2025年6月21日 (土)

何が改正されたのか、2025年年金改正法

年金改革の関連法は6月13日に参議院で可決され、6月20日公布された。 長い法律名「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律」である。 しかし、その内容は疑問が多いのである。

1) 社会保険の加入対象の拡大

厚生労働省の説明はこのページにあるが、まず(1)として「社会保険の加入対象の拡大」が記載されている。 3号被保険者は、3号として加入しており、考慮不要とするなら、大いなる間違いである。

日本年金機構は、3号被保険者の保険料についてこのページ で「ご自身で保険料を納付する必要がありません。」と説明している。 正しいのであるが、現行の制度下でのことであり、合理的であるかは別である。 すなわち、その続く文章では「第2号被保険者が全体で負担しているためです」となっている。

短時間労働者の加入要件の見直しにより130万円の壁はなくなり100万円の人も厚生年金に加入し、保険料を支払うこととなる。 しかし、同時に「第2号被保険者が全体で負担」することから、言わば、パート労働者も働かない3号被保険者の年金保険料を負担するのである。

本来的な筋論で言えば、3号被保険者に1号被保険者(国民年金の対象者)と同じ保険料の納付を求めるべきである。 子育て支援制度が不十分であった時代には3号被保険者の意義はあったかもしれない。 今や、外国人労働者への依存を高めている人手不足時代であり、働くことを奨励して当然と考える。 働く者を優遇するのが当然であり、働くことが困難な人は、それなりの必要な支援を差し伸べるべきである。

現代において、働かなくて、基礎年金を満額受給できる3号被保険者制度を残すことは、不正義と思う。3号被保険者でない人たちに負担が行っているのであり、それは働く人たちであり、税が半額負担となっているので、全員が3号被保険者の半分を負担していると言える。 ちなみに、1号被保険者(国民年金加入者)の保険料は令和7年度月額17,510円である。 外国人も日本で給与支払いを受ければ、厚生年金2号被保険者となり、給与所得がなければ1号被保険者として国民年金への加入義務が発生し、毎月17,510円支払わねばならない。

2) 標準報酬月額の上限引き上げ

厚生労働省の説明(4)には「賃金上昇の継続を見据え、世代内の公平のためにも、上限に該当されていた方に、本来の賃金に応じたご負担をいただき将来の給付を手厚くします。」と説明している。

現行制度では、厚生年金の保険料について報酬額が月65万円以上は全員65万円として扱うことになっている。 これを、68万円。71万円、75万円の3段階を追加するのである。但し、それぞれ2027年9月、2028年9月、2029年9月からの実施である。 なお、75万円とはボーナス込みで年間1,200万円程度である。

75万円となった場合に65万円の時と比較すると、厚労省は月9,100円の負担増で、10年払い続けて年金で月5,100円の受け取り年金増加と言っている。 毎月9,100円とボーナス払いを含めて年15月分とすると年間136.5千円。 10年なら137万円である。 受領する年金は5,100円の12ヶ月であるから61,200円/年。 これを納付した137万円と対比すると22.38年となるわけで、年金受給開始を65歳とすれば87.38歳以上生きれば、元が取れる計算である。

87.38歳をターゲットにするなら、やむを得ないと感じる人もいるかも知れない。 しかし、実際には払い込んでいる年金保険料は雇用主負担が同額ある。 雇用主負担を考えれば、44.76年となり、109.76歳まで生きないと元が取れない。 ほぼ全員マイナスのリターンになると思う。

年金の恐ろしさである。 複雑すぎて誰も簡単には計算できない。 悪い政治家と悪い官僚がタッグを組んで攻めてこられると防衛がしんどいのである。 最近は、それに更に選挙の嘘つき票集めのポピュリズムが絡んで複雑怪奇になっている。

3) 将来の年金水準について

説明が厚労省の年金改正の全体像(ここ )の14ページ(最後のページ)にあるが、最高に訳がわからない部分である。
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極めてわかりつらいのであるが、日本の公的年金制度は恩給制度、共済組合制度、労働者年金保険制度・厚生年金保険制度、国民年金制度等の過去の制度を統合し、統合による被保険者・受給者の不利益解消にも配慮してきた経緯があり、矛盾も抱えている。 その矛盾は、経済情勢の変化によっては、今後拡大する可能性も含んでいる。 それが、上図の右側で、好調な場合は25.0%+34.4%であり、好調ではない場合は24.6%+27.2%と将来について予想している。 好調な場合は、59.4%であり、そうでない場合は51.8%と、差は7.6%と言っている。

実は、59.4%や51.8%は、厚生年金の場合であり、基礎年金のみの受給となる国民年金の場合は、34.4%と27.2%なので、その差は7.2%である。 年金受給額で考えると、好調ではない場合、好調時の79%からはその幅20%以上の年金受給額が目減りする予想となっている。 国民年金のみなら21%の目減りである。 なお、左側の25.0%+36.2%(合計61.2%)は2024年度のことであり、経済好調時でも59.4%へと1.8%ダウンで目減り率は2.9%である。

人口の高齢化、すなわち受給者の増加と年金保険料納付者の減少は、その要因として大きいのであるが、他にも要因は少なくない。

A) 国民年金と厚生年金での保険料の差

国民年金は令和7年度で1月あたり17,510円である。 一方、厚生年金は給与額の9.15%を被保険者と雇用主が負担するので合計18.3%を厚労省に支払う。 従い、月収96,000円以上の場合は、国民年金より厚生年金被保険者の方が常に多くの保険料を納付していることとなる。 報酬月額75万円の人は、雇用主負担を含めると年間200万円以上の保険料を納付することとなり、国民年金の人の9.5倍もの保険料を納付する。 しかし、一方で、受け取る年金額は年間354万円と予想され、国民年金受給額83万円の4.2倍にとどまる。 年金受給期間何年で払込保険料に一致するか、言わば元が取れるかを計算すると、22.5年を要し、国民年金の10.1年に対し2倍以上になる。

保険料を支払っていない3号被保険者が年金を受領することを可能とする原資を厚生年金加入者が負担していることも、国民年金と厚生年金の保険料と受給額のアンバランス要因である。 全員が妻帯し妻は全て専業主婦であれば、全員が同一条件となるが、婚姻や労働は個人の自由であり、公的年金制度が個人の生き方により利益・不利益を生じさせる制度は改正すべきである。 この点を今回の2025年改正は全く考慮していない。

B) 厚生年金の積立金を国民年金の給付に充当する案が出てくる不思議さ

次の図2は、2019年度から2023年度の各年度末における年金積立金がその年度における年金給付金額の何倍になっているかを示したチャートである。 基礎年金勘定は、積立金を持たない制度なので無視すればよい。 厚生年金・共済組合は年間給付額の6倍近くの積立金を保有しているが、国民年金は3.7倍の積立金しか保有していない。

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次図は、国民年金保険料、厚生年金保険料と基礎年金額の金額(名目)を2017年を1.0として2024年までの推移をチャート化したものである。

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国民年金保険料は、物価変動と賃金変動によって決まり、基礎年金額は、それらにマクロスライドが加わる。 厚生年金保険料は賃金の18.3%と料率で決まっていることから、2017年を1とした賃金指数の変動が名目ベースの保険料金額となる。 上図は、そのようにして作成したのであるが、制度の矛盾が現れていると思う。

C) 自民・公明・立民3党で年金法案修正に合意し基礎年金を底上げと言うが?これなに?

この5月27日の日経新聞の記事 等多数のメディアで報道されていました。 しかし、本当は何なのでしょうか。 実は、3党合意でなされたのは附則3条の2を追加することです。

その追加された附則3条の2は、何が書いてあるかというと、6月20日官報号外137号の34ページ(ここ )にあるのですが、何を言っているのか、どのような論理構成になっているのか、頑張って読もうとしても、理解不可能であるし、報道されているような解釈が私には出てこない。

D) 今の年金の制度を根本から改めるべきと思う

保険料の支払いを前提としている基礎年金制度があり、それに加えての報酬に比例する厚生年金がある。 単純なようであるが、少子高齢化というか、社会全体の高年齢化があり、抜本的改革をしないと歪みが大きくなりすぎて制度が自己崩壊してしまうように思える。 政治家に任せれば、上のC)に書いたような意味不明の改革が出てくる。 こんなのに乗っかってては沈没してしまう。 抜本的改革を考えるべきである。

そこで私の提案であるが基礎年金は全額税負担とするのである。 実は、すでに50%は税負担となっているのである。 その税負担額は2023年度で12兆円強である。 なお、基礎年金としての給付額合計は25.1兆円である。 もし、基礎年金を全額税負担とするなら追加で13兆円をまかなえば良いのである。

13兆円の税収とは、消費税の税収予想が令和7年度25兆円であるので、その50%である。 消費税率を50%上げればよい。 現在の(地方税分を含まないで)7.8%から3.9%-4%を引き上げれば良い。 反対が多いと心配せねばならないだろうか? 国民年金保険料は納付する必要がなくなる。 厚生年金保険料の料率は下がる。 誰が得するわけでもないが、あえて言えば、国民年金保険料の徴収等の事務管理費用の削減は期待できると思う。 また、富裕層ほど、消費額が多いとすれば、今の国民年金保険料の様に一定額負担ではなく、消費支出に対しての比例負担となる。

かつて日本に国民年金制度を導入したときは、消費税の制度はなかった。 ちなみに年間500万円を消費するとして、その4%は20万円である。 一方、国民年金保険料は月17,510円なので、年間21万円である。 年収500万円-600万円の人は、消費税に切り替わった方が、有利となる。

年金制度は重要である。 事故、障害等により活動や労働が制限された場合、障害年金を受け取れる。 働きやすい、生きていて楽しい世界を実現していきたいと思うのである。

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2025年3月12日 (水)

年金130万円の壁問題への対応

130万円の壁とは、国民年金3号被保険者制度に関する壁である。 保険料を支払わずに、年金を受給できるのは、何かおかしいと感じてしまうが、これは普通の感覚と思う。 経済同友会と連合も、第3号被保険者制度の廃止を求めるとこの日経記事 は伝えており、社会保障制度は働き方や生き方に対して中立的であるべきとの考え方に私も賛成です。

本ブログ記事では、多面的な分析を行い、ともすれば複雑と思える年金制度について正しく分析を行い、私の意見を伝えると共に、読んで考えていただく際の正確な情報提供の役目も負うべきと考えた結果、長文のブログ記事となってしまいました。 そこで、目次を作成し、少しでも読み易くと思い、各目次へのリンクを張りました。 また、ブログ中の全ての図表は、クリックで別窓表示されます。

1 まえがき
1-1) 国民年金3号被保険者とは
1-2) 3号被保険者の特権

2 日本の公的年金
2-1) 日本の公的年金の概要

2-2) 現制度においての1号、2号、3号の年金受取額の比較計算

2-2-1) 支払う必要がある保険料
2-2-2) 受け取れる年金額
2-3) 日本の公的年金制度の財政・収支の概要

2-4) 基礎年金、基礎年金拠出金、国庫補助金(国庫負担金)について
2-4-1) 国民年金1号被保険者に対する国庫補助
2-4-2) 厚生年金被保険者と3号被保険者に対する国庫補助
2-5) 年金給付
2-5-1) 基礎年金の給付について
2-5-2) 厚生年金(報酬比例部分)の給付について
2-6) 年金積立金

3 3号被保険者制度について
3-1) 3号被保険者の実質保険料負担者
3-2) 3号被保険者制度導入時と現在の比較
3-3) 3号被保険者世帯と共稼ぎ世帯の年金額の比較
3-4) 3号被保険者制度による悪影響
3-5) 働き方の選択肢は個人にある
3-6) 経済成長・発展の阻害
3-7) 年金受給者の視点
3-8) 3号被保険者制度の再構築について

4 更に進む少子高齢化への対応

1 まえがき

1-1) 国民年金3号被保険者とは

国民年金は、国民年金法により定められた公的年金であり、政府が管掌し、国民の老齢、障害又は死亡に関して給付される。 国民年金法において、1号、2号、3号の3種類の被保険者がある。 1号被保険者とは2号又は3号でない20歳から60歳未満の者であり2号とは厚生年金保険(公務員共済組合等を含む)の被保険者であり3号とは2号の配偶者であって且つ2号被保険者の収入により生計を維持する者である。

企業であれ個人事業主であれ雇用されている場合は、2号被保険者に該当し、2号被保険者の配偶者であり、その配偶者が被扶養配偶者であり、被保険者の収入により生計を維持している場合には、その配偶者は3号被保険者となる。

[注] 厚生年金法は、4種類の被保険者を定めている。 1号は1号厚生年金被保険者、2号は国家公務員共済組合の組合員たる厚生年金保険の被保険者、3号は地方公務員共済組合の組合員たる被保険者、4号は私立学校教職員共済制度の加入者たる被保険者である。 本記事に於いては、特に断らない限り、厚生年金保険1号から4号加入者を全て厚生年金加入者として区分する。 国民年金法に1、2,3号があり、また厚生年金法に1、2、3,4号があり、混乱しそうですが。

本ブログ記事においては、単に1号、2号、3号と記述する場合は、国民年金法の1、2、3号を指すこととする。

1-2) 3号被保険者の特権

3号被保険者であれば、保険料を支払わなくて、65歳から年金を受け取れる。 年金だけではなく、医療保険も保険料を支払わずとも、3割負担で済む。

3号被保険者制度を良しとするか、どうかは社会・国民が、この3号被保険者制度を支持するかどうかであり、3号被保険者制度について、以下に分析と検討を行っていきたい。なお、3号被保険者制度を考える場合、公的年金制度全体についても考える必要はあり、可能な限り広範囲に検討を行うこととする。

2 日本の公的年金

2-1) 日本の公的年金の概要

国民年金法と厚生年金法が、日本の公的年金制度について定めている法律である。 国民年金法88条は「被保険者は、保険料を納付しなければならない。 」と定め、厚生年金法82条1項は「被保険者及び被保険者を使用する事業主は、それぞれ保険料の半額を負担する。 」とし、さらに82条2項で「事業主は、その使用する被保険者及び自己の負担する保険料を納付する義務を負う。 」との定めにより、保険料の被保険者と雇用主の50%づつの負担としている。 なお、国民年金と厚生年金の保険料を二重納付する必要はなく、国民年金法94条の6において、2号被保険者または3号被保険者である期間については、国民年金の保険料納付の必要はないとしている。

2-2) 現制度においての1号、2号、3号の年金受取額の比較計算

2-2-1) 支払う必要がある保険料

1号(国民年金)の場合は、月額16,980円の保険料を毎月支払わねばならない。 夫婦だと33,960円である。 2号の厚生年金保険の場合は、毎月の給与と賞与に18.3%を掛けた金額が保険料である。 なお、保険料は雇用主と50%づつの負担であることから、個人負担は9.15%となる。 3号は、負担ゼロである。

但し、国民年金の場合、保険料免除の制度がある。 扶養親族がおらず、前年所得が67万円以下であれば、保険料全額が申請により免除される。 78万円~158万円の範囲内であれば、3/4、2/4、1/4の納付免除が受けられる。 また、扶養親族の数により免除条件は緩和される。 なお、生活保護受給者の場合には、納付義務はない。

2-2-2) 受け取れる年金額

受給できる年金は、1号、2号、3号共通の基礎年金816千円(年額)、と2号のみが受給できる老齢厚生年金の報酬比例部分がある。 基礎年金は、20歳以降60歳までの加入年数が40年より短ければ、期間に応じて減額され、1号、2号、3号のいずれであれ共通で、加入していた期間は加入年数に通算となる。 3号被保険者は、保険料を負担しないが、基礎年金を受給でき、その受給額の計算においては3号被保険者の期間は保険料を納付したとして算出される。

2号被保険者(厚生年金)が、基礎年金に加えて受給できる老齢厚生年金(報酬比例部分)は、被保険者であった期間中に受けとった給料・ボーナス(報酬額)の合計額に対する比例計算となる。

参考として、2号(厚生年金)と1号(国民年金)の場合の年金保険料と受取額の試算予想を表1として掲げる。 3号被保険者の受取年金額は、1号被保険者と同一である。 なお、3号被保険者であっても、過去の期間に1号や2号であったこともあり得るし、2号被保険の場合でも、転職等により一時的に1号であった期間もあり得る。

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国民年金(1号被保険者)の場合は、20歳加入で60歳まで払い続け、65歳から86歳まで年金受給を受けたとすると、年金受給総額は払込保険料総額の2.1倍になる計算である。

厚生年金の場合は、保険料負担がパーセンテージ(現行18.3%)であり、受給する年金は基礎年金(国民年金と同額)と老齢厚生年金(報酬比例部分)の合計である。 更に、保険料は雇用主との折半であることから、被保険者(労働者)の観点から損得勘定を考えれば、表1の右端の欄(隠れているので、表をクリック下さい)のように保険料負担に対して年金受給予想額のリターン率は大きくなる。(また、低賃金ほどリターン率は大きくなる。) 投資のリターン率(Internal Rate of Return)で評価すると、年率で国民年金は2.1%、厚生年金の場合は被保険者観点の評価で10万円の場合4.6%、20万円の場合3.3%、30万円2.7%、40万円2.3%、50万円2.0%となる。

1号被保険者(国民年金)の場合は、定額制で毎月16,980円の保険料を払い続ければ、基礎年金が受領できる。 2号被保険者(厚生年金)の場合は、収入額の9.15%(雇用主負担を別として)を払い続ければ、基礎年金と老齢厚生年金(報酬比例部分)が受領できる。

3号被保険者については、負担がゼロであるので、3号期間のみでは∞になる。 但し、配偶者による扶養が前提であるので、結婚前や離婚・死別後の期間、1号あるいは自身が2号の厚生年金被保険者であった期間に於いては保険料を納付していると考えられ、合算され、2号と3号あるいは1号のミックスとなる。 3号は婚姻をしており配偶者の収入で生計を維持し、生活費の為の収入は配偶者に依存していることが前提であり、この前提がなくなれば3号に該当しなくなる。

健康保険については、1号の場合は市町村国保への加入となり、市町村により差はあるが、概ね住民税所得金額の10%と理解する。 2号で協会けんぽの場合は、給与総額の約10%であり、大きな差はないと思われるが、雇用主と半額ずつの費用負担である。 健保組合の場合は、基本的には協会けんぽより保険料は安い。 3号被保険者は、健康保険料の負担はない。 なお、国民健康保険の場合、雇用主による保険料の半額負担はないので、基本的には年金2号保険者より高い。

2-3) 日本の公的年金制度の財政・収支の概要

令和4年度と5年度における日本の年金財政の収支状況の概要は次の表2の通りである。

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表2に記載したように、公的年金財政において、収入で大部分を占めるのは被保険者が納付する保険料と国庫による補助金であり、支出では年金給付です。 2023年度について、保険料、補助金と給付金を図で表現したのが図1です。

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2023年度に支払われた保険料は国民年金の被保険者からが1兆3352億円で、厚生年金被保険者と雇用主分が合計40兆4157億円であり、保険料の合計収入は41兆7509億円であった。 2023年度の国庫補助金収入は国民年金で1兆8036億円、そして厚生年金で10兆2998億円であり、その合計は12兆1034億円であった。 これら保険料と補助金の合計は53兆8543億円(収入)であった。

支払われた2023年度の年金額は国民年金及び基礎年金で24兆6945億円であり、厚生年金・報酬比例部分で29兆1971億円であり、合計53兆8916億円であった。 

2-4) 基礎年金、基礎年金拠出金、国庫補助金(国庫負担金)について

基礎年金勘定は、国民年金と厚生年金に共通な基礎年金を、各制度が分担して負担する制度として設けられている。 国民年金事業に関しては国庫負担を2分の1とすることが国民年金法85条に、厚生年金保険で基礎年金拠出金の2分の1を国庫負担とすることが厚生年金法80条に定められている。 基礎年金とは、1号、2号、3号共通の制度であり、資金の流れを通して、分担に関して考えてみる。 

2-4-1) 国民年金1号被保険者に対する国庫補助

国民年金1号被保険者に対する補助金額を算出する基礎は、被保険者数であるが、保険料の納付が前提となる。 但し、申請をしての免除者となっている場合は、補助金対象者となる。 表3が国民年金(1号)被保険者の人数である。

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免除を受けていない場合、保険料の納付が年金受取の前提である。 1/4、1/2、3/4免除者は、免除後の保険料を納付すれば満額に相当する年金額の50%プラス3/4、1/2、1/4を受領できる。 申請全額免除者の年金額は国庫補助分のみなので、2分の1となる。 年金を受給できない法定免除者は、補助金対象とはなっておらず、その大部分は生活保護者と推定される。 なお、保険料免除については所得条件があり、また、申請がなければ国庫補助金相当の50%年金給付を受けられない。

現状における国民年金の保険料納付率は約80%であり、この前提で国民年金が納付されていると見做される被保険者(全額免除者を含め)の数を表3の最下欄の行に記載した。

表4は、国民年金1号被保険者について払い込まれた保険料、国庫補助金、基礎年金拠出金について2019年度から2023年度までの5年間について記載した表である。 被保険者一人あたり補助金月額の計算は、納付率80%と仮定しての金額である。

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払い込まれた保険料と国庫補助金を比較すると、国庫補助金が保険料の1.3~1.4倍である。 その理由は、補助金対象者数が納付者数より多いからである。 保険料と国庫補助金の合計額が、基礎年金拠出金となる。

2-4-2) 厚生年金被保険者と3号被保険者に対する国庫補助

厚生年金(共済組合関係を含む))について国庫補助金及び基礎年金拠出金について記載したのが表5である。 なお、3号被保険者は厚生年金被保険権者の配偶者であり、年金会計において3号被保険者分の基礎年金拠出金は、厚生年金の中から拠出される。 基礎年金拠出金に拠出された後の残額が、厚生年金の報酬比例部分の割り当てとなる。

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5年間の年間1人当たりの平均国庫補助金と平均基礎年金拠出金は、月額換算で、表4の国民年金の場合は国庫補助金の平均は15,917円であり、基礎年金拠出金の平均は27,837円となる。 表5の厚生年金の場合は、17,440円と33,633円となる。 国民年金と厚生年金で、一人あたりの金額の金額を比較すると、国庫補助金についての差は1,523円であるが、基礎年金拠出金での差は5,796円である。 国庫補助金については、両者の差は大きくない。 しかし、基礎年金拠出金ではその差が広がる。 基礎年金拠出金は、保険料と国庫補助金の合計であり、国民年金の場合は、保険料減免者が存在するので、減免者の保険料分は基礎年金拠出金が少なくなる。

国庫補助金の額を基礎年金拠出金で割り算すると0.51-0.52と言うような数字であり、基礎年金拠出金への供出は、わずかではあるが、国庫補助金の額は厚生年金保険料より多い。 厚生年金の保険料は雇用主が被保険者(労働者)より給与やボーナスから差し引いて徴収し、雇用主負担分と併せて納付する制度であり、納付率は高く99%である。

2-5) 年金給付

表4の基礎年金拠出金と表5の基礎年金拠出金が国民年金と厚生年金の基礎年金給付の財源となる。 厚生年金(共済組合関係を含む)については、表5の基礎年金拠出金が国民年金と同様に基礎年金給付の財源となり、保険料収入から基礎年金給付額を差し引いた残額が報酬比例部分の年金財源となる。 もう少し、詳細を見ると以下の通りである。

2-5-1) 基礎年金の給付について

基礎年金について基礎年金拠出金が、基礎年金として年金受給者に支給される収支を示したのが、次の表6である。 表6の1行目「国民年金からの基礎年金拠出金」は表4の最下欄「基礎金拠出金」と同額であり、表6の2行目「厚生年金からの基礎年金拠出金」は表5の「基礎金拠出金」と同額である。

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3号被保険者は、1号被保険者と同様、基礎年金のみが受給できるのであるが、その財源は2号の被保険者が払い込んだ保険料と国庫補助金の合計である。 表4の一人あたり補助金額と表5の一人あたり補助金額で大きな差はない。 補助金と保険料の合計が基礎年金拠出金として拠出され基礎年金として受給者に給付されている。

3号被保険者について、もう少し説明を加えると、表4の国民年金と表5の厚生年金で、一人あたり国庫補助金額について年度によりバラツキは多少あるが、ほぼ同額である。 表5において、一人あたり国庫補助金額を計算するにあたり、厚生年金では被保険者数として2号被保険者と3号被保険者の合計としており、3号被保険者についても、1号被保険者や2号被保険者と同額の国庫補助金が供与されている。

更には、表5において(B)/(A)が0.5強であり、国庫補助金は基礎年金拠出金のほぼ半額であることを示している。 残る半額は、厚生年金の保険料から拠出されていることを意味するのであり、この保険料とは2号被保険者が納付した保険料(雇用主負担を含め)であるが、基礎年金拠出金の計算では2号被保険者の人数と3号被保険者の人数を合算していることから、3号被保険者の保険料は2号被保険者が負担していると言える。 但し、3号被保険者を配偶者として有していない2号被保険者も負担している状態になっている。

表6では、基礎年金受給中の人数を記載しているが、この人数は基礎年金を受給している1号、2号及び3号を含む基礎年金の全受給者数である。

2-5-2) 厚生年金(報酬比例部分)の給付について

厚生年金(共済組合関係を含む))について、まとめたのが表7である。 保険料収入に国庫補助金が加わり、国庫補助金のほぼ倍額が基礎年金拠出金として供出される。 供出後に残る金額が厚生年金の報酬比例部分年金としての給付財源となる。

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表7の最下行に一人あたりの報酬比例部分の平均年金月額を記載したが、通常発表されている金額より低い金額である。 そこで、分類を細かくして年金平均額を計算したのが表8である。

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老齢厚生年金とは、65歳から受け取れる厚生年金である。 通老相当25年未満厚生年金とは、受給開始年齢を65歳以前として選択した場合、65歳以前の受給額は、原則基礎年金は受け取れず、報酬比例部分のみに減額となる。 厚生年金受給者数が基礎年金受給者数より多いのは、このことが関係していると考える。

なお、基礎年金を加算した場合の、一人あたりの老齢厚生年金の受取額は2019年度から2023年度の平均値で月額154千円となる(表6の基礎年金57,718円と表8の97,015円の合計)。

2-6) 年金積立金

2-1)~2-5)において述べたように、公的年金の保険料収入および国庫補助金収入は、ほぼ年金給付に充当されている。 しかし、収入と給付が常に合致するものではなく、差額は年金積立金への積立となったり、取り崩しとなったりする。 表9に、2019年度~2023年度における公的年金の収入・給付の差額と資金運用損益および積立金を記載した。

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国民年金と厚生年金の積立金については、GPIF(年金積立金運用独立行政法人)が管理・運用しており、国家公務員共済、地方公務員共済、私立学校教職員共済については、各共済組合が管理・運用している。 基礎年金勘定は、基礎年金の必要額を国民年金と3つの共済組合を含む厚生年金から受領し、基礎年金の給付を管理することが目的であることから、収支差は原則生じない。 公的年金全ての積立金合計は304兆円になる。 但し、積立金は各年金の被保険者が納付した保険料と年金給付の差が積み立てられ、運用された結果であるので、制度を超えてミックスすることは、ふさわしくない面もあると考える。

表9の最下2行に5年間平均の年金収支差と運用損益を記載しており、毎年の年金収支差よりも運用損益額が大きい状態である。 それぞれの期末年金積立金がその年度の給付金の何倍になっているかを図2に表示した。

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図3に、各年度の運用損益が期末積立金の何パーセントに相当しているかを表示した。 -5%から25%の間であるが、運用成績に年金毎の差はほとんど見受けられない。

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年金積立金が給付年金額の5倍以上となっていることに関する評価は、更に進むと予想される年金受給者の増加とそれを支える被保険者の負担緩和を考える必要がある。 評価方法は、シミュレーションの実施によらざるを得ないと考えるが、本ブログ記事の中では実施しないこととする。

3) 3号被保険者制度について

3号被保険者制度については、次の様なことを思うのです。

3-1) 3号被保険者の実質保険料負担者

3号被保険者は、保険料の負担はないが、基礎年金を受給できる。 第2章においても記載したが、もう一度整理し、再度記述する。 3号被保険者分の基礎年金拠出金は幾らであり、誰が負担しているかの分析を試みたのが表10である。

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基礎年金拠出金への拠出額合計(3行目)が基礎年金の給付額合計(4行目)とほぼ同額である。 実際には、当該年度の基礎年金の支給額を予測し、これを基礎年金拠出金で賄うため、その拠出を国民年金と厚生年金とに配分している。 配分の際の考え方は、被保険者一人あたりの金額であるが、国民年金については払い込まれると予想される保険料と国庫補助金の合計額とし、厚生年金については3号被保険者を加えた被保険者数に国民年金の場合の全額納付者と同じ係数(2分の1国庫負担の原則)を適用して決めている。

もう少し追加説明をすると、5、6、7行目が厚生年金(共済組合分を含む)の被保険者数である。 8行目から12行目が国民年金の被保険者数についてであり、生活保護免除者、学生免除者、申請免除者が存在し、基礎年金拠出金の計算のための被保険者数は修正の必要があり、修正を行った被保険者数が12行目である。 修正とは、例えば全部免除者は、基礎年金の受給額は50%であり、基礎年金拠出金も50%相当で計算する。

13行目が国民年金の基礎年金拠出金単価の計算結果であり、13行目は参考値として国民年金保険料を記載し、拠出金と保険料との対比を15行目に記載しており、50%国庫負担であるので、約50%となっている。 16行目と17行目は厚生年金に関する基礎年金拠出金単価の計算結果であり、基礎年金拠出金の額は被保険者と3号被保険者の合計被保険者数で評価すると、国民年金とほぼ同じ水準である。

次の表11は、3号被保険者の制度は存在せず、3号被保険者は国民年金に加入するという制度とした場合の想定計算である。 影響としては、厚生年金からの基礎年金拠出額が減少することがある。 しかし、一方で、国民年金は年金保険料収入が増加すると共に基礎年金拠出金も増加する。 このシミュレーションを実施したのが表11である。

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3号被保険者が1号の国民年金被保険者となっても、年金全体としては基礎年金拠出金の総額に、影響なし。 また、同様に総額では国庫補助金額にも影響なし。 2行目の被保険者数は3号被保険者を含んでいない人数であり、3号被保険者数の減少分、厚生年金の基礎年金拠出金は減少する。 その50%が厚生年金財政に余裕が生まれることから、これを厚生年金保険料の料率を下げることが可能となる。 この計算結果が6行目である。

一方、基礎年金の収支は3号被保険者数(表10の7行目)の増加に伴い保険料収入が増加する。 同時に、基礎年金拠出金が増加するが、その2分の1は国庫負担であり、保険料と国庫負担で拠出金増加額を賄うことになり、収支差は生まれない。 3号被保険者の移動による国民年金からの拠出金増加と保険料収入の増加を計算したのが、7行目と8行目である。

3-2) 3号被保険者制度導入時と現在の比較

2-4-2)の(表5 (2-4-2) に2019年~2023年における厚生年金被保険者数(1号と3号)を記載しているが、3号被保険者の制度は、昭和60年(1985年)の法改正で生まれ、昭和61年(1986年)4月から施行された。 1986年から2023年までの厚生年金被保険者数と3号被保険者数の推移は、図4の通りである。 厚生年金被保険者のうちで3号被保険者を有する割合を黒カーブ(右スケール)で表している。 1986年当時の3号被保険者数は、約11百万人で、1995年には12.2百万人となったが、その後減少し、2023年には6.9百万人と1995年の56%である。

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3号被保険者の男女内訳は、2023年においては女6,728千人、男129千人であり、パーセンテージでは、98.1%が女性で。その大部分が専業主婦と推定される。 専業主夫は1.9%と少ない。 しかし、制度が発足した1986年当時の男女の比率は、99.7%対0.3%であった。

2023年における厚生年金被保険者数は46,718千人であり、3号被保険者数は6,856千人である。 保険料の負担なしで年金受給を受けられる恩恵は、世帯単位として夫婦合算すれば、3号被保険者の相方の配偶者にも及ぶと考えられる。 世帯単位で厚生年金の受給を考えると、厚生年金被保険者数46,718千人のうち6,858千人は3号被保険者の配偶者であるので、恩恵を受けている。 しかし、残る約4千万人(39,860千人)は3号被保険者の恩恵を受けられずにいる。 異なった観点としては、厚生年金からの基礎年金拠出金は3号被保険者を含めた厚生年金被保険者数で決まることから、独身者等を含め約4千万人と推定される厚生年金被保険者は、高い保険料を払っている制度と言える。

この4千万人の人達について考えるにあたり、令和2年(2020年)国勢調査結果を参考にし分析してみる。 国勢調査結果での20歳から64歳の人口は67,305千人であり、2023年における厚生年金被保険者数と国民年金被保険者数の合計に更に3号被保険者数を加え総合計被保険者数を求めると67,445千人で、国勢調査結果とほぼ同一である。 そこで、国勢調査結果の20歳から64歳の男女別人口を国民年金被保険者相当の男7,307千人と女6,564千人を控除して、厚生年金被保険者数と3号被保険者の男女別人口構成と配偶者有無の人数を推定した。 この方法により推定した2024年3月の厚生年金保険の被保険者の分布は図5の通りである。 図5は、人数をベースにしていることから、婚姻中の世帯(共稼ぎ世帯と専業主夫世帯の双方)は世帯数の人数ベースでは2倍としている。

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次の図6は、1980年以後の日本のサラリーマン世帯における共稼ぎ型と専業主婦型の推移である。

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なお、図6において共稼ぎ世帯数は60%を越えている。 一方、図5の割合57%(25%+32%=57%)と少し差がある。 その理由としては、労働力調査において労働とする対象範囲と3号被保険者と認定する場合の労働時間等についての基準の差によるものと思う。

3-3) 3号被保険者世帯と共稼ぎ世帯の年金額の比較

現時点においては図5や図6のように、共稼ぎ世帯の方が、専業主婦型の世帯より多い。 そこで、現状における3号被保険者がいる専業主婦世帯と共稼ぎ世帯について、支払った年金保険料と年金の受給額予想額を世帯ベースで比較する表12を作成した。 世帯単位の比較表としているが、表1(2-2-2)の補足でもある。

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前提として、年金の受給期間を65歳から85歳までの21年間としている。 3号被保険者世帯の場合は、共稼ぎ世帯と比較して、年金受給予想額は85%から65%程度である。 しかし、払い込んだ保険料は1人分であり、言わば半分(3号被保険者が婚姻以前に払い込んだ保険料を無視すれば)である。 3号被保険者世帯は、払い込んだ保険料総額に対しては2.3倍から5.5倍の年金受給が予想され、1.9倍から4.4倍の共稼ぎ世帯より有利となる計算結果である。

自営業やフリーランス業等の1号被保険者に該当する場合は、一方の配偶者が専業主婦(夫)の場合でも、保険料の納付は義務である。 もし、納付しなければ、その分、受け取る年金が減少する。 表12の1行目の国民年金世帯は 2人分の金額としている。 保険料納付免除制度はあるが、夫婦2人の場合で、前年所得(収入マイナス必要経費)が102万円以下で全額免除となるが、前年所得が250万円以上だと4分の1免除さえも困難かも知れない。 通常の納付義務世帯の場合、夫婦二人で年間40万円強の保険料納付である。 国民年金保険料は1人・毎月という制度なので人頭税みたいだから、弱者には厳しい。 3号被保険者は優遇されていると、ねたまれるような状態になっていると思う。

年金保険料の払込と受給額・リターンの比率関係は、共稼ぎ世帯と独身世帯は同一である。 人口比では4分の1である3号被保険者世帯を優遇する合理的な理由は見当たらないと考える。 130万円の壁を崩して、全員に公平な年金制度にすべきと考える。

3-4) 3号被保険者制度による悪影響

3号被保険者の年金保険料支払免除が厚生年金保険料の料率を押し上げている点があることを、3-1)に記載した。 3号被保険者の配偶者は間接的な利益は受けているが、3号被保険者ではない共稼ぎ世帯や独身者は高い保険料を払っていると言える。

3号被保険者は、保険料負担を嫌って、短い労働時間で働き、低報酬単価を受け入れる傾向になる。 この結果は、労働市場をゆがめ、経済発展を阻害している面があると考える。 3号被保険者制度は、女性の労働報酬単価の水準を引き下げ、また3号被保険者について98.1%が女性である現実からすると、女性全体の活躍を阻害している面はあると思う。 即ち、本来であれば、3号被保険者制度がなければ、女性の社会進出はもっと多くなって来ており、高度な能力を発揮し、社会の発展が進んでいた可能性があると思うのである。

3-5) 働き方の選択肢は個人にある

働き方は多様化しており、サラリーマンの専業主婦(夫)世帯を優遇することは、現在においては社会に良い結果をもたらさない。 政府の成長戦略には、新しい働き方として兼業・副業やフリーランスなどを定着させ、リモートワークによる地方創生の推進、DXを進め、分散型居住を可能とする社会を実現すると述べられている。

また、女性活躍・男女共同参画の重点方針2024 (女性版骨太の方針2024)等では、女性活躍による企業価値向上や、女性活躍推進に資する様々な情報の普及、また、正規雇用の女性の就業継続の支援や妊娠等を契機に非正規雇用となった女性の正社員転換するための取組、企業や地域において活躍する女性人材の育成、専門性の向上と言った様なことが述べられている。

専業主婦(夫)世帯の優遇ではなく、1億総括役時代への取り組みにより日本を発展させ、より豊かな社会をつくっていこうとしているのが現在である。 専業主婦(夫)世帯の選択はあって良い。 個人の自由である。 その専業主婦(夫)世帯の年金保険料は、3号被保険者制度のよに他人に依存することではなく、自分で保険料を負担すべきである。 自営業や農業、あるいはフリーランスやギガワークの人達の世帯は3号被保険者の優遇は受けられない。 夫婦は2人分の国民年金保険料を払わねばならない。

表12 の一番上の行が自営業であり、払った保険料の2.1倍の年金しか受け取れず、5.47~2.33倍の年金が受け取れる3号被保険者世帯とは大きく異なる。 同じ日本人に対して、こんな不公平な公的年金制度を強いるのは、正しくないと考える。

制度は中立であるべきである。 制度がニュートラルであれば、正常な競争社会が形成され、社会の発展が期待される。 多少の有利・不利については止むを得ないことはあり得る。 しかし、3号被保険者制度は是正すべき制度である。 

3-6) 経済成長・発展の阻害

3号被保険者において、受け取る賃金の9.15%が厚生年金保険料として給与天引きされ、実質賃金が下がるとして、年間受取給与額を130万円以下とするように調整する人がいる。

一方、雇い主・雇用者の観点で考えると、18.3%の保険料の半分は雇用主負担であるので、3号被保険者は保険料の負担なしで利用できる安い労働力である。 3号被保険者の保険料は2号被保険者全員の負担となるわけで、雇用主にとっては安価な労働力となる。

安い労働力は、社会や経済にとって有益だろうかと言う疑問です。 技能の高い3号被保険者を低コストで利用できる状態は、結果として低成長・低発展につながり、低成長から抜けだせない要因になっているように思います。 

3-7) 年金受給者の視点

受給者について見てみる。 図7は老齢基礎年金受給者に関しての5歳毎の年齢階級チャートである。 同様に、厚生老齢年金の受給者について5歳毎の年齢階級チャートを作成したのが図8である。

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基礎年金について75歳以上は、図7が示しているように、ほぼ全ての人が基礎年金を受給中である。 なお、人口との対比を把握するために人口を塗りつぶしなしのブロックで図7に表示した。

老齢基礎年金は65歳から受給資格が得られ、65歳以上は人口比80%-85%の人が基礎年金を受給し、80歳以上はほぼ全員が受給中と見受けられる。 この状態を線チャートで見たのが図9である。

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一方、図8の老齢厚生年金について見てみると、図7と比較して、老齢厚生年金受給者数は基礎年金受給者数より少なく、その減少度合いは女性の場合に大きい。 基礎年金受給中の人と、厚生年金を受給中の人との受給者数の対比をチャートにしたのが図10である。 老齢厚生年金の受給者は、全員が基礎年金も併せて受給しているとすれば、厚生年金が対象としているサラリーマン、会社員、公務員の割合が時代と共に高くなったことを示すと考える。 85歳以上は1945年以前の生まれであり、20歳になったのは1965年以前であり、サラリーマンではなく農業に従事しておられた方も20%程度であったのではと思う。

なお、女性については、老齢厚生年金を受給中の人は、基礎年金受給者に対して35%-30%である。 現在65歳-75歳の人は、3号被保険者制度が施行された1986年(昭和61年)において、当時26歳~32歳頃である。 3号被保険者制度導入の理由には、婚姻による離職・退職の結果として無年金となる人が増加することを防ぐことがあった。 その結果、図7にあるように、女性も多くの人が老齢基礎年金を受給できている。

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現在の保険料は、免除制度を除き、一律の国民年金保険料と収入に対して料率を掛ける厚生年金保険料の2種類しか存在しない。 配偶者が3号被保険者である場合の厚生年金保険料は、そうではない独身者や共稼ぎ世帯の被保険者より高い保険料とすることも可能である。 3号被保険者は、その配偶者が雇用主に届け出を提出することで3号被保険者になるのであり、一般と3号被保険者を有する被保険者に別料率を適用することは容易に実現可能である。

3-8) 3号被保険者の再構築について

保険料を支払わずに基礎年金を満額受給できる3号被保険者制度が発足した1986年当時においては、この制度も意義があったと考える。 しかし、現段階に至っては、3-1)から3-6)に述べたように、種々問題は存在するのであり、制度の維持ではなく、改良を加え、持続性を高めることの必要性を感じる。 3号被保険者制度再構築に関する案について、以下に述べる。

3号被保険者制度を廃止する方法としての一つは1号被保険者として国民年金への加入を義務とし、年間約20万円(毎月16,980円)の保険料の納付とすることである。

他の方法としては、3号被保険者の場合、その配偶者は2号被保険者であるサラリーマンや公務員であり、3号被保険者関係届を必ず提出する。 そこで、会社や役所等の雇用主が給与等から天引きして徴収する厚生年金保険料を本人プラス3号被保険者分とすることも可能である。 この場合、国民年金保険料と同額の月16,980円とするか、或いは本人と同様に、雇用主との折半を適用して半額の月額8,490円を個人負担とする方法もあると思う。 保険料の決め方として、厚生年金保険料を現状の収入額に保険料率を乗じる方法とし、3号被保険者を有する場合と、有しない場合で異なった保険料率を適用することも考えられる。

表13に本議論の整理を記述した。 いずれにせよ、被保険者・国民が払い込む保険料総額および年金受給者が支給を受ける年金の総額は現状と同額であることを前提としている。

表13 3号被保険者の保険料納付に関する案(整理)

実施した場合の影響
3号被保険者を単純に廃止し、1号被保険者(国民年金)への加入とする。

3号被保険者に月16,980円の保険料納付義務が発生する。

厚生年金被保険者と雇用主に、それぞれ0.3-0.35%程度の保険料引き下げが見込める。 表11参照(6行目)

3号被保険者の基礎年金分保険料をその配偶者が自己分と併せて厚生年金保険料として納付する。

2号被保険者である配偶者が3号被保険者関係届の提出で手続き完了とし、3号被保険者を有する場合の保険料は、月額8,490円または保険料率を2%引き上げる。 (2号被保険者の厚生年金であるので、雇用主との折半を前提として計算)
3号被保険者を持たない場合は、被保険者と雇用主に、それぞれ0.3-0.35%程度の保険料引き下げが見込める。(注)

 (注) 下段の3号被保険者分の納付を保険料率の変更で実施する場合に、3号被保険者を配偶者とする場合と、そうでない場合で保険料率の上げ・下げ幅が異なるのは、3号被保険者を配偶者とする被保険者数6,856千人で、そうでない被保険者数39,862千人である対象被保険者数の差による。

表13は、3号被保険者をなくすのではなく、保険料支払いについてイコールフーティングとする案を記載した。 3号被保険者が既に獲得している権利を侵害することは、問題があると考える。 1986年の制度導入と同時に、専業主婦は国民年金加入が許されなくなった。 夫の収入で、子育て育児をこなし、自らは専業主婦として生活することは、合理的な選択肢の一つであった。 独身でいることも、結婚して共稼ぎを続けることも、出産・育児等の休業も、専業主婦・夫も、離婚もすべて個人の自由である。 公的年金制度が、生き方による有利・不利を生み出してはならない。

3号被保険者として現在受給を受けている権利は引き続き継続すべきである。 年金とは、長期間の契約である。 公的年金とは個人と国政府・厚生労働省との長期契約である。

4) 更に進む少子高齢化への対応

今回のブログ記事内では、触れていないが、検討すべき重要な事項として、少子高齢化への対応があり、この検討を避けることはできない。

できる限り早い時期に分析を実施し、本ブログで紹介したいと思います。 ちなみに、2024年の現時点の年齢階級別人口、10年後にあたる2034年の予測そして2044年の予測のそれぞれの人口ピラミッドを図11として掲げます。

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図11の元データから年金保険料を負担する世代として25歳から60歳世代の人口と年金を受給する66歳以上の世代の人口を比較したのが表14です。 20年先の2044年は、ともすれば随分先に感じるが、今50歳の人は70歳。

将来の問題ではなく、今の問題として考える必要があると思います。 問題発生の予想があった場合は、その緩和策の検討を重ね、早期に対策を実施することが重要と考えます。 早く書きたいとは思いますが、少し時間の猶予を頂きたいと存じます。

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本ブログを書くにあたり、参考とした資料は以下です。
・ 令和5年度財政状況ー国民年金・基礎年金制度ー
・ 令和5年度財政状況ー厚生年金保険(第1号)ー
・ 令和5年度財政状況ー国家公務員共済組合ー
・ 令和5年度財政状況ー地方公務員共済組合ー
・ 令和5年度財政状況ー私立学校教職員共済制度ー

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2024年11月19日 (火)

103万円の壁を考える

所得税の103万円の壁をなくすという変な議論がある。

1) 103万円の壁とは

1-1) 基礎控除48万円

所得税には、基礎控除という概念がある。 基礎控除の金額は、48万円であり、経費を差し引いた後の所得金額が年間48万円以下であるならば、申告納税する必要はない。 従い、所得金額が50万円の場合はとなると、(50万円-48万円=)2万円X5%=1千円が所得税の額となる。 復興税を無視しています。

1-2) 103万円とは

他者(他人であれ会社や法人、役所であれ)から給与の支払いを受けて、働いている場合には、給与所得の扱いとなり、給与所得控除が適用される。 給与所得控除は年間給与額が162.5万円以下なら、55万円である。 年間給与額55万円なら給与所得額ゼロとなる。 100万円なら45万円となるが、50万円の基礎控除があるので、所得金額としてはゼロである。 103万円なら給与所得控除55万円を差し引いて48万円となるが、これから基礎控除が差し引かれるとゼロになる。

1-3) 給与所得110万円の場合

55万円と48万円が差し引かれるので、所得金額7万円となる。 これに所得税率5%で計算して3500円が所得税となる。 すなわち、計算は180万円までは、(給与所得総額-103万円)X税率5%であり、壁のように立ちはだかるわけではない。 103万円を超えた分について5%の税率で所得税がかかるのである。

給与所得総額358万円までは税率5%であり、103万円の位置に大きな壁があるわけではなく、給与所得控除も給与が増加するにつれ大きくなり、358万円の場合は給与所得控除額は115.4万円である。 これに、基礎控除48万円が加わると控除額は合計163.4万円となり、給与総額358万円から163.4万円を差し引いた194.6万円に所得税率5%を掛けた94,500円が所得税額である。

2) 過去の基礎控除と給与所得控除

1975年以後の基礎控除と給与所得控除の額の推移を描いてみた。 図1がそれである。

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50年前と比べてどうか? 1975年の消費者物価指数は53.1であり2023年は105.6であり、1.99倍になっている。 しかし、10年前、20年前の2013年や2008年と比べると、消費者物価指数はそれぞれ8.3%と10.6%増加している。 しかし、図1を見て私が思うのは、デフレの日本経済という判断である。1995年からの10年間でマイナス0.4%、2005年からの10年間でマイナス0.6%、2013年からの10年間でプラス11.2%である。 しかし、この10年間で11.2%とは、年率にすると1%である。

年率1%の是正のために基礎控除や給与所得控除の見直しが必要とは思えないのである。 そんなことをするなら、通常の所得税を2.1%多く徴収する復興特別所得税を廃止すべきである。 2014年の改正で導入された税制であるが、法人については2年間で終了した。 個人については2037年までなので、まだ14年間継続する。 金額が細かく源泉徴収事務等をされている方の事務作業も大変である。 税制は合理的であるべき。

3) 103万円に壁がある人

給与収入が103万円を越えると負担が増加する人も存在する。 それは、19歳、20歳、21歳または22歳の子どもを持ち、その子どもを扶養している場合である。 特定扶養親族となり、所得控除としての扶養控除が一人につき63万円受けられ、税率10%なら6.3万円低くなる。 

なお、18才以下の子どもの扶養に関しては、2020年から扶養控除は見直し・廃止された。 理由は、子ども・児童手当毎月一人1万円・・や高校授業料無償化の拡大であり。 所得税や住民税の調整ではなく、必要な人に妥当・合理的な金額を政府・自治体が支給するという方法は間違っていないと考える。

特定扶養親族に対する扶養控除も廃止をし、大学・専門学校・職業学校・各種学校を含め高校卒業後に専門分野・技能・能力開発等を目差す若者を支援する制度をつくるべきと考える。

4) 130万円の壁は3号被保険者制度廃止での対応を求める

3号被保険者であり続けたいと思っておられる女性は、どれほどおられるのだろうか。 働けるなら、働きたいと思っておられる方が大部分であると思うのである。 女性の年金問題としてこのBlogを書いたので、今回は余り触れないが、3号被保険者制度廃止により女性は何も損をしないのである。

制度は複雑になれば、制度の網を破って抜け駆けをしようとする人が出てくる。 というか、複雑な制度になってしまうと、トリックのように抜け穴ができたり、作られたりする。 悪い奴らに騙されてはいけない。

5) バカな税である法人事業税の都道府県民税の外形標準課税は早急に廃止を求める

実にバカで不合理な税である法人事業税の外形標準課税である。 日本は、共産主義・全体主義でないはず。 法人には、利益に見合った税を課すべきである。 こんなバカげた税が日本をダメにしている。

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2024年10月27日 (日)

政府財政の立て直しに向かっていって欲しい

衆議院選挙の後に期待したいこと。 それは、政府財政の立て直しである。

1) 令和6年度歳出予算(省別)

令和6年の歳出予算を省毎の金額にすると次表の通りである。

Budgetr6a

総額は、112兆5717億円であり、GDPを615兆円と想定すると対GDP18.3%である。 112兆円のなかで、金額が大きいのは厚生労働省33.8兆円、財務省30.2兆円と総務省の18.2兆円がいずれも10兆円を越える歳出予算である。 ちなみに、この3省に続くのは、防衛省7.9兆円、国土交通省6.1兆円となる。

2) 3省合計73%(82兆3千億円)の歳出は何であるか

3つの巨額の歳出がある省の予算の中で金額が大きい歳出を抜き出してみる。 厚生労働省については、次の表である。

Budgetr6b

医療保険の関係が8.7兆円、介護関係が2.5兆円、生活保護が2.7兆円、障害者関係が1.6兆円、基礎年金が12.7兆円である。 医業・介護での11.2兆円も基礎年金の12.7兆円の国庫負担も双方とも重要である。

総務省の18兆3814億円のうち16兆6543億円は地方交付税交付金の歳出予算である。 地方交付税は、規準財政収入額が基準財政需要額に満たない地方自治体(と言ってもほとんどであり、例外は東京都他の金持ち自治体)に対する地方交付税の予算である。 これも現在の地方自治制度に関係し、現状を変更することは容易ではない。

財務省の30兆2777億円のうち27兆90億円は、国債費であり、17兆2957億円が債務償還費、9兆6910億円が利子・割引料で、その他は224億円である。 なお、財務省の30兆2777億円には、原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費として1兆円、そして予備費1兆円の合計2兆円が入っている。

3) 国債残高

令和5年度末(2024年3月末)の普通国債残高は1068兆円の見込みである。 そして令和6年度末(2025年3月末)の見込みは1105.4兆円と財務省は発表している。 37.4兆円残高が増加する訳だが、国債残高を維持するためには、総額112兆5717億の歳出を37.4兆円減額し、75.2兆円にする必要がある。 3省合計で82兆3千億円なので、75.2兆円にはできない。 但し、歳入を増やせば可能であり7兆円の増税をすればとなるが、現状の政府歳出を維持するなら37.4兆円の増税が必要となる。

なお、令和5年度末(2024年3月末)および令和6年度末(2025年3月末)の国債残高のGDP比は178.8%と179.6%である。

4) 医療費と年金

令和4年度(2022年度)の医療費は46兆6967億円(保険対象外医療や差額ベッド料等は除く)であった。 そして、支給された公的年金(厚生年金、国民年金、公務員共済等)の合計は53兆3986億円である。 

次の図は、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口予測(出生中位・死亡中位)から作成した人口分布予測図である。 高齢化は、ますます進むのである。

Budgetr6c

75歳まで働いて、75歳から年金生活というのが、間もなくやってくるような気がする。 いずれにせよ、そのような時代に幸せに生きることができる体制をつくらねばならない。 現状では望めず。 財政基盤がしっかりした政府をつくらねばならない。 選挙が終わったので、増税と国債残高の減少を目差し、あかるい未来を切り開いて行って欲しい。

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2023年12月17日 (日)

年金減額を正しいと判断した裁判所に賛同する

12月15日に最高裁は年金減額を違憲として争っていた裁判に対して、上告を棄却した。

日経新聞の記事「国の年金減額「合憲」確定 最高裁判決、受給者ら敗訴」はここにあります。 また、最高裁の判決はここにあります。

次の図は、日本における年金保険料納付世代の20歳から64歳の世代と年金を受給する65歳以上の世代の人口をグラフにしたものです。

Pension202312a

19歳以下の人口は含んでいませんが、50年で40%減少して、60%になると予想されています。 データは、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位(死亡中位)推計からです。 

現在の基礎年金の制度である20歳からの納付義務世代と65歳以上の受給権世代の人口対比をグラフ化したのですが、今現在の制度では確実に破綻すると予想されます。 2070年には納付世代と受給世代の人数が同数になるのです。 無理のない納付金額にしないと納付できません。 受給者は制度維持に協力すべきです。 破綻したなら、受給者は年金を受給できなくなるわけで、責任論では解決にはならない。

年金の制度に100年安心なんてあり得ないのである。 納付額は今よりあがるのでしょうね。 受給開始は遅くなり、金額も減少する。 そんなことが予想されるが、一度シミュレーションをして報告します。 最高裁は、政治家とは異なり、信頼できる人達であると思いました。 正しいか、間違っているか、それは表面のことのみではなく、深い部分も考慮して判断すべきであります。

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2023年10月11日 (水)

頭が混乱の年収の壁

次は、9月25日の岸田首相による「経済対策についての会見(このWeb )」の中での発言ですが、これが理解ができた人は、知識・造詣が相当深い人だと思います。

130万円の壁」については、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中ですが、まずは「106万円の壁」を乗り越えるための支援策を強力に講じてまいります。具体的には、事業主が労働者に「106万円の壁」を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当、これを創設いたします。こうした手当の創設や、賃上げで労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の新メニュー、これを創設いたします。こうした支援によって、社会保険料を国が実質的に軽減し、「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するようにしてまいります。政府としては「106万円の壁」を乗り越える方、全てを支援してまいります。このため、現在の賃金水準や就業時間から推計して、既に目の前に「就労の壁」を感じておられると想定される方々はもとより、今後、「壁」に近づく可能性がある全ての方が「壁」を乗り越えられるよう機動的に支援できる仕組みを整え、そのための予算上の措置を講じてまいります。

1) 106万円の壁

パート労働者が年収106万円を超えると社会保険(厚生年金と健康保険)の適用となり、社会保険料の負担により収入ダウンになるという話であります。 何故収入が減少するかというと、社会保険料の負担からです。 事業所所在地が東京である場合には、保険料率は厚生年金保険料(18.3%)と健康保険料(協会けんぽの場合10%(40歳以上は11.82%))です。 この保険料の負担は、雇用者と労働者が50/50の折半です。 もし、年間給与額が106万円を超えると費用負担が発生する。 仮に、110万円だと、雇用者も労働者も155,650円の負担増であり、106万円で費用負担なしの時と比較すると、収入総額は4万円増加しても、手取りは944,350円であり、115,650円減少する。時給1,000円だとすると116時間分も損をする計算になる。 一方、雇用者にとっても155,650円の負担増となり人件費は1,255,650円となる。

もし時間給単価が同じだとするなら106万円の手取り給与を得るためには、1.165倍働く必要が出てくる。今まで8時間働いていたなら9時間20分働かないと同一賃金額が得られない。

2) 106万円の壁の根拠

労働者は全員が社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険)のカバーを受け、雇用主は社会保険の付保義務がある。本来なら、パート労働者も社会保険の対象であるが、週20時間未満で賃金月額8.8万円未満であれば、厚生年金と健康保険の適用対象外となり、保険料納付の必要がないとなる。8.8万円を年間分とするため12倍にすると、105万6千円で、106万円という訳である。

3) 130万円の壁

現在は106万円の壁が適用されるのは、500人超の事業所であり、2024年10月に50人超の事業所となる。現在500人以下の事業所では、1週間の労働時間および1月の労働時間が正社員の4分の3未満のパートやアルバイトの短時間労働者は厚生年金・健康保険の適用対象にならない。 短時間労働者の場合であっても、正社員の4分の3未満の短時間労働でないなら、社会保険の対象となる。

では、130万円の壁とは、何かであるが、3号被保険者(国民年金法第7条1項3号)の対象者が恒常的な収入が130万円未満となっていることである。130万円以上の収入があっても、厚生年金で対象外となれば国民年金に加入し年金保険料を納付する必要が生じる。 毎月16,520円の保険料である。 130万円の年収の場合、厚生年金保険料は19,825円であるが、労働者分だけなら半額の9,912円で済む。 国民健康保険料は、市区町村により異なるが、月々10,000円以上になるのではと思う。年130万円の給与なら、協会けんぽで年153,660円だから、労使折半なら76,830円であり、本人負担は年12万円より安い。

この計算では、130万円の壁は、おそろしく大きく、国民年金と国民健康保険の保険料の年間負担は318,240円であり、24.5%になり、結構大きな壁である。 厚生年金と協会けんぽの場合の、労働者負担額は130万円の場合、183,950円(40歳以上で介護保険料も加算される場合195,780円)である。 

4) フリーランスの場合

フリーランスの場合は、どのようになるか考えてみたいと思います。 20歳以上は国民年金1号被保険者であり、国民年金の加入義務があり、3)で書いたように毎月16,520円の保険料を支払う必要がある。 但し、前年の所得に応じて、保険料免除を受けることは可能である。 例えば、前年所得が32万円以下は全額免除、168万円以下は25%免除。 免除を受けた場合、免除額に相当する将来受給を受ける年金額は減少するが、それでも50%以下にはならない。 何故なら、国民年金は50%が税金を財源として支払われることになっているからである。

国民健康保険料について、3)で月々10,000円以上と記載したが、住民税の課税所得の10%程度と思う。 最高保険料は年100万円程度である。 保険料率は、協会けんぽと比較すると、雇用者・労働者の合計額では安いが、労働者負担額で比べると国民健康保険の方が高いと、言える。

フリーランスや個人自営業者は、雇用主が存在しないわけで、全額自己負担になる。法人化しても、雇用主のオーナーが自分であれば、合算すればかえって費用は高くなると言える。

5) 厚生年金の受給額予想

健康保険の場合、その医療費カバー率は同一と考えれば、差は保険料である。 一方、年金は国民年金の場合、65歳から年間795,000円の年金を受給できる。 厚生年金の場合は、年間795,000円に加えて、次の計算式で計算した金額との合計額が年金額となる。(クリックで拡大)

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10万円、20万円、30万円、40万円、50万円を報酬の月額とし、ボーナスは年間3月相当額が支払われ、加入月数を480月とすると次の様になった。(クリックで拡大)

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年金受給期間を85歳までとしたのは、25歳の時の平均余命男55.2年、女61.8年からすれば、男80.2歳、女86.8歳となるが、これを男女の区別なく85歳までの受給とした。

6) 国民年金の受給額予想と厚生年金との比較

国民年金の保険料支払い義務は20歳から60歳までであり、毎月16,520円を12月・40年間払うと総額7,929,600円となる。受取年金額は厚生年金の基礎年金額と同じ795,000円。 65歳受給開始で85歳まで21年間受け取ると合計は16,695,000円になり、払込総額の2.1倍に相当する。

国民年金は保険料が高いが、給付される年金額は高くなく不十分との感覚を持ってしまうが、実際に計算をすると、極めて高利回りの投資と言える。 何故、そんな高利回りになるのかと言えば、保険料と同額が税金で補助されるからです。 NISAよりも、はるかに高利回りで、リスクも低い投資と言える。

それでは、厚生年金は月額報酬が高くなるほど、受給額へのリターンが悪くなるが、これは何故か? 一つは、定額支給となる基礎年金と報酬比例年金の2つの合計であり、基礎年金は報酬がゼロに近くても満額支給となるからである。 (なお、実際には年1500時間程度の労働になると思うので、時間1200円として年180万円(月15万円程度かと思うが)

もう一つの理由が、3号被保険者である。 3号被保険者は、保険料の負担がなく、基礎年金を満額受領できる訳で、投資ゼロで毎年795,000円が受け取れる。 (厳密には2号被保険者の配偶者なので、配偶者でなかったときは、国民年金保険料か厚生年金保険料を納付していることが必要である。)

保険料を払わずとも、年金を支払えるようにするには、誰かの分を減額するしかない。 厚生年金の中の高額所得者の受給額を減額して、それを保険料を支払わない3号被保険者の年金支払いに回しているのである。 専業主婦の場合の配偶者が高所得者であれば、丁度辻褄が合うようにも思える。 しかし、男女平等社会において、3号被保険者制度は配偶者の一方(多くの場合は女)の働き方に制限を加えることとなっている。 これこそが、大問題と言える。 また、配偶者を持っている場合は、配偶者が3号被保険者制度の恩恵を受けるが、配偶者がなければ恩恵は得られない。 独身者は106万円、130万円の壁に無縁であるだけでなく、壁のために調整している3号被保険者の年金資金まで負担しているのである。

なお、自営業者(やフリーランス)は国民年金であるから、その配偶者は3号被保険者とはなれず、夫婦でそれぞれ年金保険料を納付する。

7) 3号被保険者という悪制度が生まれた理由

1980年(昭和60年)改正で3号被保険者制度が創設された。 それ以前、専業主婦は国民年金任意加入であり、加入しない人もいた。 離婚をすると、無年金の恐れあり。 この解消とも言われているが、基本的には当時の社会は、国民全員が支える国の年金制度として歓迎したと思う。 夫はモーレツ社員で妻は専業主婦のスタイルが支持を集めていた時代には、そのようなスタイルを支援する制度が共感を得、支持される。 それが、3号被保険者制度が生まれた理由であると私は考える。

多様化した現代に3号被保険者制度は合わない。 多様化する社会、グローバル化で国境を越えて分業・競争が行われ、下手をすると簡単に取り残される。 1980年から半世紀近くになる現在、社会の仕組みをどしどし変えていかなくては、我々の生活を維持できなくなると考える。 どう改革すべきか、議論が必要である。

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2019年6月24日 (月)

年金のことをまじめに考える(その2)

年金について、続けて、少し追加で書きます。

1) 厚生年金の受給額予想

グラフで示すのが一番分かりやすいと思うので、グラフを作成しました。

Pension2019624

青線が、受け取り年金額(年額)の予想です。厚生年金保険料は収入額の9.15%(会社負担との合計では18.3%)なので、収入が多い人ほど多くの保険料(掛金)を支払う。その分、受け取る年金も増える。青線は、右肩上がりの直線です。

しかし、現役時代の年収額と受け取り年金額を比較すると、黄色線のように年収3百万円であった人は約40%相当の年金額であるのに対し、9百万-1千万円の年収の人は26%程度となってしまう。

世帯ベースで考えることとし、妻が3号被保険者であった場合は、世帯ベースでは妻の基礎年金が加わるので、現役時代との受け取り年金額の比較は次のグラフのようになる。

Pension2019624b

年収5百万円であった場合、48%という結果になった。世帯年金額ベースでは、年収5百万円の場合は、約240万円である。共稼ぎ世帯の場合は、報酬比例部分が更に加わるわけで、国の制度としての年金としては、十分とは言えなくとも、この程度でも許容範囲かなとも思った。

2) 非正規労働者対策

直前のブログで厚生年金に加入できていない非正規労働者問題についても触れた。国民年金の保険料は月額16,410円なので、年額では196,920円である。年間収入が2百万円の場合、9.85%に相当するわけで、厚生年金の自己負担保険料9.15%より高い。にもかかわらず、受け取る年金額は基礎年金部分だけなので、仮に年収2百万円で厚生年金に加入している人の年金受給額102万円と比べると年間38万円以上少ないこととなる。同じ負担で、受給できる額に38万円の差がある。10年で380万円であり、20年間では760万円の差である。

もし、夫婦共に非正規労働者で、2人とも厚生年金に加入できていないとすれば、世帯で受給できる年金額は156万円であり、年収2百万円で妻パートの非正規労働の場合の年金額で180万円より24万円少ないのである。しかも、支払った保険料で比べると、非正規共稼ぎの40年間に支払った保険料は1575万円になるが、厚生年金に加入できている人の支払った保険料は787万円であるから、788万円多く保険料を支払ったにもかかわらずである。世に不公平はあるが、是正すべき不公平。是正に向けて取り組むべき不公平である。

3号被保険者になれるのは、夫婦の一方が働き厚生年金に加入できている場合であり、この結果は大きな社会的不公平を生み出していると考える。一方では、年間収入を130万円以下に抑え3号被保険者となるように意識的に働いておられる方もおられる。そのような方々を見捨てることは良くないが、結果的に低賃金労働や非正規労働の増加につながっている面はあると思う。

年金制度は、政治家が足の引っ張り合いをするためにあるのではない。働く人が、生涯にわたり公正な扱いを受け、納得のゆく生活をおくれるようにあるのである。

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年金のことをまじめに考える

金融庁の「老後2000万円」報告書についても、大臣が受け取り拒否をするのは変であるとの意見も最近では出されるようになった。いずれにせよ、年金についての現状・実情を正しく理解することが出発点である。そう考え、思いつくことを書いて見る。

1) 公的年金が老後の必要経費の全てをカバーすべきか?

その人の生き方や思想・哲学の問題だろうか?何歳まで、働き、何歳からは年金や預金等の取り崩しによる収入で生活するかは、人それぞれと言える。働いても、税金と年金・健康保険の保険料で余裕が全くないというよりは、少しでも貯蓄等に回せて、老後を含め備え・蓄えを確保するのが良いと言える。どうバランスを取るかは、個人の自由であるとするなら、ある程度の年金保険料。すなわち、国民が納得できる保険料水準とすべきである。

ちなみに変な計算をすると。人生90年、100年として、23歳から70歳まで働き、70歳から20年または30年の年金を受け取るとする。利息と物価上昇がイコールとすれば、20年または30年の年金 を47年間で払うのだから、年金の額を働いていたときの50%として、年金総額は100 x 20 (or30) x 50% = 1,000 (or 1,500)となる。これを 47年間で払うとすると、21.27 (or 31.91)となる。

21.27 (or 31.91) と言う数字は、大変な金額であり、年金のことを、政治家やマスコミは好き放題に批判しているが、まじめに考えるとウーンとうなる様なことになるのである。なお、年金を払わず、貯蓄もしない人ばかり出てしまうと、高齢生活保護者となるわけで、個人の問題として片付けず、年金制度を社会的問題としても扱う必要がある。

2) 現行の保険料と年金給付

 2017年9月で料率アップはなくなり18.3%となった。1)の計算よりは、安いこととなるが、平均寿命や余命の取り方でも変わる。なお、18.3%は被保険者(個人)と雇用主(会社等)で50%づつの負担となるので、個人ベースでは9.15%である。すなわち、お得となっている。

さて年金給付額であるが、基礎年金(満額732,090円)と報酬比例年金額(加入期間の年収合計 x 0.005481)である。

ボーナス込み年収700万円で35年間が加入期間であるとすると、1626円 x 0.938 x 35年 x 12月 = 640,578円と700万円 x 35年 x 0.005481 = 1,342,845円の合計1,983,423円である。支払った保険料は、700万円 x 35年 x 18.3% (or 9.15%)なので、44,835,000円 (or 22,417,500円)である。 20年または30年の年金を受け取るとすると、39,668,460円または59,502,690円となる。ブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、22.6年間年金を受け取った場合となる。

この同じ計算を年収500万円で行うと、年金額1,599,753円であり、20年または30年の年金額は31,995,060円と47,992590円となり、 ブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、20.0年間となる。実は、日本の公的年金制度は、高所得者から低所得者に対して所得移動がなされ所得再配分がなされるように設計されているとも言える。

3) 年金の不公平

高所得者と低所得者は、払った年金の保険料と受け取る年金額を比較すると、高所得者が不利であると述べた。理由は、受け取るべき年金額の計算式の第1項は払った保険料額とは無関係であり、被保険者であった期間の年数のみの計算であるからである。実は、この第1項は基礎年金部分であり、国民年金部分に相当する。そして、この部分は、50%が政府(税金)負担となっている。

そこで、第1項の基礎年金部分を半額として計算するとブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、700万円の場合27.0年間で、500万円の場合25.0年間となる。下のグラフは、第1項は半額としていない場合である。

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なお、もう一つ高額所得者が年金の受領において不利になっている理由がある。それは、第3号被保険者である。 ちなみに第3号被保険者とは、国民年金法第7条第1項第3号の該当者であり、「厚生年金保険の被保険者の配偶者であつて主として被保険者の収入により生計を維持するもの」となっている。年金の扱いは、国民年金被保険者と同じであり、最大年間780,100円の年金を受給できる。この財源はと言うと、基礎年金なので50%は政府(税)であり、残る50%は他の厚生年金の被保険者の負担である。いわゆる専業主婦が大部分であり、その様な場合、夫が高収入である場合が多いと言える。そうなると、高所得者の年金は低くなって当然であり、世帯単位で夫婦合算すると話は少し異なる。

きわめて、複雑であるが、独身者や共稼ぎ世帯は、特に高所得になると、不利になっていると言えるように思う。

4) 年金だけで生活できるか

収入に合わせて生活費を工夫している面があり、答えは単純ではない。3)で述べたように、高所得者の年金受取額は負担した保険料と比較すると低くなる。厚生年金の場合は、上限額が月額63万円、ボーナス最大1回150万円なので、年収1000万円以上は、払う保険料も受け取る年金額も同じとなる。計算をすると、年間255万円以上の厚生年金を受領することはできない。そうなると、金融庁報告書の平均的な場合の支出額月263,718円を12倍すると316万円となり、不足するが、妻の基礎年金78万円を足し合わせると333万円であり、世帯ベースではクリアできることとなる。

でも、年収1000万円の場合の年間支払い年金保険料は915,000円であり、相当の負担であると言える。そうなると、受け取り年金額が低いと思う人は、貯蓄等をして備える以外に方法はない。貯蓄等を考える場合に、一番有利なのは、金融庁報告書にある年間40万円までの積立投資について運用益が非課税となるNISAと非課税扱いとなっている個人型確定拠出年金iDeCoが一番候補として考えられる。ここまで来ると、金融庁の報告書は正しいとなる。

5) 日本の公的年金制度の問題点

大きな問題と思うことを2点あげておく。

一つは、非正規労働で厚生年金に加入できておらず、国民年金となっている人についてである。満額でも年額780,100円である。月額にすると65千円。農家や商店のような個人事業主なら、何歳になっても働くことができるわけで、高齢となった場合の下支えとしての国民年金で機能した。しかし、非正規労働者となると、高齢化して良い仕事を得られると不安は大きいと思う。厚生年金問題としてより、非正規低賃金労働問題として取り組むべきと考える。

もう一つは、2)の厚生年金の計算で60歳まで35年間働いたと仮定した。実は、現行の制度は、60歳以上働くと、年金が不利になる制度となっている。例えば、国民年金法昭和60年5月1日改正の附則第8条第4項により「当面の間、60歳以降に支払われた保険料は基礎年金の計算期間に算入しない」となっており、これが続いている。60歳以降の保険料は料率が同じでもは、比例部分にしか反映されない。一方、60歳で受給資格を得るが、収入に応じて減額されるので、ゼロの人も多い。支給開始年齢が65歳や70歳に改定されるときに、この不公平な扱いは解消さえると思うが、実は余り誰も知らない不公平である。

 

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2019年6月12日 (水)

「老後2000万円」報告書は不適切なのか?

金融庁の「老後2000万円」報告書と言われているのは、金融庁の金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書であり、このページに掲載されている。年金は、厚生労働省の管轄である。しかし、年金について、国民はもちろん政府の他の省が分析し、意見を述べても何の問題も無い。ちなみに、この金融審議会が設置された目的であるが、この麻生大臣の諮問にあるように、「市場・取引所を巡る諸問題に関する検討」である。FinTechの高度化に対する対応は検討課題として重要であり、この資料が第1回会合の際の事務局説明資料である。高齢化対応が含まれて当然のことである。

報告書において、「老後2000万円」について何と述べているかであるが、10ページの中央に「高齢夫婦無職世帯の実収入と実支出との差は、月5.5万円程度となっている。」とする横棒のグラフが掲載されている。実は、この月5.5万円赤字という数字の出所は、下に掲げた総務省の家計調査(2017年)なのである。この数字が、実態を反映しており正確なのか、調査が不十分なのか、議論するのが本筋である。金融庁や金融審議会をたたいても何も得る所はない。バカの政治家とマスコミと日本国民というわけである。総務省家計調査に関する議論をすべきが、お門違いの攻撃をしているバカたちである。

Pension2019612

当然の計算として、報告書16ページのように「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約1,300 万円、30 年で約2,000 万円の取崩しが必要になる。」との文章となる。金融庁は、この報告書の撤回なんて絶対にして欲しくない。

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2018年3月21日 (水)

早く年金機構を解散すべき

2015年6月2日のこのブログで日本年金機構解体論を書いたが、日本年金機構は解体されずに今も不祥事をかさねている。

時事ドットコムの次の記事は「受給者軽視」と批判している。

時事ドットコム 3月20日 改善しない受給者軽視=甘い業者選び露呈-年金機構

公的年金は社会の根幹の制度である。年金保険料を強制的に徴収しており、それは公的年金であるからこそ可能なのである。そして、それを制度に従って給付する。この徴収と給付に間違いがあっては、誰もその制度を信用できなくなる。バカらしくて、年金保険料を払いたくなくなる。

このような重要な制度であるからこそ、厚生年金保険法第2条は「厚生年金保険は、政府が、管掌する。」となっており、 国民年金法第3条1項も同様に「国民年金事業は、政府が、管掌する。」となっている。ところが変な日本年金機構という役立たず法人が設立されている。 日本年金機構法第1条は絵空事から始まる。

第一条 日本年金機構は、・・・、厚生労働大臣の監督の下に、厚生労働大臣と密接な連携を図りながら、政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業・・・に関し、厚生年金保険法及び国民年金法の規定に基づく業務等を行うことにより、政府管掌年金事業の適正な運営並びに厚生年金保険制度及び国民年金制度に対する国民の信頼の確保を図り、もって国民生活の安定に寄与することを目的とする。

どう考えても、こんな絵空事に意味があるわけはない。日本年金機構法を廃止すべきである。国民が選んだ政府が管掌するとの法律があるのに、厚生年金保険法の場合は、10条の4なる条文を追加して、日本年金機構に多くの事務を行わせる事にしている。

今回の事件の原因の一端は扶養親族等申告書の様式変更がある。本来、こんなものが必要なのかである。個人番号制度を取り入れれば、不要な申告書であると言える。百歩譲って、今回は、この扶養親族等申告書を年金受給者から入手するとしても、手持ちのデータと違っていた場合に、問い合わせをして、修正をすれば良いのである。個人番号も分からずに年金を支給しているなんてバカな事があって良いはずがない。個人番号があるからこそ、不正受給を防げ、また制度に基づく正当な年金支給ができるのである。

年金機構を解体し、国税庁と統合し、歳入庁を設立して欲しい。認知症になっても、年金が滞りなく支給され、ケアをする人々や施設も安心してサービスを提供できるようにする。年金のみの問題ではないが、年金は重要な部分を占める。日本年金機構を解体し、豊かな社会をつくっていくことを目指したい。

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