2023年8月 6日 (日)

福島原発ALPS処理水について考える

間もなく福島原発ALPS処理水の海洋放出が始まろうとしているが、無責任な当事者や関係者が多すぎように思う。

1) 感情論のみで非論理的な漁協

7月30日に西村経済産業大臣と福島県漁業関係者との面会があったとのこと。 このNHKの報道 に接して驚いた。「処理水を放出したあとは、子どもたちにとれた魚を食べさせないという声が出ている」との懸念の声が漁協側から出たとある。 事実とは異なる情報により発生した被害を風評被害であるとして、自らが風評被害の発生源となる恐ろしさである。 声の主が漁業関係者や福島の人達だとすれば、反対のための反対をするための発言だと思ってしまう。 こんな発言を聞けば、皆恐ろしがって福島の魚を食べなくなる。

やるべきことは、論理的・科学的に分析・検討して、その結果問題点があれば、その改善を提言する。 安全なら、漁協自からも福島の魚は安全であり、食するに問題ないと広報・働きかけを行い、政府にもその広報の拡大・浸透に協力を求めるべきである。

2) 国際原子力機関(IAEA) 包括報告書

7月4日にIAEAのRafael Mariano Grossi総局長は岸田総理と会見し包括報告書を手渡した(読売のニュースはここ IAEAの発表はここ )。 IAEA報告書こそ、福島原発事故処理に関する一つの大きなマイルストーンと考える。 地球上での原発事故は残念なことだが、福島が最後とは限らないだろう。 万一、事故が発生した場合に、その国が国家主権を盾に外国の関与を拒むことがあるかもしれない。 IAEAが原発の事故処理、安全確保に関与することは重要であると考える。

原発事故が発生した場合、放射能汚染は、原発が位置する国に止まらない。主権国家が、幾ら法律を作っても、放射能は法律を守らない。放射能という物理的性質に対応して人類は対処しなければならない。 原発事故が発生した場合、IAEAが関与し、国家秘密を作らせず、必要な情報開示をすることを原発に関する国際的なルールにすべきと考える。 今回の福島事故に関するIAEAの関与については大賛成である。

IAEAの包括報告書はIAEA発表の中にリンク先がある。包括報告書は、信頼性高いと考えられ、タスクフォースには多くの国の専門家を含んでいると述べられている。アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、中国、フランス、マーシャル諸島、韓国、ロシア、英国、米国、ベトナム。

ALPS処理水については、IEA包括報告書は次の様に述べている。(Executive SummaryのPage v)

The IAEA recognizes that the discharge of the ALPS treated water has raised societal, political and environmental concerns, associated with the radiological aspects. However, the IAEA has concluded, based on its comprehensive assessment, that the discharge of the ALPS treated water, as currently planned by TEPCO, will have a negligible radiological impact on people and the environment.
<ブログ主の参考訳>
AEAは、ALPS処理水の排出が、放射能汚染について、社会的、政治的、環境的な懸念を引き起こしていることを認識している。しかし、IAEAは、包括的評価として、東京電力が現在計画しているALPS処理水の排出は、人々および環境に対する放射線による影響はごくわずか(Negligible:無視可能域)であると結論付けている。

IEA包括報告書24ページ(2.6 人体への放射線影響)に関する表も興味深い。

  国際基準 ALPS処理水排出の場合(一人あたり)
通常の稼働状況での被爆リスク 年1mSV以下 年0.000002-0.00mSVm
事故等非常時の被爆リスク 1事故5mSV 1事故0.002から0.01mSV (下記参照)

事故時の被爆想定は、希釈前のALPS処理水のタンク10,000m3から漏水して海に流れ出た場合と10,000m3の3つのタンクから事故で1日間漏れ出した場合としている。 なお、環境省はこのWebのように日本平均の放射線被曝量は年2.1mSVと述べています。 海洋生物への影響についての表もある。(27ページ)

  国際基準(国際放射線防護委員会ICRP)

ALPS処理水

カレイ・ヒラメ 1日10-100 mGy 1日0.0000007mGy
カニ 1日10-100 mGy 1日0.0000007mGy
海藻類 1日1-10mGy 1日0.0000008mGy

海洋生物とは、多くが産卵からの平均寿命は極めて短いのであり、放射線の影響は人間や陸上動物とは異なる。 なお、海洋生物への影響であり、食用として摂取する場合の基準ではない。しかし、福島産の魚類等の放射線は測定不可能なレベルである(例えば、ここ に福島県の水産物検査結果があるが、海の物は全て検出せずとなっている)。 ALPS処理水を海洋放出しても、変わらないし、3H(トリチウム)を問題にするとしても、海洋中に既に存在するのであり、有効な測定方法はない。

IAEAがALPS処理水海水放出に問題なしとしているのだから、日本政府に日本及び世界に対して安全性を訴えるよう要求するのが漁業者としての賢い戦略と私は思う。風評被害の支援は、方向が間違っているように思う。

3) ALPS処理水

ALPS処理水の放射性物質は、そのほとんどが3H(トリチウム、三重水素)であり、分析結果を探すとIAEAの2023年5月の報告書の第5表に次の分析結果があった。単位は、1リットルあたりのベクレル(Bq/L)である。

Fukushimaalpswateriaea

ALPS処理水の排出について、東京は電力はこのWebで、100倍以上に希釈した上で、トリチウム放出量は22兆ベクレルを下回る水準にすると説明している。上の表で3H(トリチウム)の数字が一番高いのはLS(スイスの研究所)mp165,800Bq/Lであり、100倍の希釈だと1658Bq/Lに止まるが、100倍以上だし、サンプリング測定も実施するので、問題はないと考える。

4) 年間排出量22兆ベクレルについて

次に年間排出量22兆ベクレルについて考える。

このトリチウム(3H)に関する説明は多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(第8回)における資料であり、3ページ目に日本の原子力発電所からの3H(トリチウム)の排出量についての記述がある。この3Hの排出量について、もう少し調べてみる。次は、東京電力福島第一原発で2003年度から2009年度まで海洋放出した3H(トリチウム)の量である。なお、この数値は原子力規制庁・原子力規制委員会が公表している原子力施設に係る放射線管理等報告((2012年までは原子力安全基盤機構による原子力運転管理年報)からである。

Tritium2023f1

日本における3H(とリチウム)の原子力発電所毎の年度別排出量は次のグラフの通りである。

Tritiumdischarge2023pp_20230805160401

発電所別ではなく都道府県別に整理すると次の様になりました。

Tritiumdischarge2023prf

何故、原子力発電所から3Hが排出されるかですが、ここに日本原子力産業協会の説明がある。 この説明によれば、核分裂や10B(ホウ素)の中性子照射により3Hが生成され大部分は燃料棒内に止まる。しかし、それ以外に制御棒に含まれる10Bや一次冷却水に添加されている10Bが中性子照射を受けて3Hが生成され、これが3H海洋放出となる。

3H放出量は、沸騰水型原子炉(BWR)と加圧水型原子炉(PWR)では、PWRでの放出量が多く、PWRの原発が運転されている福井県、愛媛県、佐賀県、鹿児島県、北海道における3H放出量が大きい。

ALPS処理水排出基準にしようとしている22兆ベクレルの由来であるが、上に示したこのトリチウム(3H)に関する説明の5ページ目に福島第一原発の「事故前の放出管理目標値は年間22兆ベクレル」とある。これを採用したのである。この22兆ベクレルは日本全体での過去最大が400兆ベクレルなら、その20分の1。現在日本全体で100兆ベクレルとすれば、その5分の1である。放出しないで管理することのリスクと低レベルに希釈して管理して放出することのリスクを考えれば、放出が妥当であると考える。

なお、福島第一原発の事故時に海域に流出した3Hは存在し、100-500兆ベクレルと言われているが、この流出は管理報告の対象外であり、除外している。

5) 世界の3H放出量

環境省のこのWebページに世界の原子力施設からの3H排出量の比較があり、フランスのLa Hagueという施設は年11,400億ベクレルということで、福島事故前の日本全体の水準の30倍という水準である。(環境省の説明は英語のみであり、日本語のページでは、幾ら探しても出てこない。 日本国民をどう考えているのだろうかと思ってしまう。)

La Hagueは、原子力発電所ではなく、MOX燃料等をつくる核燃料再処理工場である。日本も使用済み核燃料の加工をフランスに委託しており、La Hagueでの3H排出に無関係ではない。日本とフランス両国における3H排出量は次のグラフの通りである。

Tritiumdischarge2023fj1_20230806162501

また、4)の文章の出だしで引用したこのトリチウム(3H)に関する説明の最終9ページ目には次の図があり、世界では多くの施設で3H(トリチウム)が放出されている。

Worldtritium20238

La Hagueに見られるように、使用済み核燃料の再処理では特に多くの3Hの放出を伴うようです。日本でも、六ヶ所村再処理工場の稼働が始まれば、3Hの放出があるはずです。 廃炉にした日本の研究開発炉「ふげん」、「もんじゅ」からも3Hは現在も海水放出されている。 原子力潜水艦から、量は把握できていないが、3Hを放出される。 なお、核実験こそ、大量の3Hを放出する。次のグラフはフランスIRSNのこのページ(トリチウムと環境)にあるグラフで、1963年頃北半球に於ける大気中の3Hは異常に高かったことが分かります。 1963年に部分的核実験禁止条約(PTBT)が結ばれ、大気中、海中、宇宙に於ける核実験の禁止が当時米・ソ・英で合意された。 考えれば、水素爆弾とは2H(二重水素)や3H(トリチウム)の核融合エネルギーを利用する爆弾である。

Tritium_en_02

本テーマについては、報道等で取り上げられても、ある部分のみだけを伝えているのみと考え、ブログ主が考えていることを書いてみました。 ALPS処理水排出は夏休み明けなんて、良かれと思って発言されたと理解するが、風評被害の拡大にもなりかねない可能性がある。よく考えねばと思います。

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2022年12月 7日 (水)

原発対応を含め災害対応庁の新設はどうか

9月2日のこのブログ で、岸田首相が「原子力発電所については、再稼働済み10機の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を採ってまいります。」と述べたことを紹介したが、最近は化石燃料の価格の高騰による電気料金上昇やこの冬の電力需給逼迫の懸念もあり、原発再稼働やこの11月28日日経ニュースのように廃止が決まった原発の建て替え案も浮上している。

福島原発事故で、私が思ったのは、日本そのものの脆弱性についてである。日本の和歌や古文は日本の自然の美しさを讃え、喜び、日本に生まれ生きていることの感激を述べているものが多い。一方、現代人は自然科学や社会科学を持っている。科学的な研究、調査、分析、思考等様々な方法を駆使して、豊かな社会や生活を実現していく努力を継続すべきである。ところが、日本は、特に日本の制度は、十分に合理的とは言えず、改善すべきことは多いと考える。原発について考えるなら、現状の制度や仕組みのままで良いのかも、十分考えるべきである。

1) 福島事故菅直人現地視察の謎

首相ともあろうお方が、事故翌日の3月12日の午前7時11分から約1時間近く福島第一原発を視察・訪問している(参考:この共同通信:津村一史の記録(YahooNews) )。午後3時16分に1号機の水素爆発があったので、それは約7時間後のことであった。津波による全電源喪失が15時37分だったから、電源喪失から爆発までほぼ24時間。

そのような原発が爆発する危険を承知で首相は現場に行ったのではないはず。無知はあったかも知れないが、正確な情報や分析結果が届いていなかったのか、官邸主導だと言って聞く耳を持たなかったのか、それとも妥当な分析やシミュレーションが実施されていなかったのか、原因は不明である。「安全が確認された原発」という不思議な言葉を耳にする。100%の安全はあり得ない。何故なら人間だからである。人間だからこそ、漏れは否が応でも出てしまう。しかし、人間だからこそ、漏れに対しても臨機応変な対応もあり得るのである。

あえて一言言うなら、原発を運転する電力会社に全ての責任を押しつけるのは間違いである。当時、官房長官は電力会社に責任があると言い続けていたことを思い出す。この資源エネルギー庁の説明地図によれば、原発で現在稼働中は7基、停止中3基、設置変更許可7基、審査中10基、未申請9基で国内に36基の原発がある。電力会社(発電会社)の数では11社である。これらの原発を安全に管理・運転するための役所を作ってはと思う。

2) 災害対応庁の新設

米国FEMAを思うのであるが、FEMAは災害に関して大きな権限を持つ役所である。日本には、これに該当する役所がない。災害は、消防・地方自治体・総務省・国交省の担当であるのだろうか?災害対応は市町村役場の対応のようになっている面があるが、余りにも不透明と思う。災害への対応とは、災害発生前から発生時のシミュレーションを行い、対応を考え、計画することからスタートする。市町村・都道府県レベルより大きい国レベルの検討・対策・対応が必要である。なお、市町村・都道府県の役割は重要である。市町村・都道府県に責任を押しつけても最善の結果は生まれないのである。災害対応庁をつくれば、合理的な災害対応が計れると考える。

運転を止めても原発の使用済み核燃料や高濃度を含め放射性廃棄物は存在する。どのような体制でどう管理するのか、リスクは残り続ける。災害リスクは政治家に行くのではない。国民に行くのである。原子力災害を含め全ての災害は、国民に対するリスクである。

NHKは、このWebページで、原発運転延長との題で、様々な論点を述べている。原発運転延長が議論されるなら、その議論の中で、原発事故対応や政府の組織・権限のあり方、事業者の解体・再編を含めた合理的な仕組み構築を含めた検討をすべきと考える。

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2022年9月 2日 (金)

原子力発電に関する方針

NHKニュースが伝えたのは次でした。

NHKニュース 2022年8月25日 政府 原発7基 再稼働目指す方針確認 次世代の原子炉開発検討へ

この件について首相官邸のこのWeb Pageは、「総理は、本日の議論を踏まえ、次のように述べました。」として、以下の様に書いています。

電力需給ひっ迫という足元の危機克服のため、今年の冬のみならず今後数年間を見据えてあらゆる施策を総動員し不測の事態にも備えて万全を期していきます。特に、原子力発電所については、再稼働済み10機の稼働確保に加え、設置許可済みの原発再稼働に向け、国が前面に立ってあらゆる対応を採ってまいります。

官邸のWebだと10基の稼働であり、NHKによれば更に7基を加えた17基となっており、よくわからず、8月24日のGX実行会議のWebbがここにあり、資料1の12/27ページの記載によれば、①今冬までの最大9基の稼働確保並びにその次の②来夏・来冬からの高浜1・2、女川2、島根2の着実な再稼働、および柏崎・刈羽、東海第二の再稼働へ向けた取り組みが記載されている。

なお、最重要なことは、原発を稼働させる・運転するとするならば、現状で良いのか、どうすべきかをきちんと考えることである。

1 福島事故から学ぶべき事はないのか

福島事故からの教訓を生かすことなく、原発を再稼働だ、新設だと動くべきではない。

2011年3月の福島第一原発の事故の水素爆発を整理すると、次の表の通りである。

3月11日14時46分 地震発生
 13時37分 津波襲来 交流・直流の全電源喪失
 13時37分 1号機 冷却機能を喪失(全電源喪失と同時)
 3月12日15時36分 1号機 水素爆発
 3月13日 2時42分 3号機 バッテリー枯渇により冷却機能を喪失
 3月14日11時01分 3号機 水素爆発
 3月14日13時25分 2号機 冷却機能を喪失
 3月15日 6時14分 4号機建屋 3号機からの水素により爆発
 3月15日 午前 2号機 建屋外に放射性物質の飛散
出所:東京電力ホールディングス https://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/outline/2_1-j.html より

3回の水素爆発により放射性物質が福島原発より大量に大気中に排出された。1号機は、直流電源が全く使えず。2号機と3号機の直流電源はバッテリー枯渇まで利用できたので、枯渇まで冷却できた。

2 水素爆発は防ぎ得なかったのか

1号機は津波来襲と同時に冷却機能を喪失し、まっしぐらに水素爆発へと突き進んだ。果たして、防ぎ得たかであるが、直流電源(バッテリー)を直ちに用意することができてたならば、付け加えて電源車もと思う。1号機の冷却装置である非常用復水器は電動弁のため作動しなかったとのこと。もし、自衛隊が災害派遣でバッテリーを輸送していたならと思うが、どうなのだろうか?

いずれにせよ、事故対応が十分であったのか、そのことは原因究明のみならず、極めて重要である。事故対応について調査し、教訓はないか、研究すべきである。

3 原発の大事故対応については、特別な仕組みが必要と考える

ここに官房長官記者発表2011年3月12日午前がある。福島原発に関しては、「非常用炉心冷却装置による注水が不能な状態が続いておりますが」と述べているのだが、余り緊迫感はないと感じる。パニックを起こさないようにと、冷静に述べていることは理解できる。しかし、実際に起こったことは、上の表の通りである。3月11日14:46地震発生、15:37津波襲来そして1号機の冷却・注水・減圧機能の喪失、翌12日15:36水素爆発(1号機)となったのである。

このNEWSポストセブンの記事(2011.03.20)は、{保安院の中村幸一郎・審議官が、「(1号機の)炉心の中の燃料が溶けているとみてよい」と記者会見で明らかにした。ところが、菅首相は審議官の“更迭”を命じた。}と報じている。

安心・安全な原発は安全性が確認された原発であることのみならず、運転・管理する体制も重要なのである。事故が大規模な災害を招く原発のようなものは、民間企業に運営を任せることだけでは済まない。事故が発生すれば、お前の責任だと追及しても、その企業の負担能力を超える責任を追及しても意味は無い。国で責任を持つ。国とは国民である。運転は、民間企業が行うが、国のあるいは独立した有能な機関が事故の発生がないように監視をし、改善や使用禁止等を決定できるようにする。立法により仕組みを作り上げる。

考えれば、原発とは原爆とイコールである。譲っても、同等・同程度という位である。原発を進めるなら、原爆を監視するのと同程度の管理やケアが必要なのである。今回の岸田総理の発言を機会に、誇れる管理システムを構築していくべきである。審議官の“更迭”を命じる首相は、あの人には限らず、今後も出てくる可能性はある。変なのが首相になっても大丈夫な制度を構築しなければならない。

3 世界の原発

次の表は世界の原子力発電所である。2021年12月末現在400GW近い原発が存在し、56基で計58GWの原発が建設中である。福島の事故を経験した日本だからこそ、世界に向けて発信すべき事があると考える。使用済み核燃料のプルトニウム問題も極めて重要である。なお、原発を止めても、それまでの発電により発生したプルトニウムは存在するわけで、プルトニウムは、将来の原爆のために保有しましょうとはできないのである。

Nuclearplantworld202112

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2022年7月 3日 (日)

原子力発電をどう考えるべきか

1)最高裁6月17日判決

最高裁は、6月17日に東京電力福島第1原発事故の避難者らに対して国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を認めなかった。

判決文は、ここここにありますが、国会賠償とは、どのような場合に認められるのか、考えさせられる。1条1項の条文は「公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によつて違法に他人に損害を加えたときは」となっており、曖昧である。福島第1原発の被害者補償は、政府が東京電力に資金を供与し、その資金で避難者・被害者補償を行うという方法が採られている。裁判で争っても、被害者が東電に加えて国からも賠償金を受け取れるとは考えにくいと思う。金額が十分かという金額面については、別次元のこととする。

菅野博之裁判官は、補足意見として次の様に述べておられる部分がある。

私は、基本的には、原子力発電は、リスクもあるものの、エネルギー政策、科学技術振興政策等のため必要なものとして、国を挙げて推進したものであって、各電力会社は、いわばその国策に従い、関係法令(「原子力基本法」、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」、「電気事業法」、「発電用原子力設備に関する技術基準を定める省令」等)の下、発電用原子炉の設置の許可を受け、国の定める諸基準に従って原子力発電所を建設し、発電用原子炉を維持していたのであるから、本件事故のような大規模な災害が生じた場合は、電力会社以上に国がその結果を引き受けるべきであり、本来は、国が、過失の有無等に関係なく、被害者の救済における最大の責任を担うべきと考える。国策として、法令の下で原子力発電事業が行われてきた以上、これによる大規模災害については、被害者となってしまった特定の人達にのみ負担をしわ寄せするのではなく、損失補償の考え方に準じ、国が補償の任を担うべきであり、それは結局、電力の受益者であって国の実体をなす我々国民が広く補償を分担することになると考える。
だからこそ、これに近い仕組みとして、原子力損害の賠償に関する法律が設けられており、原子力損害については、・・・

私もこのような考えである。原子力発電所とは原爆の兄弟・姉妹である。核分裂という全く同じ物理現象を利用する。核分裂とは熱エネルギーと放射線を発する放射性物質を生み出す。極めて危険であり、人に有害な反応である。しかし、莫大なエネルギーが取り出せることから、核分裂反応をうまくコントロールし、放射性物質を閉じ込めることができれば魅力的というか、莫大な富をもたらす可能性がある。

原子力発電所を建設し、運転して、電力を得るかどうかは、人間が決めれば良い。危険として、やめるのか。やるなら、どのようにしてコントロールしつつやるのかである。やるばあいは、規制について強制力を持ってやらねば恐ろしい。有効な法の下で実施する必要があると考えれば、法を制定できる国単位での実施しかないだろうと思う。

2)原発に関する最近の国際動向

世界的な温室効果ガス排出削減への動きに加えて、ロシアによるウクライナ侵略以後高まったオイル・ガス供給不安により原発建設が脚光を浴びつつあると思っている。日本であまり報道されなかったと思うが、岸田総理がロンドンで5月5日に行った基調講演で、原発について次の様に述べている部分がある。(首相官邸のこのページ

「喫緊の課題である気候変動問題に加え、世界全体でのエネルギーの脱ロシアに貢献するためにも、再エネに加え、安全を確保した原子炉の有効活用を図ります。」

原発の世界的な見直し動向に対して、日本がどうしてもしなければいけないことがあると思う。それは、福島第一原発で放射性物質の拡散を防ぐことができなかったのかである。津波で非常用電源が壊れた。しかし、緊急で電源を準備できなかったのかである。もし、かくかくしかじかのことを実施していれば、シナリオは、どう変わっていたのか。折角福島原発事故による放射性物質拡散を経験したのである。日本しか実施できない研究であると思う。

3)参議院選挙での各党の原発政策

参議院選挙での各党の原発政策を見てみた結果である。

自由民主党

政策パンフレット

“脱炭素”を成長の起爆剤にする(13ページ)

安全が確認された原子力の最大限の活用を図ります。

立憲民主党

政策を知る

環境・エネルギー

原子力発電所の新増設は認めません。廃炉作業を国の管理下に置いて実施する体制を構築します。

公明党

マニフェスト2022

経済の成長と雇用・所得の拡大(33ページ)

原子力発電に関する取り組みについては、国民の理解と協力を得ることが大前提であり、説明会などを通じた情報提供・公開の徹底等を図りつつ、国が責任を持って進めます。

日本維新の会

日本維新の会維新八策1.基本政策2021

原子力政策(22ページ)

小型高速炉など次世代原子炉の研究を強化・継続します。

日本共産党

2022年参議院選挙政策

(4)気候危機の打開――原発即時ゼロ、石炭火力からの撤退。純国産の再エネ(14ページ)

即時原発ゼロ、石炭火力からの計画的撤退をすすめ、2030年度に原発と石炭火力の発電量はゼロとします。

国民民主党

政策パンフレット

4 自分の国は自分で守る(12ページ)

法令に基づく安全基準を満たした原子力発電所は再稼働するとともに、次世代炉等へのリプレース(建て替え)を行います。

原子力についての政策のみで投票先を決める人は少ないと思う。また、原発なんて、政治家が口を出してはいけない分野であるとも思う。しかし、法律の関与なしの野放し状態で進めることはできない。原子力とはプロメテウスの火である。なくなりはしないのだろうな。そう考えると、バカには関与させたくない。これからの政治・民主主義においては、正しい意見を尊重する議員を選出すると同時に、そのような人を育て、且つ役所や企業に於いても、そのような人が活躍する社会を築いていかねばならないと思う。

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2022年3月 4日 (金)

原子力発電所が外国の軍隊に占拠される

ロシア軍がウクライナの原発を占拠なんて、考えてもみなかった。

Bloomberg 3月4日 ロシア軍がザポロジエ原発を占拠、ウクライナはIAEAに支援要請

原発をテロリストが襲撃することは、あり得るとして、日本の原発でも計画をしていたはずである。外国の軍隊が占拠するなんて、思いも寄らなかった。軍隊とは、独立国が独立国として存続するための機関であり、理性も働いていると考える。でも、考えれば、今回のロシアのウクライナ侵攻に際して、プーチンはナチスという言葉を発していたことがある。自分のことを意味してではなかったが、翻れば、今のプーチンはヒットラーの様な狂気に駆られているように思える。

何故原発を占拠したか、このNHKニュース は「電力施設を握って電力を止めるなどして市民生活に影響を与えることで、ウクライナ軍の戦力、ウクライナ政府の戦意をそぐことにつながります。」と言っているが、発電を停止し、ウクライナを停電と電力不足に陥れることはできるが、そんなことに加えて放射性物質をウクライナはおろかモルドバ、ルーマニア、ブルガリア、ハンガリー、スロバキア、ポーランドなんて地域にも放射性物質が降り注ぐと脅かしているのだろうか。ザポリージャ原発の位置は47.511117427528056N, 34.58536185087585Eです。ザポリージャ原発からルーマニアのブカレストまでは740km、モルドバのキシニョフまでは440km、ポーランドのワルシャワまでは1000kmです。

原発をどう考えるべきか、本当はない方が、良いんでしょうが、現在世界の33カ国で稼働している。運転を中止しても、放射性物質を安全な状態に管理し続ける必要がある。複雑な原発である。核兵器はいけないが、核の平和利用(原発)は良いことであり、推進するなんて、単純には行かない。しかし、核共有の検討なんて、キチガイじみたことを発言した元バカ首相がいるから世界は驚きであるが。人間が管理することが困難な領域が拡大しつつあるのだろうか?むしろ、管理について考えが及んでいなかった分野が存在するということと理解する。

昨年10月11日に世界の原子力発電というブログ を書いた。その中の世界の国毎の原子力発電所の表を再掲する。ウクライナは世界で7番目(日本は12番目)の原発大国であり、原発が供給電力の51%を占める。

Worldnuclearplant2022

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2021年12月12日 (日)

小型モジュール式原子炉(SMR-Small Modular Reactor)

日立GEニュークリア・エナジーは、小型モジュール式原子力発電プロジェクトのテクノロジーパートナーに決定したと12月2日に発表した。会社による発表は次です。

日本語の発表

英語の発表

日本語の発表は日本法人である日立GEニュークリア・エナジーである。英文は米GEであり、日立GEニュークリア・エナジーをallianceと表現しており、法人格は持たない企業連合の意味でしょうか。なお、カナダではGEH SMR Technologies Canada, Ltd.というオンタリオ法人が存在する。

1)日本の報道

比べると結構おもしろい。

日経新聞は、ここ にあり、有料記事であるが、小型モジュール炉(SMR)に関するまとまった記事と思う。

読売新聞は、ここ にある。NHKはここ にある。朝日新聞はここにあるが、私は支離滅裂の感ありと思ってしまう。 記事には「放射性廃棄物が出ることは従来の原発と同じだ。」なんて記述があるが、プルトニウム問題も含め原発の本質は変わっていないにも拘わらず、これでは混乱を引き起こすだけと思える。なお、日立GEニュークリア・エナジー による発表は、 テクノロジーパートナーに決定したという表現であるが、報道各社は受注したと発表している。私は、電力会社Ontario Powerからの単純なプラント請負工事の受注ではないと思っている。

2)オンタリオハイドロの小型モジュール炉(SMR) BWRX-300

BWRX-300という小型モジュール炉(SMR)についての契約であるが、この記事(Power Engineering) からBWRX-300は電気出力300MWで熱出力1,500MWのBWR(沸騰水型原子炉)と理解する。原子力百科事典(ATOMICA)に掲載されている沸騰水型原子炉(BWR)の基本仕様(02-03-01-02) によれば電気出力460MWの熱出力は1,356MWで、800MWが2,381MWとなっている。即ち、同じ電力を得るための熱出力は従来型のBWRより大きい。熱効率で考えれば、燃料を多く消費する効率の悪い発電所である。また、そうなるとプルトニウムや使用済み核燃料も多く出るように思える。但し、電気出力を抑えることにより、安全性を高めている設計を採用しているのかも知れない。核兵器原料であるプルトニウムが生産されることに変わりはない。

建設されるのはOntario Powerの Darlington原子力発電所であり、4基が稼働中。合計出力3,512MW。原子炉はCANDUである。その位置は、次の地図の地点である。 トロントの東方約55km。直線距離で米国ニューヨークまで520km。首都ワシントンまでは570km。東京から青森または熊本までの距離である。

3)日本での小型モジュール式原子炉(SMR)の建設

私は、慌てふためく必要はないと思う。30年後の2050年ゼロエミッションを目指して、と言うより、この標語=かけ声を利用して、各社は競争を繰り広げており、この競争は益々激しくなる。トランプさんのような人が現れて巻き返しがあることもあり得る。まっすぐな直線の道とは余り思えない。そんな中で、SMRがどうなるか、所詮原発である。使用済み核燃料を含め高レベル廃棄物は発生する。

使用済み核燃料には1%程度の燃え残りウラン235が1%含まれ、さらにウラン238が変化したプルトニウムが1%程度存在すると言われている。日本原子力文化財団のこのページの説明 によれば、高レベル放射性廃棄物は数万年以上にわたり人間の生活環境から遠ざけ、隔離する必要があるととのこと。年間1.4トン発生しているとある。

じっくりと考える必要があると思います。

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2021年10月11日 (月)

世界の原子力発電

次の様なニュースがあるが、「中国を含めて再生可能エネルギーが急拡大して発電量が増える中、原子力の役割は低下している」とまで指摘するのは、言い過ぎとも思える。

中日新聞 9月28日 中国、第2位の原発大国に 仏の発電量抜き、米に次ぐ

世界全体を正しく把握するためには、各国の原発に関する統計データをチェックすべきである。次の表は、2020年末における各国の原子力発電所であり、国際原子力機関(IAEA)の統計からである。

Nuclearworld202110a

日本において原発2基合計2,653MWが建設中になっているが、この2基とは電源開発大間原発と中国電力島根原発3号機である。

上の表は、2020年の原発発電量であり、前年との比較が次の表である。国毎のばらつきがあり、個々の状況を調べないと変動要因まで言及することは難しいと考える。

Nuclearworld202110b

原発の発電量を1990年の発電量からグラフで表したのが次である。このグラフからは、中国の近年に於ける発電量の増加は大きいと言える。また、原発発電量が減少傾向とまでは言えないと考える。また、一番上の表に建設中の原発も記載したが、バングラデシュでも原発を建設中であり、中国では建設中の原発が13基で12,565MWある。このうちには642MWの高速増殖炉もある。

Nuclearworld202110c

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2021年9月30日 (木)

核燃サイクルはまずは議論を開始せよ

自民党総裁選は終了し、岸田文雄氏が総裁に選出された。9月10日のエコノミストOnlineに次の記事があった。

「核燃サイクルはやめるべきだ」「青森県に保管料を払え」河野太郎氏が示した首相の決断

破綻している核燃料サイクルを維持する意味は、どう考えてもない。河野氏が言うとおりである。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の廃止措置は2018年3月に認可され、プルトニウムを燃料とする原発建設の計画はない。MOX燃料を既存の原発で使用するとしても、どれだけのプルトニウムを消費するか、少ない量と思う。

しかし、問題はそれだけではない。プルトニウムこそ原爆の原料であり、長崎原爆のプルトニウム量は10-15kgで核分裂を起こしたのは、そのうちの1.2kg程度であった(このIAEAのINIS )。100万kWの原発が1年間の運転で生み出すプルトニウムの量は200kg 程度である。多いと思えるが、交換する量が35-40トンであるので、プルトニウムは0.5%程度。MOX燃料だと4-9%と言うわけで、原発でどれだけ使用するか不明であるのにプルトニウムの濃度を上げれば、核兵器転用のリスクをあげるだけと思える。

方針の転換は大変である。まずは、研究をすべきである。研究とは、技術課題のみに限らず、政府内部、地方自治体、住民・国民、関係する企業、国際的な関係も含めて方針転換について議論をすべきである。どう考えても非合理と思える核燃料サイクルが維持されてきたのは何故か?誰も猫にスズを付けたがらなかったからなのか。スズを付けることは、それほど大変なのか。研究・議論しないと分からない。

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2021年9月21日 (火)

放射性廃棄物を海外処分なんて、良いんですか?

恐ろしいニュースだと考える。

Yahooニュース朝日 9月19日 放射性廃棄物、海外処分に道筋 規制緩和で大型機器の「輸出」可能に

「廃炉が相次ぐなか、低レベル廃棄物である一部の大型機器について、処分を海外業者に委託できるように輸出規制を緩和する」と述べられているが、低レベル廃棄物とは、実はこの原子力科学研究所の放射性廃棄物のレベル区分についての表 を見ると、 再処理施設で発生するガラス固化体のみが高レベル放射性廃棄物であり、これ以外は全て低レベル放射性廃棄物となっている。日本の原発廃炉工程で出てくる廃棄物は、高レベルに該当せず、全て低レベル放射性廃棄物の扱いである。

低レベル廃棄物とは原発の廃棄物だから、一般的感覚からすれば、高レベルの放射線廃棄物が含まれる。表においては、低レベル廃棄物と呼んでいるものの中でも、放射線レベルの高い廃棄物は余裕深度処分となっている。朝日の記事にある「蒸気発生器」や「給水加熱器」の放射線レベルがどれくらいか不明だが、双方とも熱交換器であり、結構放射線レベルは高いかも知れない。

いずれにせよ原発の廃棄物を簡単に輸出なんて考えて良いはずがない。使用済み燃料を含め、原発の運転から生じた廃棄物は、その原発が存在する国の中で処分すべきである。朝日新聞は、原発賛成の意見、いやそうではない国家対立扇情方向という報道機関として恥ずべき論を出し始めたと思った。

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2021年9月20日 (月)

自民党総裁の知的レベル

9月18日に自民党総裁選立候補者討論会が日本記者クラブの主催であり、NHKも中継をしていた。この討論会の全2時間の動画がYouTubeで保存されており、次の日本記者クラブのWebから見ることができる。

2021年09月18日  自民党総裁選立候補者討論会

私のようなコンサルタントからすれば、発言内容には、十分に検討されておらず、問題含みと思える部分も多かったと感じる。有能な政策秘書、アドバイザー、調査・研究員を抱えて、政策の研究・立案をすべきと考えるのだが。

私が思った、自分自身が多少の知識を有しているエネルギー分野のことについて書いてみる。

1)地熱発電

日本には世界第3位の地熱発電ポテンシャルがあり、力を入れて開発すべきとの発言があった。第3位の根拠は、活火山の数は日本には119存在し、活火山の数が米国、インドネシアに次いで第3位だから地熱発電も第3位であるべきとの乱暴な議論のようだ。地熱発電とは地下資源開発と似ている。地下1000m以上の深さ(5000m以上の場合もあるようである)にある地下の熱水(高温高圧で水と蒸気が混ざったH2O)を掘り当てるのである。従い、油田やガス田開発をする人達のビジネスである。そのような場所が日本にどれだけあるのか?下手をすると、環境破壊である。

世界の地熱発電の表を掲げておく。身の丈に合った開発が良いのである。

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2) 小型原発

小型モジュール炉(SMR:Small Modular Reactor)という原子炉の開発が米国等でなされている。小型にすれば、大型より冷やしやすいので、安全性が高まるという発想である。米国NuScale社のSMRは1モジュールが60MWで、6モジュールで1発電所とすれば360MWになる。

しかし、1,200MWというような大型原発が建設されたのは、安全性の追求からであった。全く逆の発想をしようというのだが、そもそもウランを燃料とする原子力発電所である。危険性がなくなるわけではない。リスク評価ができないものをエネルギー供給計画に組み入れることは間違いである。研究開発を適切に見守るのが、現段階では妥当なことである。

3) プルトニウム政策

ウラン原発を運転すると、プルトニウムが生成され、使用済み核燃料に含まれる。プルトニウム(239Pu )は、ウラン(235 )と同じように核分裂を起こす。従い、プルトニウムも原爆の原料となるが、使用済み核燃料のままだと兵器転用は困難と言われている。日本は、プルトニウム を原子燃料として再処理するとして核不拡散条約(NPT)による承認を受けている。しかし、現実には、再処理したプルトニウムを燃料として消費できる見込みは、どれだけあるか?相当少ないはず。

「日本は使用済み核燃料は再処理するので、使用済み核燃料の問題はない。」としてきた。しかし、この政策が破綻してる。問題先送りは、問題の解決をますます困難とし、解決の代償を大きくすることとなっている。低レベル放射性物質の廃棄ですら、容易ではないのであり、重大問題として取り組むべきである。

4) 太陽光発電と風力発電の出力抑制

九州電力送配電は、太陽光と風力の発電出力抑制指令を出している。石炭火力も出力抑制をすべきといった発言を行った人がいるのだが、当然石炭火力も出力抑制を行っていると私は理解している。その根拠は、電力広域的推進機関が再生エネルギー出力抑制に関する検証を実施しており、その結果報告を正しいと考えるからである。報告書は、このページ にある。

発電の出力調整のフレキシビリティーが高いのは水力である。逆に調整不可能が原子力である。火力は、機械(発電所)により異なるが、機械の性能の範囲内で調整可能である。再生可能エネルギーを割合を増加させていこうとした場合、太陽光と風力について出力抑制を実施しないと導入ができない。太陽光、風力の発電事業者が出力抑制の条件に合意して事業を実施しているはずであり、再生可能エネルギーの増加を目指すという課題を追及すべきと考える。

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