2023年12月17日 (日)

年金減額を正しいと判断した裁判所に賛同する

12月15日に最高裁は年金減額を違憲として争っていた裁判に対して、上告を棄却した。

日経新聞の記事「国の年金減額「合憲」確定 最高裁判決、受給者ら敗訴」はここにあります。 また、最高裁の判決はここにあります。

次の図は、日本における年金保険料納付世代の20歳から64歳の世代と年金を受給する65歳以上の世代の人口をグラフにしたものです。

Pension202312a

19歳以下の人口は含んでいませんが、50年で40%減少して、60%になると予想されています。 データは、国立社会保障・人口問題研究所の出生中位(死亡中位)推計からです。 

現在の基礎年金の制度である20歳からの納付義務世代と65歳以上の受給権世代の人口対比をグラフ化したのですが、今現在の制度では確実に破綻すると予想されます。 2070年には納付世代と受給世代の人数が同数になるのです。 無理のない納付金額にしないと納付できません。 受給者は制度維持に協力すべきです。 破綻したなら、受給者は年金を受給できなくなるわけで、責任論では解決にはならない。

年金の制度に100年安心なんてあり得ないのである。 納付額は今よりあがるのでしょうね。 受給開始は遅くなり、金額も減少する。 そんなことが予想されるが、一度シミュレーションをして報告します。 最高裁は、政治家とは異なり、信頼できる人達であると思いました。 正しいか、間違っているか、それは表面のことのみではなく、深い部分も考慮して判断すべきであります。

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2023年10月11日 (水)

頭が混乱の年収の壁

次は、9月25日の岸田首相による「経済対策についての会見(このWeb )」の中での発言ですが、これが理解ができた人は、知識・造詣が相当深い人だと思います。

130万円の壁」については、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中ですが、まずは「106万円の壁」を乗り越えるための支援策を強力に講じてまいります。具体的には、事業主が労働者に「106万円の壁」を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当、これを創設いたします。こうした手当の創設や、賃上げで労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の新メニュー、これを創設いたします。こうした支援によって、社会保険料を国が実質的に軽減し、「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するようにしてまいります。政府としては「106万円の壁」を乗り越える方、全てを支援してまいります。このため、現在の賃金水準や就業時間から推計して、既に目の前に「就労の壁」を感じておられると想定される方々はもとより、今後、「壁」に近づく可能性がある全ての方が「壁」を乗り越えられるよう機動的に支援できる仕組みを整え、そのための予算上の措置を講じてまいります。

1) 106万円の壁

パート労働者が年収106万円を超えると社会保険(厚生年金と健康保険)の適用となり、社会保険料の負担により収入ダウンになるという話であります。 何故収入が減少するかというと、社会保険料の負担からです。 事業所所在地が東京である場合には、保険料率は厚生年金保険料(18.3%)と健康保険料(協会けんぽの場合10%(40歳以上は11.82%))です。 この保険料の負担は、雇用者と労働者が50/50の折半です。 もし、年間給与額が106万円を超えると費用負担が発生する。 仮に、110万円だと、雇用者も労働者も155,650円の負担増であり、106万円で費用負担なしの時と比較すると、収入総額は4万円増加しても、手取りは944,350円であり、115,650円減少する。時給1,000円だとすると116時間分も損をする計算になる。 一方、雇用者にとっても155,650円の負担増となり人件費は1,255,650円となる。

もし時間給単価が同じだとするなら106万円の手取り給与を得るためには、1.165倍働く必要が出てくる。今まで8時間働いていたなら9時間20分働かないと同一賃金額が得られない。

2) 106万円の壁の根拠

労働者は全員が社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険)のカバーを受け、雇用主は社会保険の付保義務がある。本来なら、パート労働者も社会保険の対象であるが、週20時間未満で賃金月額8.8万円未満であれば、厚生年金と健康保険の適用対象外となり、保険料納付の必要がないとなる。8.8万円を年間分とするため12倍にすると、105万6千円で、106万円という訳である。

3) 130万円の壁

現在は106万円の壁が適用されるのは、500人超の事業所であり、2024年10月に50人超の事業所となる。現在500人以下の事業所では、1週間の労働時間および1月の労働時間が正社員の4分の3未満のパートやアルバイトの短時間労働者は厚生年金・健康保険の適用対象にならない。 短時間労働者の場合であっても、正社員の4分の3未満の短時間労働でないなら、社会保険の対象となる。

では、130万円の壁とは、何かであるが、3号被保険者(国民年金法第7条1項3号)の対象者が恒常的な収入が130万円未満となっていることである。130万円以上の収入があっても、厚生年金で対象外となれば国民年金に加入し年金保険料を納付する必要が生じる。 毎月16,520円の保険料である。 130万円の年収の場合、厚生年金保険料は19,825円であるが、労働者分だけなら半額の9,912円で済む。 国民健康保険料は、市区町村により異なるが、月々10,000円以上になるのではと思う。年130万円の給与なら、協会けんぽで年153,660円だから、労使折半なら76,830円であり、本人負担は年12万円より安い。

この計算では、130万円の壁は、おそろしく大きく、国民年金と国民健康保険の保険料の年間負担は318,240円であり、24.5%になり、結構大きな壁である。 厚生年金と協会けんぽの場合の、労働者負担額は130万円の場合、183,950円(40歳以上で介護保険料も加算される場合195,780円)である。 

4) フリーランスの場合

フリーランスの場合は、どのようになるか考えてみたいと思います。 20歳以上は国民年金1号被保険者であり、国民年金の加入義務があり、3)で書いたように毎月16,520円の保険料を支払う必要がある。 但し、前年の所得に応じて、保険料免除を受けることは可能である。 例えば、前年所得が32万円以下は全額免除、168万円以下は25%免除。 免除を受けた場合、免除額に相当する将来受給を受ける年金額は減少するが、それでも50%以下にはならない。 何故なら、国民年金は50%が税金を財源として支払われることになっているからである。

国民健康保険料について、3)で月々10,000円以上と記載したが、住民税の課税所得の10%程度と思う。 最高保険料は年100万円程度である。 保険料率は、協会けんぽと比較すると、雇用者・労働者の合計額では安いが、労働者負担額で比べると国民健康保険の方が高いと、言える。

フリーランスや個人自営業者は、雇用主が存在しないわけで、全額自己負担になる。法人化しても、雇用主のオーナーが自分であれば、合算すればかえって費用は高くなると言える。

5) 厚生年金の受給額予想

健康保険の場合、その医療費カバー率は同一と考えれば、差は保険料である。 一方、年金は国民年金の場合、65歳から年間795,000円の年金を受給できる。 厚生年金の場合は、年間795,000円に加えて、次の計算式で計算した金額との合計額が年金額となる。(クリックで拡大)

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10万円、20万円、30万円、40万円、50万円を報酬の月額とし、ボーナスは年間3月相当額が支払われ、加入月数を480月とすると次の様になった。(クリックで拡大)

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年金受給期間を85歳までとしたのは、25歳の時の平均余命男55.2年、女61.8年からすれば、男80.2歳、女86.8歳となるが、これを男女の区別なく85歳までの受給とした。

6) 国民年金の受給額予想と厚生年金との比較

国民年金の保険料支払い義務は20歳から60歳までであり、毎月16,520円を12月・40年間払うと総額7,929,600円となる。受取年金額は厚生年金の基礎年金額と同じ795,000円。 65歳受給開始で85歳まで21年間受け取ると合計は16,695,000円になり、払込総額の2.1倍に相当する。

国民年金は保険料が高いが、給付される年金額は高くなく不十分との感覚を持ってしまうが、実際に計算をすると、極めて高利回りの投資と言える。 何故、そんな高利回りになるのかと言えば、保険料と同額が税金で補助されるからです。 NISAよりも、はるかに高利回りで、リスクも低い投資と言える。

それでは、厚生年金は月額報酬が高くなるほど、受給額へのリターンが悪くなるが、これは何故か? 一つは、定額支給となる基礎年金と報酬比例年金の2つの合計であり、基礎年金は報酬がゼロに近くても満額支給となるからである。 (なお、実際には年1500時間程度の労働になると思うので、時間1200円として年180万円(月15万円程度かと思うが)

もう一つの理由が、3号被保険者である。 3号被保険者は、保険料の負担がなく、基礎年金を満額受領できる訳で、投資ゼロで毎年795,000円が受け取れる。 (厳密には2号被保険者の配偶者なので、配偶者でなかったときは、国民年金保険料か厚生年金保険料を納付していることが必要である。)

保険料を払わずとも、年金を支払えるようにするには、誰かの分を減額するしかない。 厚生年金の中の高額所得者の受給額を減額して、それを保険料を支払わない3号被保険者の年金支払いに回しているのである。 専業主婦の場合の配偶者が高所得者であれば、丁度辻褄が合うようにも思える。 しかし、男女平等社会において、3号被保険者制度は配偶者の一方(多くの場合は女)の働き方に制限を加えることとなっている。 これこそが、大問題と言える。 また、配偶者を持っている場合は、配偶者が3号被保険者制度の恩恵を受けるが、配偶者がなければ恩恵は得られない。 独身者は106万円、130万円の壁に無縁であるだけでなく、壁のために調整している3号被保険者の年金資金まで負担しているのである。

なお、自営業者(やフリーランス)は国民年金であるから、その配偶者は3号被保険者とはなれず、夫婦でそれぞれ年金保険料を納付する。

7) 3号被保険者という悪制度が生まれた理由

1980年(昭和60年)改正で3号被保険者制度が創設された。 それ以前、専業主婦は国民年金任意加入であり、加入しない人もいた。 離婚をすると、無年金の恐れあり。 この解消とも言われているが、基本的には当時の社会は、国民全員が支える国の年金制度として歓迎したと思う。 夫はモーレツ社員で妻は専業主婦のスタイルが支持を集めていた時代には、そのようなスタイルを支援する制度が共感を得、支持される。 それが、3号被保険者制度が生まれた理由であると私は考える。

多様化した現代に3号被保険者制度は合わない。 多様化する社会、グローバル化で国境を越えて分業・競争が行われ、下手をすると簡単に取り残される。 1980年から半世紀近くになる現在、社会の仕組みをどしどし変えていかなくては、我々の生活を維持できなくなると考える。 どう改革すべきか、議論が必要である。

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2019年6月24日 (月)

年金のことをまじめに考える(その2)

年金について、続けて、少し追加で書きます。

1) 厚生年金の受給額予想

グラフで示すのが一番分かりやすいと思うので、グラフを作成しました。

Pension2019624

青線が、受け取り年金額(年額)の予想です。厚生年金保険料は収入額の9.15%(会社負担との合計では18.3%)なので、収入が多い人ほど多くの保険料(掛金)を支払う。その分、受け取る年金も増える。青線は、右肩上がりの直線です。

しかし、現役時代の年収額と受け取り年金額を比較すると、黄色線のように年収3百万円であった人は約40%相当の年金額であるのに対し、9百万-1千万円の年収の人は26%程度となってしまう。

世帯ベースで考えることとし、妻が3号被保険者であった場合は、世帯ベースでは妻の基礎年金が加わるので、現役時代との受け取り年金額の比較は次のグラフのようになる。

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年収5百万円であった場合、48%という結果になった。世帯年金額ベースでは、年収5百万円の場合は、約240万円である。共稼ぎ世帯の場合は、報酬比例部分が更に加わるわけで、国の制度としての年金としては、十分とは言えなくとも、この程度でも許容範囲かなとも思った。

2) 非正規労働者対策

直前のブログで厚生年金に加入できていない非正規労働者問題についても触れた。国民年金の保険料は月額16,410円なので、年額では196,920円である。年間収入が2百万円の場合、9.85%に相当するわけで、厚生年金の自己負担保険料9.15%より高い。にもかかわらず、受け取る年金額は基礎年金部分だけなので、仮に年収2百万円で厚生年金に加入している人の年金受給額102万円と比べると年間38万円以上少ないこととなる。同じ負担で、受給できる額に38万円の差がある。10年で380万円であり、20年間では760万円の差である。

もし、夫婦共に非正規労働者で、2人とも厚生年金に加入できていないとすれば、世帯で受給できる年金額は156万円であり、年収2百万円で妻パートの非正規労働の場合の年金額で180万円より24万円少ないのである。しかも、支払った保険料で比べると、非正規共稼ぎの40年間に支払った保険料は1575万円になるが、厚生年金に加入できている人の支払った保険料は787万円であるから、788万円多く保険料を支払ったにもかかわらずである。世に不公平はあるが、是正すべき不公平。是正に向けて取り組むべき不公平である。

3号被保険者になれるのは、夫婦の一方が働き厚生年金に加入できている場合であり、この結果は大きな社会的不公平を生み出していると考える。一方では、年間収入を130万円以下に抑え3号被保険者となるように意識的に働いておられる方もおられる。そのような方々を見捨てることは良くないが、結果的に低賃金労働や非正規労働の増加につながっている面はあると思う。

年金制度は、政治家が足の引っ張り合いをするためにあるのではない。働く人が、生涯にわたり公正な扱いを受け、納得のゆく生活をおくれるようにあるのである。

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年金のことをまじめに考える

金融庁の「老後2000万円」報告書についても、大臣が受け取り拒否をするのは変であるとの意見も最近では出されるようになった。いずれにせよ、年金についての現状・実情を正しく理解することが出発点である。そう考え、思いつくことを書いて見る。

1) 公的年金が老後の必要経費の全てをカバーすべきか?

その人の生き方や思想・哲学の問題だろうか?何歳まで、働き、何歳からは年金や預金等の取り崩しによる収入で生活するかは、人それぞれと言える。働いても、税金と年金・健康保険の保険料で余裕が全くないというよりは、少しでも貯蓄等に回せて、老後を含め備え・蓄えを確保するのが良いと言える。どうバランスを取るかは、個人の自由であるとするなら、ある程度の年金保険料。すなわち、国民が納得できる保険料水準とすべきである。

ちなみに変な計算をすると。人生90年、100年として、23歳から70歳まで働き、70歳から20年または30年の年金を受け取るとする。利息と物価上昇がイコールとすれば、20年または30年の年金 を47年間で払うのだから、年金の額を働いていたときの50%として、年金総額は100 x 20 (or30) x 50% = 1,000 (or 1,500)となる。これを 47年間で払うとすると、21.27 (or 31.91)となる。

21.27 (or 31.91) と言う数字は、大変な金額であり、年金のことを、政治家やマスコミは好き放題に批判しているが、まじめに考えるとウーンとうなる様なことになるのである。なお、年金を払わず、貯蓄もしない人ばかり出てしまうと、高齢生活保護者となるわけで、個人の問題として片付けず、年金制度を社会的問題としても扱う必要がある。

2) 現行の保険料と年金給付

 2017年9月で料率アップはなくなり18.3%となった。1)の計算よりは、安いこととなるが、平均寿命や余命の取り方でも変わる。なお、18.3%は被保険者(個人)と雇用主(会社等)で50%づつの負担となるので、個人ベースでは9.15%である。すなわち、お得となっている。

さて年金給付額であるが、基礎年金(満額732,090円)と報酬比例年金額(加入期間の年収合計 x 0.005481)である。

ボーナス込み年収700万円で35年間が加入期間であるとすると、1626円 x 0.938 x 35年 x 12月 = 640,578円と700万円 x 35年 x 0.005481 = 1,342,845円の合計1,983,423円である。支払った保険料は、700万円 x 35年 x 18.3% (or 9.15%)なので、44,835,000円 (or 22,417,500円)である。 20年または30年の年金を受け取るとすると、39,668,460円または59,502,690円となる。ブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、22.6年間年金を受け取った場合となる。

この同じ計算を年収500万円で行うと、年金額1,599,753円であり、20年または30年の年金額は31,995,060円と47,992590円となり、 ブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、20.0年間となる。実は、日本の公的年金制度は、高所得者から低所得者に対して所得移動がなされ所得再配分がなされるように設計されているとも言える。

3) 年金の不公平

高所得者と低所得者は、払った年金の保険料と受け取る年金額を比較すると、高所得者が不利であると述べた。理由は、受け取るべき年金額の計算式の第1項は払った保険料額とは無関係であり、被保険者であった期間の年数のみの計算であるからである。実は、この第1項は基礎年金部分であり、国民年金部分に相当する。そして、この部分は、50%が政府(税金)負担となっている。

そこで、第1項の基礎年金部分を半額として計算するとブレークイーブンポイントは労使合計の保険料で考えると、700万円の場合27.0年間で、500万円の場合25.0年間となる。下のグラフは、第1項は半額としていない場合である。

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なお、もう一つ高額所得者が年金の受領において不利になっている理由がある。それは、第3号被保険者である。 ちなみに第3号被保険者とは、国民年金法第7条第1項第3号の該当者であり、「厚生年金保険の被保険者の配偶者であつて主として被保険者の収入により生計を維持するもの」となっている。年金の扱いは、国民年金被保険者と同じであり、最大年間780,100円の年金を受給できる。この財源はと言うと、基礎年金なので50%は政府(税)であり、残る50%は他の厚生年金の被保険者の負担である。いわゆる専業主婦が大部分であり、その様な場合、夫が高収入である場合が多いと言える。そうなると、高所得者の年金は低くなって当然であり、世帯単位で夫婦合算すると話は少し異なる。

きわめて、複雑であるが、独身者や共稼ぎ世帯は、特に高所得になると、不利になっていると言えるように思う。

4) 年金だけで生活できるか

収入に合わせて生活費を工夫している面があり、答えは単純ではない。3)で述べたように、高所得者の年金受取額は負担した保険料と比較すると低くなる。厚生年金の場合は、上限額が月額63万円、ボーナス最大1回150万円なので、年収1000万円以上は、払う保険料も受け取る年金額も同じとなる。計算をすると、年間255万円以上の厚生年金を受領することはできない。そうなると、金融庁報告書の平均的な場合の支出額月263,718円を12倍すると316万円となり、不足するが、妻の基礎年金78万円を足し合わせると333万円であり、世帯ベースではクリアできることとなる。

でも、年収1000万円の場合の年間支払い年金保険料は915,000円であり、相当の負担であると言える。そうなると、受け取り年金額が低いと思う人は、貯蓄等をして備える以外に方法はない。貯蓄等を考える場合に、一番有利なのは、金融庁報告書にある年間40万円までの積立投資について運用益が非課税となるNISAと非課税扱いとなっている個人型確定拠出年金iDeCoが一番候補として考えられる。ここまで来ると、金融庁の報告書は正しいとなる。

5) 日本の公的年金制度の問題点

大きな問題と思うことを2点あげておく。

一つは、非正規労働で厚生年金に加入できておらず、国民年金となっている人についてである。満額でも年額780,100円である。月額にすると65千円。農家や商店のような個人事業主なら、何歳になっても働くことができるわけで、高齢となった場合の下支えとしての国民年金で機能した。しかし、非正規労働者となると、高齢化して良い仕事を得られると不安は大きいと思う。厚生年金問題としてより、非正規低賃金労働問題として取り組むべきと考える。

もう一つは、2)の厚生年金の計算で60歳まで35年間働いたと仮定した。実は、現行の制度は、60歳以上働くと、年金が不利になる制度となっている。例えば、国民年金法昭和60年5月1日改正の附則第8条第4項により「当面の間、60歳以降に支払われた保険料は基礎年金の計算期間に算入しない」となっており、これが続いている。60歳以降の保険料は料率が同じでもは、比例部分にしか反映されない。一方、60歳で受給資格を得るが、収入に応じて減額されるので、ゼロの人も多い。支給開始年齢が65歳や70歳に改定されるときに、この不公平な扱いは解消さえると思うが、実は余り誰も知らない不公平である。

 

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2019年6月12日 (水)

「老後2000万円」報告書は不適切なのか?

金融庁の「老後2000万円」報告書と言われているのは、金融庁の金融審議会 「市場ワーキング・グループ」報告書であり、このページに掲載されている。年金は、厚生労働省の管轄である。しかし、年金について、国民はもちろん政府の他の省が分析し、意見を述べても何の問題も無い。ちなみに、この金融審議会が設置された目的であるが、この麻生大臣の諮問にあるように、「市場・取引所を巡る諸問題に関する検討」である。FinTechの高度化に対する対応は検討課題として重要であり、この資料が第1回会合の際の事務局説明資料である。高齢化対応が含まれて当然のことである。

報告書において、「老後2000万円」について何と述べているかであるが、10ページの中央に「高齢夫婦無職世帯の実収入と実支出との差は、月5.5万円程度となっている。」とする横棒のグラフが掲載されている。実は、この月5.5万円赤字という数字の出所は、下に掲げた総務省の家計調査(2017年)なのである。この数字が、実態を反映しており正確なのか、調査が不十分なのか、議論するのが本筋である。金融庁や金融審議会をたたいても何も得る所はない。バカの政治家とマスコミと日本国民というわけである。総務省家計調査に関する議論をすべきが、お門違いの攻撃をしているバカたちである。

Pension2019612

当然の計算として、報告書16ページのように「収入と支出の差である不足額約5万円が毎月発生する場合には、20 年で約1,300 万円、30 年で約2,000 万円の取崩しが必要になる。」との文章となる。金融庁は、この報告書の撤回なんて絶対にして欲しくない。

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2018年3月21日 (水)

早く年金機構を解散すべき

2015年6月2日のこのブログで日本年金機構解体論を書いたが、日本年金機構は解体されずに今も不祥事をかさねている。

時事ドットコムの次の記事は「受給者軽視」と批判している。

時事ドットコム 3月20日 改善しない受給者軽視=甘い業者選び露呈-年金機構

公的年金は社会の根幹の制度である。年金保険料を強制的に徴収しており、それは公的年金であるからこそ可能なのである。そして、それを制度に従って給付する。この徴収と給付に間違いがあっては、誰もその制度を信用できなくなる。バカらしくて、年金保険料を払いたくなくなる。

このような重要な制度であるからこそ、厚生年金保険法第2条は「厚生年金保険は、政府が、管掌する。」となっており、 国民年金法第3条1項も同様に「国民年金事業は、政府が、管掌する。」となっている。ところが変な日本年金機構という役立たず法人が設立されている。 日本年金機構法第1条は絵空事から始まる。

第一条 日本年金機構は、・・・、厚生労働大臣の監督の下に、厚生労働大臣と密接な連携を図りながら、政府が管掌する厚生年金保険事業及び国民年金事業・・・に関し、厚生年金保険法及び国民年金法の規定に基づく業務等を行うことにより、政府管掌年金事業の適正な運営並びに厚生年金保険制度及び国民年金制度に対する国民の信頼の確保を図り、もって国民生活の安定に寄与することを目的とする。

どう考えても、こんな絵空事に意味があるわけはない。日本年金機構法を廃止すべきである。国民が選んだ政府が管掌するとの法律があるのに、厚生年金保険法の場合は、10条の4なる条文を追加して、日本年金機構に多くの事務を行わせる事にしている。

今回の事件の原因の一端は扶養親族等申告書の様式変更がある。本来、こんなものが必要なのかである。個人番号制度を取り入れれば、不要な申告書であると言える。百歩譲って、今回は、この扶養親族等申告書を年金受給者から入手するとしても、手持ちのデータと違っていた場合に、問い合わせをして、修正をすれば良いのである。個人番号も分からずに年金を支給しているなんてバカな事があって良いはずがない。個人番号があるからこそ、不正受給を防げ、また制度に基づく正当な年金支給ができるのである。

年金機構を解体し、国税庁と統合し、歳入庁を設立して欲しい。認知症になっても、年金が滞りなく支給され、ケアをする人々や施設も安心してサービスを提供できるようにする。年金のみの問題ではないが、年金は重要な部分を占める。日本年金機構を解体し、豊かな社会をつくっていくことを目指したい。

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2016年8月10日 (水)

これも杭問題なんでしょうか?大林組at San Fransisco

次のニュースです。

Bloomberg 8月9日 大林組株3年ぶり大幅下落、米子会社施工の米高層ビル地盤沈下

記事に大林組は「契約に従い適切に施工されていることを発注者との間で確認した」と述べているとあり、施工上の問題はないのかも知れません。

こちらのBloombergの英語記事を読むと、大林組が2007年に株式を取得する前のウェブコーが2005年にこの沈下している60階と11階のツイン・タワー・マンションを建設したとある。建設前に地盤調査をしているはずであり、原因は何なのでしょうね。

Bloombergの英語記事には日本語記事にはない恐ろしい記述がある。大林組の最大の株主は6.3%を保有するGPIFである。GPIFについてはこのブログを参照下さい。

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2016年8月 1日 (月)

GPIF5兆3千億円の損失で年金支給額を下げるべきか

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金運用損失が5兆3千億円であるとのニュースがあった。

日経 7月29日 公的年金、15年度運用損5.3兆円 赤字幅、過去3番目の大きさ

1) 資金の運用主

5兆3千億円とは大変な金額である。一体誰の金かと気になるのであるが、厚生年金と国民年金である。

GPIF27年度業務概況書118ページに次の記述がある。

この−5 兆3,502 億円を、各勘定に以下のとおり按分しました。
 厚生年金勘定に–5兆85億円 国民年金勘定に–3,417億円

合計が5兆3502億円の損失となる理由は資金運用損5兆3,097億円に運用手数料等405 億円が加わっているからです。

2) 厚生年金と国民年金へのインパクト

次の表が2014年度の厚生年金と国民年金の主要項目をピックアップした収支である。

Pension20167a

5 兆3,502 億円の損失とは、厚生年金と国民年金へのインパクトは10%以上になることが分かる。GPIFの運用収益から納付されるべき納付金を考慮すれば、15%程度と言ってもよい位である。

GPIFの資金運用損を受けて、年金給付を引き下げないでいると、将来の年金給付額が更に下がる可能性はどうなのだろうか?それと関係者の責任追及は、どうなのだろうか?5兆円とは、消費税で2%に相当する。もし、税金で5兆円の穴を埋めるとすれば、消費税を臨時に2%引き上げることとなる。

3) GPIF5兆3千億円の損失で年金支給額を下げるべきか

将来の世代に損失を先送りしないという考え方に立つなら、やはり現在の年金受給者が年金額10%カットに応じるべきです。その代わりに、国民が年金資金の運用に積極的に関与すべきと考えます。

年金とは、将来の支給額が約束されているべきであり、約束されていることで年金という制度が成立するとの考え方もある。しかし、誰が約束できるのかと言えば、誰もできないはずである。国がなんて言った処で、国なんて何もできない。制度を作っても、制度の財政が破綻すれば、倒産して約束は守れない。

GPIFに関しては7月2日のこのブログで、決算報告の遅いことを批判した。制度のあり方を含め見直すべきと考える。なお、公的年金には、厚生年金と国民年金以外に公務員共済のような共済組合がある。現時点ではGPIFは共済組合の資金運用をしておらず、私も共済組合の財政状況を調べることはできていない。

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2016年7月 2日 (土)

GPIF2015年度5兆円超の運用損失

年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資金運用結果は5兆円を超える損失であったとのニュースがある。

朝日 7月1日 年金の運用損、昨年度5兆円超 GPIF公表は参院選後

これに対して、萩生田官房副長官は「精査中で(金額が)確定していない」と答えたようである。

日経 7月1日 萩生田官房副長官、GPIF5兆円損失報道「金額、確定していない」 

何がけしからんかと言えば、3月末の決算報告を7月29日に行うという管理体制である。3月末決算の会社は4月末頃に決算短信を発表し、監査を受けた財務諸表を6月初めに株主に送付すると共にこ公表する。問題があった今年の東芝でさえ5月12日に決算短信を発表し、6月1日に株主総会招集通知を出したのである。

GPIFの事業は投資のみであり、東芝の事業より比べることができないほど単純である。朝日の記事には『例年は7月上旬に公表しているが、今年はGPIF発足10年に合わせて保有株の銘柄なども新たに公表する予定で、その開示方法などを検討するのに時間がかかるためだと説明している。』とあるが、これに賛同するわけにはいかない。国民と年金を払っている被保険者ならびに受給者を無視している行為である。

与党による参議院選対策だと批判されても言い逃れはできない。即刻、与党勢力を破滅すべきと思う。

どう運用するか、運用によっては損失を生じることもやむを得ない。しかし、結果については直ちに報告すべきである。

GPIFの2015年度第3四半期(2015年12月末)に関する発表によれば2015年12月末の残高は139兆8249億円であった。2015年3月末が137兆4769億円であったので、5兆円を超える損失の結果は残高が132兆円余りになると推定される。無責任な政治家は一時的なものであり、長期的には問題がないと説明するであろう。しかし、それを判断するのは、年金受給者と国民である。93.6%が厚生年金分である。そして残念ながら将来に損失を取り戻せるどころか、損失が逆に拡大する可能性もある。

運用結果の全てを年金受給額にスライドするのは問題があるが、資金運用結果を受給額に一部スライドする制度にして、年金受給者にも応分の負担を求める仕組みも考えられる。そうすれば、決算から4月も要する決算報告なんて誰も満足しないと思う。運用損失を受給者に負担させないなら税金で当該損失を穴埋めするか、さもなくば保険料増額と受給額減額により将来の年金受給者が負担することとなる。どうするのが最適であるのか、それは複数の手法の組み合わせかも知れない。しかし、どのような仕組みを取り入れるにせよ、決算結果の速やかな開示は是が非でも必要である。

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2016年5月21日 (土)

厚生労働省分割論(日経 大機小機)

この5月14日のブログで、厚生労働省分割論を書いたのですが、5月18日の日経の大機小機も、厚生労働省分割論を書いていた。

Webでは有料会員限定サービスとなっているが、ここにあります。

次のような記述もあり、私とほぼ同意見です。

米国にあるような政府の年金保険財政の経営の健全性をチェックする独立機関は日本には存在しない。

問題は国が直営する年金保険の透明性の欠如だ。監督責任を明確にするため、年金 保険組織の分離独立が必要とされる。

日経大機小機にもあるが「100年安心年金」の看板はおろすべきです。こんな政治家の大嘘を掲げていては国民が不幸になる。

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