堂々と正しいことを述べておられる。『 「正義マン」よりも、「軽減税率」そのものが国民にとって有害」』10%と8%の2つの税率が存在することで、消費者も大変であるが、事業所は本当に大変なのである。3月決算の企業の場合、3か月ごとの消費税申告であれば、2010年2月が10%と8%の2つの税率混在の初めての申告となる。多分、年明けぐらいから、皆悲鳴を上げ出すだろうと予想する。


国民の幸せのことを考えないバカ政治家が作り出した2重税率適用のバカ消費税制度は、なるべく早く単純なトラブルが少ない制度に改定すべきである。逆進性は、支出予算の重点を配慮することで対応すべきである。

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2019年9月23日 (月)

消費税率8%の不思議

新聞雑誌は10月以降も消費税率8%が適用されます。軽減税率の適用だからです。

すなわち、消費税法別表第一が軽減税率の対象品目を定めており、1号が飲食品であり、2号は次の様になっているのです。

 一定の題号を用い、政治、経済、社会、文化等に関する一般社会的事実を掲載する新聞(一週に二回以上発行する新聞に限る。)の定期購読契約(当該新聞を購読しようとする者に対して、当該新聞を定期的に継続して供給することを約する契約をいう。)に基づく譲渡

日刊新聞であれば、対象となる。定期購読だから、駅売店での購入はダメ。なぜ活字媒体の日刊紙定期購読を税金を軽減してまで優遇するのだろうと思うのです。ネット配信は通常税率10%です。そうなると、時代逆行も甚だしいと思う。エネルギー消費や、CO2排出において、ネットの方が、優れており、これからの時代にそぐうはず。そして、記事も即効性が高く、内容も、ネットだと読み比べが楽であり、その分、内容が濃く、品質も高いと思う。部数が少ない場合でも、ネットなら事業として成立する。本当に、訴えたい正しいことは、ネットでこそ伝えられる。ブログを書いている者からすれば、新聞雑誌の消費税率8%は強者の横暴と思う。

そんなことを思っていると、次の様な記事があった。税理士ドットコムの記事です。アンケートに答えると全文が読めます。

税理ドットコム 9月22日「新聞の軽減税率適用」直近の社説で論じた新聞はゼロ 飲食料品の議論は活発なのに…

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