2015年12月 7日 (月)

出生前診断に関しての差別、選択、悩み

最近まで茨城県教育委員であった長谷川智恵子氏が、県内の特別支援学校を視察した後に、障がい児が生まれてこないよう妊娠中に診断し選別する方向性を進めるべきだといった趣旨の発言をした。

この発言についてハフィンポストにあった次の投稿記事は、色々ある中で、良い記事と思った。

ハフィンポスト 11月22日 障がい者の人生を誰が評価できるの? みんなが不完全であり、みんなに可能性がある

障害があれば殺すべきである。殺しても構わないとの思想につながり、恐ろしいと思う。ところで、出生前診断についてマスコミ報道の多くは、障害児を持たないようにするために、出生前診断を行うことができるようになったとの内容であった。

人の場合、倫理観は生きていくために、どうしても必要と私は考えている。個人により差があると同時に、他人に強制はできない。出生前診断を受けることに反対しない。出生前診断の結果、重い障害があると診断された場合、生活苦であえいでおり、育てることを放棄する親もあるだろう。親の判断により妊娠中絶を選ぶことに対しても反対しない。しかし、長谷川智恵子氏のような社会として、一つの方向を選ぶことには反対する。かつて、母体保護法が優生保護法と呼ばれていた時代に、ハンセン病の人には強制的に不妊手術をしていた。

最後に、2011年のことであるが、当時LUPOさん(宋美玄氏)が「シリーズ 赤ちゃんの情報は誰のもの?」というタイトルで6回シリーズのブログを書いておられたので紹介しておきます。

その1その2その3その4その5その6

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2010年3月 9日 (火)

OECDジェンダー報告

OECDが2010年のジェンダー報告(Gender Brief)を出しました。男女共同参画や男女差別なんて言葉を使わず、ここは、OECD(経済協力開発機構)を見習ってジェンダーで通します。

このLong Abstractの中からDownloadできますし、ここからも直接Downloadできます。(ファイル容量はpdfで2.4Mです。)

現在話題となっている子供手当や夫婦別姓あるいは少子化を頭に置いて読むと面白い報告書でした。以下に、少し紹介します。

1) 少子化は日本特有の問題ではない

OECD諸国の1970年、1995年、2008年の合計特殊出生率のグラフです。ほとんどの国で、人口減少とならないレベルである2.1に達していないのです。(ジェンダー報告から直接コピーしたグラフはクリックすると拡大します。)

Oecdgender1

1990年以降の合計特殊出生率の推移を、フランス、ドイツ、イタリア、日本、韓国、メキシコ、スウェーデン、トルコ、英国、米国にういてグラフを書いてみました。2000年以降スウェーデンや英国で上昇したが、日本、韓国、ドイツ、イタリアでは、上昇はありませんでした。

Oecdgender1a

子供手当で、出生率が上昇するのかと疑問を持ちます。子供手当については、塾の時間が増加したり、教育保険なんて言って保険屋が頑張ったりで、変な風になりそうな気がします。何故なら、児童手当が廃止される故、低所得者のメリットは少なく、お金持ちがお金を手にし、それを目指してビジネスが発生するとはならないでしょうか?

2) 高年齢出産化

高年齢出産の傾向は世界共通です。

Oecdgender2

3) 日本と韓国が特殊な未婚の母

次のグラフは、出産の中に未婚の母による出産が占める割合です。

Oecdgender4

数字で示すと、日本はたったの2.1%であり、アイスランドなんて65.6%ですから、3人に2人が未婚の母からの子供です。出産してから、籍を入れるなんてこともあるでしょうから、ほとんどが未婚で出産するのかもしれません。

未婚の母となるかどうかは、個人の選択の問題であり、未婚の母に対する社会的、経済的、法的な差別は、あってはならないと考えます。女が持つ出産の自由と権利でしょうか。男には、うらやましくも思えます。

4) 男女賃金格差も韓国、日本が大

次のグラフは、正規雇用の場合に、男の賃金が女の賃金より何パーセント高いかを表しています。

Oecdgender5

日本とは、女にとって住みやすい国ではないようです。少子化対策としては、産科医の不足なんかより、多くの女が未婚の母を選択しても、子育てが可能な仕事と収入が得られ、楽しく生きていける社会にする必要がある気がします。

5) 夫婦別姓は当たり前

夫婦別姓を選択可能とする法案について反対論があるようですが、2月15日のNB Onlineにあった自民党が少子化を加速させた 自民党・野田聖子衆院議員インタビューは、面白かった。

野田氏の発言に「高学歴・高所得の女性から生まれにくいのが日本の特徴で、そこが一番の問題点なのに改善されない。」という部分があります。高学歴・高所得の女を生かし切れない社会は、発展しないと思います。

非嫡出子の相続権が嫡出子と同一となるように民法が改正されるのは当然のことで、夫婦別姓の場合は、子供は成人になった時に、自分の姓を決定する権利を持つとか、離婚をしやすくし、日本でもジェンダーの取り組みをまじめにしないと破滅する国になるのではと危惧します。(過激ですか?)

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2008年9月27日 (土)

丸大食品のメラミンに関する危険性

メラミンが含まれた食品が日本国内で発見されたと報道が、ありました。

読売 9月26日 丸大食品の自主回収対象4商品からメラミン検出

そこで、丸大食品の商品の安全性を評価してみます。

1) 丸大食品のメラミン含有量

読売の記事によれば、次の通りです。

市販用クリームパンダ      37  ppm(高槻市検査分)
業務用クリームパンダ       36.6ppm(大阪府検査分)
グラタンクレープコーン      14  ppm(丸大食品検査分)

2) 食品安全委員会の基準

食品安全委員会のメラミンについての文書はここにあります。メラミンが工業用の物であることから、食品委員会としての基準値は未だ作成しておられないと思いますが、米国食品医薬品庁(FDA)と欧州食品安全機関(EFSA)のリスク/安全性評価が書かれています。FDAの基準は以下であります。

TDI(耐容一日摂取量):0.63 mg/kg 体重/日
(注)TDI(耐容一日摂取量)とは、耐容摂取量は、意図的に使用されていないにもかかわらず、食品中に存在したり、食品を汚染する物質(重金属、かび毒など)に設定される。耐容一日摂取量は、食品の消費に伴い摂取される汚染物質に対して人が一生涯にわたって摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される一日当たりの摂取量

安全値が0.63mg/kgですから、体重を10kg~50kgの場合について計算すると次の通りになります。

体重 10kg 20kg 30kg 40kg 50kg
耐容一日摂取量 6.3mg 12.6mg 18.9mg 25.2mg 31.5mg

3) クリームパンダの安全性

クリームパンダの安全性を評価します。この丸大食品のクリームパンダの商品情報に100gあたりの数字が書いてあります。100gで262Kcalとなっているので、普通であれば1回に食べる量は100g程度ではないかと思います。クリームパンダのメラミン含有量が37ppmであるとすると、100gに対して3.7mgです。従い、1日100g程度クリームパンダを食べるだけだったら良いのですが、例えば体重20kgの子供が1日3食合計で340g以上クリームパンダを食べると危険範囲に入ってしまいます。

なお、基準値TDIは一生涯にわたって摂取を続けても安全であることを前提にしていることから、直ちに危険ということではないと理解します。

4) 中国の乳幼児用調製粉乳の場合

食品安全委員会の文書には、メラミンが混入された中国の乳幼児用調製粉乳に関して、22 の製造者の69 製品からメラミンが検出され、その含有量は、高いもので2,563 mg/kg で、それ以外のもので0.09~ 619mg/kg との記載があります。

乳幼児のミルクの飲む量ですが、3~5月の離乳食前の場合がミルクを飲む量が一番多く、1回200mlを1日5回位のようです。1日に1,000mlですね。この中の粉乳の量は130g程度でしょうか。そうすると、1日のメラミン摂取量は、高いものの場合は333mgで、それ以外のもので0.01mg~80mgとなります。

3~5月の離乳食前の乳児の体重は、6~7kgであり、FDAの基準をあてはめると耐容一日摂取量は3.8mg~4.4mgです。高い場合は、基準値の80倍以上になりました。

食品の安全性について、○×ではなく、数字を使用して評価することが重要であり、本質を追究しないと本当の意味で対策がとれない。下手をすると多大なるコストを有効でないにも拘わらず掛けてしまい、結果的に我々の食品の価格が上がる。それを全員が支持するなら良いのですが、むしろその結果として、更に安いコストを求めて更に危険な食品が出回ることとなる。そんな馬鹿げた「イタチごっこ」だけはしたくありません。

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2007年3月24日 (土)

向井亜紀さんと高田延彦さん夫妻の代理出産による出生届不受理確定

次のニュースがありました。

読売 3月23日 向井亜紀さんの双子男児、出生届受理を認めず…最高裁

この最高裁の決定は、ここ全文-PDF)にあります。

これに関して書き進めます。

1) 事実関係

向井亜紀さんと高田延彦さん夫妻(以下夫妻とします。)は、米国ネバダ州で夫妻の受精卵を米国人の女性の子宮に入れて、その女性によって出産をして貰い、2003年11月に双子を得ました。夫妻とその女性及び女性の夫(代理夫妻)の間には、生まれた子については夫妻が法律上の父母であり、代理夫妻は子に関する保護権や訪問権等いかなる法的権利又は責任も有しないことなどを内容とする有償の代理出産契約が結ばれていました。ネバダ州の州法は婚姻関係にある夫婦は代理出産契約を締結することができることを認め、権利・義務関係の条文も定めていました。

夫妻は、11月下旬ネバダ州第二司法地方裁判所家事部に対し親子関係確定の申立てをし、同裁判所は、代理夫妻が向井夫妻の子として確定することを望んでいることを確認し、関係書類を精査した後、12月1日代理母から生まれる子らの血縁上及び法律上の実父母が夫妻であることを確認するとともに、出生証明書を作成する関係機関に、夫妻を父母とする出生証明書を準備し発行することの命令を出しました。12月31日付で夫妻は出生証明書を得ました。

2004年1月に夫妻は帰国し1月22日に品川区に出生届けを提出しました。品川区は5月28日、夫妻による出産の事実が認められず、嫡出親子関係が認められないことを理由として、出生届を受理しない旨の処分をしたことを通知しました。夫妻は品川区の処分に対する不服申立てを東京家裁に行い、家裁は申立てを却下し、更に夫妻が東京高裁に不服申し立てをし、高裁は出生届の受理を命じました。そこで、品川区は最高裁に抗告を行い、最高裁は高裁の命令を破棄し、夫妻の申し立てを棄却する決定を行いました。

ネバダ州の出生証明書により、子らの父母を夫妻として品川区が出生届けを受理すべきであるという論拠は次の民事訴訟法118条です。

(外国裁判所の確定判決の効力)
第118条  外国裁判所の確定判決は、次に掲げる要件のすべてを具備する場合に限り、その効力を有する。
一  法令又は条約により外国裁判所の裁判権が認められること。
二  敗訴の被告が訴訟の開始に必要な呼出し若しくは命令の送達(公示送達その他これに類する送達を除く。)を受けたこと又はこれを受けなかったが応訴したこと。
三  判決の内容及び訴訟手続が日本における公の秩序又は善良の風俗に反しないこと。
四  相互の保証があること。

2) 最高裁の判断

最高裁は民事訴訟法118条第3号の我が国の公序良俗に反するとして、夫妻の申し立てを棄却する決定を行いました。即ち、「民法が実親子関係を認めていない者の間にその成立を認める内容の外国裁判所の裁判は、我が国の法秩序の基本原則ないし基本理念と相いれないものであり、民訴法118条3号にいう公の秩序に反するといわなければならない。」と述べています。

日本国内で認められないことが、それを法律で許されている国や地域で行って、その結果を日本国内でも効力があるとできるのかと言う点です。又、補足意見としては、「代理出産が行われている国においては、代理出産した女性が自ら懐胎、出産した子に対して母親としての愛情を抱き、その引渡しを拒絶したり、反対に依頼者が引取りを拒絶するなど、様々な問題が発生しているという現実もある。」、「問題が発生した場合、懐胎、出産した女性、卵子を提供した女性及び子との間の関係が法律上明確に定められていなければ、子の地位が不安定になり、また、関係者の間の紛争を招くことともなって、子の福祉を著しく害することとなるおそれがある。」等々が述べられています。

そして、補足意見の中で「特別養子縁組を成立させる余地は十分にあると考える。」と述べられていますが、私も特別養子縁組がふさわしいと考えます。私の理解では、特別養子縁組は戸籍において「養子」と記載されず「長男・長女」と記載されると思います。

3) やはり愛

最高裁の決定の補足意見にも「子らに対し夫妻が親としての愛情を注ぎその養育に当たっていることについては,疑問の余地はない。」と述べられています。法よりも大事なものが愛であると私は思います。やがて大きくなった子らは、全てを知るでしょう。それで良いと思うのです。その結果、何も変わらないし愛情も当然変わらないものと思います。

最後に、宋 文洲氏が1月25日のNBonlineに書かれた「捨て子の少女の死と、脱・格差社会のもと」と題した記事を紹介します。貧しい、未婚の男性農夫が草むらに捨てられた女の子を拾って育て・・・というお話ですが、愛とは何よりも美しく強いものだと感じ入りました。ここにあります。生きていく上に最も大切なものは愛と思います。

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2007年2月15日 (木)

子どもの父親

本当は、「生む機械」発言の続きをそろそろ書きたいのですが、2月7日の衆議院予算委員会の議事録が衆議院TVにはあるが、活字状態の議事録が未だアップされていないことから、2月7日の衆議院予算委員会で民主党の枝野幸男民議員が取り上げた民法772条問題のことを書いてみます。「生む機械」発言の続きは会議録が出てきたところで書くことにします。

1) 民法772条

何が書いてあり、何が問題かですが、取りあえず条文を読む必要がありますが、それは以下の通りです。

(嫡出の推定)
第772条
 ① 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。
② 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定
する

第1項は問題がないはずです。第2項についてですが、次の毎日の記事を見ていただくと分かると思います。

毎日1月25日-民法772条:出生届不受理でNPOが法務省などに陳情
毎日2月1日-無戸籍:女子高生が旅券申請で要望 親の離婚事情で
毎日2月4日-民法772条:02年に自治体側が改正要望 法務省拒否

俗に妊娠期間を十月十日と言います。しかし、WHO指針による出産予定日は最終生理開始日から280日目(40週)で、妊婦が最終生理開始日を自己申告して、280日目が産科医から予定日と告げられるわけです。そして、正常なお産の範囲は妊娠37週0日から妊娠41週6日までと言われています。排卵日から計算したら245日~280日であり、正常な場合は300日より必ず短くなります。でも、こんな計算より何より、離婚する場合は、戸籍上の離婚よりも前に、結婚状態の破綻があり、財産分割や慰謝料で話しがつかない様な期間等があるはずです。

現在は、DNA鑑定が簡単に実施できるようになりました。民法772条が離婚後の子どもの権利と離婚した(する)女性の権利を制限していると言えます。

2) 772条2項の存在理由

何故772条があるのかと言うと、民法であるからと私は思います。会社法や証券取引法/金商法等は取引に関するルールを定めた法ですが、民法は既に存在する社会規範を文章にした面が多いと思います。家の存在が大きく、男が経済力と社会的な力を持っていた時代を思い浮かべるとよく分かると思います。離婚しても(離縁と呼んだ方が、よいかもしれませんが)子どもの養育義務を男に負わせせておく必要性です。逆に女は簡単に離縁された時代が長かったかも知れません。

3) 772条2項は改正されるか

毎日の次の記事は、7日の衆議院予算委員会で枝野議員に対する答弁として、法相「裁判以外も検討」 理解示す と書いてあるのですが、正確なところは議事録を読んで下さい。私は、そんなに単純ではなかったと理解しています。

毎日2月7日-民法772条:法相「裁判以外も検討」 理解示す--衆院委

民法の改正は容易ではないと思います。勿論、問題があることは、どしどし言うべきです。破綻した夫婦が婚姻を継続すること自身私は変だと思うし、離婚の自由は確保されなければならないと思います。そうなると、「裁判上の離婚(770条) 夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。」は、これでよいのかも検討が必要となるのかとも思います。

重要なことは、法よりも実際に生活していくことであると思うのです。そして時代を変えていく。

4) 実際の対応はどうすべきか

実は、1月25日の毎日の記事にあるのです。家事審判法23条(条文は続きを読むに入れておきます)による家庭裁判所に親子関係不存在確認の調停の申立てを行うのです。この申し立てをする際、母親が法定代理人となり、子どもの出生届は、提出すると父親が一旦は戸籍上前夫となってしまうので、出生届を出さずにすることです。これ、可能なはずです。

当然、家庭裁判所は前夫の意見と現夫の意見を聞くことになるが、通常であれば、もめないはずでDNA鑑定も不要で調停成立となるはずです。もめたら裁判となりますが、よほどのことがない限りDNA鑑定の結果が通ると私は思います。逆にもめるケースとは、前夫も自分の子どもであると主張する場合であり、もしかしたらそれなりの理由があるかも知れません。

参考として、次の裁判所のサイトをご覧になって下さい。民法772条が改正されないと離婚できないなんてことありません。また、子どものことを本当に思うなら、この親子関係不存在確認の調停の申立てを行うことと思います。多くの方がそうされていると思います。

裁判所 親子関係不存在確認

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