2023年12月 9日 (土)

企業版ふるさと納税の恐ろしい話

一つ前のブログで東京都によるふるさと納税見直し要請を書きましたが、同じようなふるさと納税の企業版があり、寄付額の90%相当額の税が安くなる制度。

 企業版ふるさと納税で4.3億円を人口8000人の福島県国見町に寄附をして、国見町は4.3億円で救急車12台を購入したという話、そして寄附をしたのも救急車を販売したのも、実は同じ企業(同じグループの会社)という話が東洋経済ONLINEにあり、このページで読むことができます。

東洋経済の記事には「官民連携という大義を隠れみのにした「過疎ビジネス」」とありますが、これが事実であるなら、集団的犯罪に近いようなもので、モラルも何もない暗黒やくざ商売だと思う。 やはり、あらゆるふるさと納税を即刻廃止すべきで、人と企業の良心に根ざした見返りを求めない純粋な寄附文化を構築していくべきと考えます。

悪人は、消えるべき。

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2023年12月 8日 (金)

東京都は、ふるさと納税見直しを要請

東京都、その特別区および市町村は連名で、総務大臣に対して、ふるさと納税制度の見直し要請を12月4日提出しました。

「ふるさと納税」制度の抜本的な見直しに関する共同要請

問題ありすぎの制度ですから、本来はずっと前に反対論が出て当然であったと考える。 反対論が少なく、賛成論が多かったのは、ふるさと納税の利用で潤っていた国民が多かったと言うのは、言いすぎであると思うが、いずれにせよよほど賢い国民でないと全体像が理解できない制度である。 この制度を導入したのは、相当腹黒のど悪人だと思う。

地方自治体に寄附をすると、30%相当の返礼品を受領できる。 一方、寄附支出は2,000円が支出者負担で、それ以上の額は所得税と地方税で戻ってくる。10,000円の寄附で3,000円の返礼品を受領でき、更に税金(所得税と住民税)が8,000円安くなる。 上限はあるものの、多額のふるさと納税をすると儲けになる。

どう考えても、経済原則に反するわけで、ふるさと納税なんて、美しい言葉で飾っているが、実態は悪徳・モラルハザード・ビジネスである。 収支は、どうなっているかと言うと、寄付者の住所地の市町村は寄付者に住民税で補填するのであるが、その75%分は地方交付税で国から補填される(参考この総務省の資料 )。 但し、地方交付税不交付団体には補填されない。 東京都には、不交付団体が多いのである。 従い、東京都は見直しを要請となるのであるが、所詮ゆがんだ制度であり廃止すべきと考える。 税金は必要な政策に対し、支出されるべきで、寄附をした人に(住民税還付の形で)支出されるなんて、税金を払いたくなくなる。

政府に払った税金が、国民が知らないうちに、地方交付税の制度により、都道府県・市町村に流れていきます。 地方交付税の制度を否定するのではありませんが、国民の目にとまりやすく公表すべきです。 例を言うと、消費税10%だと多くの人は思っている。 実は、日本政府が使えるのは5.5%であり、4.5%は都道府県・市町村の財源です。

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2023年12月 7日 (木)

難民について

11月5日のNHKスペシャルで「過去最多となった難民・避難民 世界はどう向き合うのか」という番組を放映していた。 UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の難民統計ページがここにあり、2023年6月頃の世界における難民・避難民の数は1億1千万人と述べている(うち、国内での強制移住者62.5百万人、難民36.4百万人、難民申請者6.1百万人、その他国際的保護必要者5.3百万人)。 以下は、NHKの番組では余り触れられていないと感じたことである。

1) 難民とは

日本政府は、難民条約(Convention Relating to the Status of Refugees - Refugee Convention)の説明として、次の人達を難民として説明している。

  • (a)人種、宗教、国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に、迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有すること
  • (b)国籍国の外にいる者であること
  • (c)その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者であること

2) 過去約50年の難民の発生数

NHKは難民が近年増加していると述べていた。 UNHCRの統計によれば毎年の難民発生人数は、次図の通りである。 (クリックで拡大・別ページ表示)

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2022年の難民発生数は、過去最大であり、うちウクライナからの難民が570万人とのことである。 なお、この数字には、ウクライナからロシアに避難している人々も含んでいる。 

3) 2022年の難民発生数

UNHCR統計によれば、2022年の難民発生数は10,166,908人である。 4カテゴリーに区分されており、難民(Refugee)4,177千人、難民同等者(People in refugee-like situation)2,457千人、難民申請者2,572千人、その他国際的保護必要者959千人となっている。

2022年における最大の難民流出国は、ウクライナで、その避難先国は次表の通りです。

ウクライナからの流出難民数(2022年)
避難先国 難民 難民同等者 難民申請者 その他 合計
ロシア 0 1,209,915 100,833 0 1,310,748
ドイツ 820,143 180,332 705 0 1,001,180
ポーランド 956,760 0 1,542 0 958,302
チェコ 433,071 0 203 0 433,274
その他の国々 1,549,806 432,849 48,725 0 433,274
合計 3,759,780 1,823,096 152,008 0 5,734,884

2022年で次に難民流出が多いのが、ベネズエラであり、その避難先国は次表の通りです。

ベネズエラからの流出難民数(2022年)
避難先国 難民 難民同等者 難民申請者 その他 合計
コロンビア 0 0 5,184 611,472 616,656
ペルー 0 0 894 178,375 179,269
ブラジル 0 0 34,073 135,046 169,119
米国 0 0 138,597 0 138,597
その他の国々 25 0 85,253 34,753 120,031
合計 25 0 264,001 959,646 1,223,672

2022年に3番目に難民流出が多かったのが、アフガニスタンであり、その避難先は次であります。

アフガニスタンからの流出難民数(2022年)
避難先国 難民 難民同等者 難民申請者 その他 合計
イラン 0 403,293 0 0 403,293
パキスタン 0 178,107 28,450 0 206,557
ドイツ 963 0 36,358 0 37,321
オーストラリア 0 0 24,446 0 24,446
その他の国々 343 392 119,276 0 120,011
合計 1,306 581,792 208,530 0 791,628

UNHCRの統計による日本に関する2022年難民受入避難者の数を見てみると次の通りでした。

日本の難民受入数(2022年)
非難元の国 難民 難民同等者 難民申請者 その他 合計
ミャンマー 0 9,527 298 0 9,825
ウクライナ 0 2,238 0 0 2,238
カンボジア 0 0 578 0 578
アフガニスタン 0 329 182 0 511
スリランカ 0 0 502 0 502
トルコ 0 0 445 0 445
シリア 0 216 30 0 246
パキスタン 0 0 238 0 238
その他の国々 0 0 1,499 0 1,499
合計 0 12,310 3,772 0 16,082

日本の数字について、出入国在留管理庁が2023年3月24日に発表した「令和4年における難民認定者数等について」というこの発表では、令和3年の難民認定者数は74(表8)で、人道的配慮で在留を認めた者の数が525となっています。 UNHCRの日本についての2021年の数字は難民、難民同等者、その他国際的保護必要者はゼロであり、難民申請者が2,413となっています。 UNHCRの数字と日本政府の数字に随分差があるが、難民申請があっても、他の在留許可が認められた場合、UNHCRは難民同等として扱い、出入国管理庁は滞在許可の種類でカウントしているからと思います。

4) 難民となっている人の数(難民人口)

難民となっている人口をUNDPの統計(Refugee Data Finder)より作成したのが次図である。

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2023年で難民総数(総人口)は、ほぼ1億人である。 2022年の難民増加は1,574万人と20%増加した。 この増加の中でウクライナの難民数が30%以上である。 2023年の難民人口9,893万人の出身国は次図の通りである。

Refugeepopulationb

なお、UNHCRは世界の難民人口を2022年で1億840万人と発表している場合もある(例えば、Global Trendsという報告書)。 947万人の差がる。 この差は、国内避難難民をUNHCR統計の5,732万人とするか、IDMC統計の6,250万人とするかの差から生じている。 IDMC(Internal Displacement Monitoring Center)とはノルウェイの非政府・人権活動団体(NPO)である。

国内における避難民には災害による避難民も存在するが、災害要因避難民は除外し、戦争・内乱等が原因で実質的難民となっているが、国外脱出ができていない人々の数を、国内避難難民としており、UNHCRも支援対象としている。 

5) 難民の出身国と受入国

難民の多くは、隣国へ逃れている。 戦争・内乱により国境を越えて隣国に避難する。 或いは、居住地から強制的に移動することを余儀なくされ、国境を越えることもできず国内に止まっている実質的難民も多い。 難民の発生が多い国の難民の移住先は次表の通りである。(表のクリックで拡大)

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東南アジアで難民が一番多いのはミャンマーであり、世界では12番目。 そのミャンマーからの難民の移動先・滞在先は次表の通りである。 ミャンマーにしてもそうですが、シリア、ウクライナ、コロンビア、コンゴ民主共和国の難民の滞在国は外国ではなく、国内に避難している実質的難民が一番多い状態です。最も、アフガニスタンにしても33%は国外脱出できず国内に止まっている状態です。

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難民受け入れ先国の難民人口が多い4国について表にしたのが次表です。 申請者や国内避難民を除き難民となっている人口は3,051万人なので、4国合計の難民数1,083万人は全体の3分の1を越える35%になります。 最も多く受け入れている国はイランであり、その難民の99.7%は隣国アフガニスタンから。 次に多いのは、トルコであり、90%以上は隣国シリアから。 4国については、次表を参照ください。

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難民の多くは、隣国・周辺国に避難する・せざるを得ないということが現れている。

6) パレスチナ難民

パレスチナ難民と言った場合、通常はUNHCRが支援している難民ではなく、UNRWAが支援している難民を指すことになり、難民条約(1951Convention Relating to the Status of Refugees)にもUNRWAが支援対象が条約適用の対象外とある。 UNRWA (United Nations Relief and Works Agency for Palestiine Refugees in the Near East : 国連パレスチナ難民救済事業機関)も国連機関であり、UNRWAが実施する難民支援対象は、1946年6月から1948年5月15日の間にパレスチナでの居住及び生活をしていたパレスチナ人(アラブ人)とその子孫である。

6-1) パレスチナ

パレスチナとは、中東のパレスチナ地域のことであるが、現在では狭義の意味として西岸地区(West Bank)とガザ地区(Gaza)のこととして使われていることが多くある。 第一次世界大戦終了まで、中東地域一帯ははオスマン帝国が支配していた。 大戦終了後の1920年サンレモ会議により、英国はパレスチナ・ヨルダンとイラクの、フランスはレバノンを含むシリアの国際連盟による委任統治をすることとなった。 その後、イラクは1932年に独立を成し遂げ、トランスヨルダンは1946年に、レバノンは1943年にフランスから、シリアは1946年に独立をした。

パレスチナに関しては、英国外務大臣バルフォアがユダヤ人のロスチャイルド卿に対して1917年11月2日に書いたバルフォア宣言(Wikipediaの写真はここ にある。)があり、"His Majesty's Government view with favour the establishment in Palestine of a national home for the Jewish people." と述べて、大英帝国の国王陛下はパレスチナにユダヤ人の地をつくることを支持・賛同していると宣言した。 ユダヤ民族が聖地パレスチナに国家を建設すると言う民族運動は英国の支持を得たのであり、その地パレスチナは英国が委任統治を行っている地域に含まれている。

ユダヤ人のパレスチナへの移住はバルフォア宣言以後増加していった。 次図はカナダのCJPME(Canadians for Justice and Peace in the Middle East)という民間団体の資料から作成したパレスチナにおける人口の推移である。

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ユダヤ人はパレスチナの地主であるアラブ人から土地を購入し、購入した土地に移住したのであり、初期の頃はアラブ人もユダヤ人も仲良く隣人として生活をしていた。しかし、ユダヤ人口が増加していくと軋轢も増加していったし、場合によってはユダヤ人が購入した土地のアラブ地主の住まいはエジプトであり、パレスチナに住むアラブの小作人は突然ユダヤ人から追い出しを受けたケースも存在した。 遊牧民にとっての土地や国境に対する考え方とユダヤ人に違いはあるし、宗教・習慣の差は大きかった。

1947年11月29日国連は総会決議181号で、1948年10月1日より早い時期に、パレスチナにおいてアラブとユダヤの2つの国を作り、エルサレムを特別市とすること。 そして1948年8月1日より早い時期での英国委託統治の終了を決議した。 33国が賛成、反対は13国で棄権が10国であった。 反対を投じたのは、アフガニスタン、キューバ、エジプト、ギリシャ、インド、イラン、イラク、レバノン、パキスタン、サウジアラビア、シリア、トルコ、イエメンであった。 周辺国とモスレム国は反対した。 インドネシア、マレーシアは当時国連未加入であった。英国は棄権であった。 英国は委任統治の終了し、1948年5月14日迄に撤退することを決定した。

6-2) イスラエルの建国・第一次中東戦争

国連決議181号の前から、ユダヤ人シオニストの民間自衛組織やそれに対抗するアラブ側の民兵組織も生まれていた。 国連決議の後、衝突は更に激化し、内乱状態も発生した。

1948年5月14日英国撤退の同日、イスラエルは建国宣言を発表し、その翌日エジプト、トランスヨルダン、レバノン、シリアの軍隊・義勇軍はパレスチナに攻め込んだ。 戦争は当初の段階ではアラブ側有利であったが、イスラエルの反撃によりイスラエルの事実上の勝利となった。 停戦協定は国毎の締結となり、エジプトと1949年2月、レバノンと3月、トランスヨルダンと4月、そしてシリアとは7月になり協定が締結された。 停戦協定による停戦ラインにより、イスラエルは国連決議181号で示されていた地域より広い面積を得、エジプトはガザ地区を、トランスヨルダンはヨルダン川西岸地域を停戦ラインの内側に得た。 その後、1967年の第三次中東戦争(6日間戦争)で、イスラエルはガザ地区、ヨルダン川西岸地域、ゴラン高原を占領した。 1948年以後パレスチナに住んでいたアラブ人の中で難民となった人々は多く存在する。

6-3) パレスチナの現状(人口と面積)

1967年の第三次中東戦争によりイスラエルと狭義のパレスチナの現在の境界となったのであるが、この境界に住む現在の人口(データは2021年現在)を次表に示す。 (表クリックで拡大します。)

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イスラエルの地域は、西岸地域、ガザを合計した全面積の78%であり、人口割合では64%である。 なお、単純な比較では誤る可能性がある。 降水量の少ない砂漠地帯が多く、植林も関係するので、単純ではない。 しかし、人種割合ではイスラエル地域にアラブ人が200万人住んでいる。 3地域合計では、ユダヤ人とアラブ人の比率はは48%と49%であり、アラブ人がわずかに多い。 地域の外に出て難民となっている人を加えるとパレスチナのアラブ人人口は相当多いと言える。

イスラエル、西岸地域、ガザにおける1995年以降の人口推移を図にすると次の様になった。

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1995年を1として描くと次の様になった。

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ガザ地区の人口増加率が一番高いのである。

6-4) パレスチナ難民 (UNRWA登録難民)

UNRWAに難民の登録をしている人数はUNRWAが公表しており、その滞在地別の2022年における難民数は次表の通りである。

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シリア危機・内戦により、シリアでUNRWAに登録されているパレスチナ難民のうち約12万人は、レバノンとヨルダンに脱出していると考えられ、シリア国内に居住する難民も60%は、国内移動を余儀なくされた。

40%のパレスチナ難民は、ヨルダンに居住している。 但し、在ヨルダンのパレスチナ難民のうちヨルダン国籍を取得している人達も多い。 いつの日か先祖が居住したパレスチナの地に帰還することの希望は捨てておらず、UNRWAの難民支援は受けていなくても、難民登録は維持し、パレスチナ人として生きている人も多いのが、在ヨルダンのUNRWA難民である。 また、ヨルダン川西岸については、第三次中東戦争前の停戦ラインではヨルダン支配地域であったのである。 西岸地区に住んでいたパレスチナ難民はヨルダン国籍の取得がそれほど困難ではないと推測する。 なお、ヨルダンのみならず、この地域はアラビア語であり、アラビア地方というのがふさわしいように思う。

ヨルダン川西岸地域とガザの人口は、6-3に記載した表で1,476千人と871千人であった。 この人口を使用して上表の難民数における割合を計算すると西岸地域で17%、ガザでは70%となる。 

6-5) UNHCR対象のパレスチナ難民

UNHCRが支援しているパレスチナ難民は次表の通りです。

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パレスチナ難民の場合は、UNRWAの難民が5,713千人なので、UNRWAが関与している難民がほとんどであります。 ガザに居住するUNRWA難民の人口がUNHCRが関与するパレスチナ難民の10倍以上です。

7) 難民支援について

NHKスペシャルは「過去最多となった難民・避難民 世界はどう向き合うのか」とのタイトルで放送していたが、考えなくてはならないのは、「世界は」ではなく、「私たちはどう向き合うのか」であると考える。

日本語名称は世界人権宣言である”The Universal Declaration of Human Rights”が難民について考える場合の最も参考になると考える。 14条1項の「すべて人は、迫害を免れるため、他国に避難することを求め、かつ、避難する権利を有する。」や13条2項の「すべて人は、自国その他いずれの国をも立ち去り、及び自国に帰る権利を有する。」等の文章のみならず第1条の「すべての人間は、生れながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利とについて平等である。人間は、理性と良心とを授けられており、互いに同胞の精神をもって行動しなければならない。」等すごい文章が多くある。

世界には様々な紛争や戦乱と武力衝突が数多くあり、その結果が難民発生となっている。 日本の難民受入数は極めて少ない。 特定技能ビザでさえ、家族帯同が難しかったりするのだから、人手不足日本とは超保守的な国だと思う。 しかし、難民認定でなくとも同等な家族帯同就労可能なビザで支援しても良いわけで、多分難民に対する受入も拡大していくと期待する。

一方で、日本政府はUNHCRにもUNRWAにも応分の資金援助を行っており、難民受入が多い国に対しても必要な支援を実施していると理解する。 難民支援は、人道的見地のみならず、紛争や戦乱の防止、平和の樹立に効果的と考える。 武器に金を使うより、国際的な支援・協力が日本の国の安全や世界の平和に有効であることは多いと考える。

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2023年10月27日 (金)

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律についての最高裁違憲判断

10月25日の最高裁判所大法廷決定は、この裁判所のWebページ にあり、全36ページの長い文書であるが、9ページの結論を書き出すと、この言葉となる。

「よって、本件規定は憲法13条に違反するものというべきである。」

本件規定とは、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律第3条1項4号のことであるが、第3条1項を書き出すと次の通りである。

第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

4項の「生殖せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にある」とは、生殖腺除去手術を受けることを要求することとなり、この要求は憲法13条の「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」で保障されている人格的生存に関わる重要な権利(自己の意思に反して身体への侵襲を受けない自由)を制約することとなる。

4項の規定は、現時点において、その必要性が低減しており、その程度が重大なものとなっていることなどを総合的に較量すれば、必要かつ合理的なものということはできないと最高裁は判断した。

第5項について

第5項についても、三浦守、草野耕一、宇賀克也裁判官が憲法違反・違憲無効であると反対意見を出しておられる。 第5項の「他の性別」とは、男の場合は女、女の場合は男である。 従い、男が女になるなら、外性器除去手術が、女が男になるなら、尿道延長手術及び陰茎形成手術が通常は必要となってしまう。 従い、第5項についても憲法第13条により保障されている権利を侵害するものであり、違憲であるとされている。 私も、同じように考える。外性器なんて、他人に見せたりしないじゃないか。

他人に迷惑をかけなければ、自分の選んだ生き方を、誰もがすることができる。 そのような世に暮らしてこそ、幸せがあると考える。

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2023年10月11日 (水)

頭が混乱の年収の壁

次は、9月25日の岸田首相による「経済対策についての会見(このWeb )」の中での発言ですが、これが理解ができた人は、知識・造詣が相当深い人だと思います。

130万円の壁」については、被用者保険の適用拡大を推進するとともに、次期年金制度改革を社会保障審議会で検討中ですが、まずは「106万円の壁」を乗り越えるための支援策を強力に講じてまいります。具体的には、事業主が労働者に「106万円の壁」を超えることに伴い、手取り収入が減少しないよう支給する社会保険適用促進手当、これを創設いたします。こうした手当の創設や、賃上げで労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に対し、労働者1人当たり最大50万円を支給する助成金の新メニュー、これを創設いたします。こうした支援によって、社会保険料を国が実質的に軽減し、「壁」を越えても、給与収入の増加に応じて手取り収入が増加するようにしてまいります。政府としては「106万円の壁」を乗り越える方、全てを支援してまいります。このため、現在の賃金水準や就業時間から推計して、既に目の前に「就労の壁」を感じておられると想定される方々はもとより、今後、「壁」に近づく可能性がある全ての方が「壁」を乗り越えられるよう機動的に支援できる仕組みを整え、そのための予算上の措置を講じてまいります。

1) 106万円の壁

パート労働者が年収106万円を超えると社会保険(厚生年金と健康保険)の適用となり、社会保険料の負担により収入ダウンになるという話であります。 何故収入が減少するかというと、社会保険料の負担からです。 事業所所在地が東京である場合には、保険料率は厚生年金保険料(18.3%)と健康保険料(協会けんぽの場合10%(40歳以上は11.82%))です。 この保険料の負担は、雇用者と労働者が50/50の折半です。 もし、年間給与額が106万円を超えると費用負担が発生する。 仮に、110万円だと、雇用者も労働者も155,650円の負担増であり、106万円で費用負担なしの時と比較すると、収入総額は4万円増加しても、手取りは944,350円であり、115,650円減少する。時給1,000円だとすると116時間分も損をする計算になる。 一方、雇用者にとっても155,650円の負担増となり人件費は1,255,650円となる。

もし時間給単価が同じだとするなら106万円の手取り給与を得るためには、1.165倍働く必要が出てくる。今まで8時間働いていたなら9時間20分働かないと同一賃金額が得られない。

2) 106万円の壁の根拠

労働者は全員が社会保険(厚生年金、健康保険、労災保険、雇用保険)のカバーを受け、雇用主は社会保険の付保義務がある。本来なら、パート労働者も社会保険の対象であるが、週20時間未満で賃金月額8.8万円未満であれば、厚生年金と健康保険の適用対象外となり、保険料納付の必要がないとなる。8.8万円を年間分とするため12倍にすると、105万6千円で、106万円という訳である。

3) 130万円の壁

現在は106万円の壁が適用されるのは、500人超の事業所であり、2024年10月に50人超の事業所となる。現在500人以下の事業所では、1週間の労働時間および1月の労働時間が正社員の4分の3未満のパートやアルバイトの短時間労働者は厚生年金・健康保険の適用対象にならない。 短時間労働者の場合であっても、正社員の4分の3未満の短時間労働でないなら、社会保険の対象となる。

では、130万円の壁とは、何かであるが、3号被保険者(国民年金法第7条1項3号)の対象者が恒常的な収入が130万円未満となっていることである。130万円以上の収入があっても、厚生年金で対象外となれば国民年金に加入し年金保険料を納付する必要が生じる。 毎月16,520円の保険料である。 130万円の年収の場合、厚生年金保険料は19,825円であるが、労働者分だけなら半額の9,912円で済む。 国民健康保険料は、市区町村により異なるが、月々10,000円以上になるのではと思う。年130万円の給与なら、協会けんぽで年153,660円だから、労使折半なら76,830円であり、本人負担は年12万円より安い。

この計算では、130万円の壁は、おそろしく大きく、国民年金と国民健康保険の保険料の年間負担は318,240円であり、24.5%になり、結構大きな壁である。 厚生年金と協会けんぽの場合の、労働者負担額は130万円の場合、183,950円(40歳以上で介護保険料も加算される場合195,780円)である。 

4) フリーランスの場合

フリーランスの場合は、どのようになるか考えてみたいと思います。 20歳以上は国民年金1号被保険者であり、国民年金の加入義務があり、3)で書いたように毎月16,520円の保険料を支払う必要がある。 但し、前年の所得に応じて、保険料免除を受けることは可能である。 例えば、前年所得が32万円以下は全額免除、168万円以下は25%免除。 免除を受けた場合、免除額に相当する将来受給を受ける年金額は減少するが、それでも50%以下にはならない。 何故なら、国民年金は50%が税金を財源として支払われることになっているからである。

国民健康保険料について、3)で月々10,000円以上と記載したが、住民税の課税所得の10%程度と思う。 最高保険料は年100万円程度である。 保険料率は、協会けんぽと比較すると、雇用者・労働者の合計額では安いが、労働者負担額で比べると国民健康保険の方が高いと、言える。

フリーランスや個人自営業者は、雇用主が存在しないわけで、全額自己負担になる。法人化しても、雇用主のオーナーが自分であれば、合算すればかえって費用は高くなると言える。

5) 厚生年金の受給額予想

健康保険の場合、その医療費カバー率は同一と考えれば、差は保険料である。 一方、年金は国民年金の場合、65歳から年間795,000円の年金を受給できる。 厚生年金の場合は、年間795,000円に加えて、次の計算式で計算した金額との合計額が年金額となる。(クリックで拡大)

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10万円、20万円、30万円、40万円、50万円を報酬の月額とし、ボーナスは年間3月相当額が支払われ、加入月数を480月とすると次の様になった。(クリックで拡大)

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年金受給期間を85歳までとしたのは、25歳の時の平均余命男55.2年、女61.8年からすれば、男80.2歳、女86.8歳となるが、これを男女の区別なく85歳までの受給とした。

6) 国民年金の受給額予想と厚生年金との比較

国民年金の保険料支払い義務は20歳から60歳までであり、毎月16,520円を12月・40年間払うと総額7,929,600円となる。受取年金額は厚生年金の基礎年金額と同じ795,000円。 65歳受給開始で85歳まで21年間受け取ると合計は16,695,000円になり、払込総額の2.1倍に相当する。

国民年金は保険料が高いが、給付される年金額は高くなく不十分との感覚を持ってしまうが、実際に計算をすると、極めて高利回りの投資と言える。 何故、そんな高利回りになるのかと言えば、保険料と同額が税金で補助されるからです。 NISAよりも、はるかに高利回りで、リスクも低い投資と言える。

それでは、厚生年金は月額報酬が高くなるほど、受給額へのリターンが悪くなるが、これは何故か? 一つは、定額支給となる基礎年金と報酬比例年金の2つの合計であり、基礎年金は報酬がゼロに近くても満額支給となるからである。 (なお、実際には年1500時間程度の労働になると思うので、時間1200円として年180万円(月15万円程度かと思うが)

もう一つの理由が、3号被保険者である。 3号被保険者は、保険料の負担がなく、基礎年金を満額受領できる訳で、投資ゼロで毎年795,000円が受け取れる。 (厳密には2号被保険者の配偶者なので、配偶者でなかったときは、国民年金保険料か厚生年金保険料を納付していることが必要である。)

保険料を払わずとも、年金を支払えるようにするには、誰かの分を減額するしかない。 厚生年金の中の高額所得者の受給額を減額して、それを保険料を支払わない3号被保険者の年金支払いに回しているのである。 専業主婦の場合の配偶者が高所得者であれば、丁度辻褄が合うようにも思える。 しかし、男女平等社会において、3号被保険者制度は配偶者の一方(多くの場合は女)の働き方に制限を加えることとなっている。 これこそが、大問題と言える。 また、配偶者を持っている場合は、配偶者が3号被保険者制度の恩恵を受けるが、配偶者がなければ恩恵は得られない。 独身者は106万円、130万円の壁に無縁であるだけでなく、壁のために調整している3号被保険者の年金資金まで負担しているのである。

なお、自営業者(やフリーランス)は国民年金であるから、その配偶者は3号被保険者とはなれず、夫婦でそれぞれ年金保険料を納付する。

7) 3号被保険者という悪制度が生まれた理由

1980年(昭和60年)改正で3号被保険者制度が創設された。 それ以前、専業主婦は国民年金任意加入であり、加入しない人もいた。 離婚をすると、無年金の恐れあり。 この解消とも言われているが、基本的には当時の社会は、国民全員が支える国の年金制度として歓迎したと思う。 夫はモーレツ社員で妻は専業主婦のスタイルが支持を集めていた時代には、そのようなスタイルを支援する制度が共感を得、支持される。 それが、3号被保険者制度が生まれた理由であると私は考える。

多様化した現代に3号被保険者制度は合わない。 多様化する社会、グローバル化で国境を越えて分業・競争が行われ、下手をすると簡単に取り残される。 1980年から半世紀近くになる現在、社会の仕組みをどしどし変えていかなくては、我々の生活を維持できなくなると考える。 どう改革すべきか、議論が必要である。

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2023年9月28日 (木)

秋本議員贈賄罪で在宅起訴 日本風力開発」から依頼を受領

秋本真利議員、賄賂7280万円受け取った罪で起訴とのニュースが飛び込んできた。

読売新聞オンライン 9月27日

秋元議員の国会質問に対する謝礼金受領との報道。 7280万円を、どのようにして受け取ったのか、この読売ニュースは、秋本議員と馬主組合を設立。秋本議員が実質的に管理していた組合に対し、今年6月までに計約3000万円を提供と書いている。 すぐバレるような直接の現金授受ではなく、複雑な偽装のようなことが行われていたと想像する。 秋元議員vs検察庁の今後を見ないといけないが、読売報道には「日本風力開発前代表取締役塚脇氏は国会質問への謝礼と供述 」とある。

現代の複雑な贈賄関係と思えるが、国会での質疑は議事録に残っており、以下国会(衆議院の委員会)での秋元議員の質疑を以下に簡単に書きだしてみた。発言の全てや前後の質疑等は、それぞれの委員会の名称と開催日をもとに国会議事録で検索いただければと思う。

なお、日本風力開発も参加した第1回洋上風力とは、2020年11月27日から2021年5月27日迄公募が実施され、2021年12月24日に発電事業者の選定が経産省・国交省より発表された(この発表 )。「秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」、「千葉県銚子市沖」の3案件で、3案件全てが発表にあるように三菱商事エナジーソリューションズ株式会社、三菱商事株式会社、株式会社シーテック(由利本荘市沖は株式会社ウェンティ・ジャパンもメンバー)に決定した。規模は、3案件合計で1,742MWである。金額では、年間700億円、売電全期間の予想総合計収入は1兆5000億円になる。これが手始めで、将来の脱炭素発電の主力になると予想されることから、そのビジネス規模は年間数兆円以上になるとも予想される。 次図が、第1回洋上風力の選定結果をまとめたものであり、秋田県の2案件に失注業者がそれぞれ4社あり、それぞれコンソーシアムであるが、メンバーに日本風力開発がいたと聞く。

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第198回国会 衆議院 環境委員会 第7号 令和元年(2019年)5月31日 での質問
秋本委員 ・・・・・・・・入札にするわけですけれども、最低制限価格を入れて、これ以上下に行ったら欠格ですよという事項を設ける方が私はいいのではないかと。

電気料金に直ちに反映するわけで、最低制限価格制度なんて、消費者の敵だと私は考える。

第208回国会 衆議院 予算委員会 第七分科会 第2号 令和4年(2022年)2月17日 での質問
秋本委員 ・・・・・・・・今回、エネ庁が、二〇二八年、三〇年で運開するところを、価格に点数をつけて、定性面に点数をつけて選んだわけですけれども、一方で、もし四年も五年も前に運開しますよというところがあって、それが若干高かったとしても、それはかなり手前になるわけだから、高いのは当たり前だと思うんですよね。

秋田県由利本荘市沖は845MWで13MW風車が65基あることからと思うが、2030年12月の運転開始となっている。 4年前、5年前となると2023年、2024年となるが、そんな業者って信頼できるのだろうかと思ってしまう。 秋元議員とはエクセントリックな人だなと思った。だから、競走馬をして競馬をするのが趣味なのかな?

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2023年9月23日 (土)

ジャニーズ問題を考える

ジャニーズ問題って、頭の中がかき乱され、混乱の窮地に陥って、正常な神経では対応できなくなる感覚である。 しかし、記録にとどめ、.問題の本質を知り、問題発生を防ぐ努力をする必要性を感じる。

1) ジャニー喜多川の性加害とは(1950年代から始まっていた)

性加害というが、そこには被害者が存在する。 見て見ぬふり、知っていて知らぬふりをしていた関係者もいるはずと確信する。

本問題については、ジャニーズ事務所が調査報告書をWebで公開しており、このページから報告書と概要版がダウンロード出来ます。 報告書は、事件に関して、かなり突っ込んで調査・報告しています。(事件との表現はマスコミ等で、ほとんど使われていないが、加害者と被害者が存在するからには、刑法・その他の法で犯罪とならなくても事件と言えると考える。)

ジャニー喜多川は、1931年10月アメリカで生まれ、1933年に日本に帰国した。 1962年ジャニーズ事務所を個人開業。 1975年1月に株式会社として法人化したのであるが、性加害が1950年代から始まっていたとなると、ジャニーズ事務所を始める前からである。 報告書19ページは次の様に記載がある。

特別チームは、上記のとおり、特別チームへの調査協力を承諾した被害者のヒアリングを実施し、各被害者からジャニー氏による性被害について以下のような話を聴取することができた。
・1950年代、ジャニー氏が小学校低学年男児であった被害者の自宅に泊まった際に、あるいは遊びに来た同級生の男を自宅に送る車の中で、口腔性交などの性加害が繰り返された(ジャニー氏20歳頃)

21ページには、次の様にある。

ジャニー氏は、古くは1950年代に性加害を行って以降、ジャニーズ事務所においては、1970年代前半から2010年代半ばまでの間、多数のジャニーズJr.に対し、上記のような性加害を長期間にわたり繰り返していたことが認められる。 

ジャニーズJrとは、デビューを目指してレッスンを行いながら芸能活動を行っているジャニーズ事務所所属タレントで、アイドルを目指す少年達である。1980年代当時は10~20人程度であったが、2000年頃には200名程度になり、2017年から2019年当時は全体で300人くらいのジャニーズJr.がいたとのこと。ジャニー喜多川が、自宅や合宿所や公演先の宿泊ホテル等において、ジャニーズJr.のメンバーを含む多数の未成年者に対し、一緒に入浴したり、同衾した上、キスをしたり、身体を愛撫したり、性器を弄び、口腔性交を行ったり、肛門性交を強要したりする、などの性加害を行っていた。(報告書21ページ)

被害者は、当然「自分の中で蓋をして終わらせていた過去で、ニュースなどを見るたびに当時のことを思い出して、フラッシュバックし、嫌な思いをする。」という当然のことが生じる。 報告書の24ページから26ページに書けて被害状況に関する調査報告があるが、未成年の時に受けた性被害の深刻さを感じる。例えば、次の様な記述もある。

度重なる幻聴やフラッシュバックで、自殺願望も抱くようになった。
女性と性交をしている時もジャニー氏の性加害を思い出して恐怖感を抱いたり、食事中にもそのような場面を思い出して吐きそうになったりしたこともあった 。
社会に出て仕事を始めるようになってからも、同性不信があり、権力がある人やジャニー氏と同年代の人を見ると恐怖を覚えました。
人に話せば、自分のことも「変態」「お前やられたんだろ」とからかわれるのがオチだろうと思って、家族にも誰にも話しませんでした。
私は、性欲はあり、マスターベーションはできますが、この年になるまで女性と関係を持ったことはありませんし、性風俗に行ってもできません。

男が男にする性被害は、妊娠とか相続とかの問題を生じさせないと簡単に扱うことができない、心の中に傷跡を残す甚大な犯罪だと思う。

(2) 報道等はどうだったか

ジャニーズ問題は、BBCが本年3月27日に報道した後、急展開を見せ、6月も立たないうちに、今のようになった。 BBCが報道したのは動画であったが、この2023年3月7日のBBC NEWS JAPAN の内容とほぼ同一であったと思う。

では、それ以前はと言うと、この弁護士ドットコムニュースによれば、やはり様々に報道や証言はあったのである。

  • 1965年の『週刊サンケイ』(3月29日号)
  • 1967年『女性自身』(9月25日号)
  • 1981年『週刊現代』(4月30日号)

1988年にはジャニーズグループ「フォーリーブス」のメンバーだった北公次氏が『元フォーリーブス北公次の禁断の半生記』(データハウス)を出版し、この本の中で、ジャニー喜多川から自身が受けた性被害を赤裸々に綴り、これを受けて、1年ほどの間に『アサヒ芸能』、『週刊文春』、『FOCUS』、『週刊大衆』、『微笑』などで、北氏や匿名の元タレントらの証言の掲載があった。

(3) 1999年週刊文春キャンペーン

週刊文春は1999年10月から14週にわたってジャニーズ事務所とジャニー喜多川に関する報道キャンペーン記事を掲載した。 この中で、ジャニー喜多川の破廉恥犯罪行為についても触れられていることから、ジャニーズ事務所とジャニー喜多川は計8本の記事について、文藝春秋を名誉毀損で提訴した。どのような記事であったかは、文春オンライン期間限定無料公開としてここにあり、読むことができる。

2002年3月27日、東京地裁は「少年らの供述は、ジャニー喜多川のセクハラ行為を真実であると証明するのは、なお足りるものではない」とし、文春側が敗訴。文春に事務所と個人に合計880万円の支払を命じた。

二審東京高裁では改めて証人調べをしたわけではない。 一審の記録を全て読み判断し、一審で『真実相当性は認められない』としたが、二審では『セクハラに関する記事の重要な部分について真実であることの証明があった』とした。

地裁と高裁が全く逆の判断となったわけであるが、証言者はすでにジャニーズ事務所からも芸能界からも離れている少年2人で、証言は別の裁判所で非公開の形で行われた。 証言者とジャニー喜多川との間には衝立が立てられ、お互いの姿は見えない。しかし、声は聞こえるので、ジャニー喜多川には証言者の特定は可能であったはず。判決は「セクハラ被害」の真実相当性が認められ、ジャニーズ側から文春に対し計120万円の支払い命令となった(2003年5月15日)。

ジャニーズ側は上告するが、最高裁は2004年、棄却。高裁判決が確定した。

(4) 2000年4月13日衆議院 青少年問題に関する特別委員会

ここにその会議録があるが、ジャニー喜多川の性加害問題は衆議院の特別委員会でも取り上げられていた。

議事録の038から077まで、阪上善秀委員の質問とその答弁を読むと、国会で23年前にここまで取り上げられていたんだと感心してしまう。 社会の状況もあるが、2000年4月国会、2003年5月高裁判決より、BBC報道が世の中への影響が大きいのかと思ってしまう。なお、阪上善秀委員の最初の質問は、次であった。

038 次に、最も深刻な問題であるジャニー喜多川社長のセクハラ疑惑についてお聞きしたいと思います。
 報道によれば、ジャニー喜多川社長は、少年たちを自宅やコンサート先のホテルに招いて、いかがわしい行為を繰り返しておるという内容のものであります。なぜ少年たちがこんな行為に耐え忍んでいるかといえば、ジャニー喜多川社長に逆らうと、テレビやコンサートで目立たない場所に立たされたり、デビューに差し支えるからというのであります。
 私は独自の調査で、ジャニーズ事務所に所属していたことのある少年の母親の手紙を手に入れました。少し長くなりますが、御紹介をさせていただきます。
  うちの現在高校二年生の息子も、中三の冬にオーディションに合格し、約一年間ジャニーズジュニアをしていましたが、事務所からのコンタクトがなくなり、自然にやめたような形になりました。ずっと後になって息子から聞いたのは、オーディションに受かってから初めてレッスンに行ったとき、先輩のジュニアから、もしジャニー喜多川さんから、ユー、今夜はホテルに泊まりなさいと言われたとき、多分ホモされるかもしれないけれども、それを断ったら次から呼ばれなくなるから我慢しろと教えられたそうであります。息子はジャニーさんの好みでなかったらしく一度も誘われなかったので、清い体でやめることができましたが、何人かはこの行為を受け、お金をもらっていたそうであります。今テレビでにこにこして踊っているジュニアたちは、陰ではそんなつらい思いをしておるかと思うとかわいそうです。
 こういう内容であります。こういうことが事務所でまかり通っているわけであります。
 ジャニー喜多川氏は、親や親権者にかわって児童を預かる立場であります。児童から信頼を受け、児童に対して一定の権力を持っている人物が、その児童に対して性的な行為を強要する。もしこれが事実とすれば、これは児童虐待に当たるのではありませんか。

 5月15日の報道藤島ジュリー景子社長の謝罪が、私が気づいたこの事件の最初の報道で、何が何だかよく分からなかった。 ジャニーズ事務所やそこに属するタレントに関する知識は少しだけあったが。 陰で多くの人権侵害があり、それを社会は救うことができなかった。 野放し犯罪があった。 そんな教訓なのかなと思う。

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2023年9月21日 (木)

黒部ダム(6)日本のダム順位 

黒部ダムの高さ186mは、日本一であり、これからもこの高さを超えるダムは日本では建設されないであろうと思う。ちなみに、現在世界で一番高いダムは305mの高さがある中国のJinping-I Dam(锦屏一级水电站)の様である。

ダムは、高さを競うものではなく、人々にどれほど役に立っているかが評価のポイントであり、評価にはマイナス評価も含めてですが、とりあえず、単純に高さ、総貯水量、有効貯水量についての日本のダムのベスト10を作成してみた。

1) 日本のダム高さ順位トップ10

次の表が高さ順位トップ10です。

Japandamhight

2) 日本のダム総貯水量順位

総貯水量で順位を付けると、高さとはやはり異なってきた。 黒部ダムは18位で、11位から17位には、玉川、雨竜土堰堤、雨竜第一、手取川、高見、有峰、矢木沢が入いる。

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3) 日本のダム有効貯水量順位

有効貯水量と総貯水量の違いは、名前の通りで、黒部ダムを例に取ると、利用水深は60mなので、186mのダムであるが、ダム基盤から120m迄は水を利用できない。利用できるのは、120mから180mの間の60mであり、この60mの水深幅が148,843,000m3の水を貯水する。 もし、水供給ダムなら水供給に利用可能な貯水量であり、洪水緩和目的なら洪水時に貯水し、下流側の水を抑制できる能力となる。

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2023年9月17日 (日)

リビアのダム決壊の原因は? 日本でもおこるか?

リビアのデルナ(Derna)を大洪水が襲い、街が押し流され、壊滅的な被害をもたらした。様々なニュースを総合すると、死者は1万人以上で、2万人以上になるとの話もある。被害状況を伝えるニュースとしては、このBBCニュースが動画もあり、また線を動かして、被害前と後を見れる航空写真もあります。

1) リビアのデルナとダムの位置

デルナは、東西約1300kmのリビアの東部に位置し、デルナからエジプト国境までは直線距離約270kmです。 地図に、崩壊した2つのダムを表示したが、下流側の北の方へのダムはデルナ市街地から1400m程度で非常に近いところにあり、それから上流約12kmのところにもう一つのダムがある。 

2) 2つのダム

上のGoogle Mapで衛星写真の方を拡大して見ると分かるが、2つともコンクリートダムではなく、フィルダムと呼ばれる土砂や岩石を盛り立てて建設した構造のダムである。日本では、河川堤防のほとんどがこの形式であり、河川からの取水箇所、ダムでは下流への放流箇所はコンクリート等を使い取水・放流等を可能とし又洪水等非常時の配慮もなされている。

Google Earthで3Dイメージを作成してみた。 (上がデルナ市街地に近いダム)

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3) ダムの目的

崩壊原因はやがて究明されるであろうが、このダムの目的はなにであったかと言うと、おそらく洪水対策と水供給であったと私は思う。 次のグラフはトリポリの平均月間降水量を示しており、6、7,8月はほとんど雨がない。また年間降水量も330mmであり、サヘル地方の典型である。2023年9月に降った雨は3日間で100mmを超え、200mmを超えた所もあるかもしれない。 夏場は、水供給・水確保が重要であり、一方今回のような豪雨も発生する。 水供給と洪水対策のためのダムであったと考える。

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4) ダム崩壊の原因

ダム崩壊の原因として、このGuardianの記事は、検察がダムメンテナンスの予算確保を含め、メンテナンスに問題がなかったか調査すると報じている。 これらのダムは1970年代にユーゴスラビアにより建設され、メンテナンス工事もトルコ業者に相当前に発注されていたとの話もある。どこまで真実か、確認できていないが、いずれにせよダムはメンテナンスが必要なのである。 日本の河川の土手も、管理者が亀裂や変形、沈下等がないか調査し、必要な場合は、改修工事を実施している。 あらゆる建築物はメンテナンスが必要であり、メンテナンスをすることにより、長期の利用が可能となる。

1300年以上の歴史がある香川県仲多度郡まんのう町にある満濃池は決壊と修築を繰り返しているが、現在も存続し農業用水供給を担っている。 但し、この満濃池も鎌倉や戦国の戦乱機には洪水決壊後の修復は実施されず放置されていたようである。

5) 復旧・復興の目途

リビアとは、どのような所かである。 ここに外務省海外安全ホームページのリビアがあり、次の様に書いてある。

【危険度】
●全土:レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)(継続)
【ポイント】
●リビアでは、民兵組織など武装グループによる武力衝突・テロ・誘拐事件が発生しており、全土に「レベル4:退避勧告」を発出しています。リビアへの渡航は、どのような目的であれ止めてください。また、既に滞在されている方は直ちに退避してください。

危険だから行くな! 行っている場合は、帰れ!である。 しかも、デルナを含む東部地域は、政府GNUの影響が及ばないLNAの影響が濃い地域である。在リビア日本大使館も、2014年7月21日で一時閉館し、現在はチュニジアの首都チュニスで業務をしている状態である。 カダフィ後の混乱の中、トルコ、カタール、イタリアは国連が関係したGNAを、そして対抗するLNAをエジプト、フランス、UAEが支援し、これにロシアが加わり、ワグネルも参加している。 この状態が現在どうなっているか、調べようとしても、調査しきれなかった。

赤十字・赤新月社は、頑張っておられるようだが、どうされているのか、赤十字・赤新月社だから支援可能なのかな。アフリカ最大の原油・ガスの埋蔵量を持つリビア。 だからこそ、利権が渦巻き、恐ろしい世界が口を開けて待っている。 確実なことは、平和が重要ということ。 戦乱(戦争のみならず内乱や暴動を含め)を無くすることこそ重要と考える。 その実現に向け努力することが重要と思う。

 

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2023年9月11日 (月)

黒部ダム (5) 水力発電

黒部ダムは高さ186mの発電用ダムであります。 黒部ダムで貯水し、発電する水力発電の概要を考えてみます。

1) 黒部ダムの貯水量

7月21日のブログに次のグラフを掲げました。

Kurobedamcapacity

黒部ダムは、ダム基礎岩盤から186mの高さがあり、水深高180mから120mまでの水深差60mが設計利用水深となっている。 標高では、基礎岩盤が1268mであり、最低水位は1388m、最高水位は1448mとなる。 設計有効貯水量は最低水位の時はゼロ、最高水位の時は148,800,000m3である。

2) 黒部ダムの水による水力発電

黒部ダムの水による水力発電と言うと、黒部第四発電所と考えてしまいがちであるが、実際には下流にある全ての水力発電所を含めて考える必要がある。 しかし、多少複雑であることから、今回は、黒部第四発電所のみを対象として考える。 

黒部第四発電所の場所は次の地図の赤丸点にあり、黒部ダムからは直線距離約9km北方の位置である。 発電所は地下にあり、水平面で回転する発電用ペルトン水車の羽根の位置は標高858.5mである。 ダムの最高水位は1448mなので、水力発電の最大総落差は589.5mである。

水車発電機を回転させた水は仙人谷ダム貯水池・黒三沈砂地・連絡水槽を経由して黒部第三発電所と新黒部第三発電所へ供給される。 仙人谷ダムは黒部第四発電所の約850m北西の黒部川下流に位置し、仙人谷ダムの最高水位は黒部第四発電所の水車中心から7.5m低い標高851mである。 次の地図上で黒部第四発電所を赤点で示した。 河川断面図で示すと、その下の図となる。

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現在の黒部川第四発電所の最大発電出力は、この2022年3月1日付電気新聞の記事にあるように337,000kWであり、この出力は72m3/秒の水をダムから水車に供給した場合に得られる。 最大総落差の589.5mに対しては発電効率81.02%であり、記事記載の有効落差545.5mに対しては発電効率は87.55%となる。 総落差と有効落差の差は、ダムから発電水車までの水路トンネルや水圧鉄管を通っての発電水供給であることから、それらによる損失である。 なお、黒部川第四発電所完成時の発電所出力は258,000kWで、水量は54m3/秒で、水車・発電機3基であった。1973年6月に4号機の増設が完成し、出力と使用水量が増加した。 

3) 黒部ダムから黒部第四発電所の発電水車への水供給

水車発電機はダムからの水量を調整することにより出力のコントロールを行っている。 一方、ダムへ流入する水量は自然の流れであり、一定ではない。 流入水量は、ダムより上流における降雨量により変化し、黒部ダムの場合は上流地域の融雪からの水もある。 融雪以外にも涌き水も関係する。 黒部川の河川流量であるが、1964年5月号の発電水力70「黒四特集号」19ページに昭和3年度~昭和24年度平均の毎月の黒部ダムの地点における自然流量の数字が掲載されており、これを図示したのが次である。

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2月は最も流量が少なく、20,000,000m3にもならない。一方、6月は2月の8倍以上の160,000,000m3を越える。グラフには月間流量を単純平均した1秒間の流量も右のスケールとして表示した。 54m3/秒で黒部ダムから水車発電機に水を流せば258,000kWの出力が得られ、40m3/secなら191,000kW、30m3/secnなら143,000kW、20m3/secなら95,000kW、10m3/secなら47,000kWの発電出力となる。 

上のグラフの1月から12月の月間流量を合計すると年間流量831,237,000m3となり、年平均は26.4m3/secとなる。

4) 黒部ダムによる流量調節

流入する水量を、発電用に供給するのに、月ごとの変動をなるべく小さくなるように調整をすることとして、シミュレーションを行ってみた。 シミュレーションの前提として、流入量は上の図の通りとし、ダムの貯水量は148,800,000m3であり、これ以上の貯水は不可能とする。 この前提でシミュレーションを行った結果の毎月の発電供給水量とダム貯水量のグラフは次図となった。

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11月から翌年3月にかけては流入量より発電供給水量の方が大きく、特に1月-3月は流入水量が少ないためダム貯水からの発電水の供給が大きく、ダム貯水量は減少する。 上図は青線が流入水量で、黄線が発電供給水量であることから、青線が黄線より下にあれば、差分がダムからの水供給であり、逆に青線が上にあれば、差分がダムへの貯水量の増加となる。 なお、100,000,000m3/月は、平均38m3/秒程度になり、発電出力では175,000kW程度、50,000,000m3/月なら20m3/秒程度であり、発電出力94,000kW程度である。

5) 黒部ダムは日本一高いダム その高さを変えてみた

ダムの位置はそのままで高さを高くすれば貯水量は増加し、低くすれば減少する。 高くした場合、低くした場合を考えるため、ダム高さに対する有効貯水量を次の表のように推定した。

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ダムへの流入水量は4)の通りであるとして、有効貯水量が上表のようになった場合の発電用水の供給を、ダムの貯水量の限度が上表の有効貯水量になるとして、4)と同じシミュレーションを実施してみた。 各ダム高さの場合の結果について発電供給水量のグラフで比較したのが次図である。

Kurobedam20239c

貯水量が少ないと、流入量カーブと発電供給水量のカーブは、その差が小さい。 一方、現在の黒部ダムの高さ186mを196mへと10m高くしても、効果はそれほど大きくなく限定的と思える。 196mのダムにすれば、環境への負荷は増加する。 また、建設費も増加する。やはり、186mで有効貯水量148,800,000m3の黒部ダムが適切であるように思える。

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