2023年12月22日 (金)

ダイハツの認証申請不正行為とトヨタの関係

ダイハツは、自社Webトップページで現在は、次のように述べている。

当社の認証申請における不正行為により、お客様をはじめとするステークホルダーの皆様に、多大なるご迷惑・ご心配をおかけしておりますことを深くお詫び申し上げます。

不正の内容は、調査報告書を読んでみると、恐ろしいと思った部分がある。例えば、「エアバッグタイマー着火(不正加工・調整類型)」では、試験対象の車が電子式のエアバッグ作動装置(ECU)であるにも関わらずECU設定が間に合わないとタイマー着火装置を使って試験を行い、試験成績書を作成し、認証試験を行った。(報告書44ページ)

「現在国内外で生産中の全てのダイハツ開発車種の出荷を一旦停止することを決定いたしました。」との12月20日発表になったが、これ以上の信頼失墜にならないようにするには、この発表なのだろうと思った。

ところで、トヨタはこの12月20日の発表に止まっており、冷めた対応に思える。 ダイハツはトヨタの完全子会社であり、ダイハツの不正の責任はトヨタにあると考えるがどうだろうか。 人事も投資も研究・設計・製作・検査・販売その他あらゆる企業活動はトヨタが支配しているのである。 ダイハツとは名ばかりで、何の決定権も持っていない。 下請けよりも、発言権はないのである。 謝罪すべきは、トヨタと考えるのだが。どうだろうか? 

2016年1月29日にはこんな発表をしているのである。

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2021年3月25日 (木)

原発批判 朝日社説への反論

朝日社説への反論とのタイトルだが、内容の間違い指摘ではない。視野が幾分か狭く、真に考えるべきことが抜けていると思った。ちなみに次の社説である。

朝日社説 3月24日 柏崎刈羽原発 東電に運転資格はない

では、誰がどこの団体・会社が運転するのだと言っても、その答えは難しい。様々な観点から検討を加えて、日本における原発保有・運転・廃棄核燃料と放射性物質管理者をどうすることが最適かを考えねばならない。東電を批判することは簡単である。東電に資格はないという発言には同時に、誰であるべきか、具体的な固有名詞はなくても方向性か何かが示されるべきと考える。そこで、浅はかながら。少し考えてみる。

1)最近の不祥事・問題点

柏崎刈羽原発で社員によるIDカード不正使用という事件があった。その原因分析・改善措置概要がここ にある。あってはならないことだが、どこにでも起こりうる問題である。不正をした社員の責任追及のみならず、制度・システムの責任も追及されなくてはならない。顔認証・指紋認証等も組み込んで厳格性をあげることも考えられたと思う。人間の善意のみを信じては失敗する可能性がある。

柏崎刈羽原発で核物質防護設備である侵入検知装置の損傷や故障という問題があった(新潟日報の記事 東電HD発表による概要 )。どのような検知装置で核物質防護設備とは何かと言っても詳細は発表することにより当該部分の防護が薄くなりかねず、余り発表されないのではと思う。軽微なことかも知れないが、核物質という重大な事項故原子力規制庁が動いたと言うことなのかよく分からない。ひとまずは、原子力規制庁を信頼したい。

ところで、これら不祥事・問題発生を理由として是正措置命令の結果、東電が柏崎刈羽原発を運転できなくなったとしても、核燃料が発電所内に存在し、放射性物質も同様に存在する。本質的な問題解決ではないのである。運転している原発がない福島県もこの発表 のように核物質防護措置に万全を期すように東電に3月16日に申し入れている。

2)株式会社組織自体の問題点

株式会社が原発を保有・運転し、廃棄核燃料と放射性物質管理者としての義務を果たすことの制度上の問題を考えねばならない。原発という安全性を最優先とする基準と株式会社という利益追求組織の整合性である。株式会社は、出資者たる株主は取締役を選任し取締役が経営に携わる。取締役の業績評価と会社の利益が大いに関係する。利益が大きければ、PERは一定としてEが大きくなれば、その分株価Pも高くなる。PBRも同様で、利益が大きければBが大きくなり株価Pも高くなる。そして株主は配当金も受けとれる。

原発を利益追求組織である株式会社が保有・運転することの問題点をよく考える必要がある。そして、このことは使用済み核燃料や高濃度から低濃度までの放射性物質の廃棄とその管理の段階になると、利益を生まず、費用のみが発生する事業となる。株式会社は、収益貢献がない事業においては、コスト削減が最大の関心事となるわけで、安全と言ったって地震、津波、テロのリスクなんて、どの程度まで対策するかと言えば、どうしたってコストを中心に考えてしまう。福島第一原発のトリチウムを含む126万m3の汚染水にしても、大地震によりタンクが破損し大量流出なんてことにならないとは限らない。東電の責任とだけ述べていても始まらないはず。

1955年に原子力基本法等が制定され、原発に積極的な姿勢を示す電力9社と電源開発の対立もあったが、電力、電源開発、メーカーなどの共同出資で1957年11月に日本原子力発電株式会社が設立された。その後、関西電力、東京電力他も原発を保有することとなった。当時、原子力平和利用と言われ、将来的には原子力は低コストのエネルギー源になると期待されていた。

2011年福島第一原発事故を経験した我々には原子力の安全な平和利用は課題が多い、相当先の話であり、安全を達成するための膨大な費用があることを認識したと思う。原発の安全を確保する。そのためには、どのような組織が保有・運転・廃棄をすべきか考えるべきである。私は、特殊法人と思うが、そのためにはその法制定の研究だけでも相当の時間を要し、一刻も早く検討をすべきと考えている。なお、仮に新しく日本で原発を建設しなくても、現存する原発の廃棄物処理で数百年を要するのであり、よく考える必要がある。

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2018年12月21日 (金)

カルロス・ゴーンの特別背任容疑再逮捕

カルロス・ゴーンは会社法による特別背任容疑で再逮捕された。

日経 12月21日 ゴーン元会長を特別背任容疑で再逮捕 東京地検

ゴーン氏は、これまで、有価証券報告書の虚偽記載で逮捕されていた。有価証券報告書は会社が発行するものであり、日産も問われる。しかし、特別背任となると、日産はカルロス・ゴーンに騙された被害者となる。

日経は、ゴーン元会長の資産管理会社による新生銀行との通貨取引に関するスワップ契約の損失を含むすべての権利を日産に移転させることで約18億5000万円の評価損を負担する義務を日産に負わせたと報道している。更には、日産に移転した契約を資産管理会社に再移転する際に尽力した人物が経営する会社の預金口座に、09年6月~12年3月、4回にわたり日産子会社の預金口座から計1470万米ドルを振り込み入金させた疑いとある。

バレないように、相当複雑な操作をしていたと思われる。そんな複雑な仕組みを編み出したのは09年6月~12年3月、4回にわたって日産子会社から15億円強の報酬を受け取った会社の支配者だと思う。会社の登記住所はタックスヘイブンで、登記上の代表者は別人とか、相当巧妙に仕組まれているだろうと想像する。送金をした日産子会社も、日本法人ではない可能性がある。

一方、日産の社員で、全貌は把握できていないが、変な取引があると認識していた人はいたと思うのである。

カルロス・ゴーンと日産は、絶好の研究対象かも知れない。会社のガバナンスと会社トップによる犯罪についてです。報道以上のことは知らないが、日産のガバナンスはトップの犯罪に対して機能しなかった。それは何故か?どうすれば、機能するのかを考えることは重要である。

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2018年9月10日 (月)

ドルガバ流雇用契約は、どう評価するか

働き方改革においては、働き方が多様化し、様々な働き方が増えていく。安倍内閣の政策がどうあれ、働き方の多様化は進んでいくことと思います。次のニュースも働き方改革という観点で考えれば、どのようになるのだろうと思いました。

デイリー新潮 9月6日 マドンナ御用達「ドルチェ&ガッバーナ」3億円サギ事件 日本社長は自宅仮差押えに…

偽メールを信じて送金をした結果、280万ドル(約3億1千万円)は取り戻せず、解雇となり更に損害賠償訴訟を提起された。

記事には、日本法人元社長の知人の話として次の発言があります。

代表取締役であろうと、気に食わなければ辞めさせるのがドルガバ流なんでしょう。でも菅井さんは全然納得してなくて、ブラック企業でひどいパワハラを受けたという認識。実際、個人が責任を負うべきことではありませんから

でも、社長と言っても株主ではないし、会社に対する賠償責任金額の上限を契約で取り決めていたわけではないはず。

会社からすれば、怪しい内容のメールを受信したなら、発信人に確かめるのがすべき行動である。「税務上の理由で、社内にも極秘なんて」書いてあれば、通常だと、いよいよ怪しいと思うのだが、もしかしたら、この会社は税逃れが多く、日本法人にも脱税を目的とした多くの偽装や秘密書類があるのでしょうか。

働いている場合は、責任は個人にはなくすべて会社にありとするのは、これからの時代には私は合わないと思います。どのような場合にも、気をつけるべきだし、特に自分自身については気をつけるべきと思います。

このJALのニュースは昨年のことでしたが、「届いた電子メールは、偽のアドレスだったが、パソコンには担当者と同一のものが表示されていたため、信用した」とあります。

振り込め詐欺は、老人が対象とは限らず、また電話ではなく電子メールもあり得る。働き改革で、そうなるのではなく、ICT(Information Communication Tecnology)の進化に対応できていないと働く場が狭くなるし、働くのが難しくなると言うことのように思えます。

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2017年6月 6日 (火)

東芝の監査委員会と監査法人

東芝に関しては、毎日のように様々な報道が為されている。例えば、次の東洋経済ONLINEの記事である。

東洋経済ONLINE 5月5日 東芝の監査法人、「PwCあらた」が一転継続へ

注目は、記事よりも、この記事に対するコメント欄の書込(ここ)である。監査委員会と会計監査人との関係についてのコメントがある。

会計監査人は2016年3月までは新日本であり、4月からはPwCあらたである。東芝は、指名委員会等設置会社であり、執行役の取締役以外に指名委員会、監査委員会、報酬委員会を構成し、委員となっている取締役が存在する。

一連の問題で、東芝監査委員会の委員となっている取締役は3名いるが、果たして何をしていたのか、何をしているのかと問いたださなくてはならない。監査委員3名は、全員社外取締役なのだが、委員長は元監査法人の執行社員であった公認会計士であり、残る2名のうちの1名も別の監査法人の元代表社員であり、証券取引等監視委員会委員を勤めた事がある人物。そして、もう一人は元検察官で最高裁判所判事にもなった人である。監査委員会の委員自らが全ての作業をする必要はない。調査他の職務を補助すべき使用人に業務を命じれば良いのである。そして、監査法人と密接な連絡を取り、監査法人の意見を聴取する必要がある。

問題ある会社の監査委員に就任している場合の株主や社会に対する責任は、それだけ重大であると考える。悪い奴らは、悪事を隠すために、さも立派な肩書きのあるこれぞ社会正義と看板を掲げる事ができる人物をお目付役に任命する。東芝問題って、複雑且つ大変ですね。

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2015年7月31日 (金)

東芝のガバナンスを考える

東芝の巨額粉飾事件の原因は、本来機能すべき会社のガバナンスが機能していなかったと考えるべきと思う。その理由を考えてみる。そうすることが経営コンサルタントとしての社会全般への貢献であるとも思う。

1) 東芝は委員会設置会社である

東芝は委員会設置会社である。

(2015年5月1日に改正会社法が施行され、名前は指名委員会等設置会社になっており、正確には指名委員会等設置会社と呼ぶべきである。しかし、今回のこのブログ内では、委員会設置会社と呼ぶこととする。)

委員会設置会社とは、2003年4月施行の改正商法特例法により導入され、2006年5月施行の会社法に引き継がれた。委員会設置会社ではない従来型の会社統治制度は、株主総会で選任された取締役により構成される取締役会が業務を執行し、そして株主総会で選任された監査役が取締役の業務執行を監査する。取締役の業務執行における不正行為を監視するのは監査役である。監査役の仕事としては、取締役並びに取締役会が不正防止のための適切な管理・監視体制等を構築しているかを監視し、取締役会に改善を勧告することもその業務に含まれる。

委員会設置会社の場合は、監査役は選任されない。株主総会での選任は取締役のみとなる。そして、委員会設置会社では指名委員会、報酬委員会と監査委員会の3つの委員会が組織される。3つの委員会の委員は、取締役の中から、取締役会の決議で選任される。業務執行は、取締役ではなく取締役会が選任する執行役により行われる。但し、取締役が執行役を兼任することは可能である。

委員会設置会社の場合、執行役が業務を執行し、執行役を選任するのが取締役会であることから、取締役会はミニ株主総会の感覚を持つ。数えてはいないが、米国では上場会社のほとんどは委員会設置会社であると思う。株主統治を重視する考え方に立てば、株主代表の取締役会が執行役による業務執行を監視するほうが不正は生じにくいし、株主の利益にそった会社の活動が期待できるとの考え方である。取締役の任期は1年であり、執行役は取締役会の決議で何時でも解任できる。

2) 監査委員会

今回の東芝の巨額粉飾事件の問題点で見落としてはならないのは、監査委員会の職務執行の適正さ・的確さである。会社法404条2項は次の通りである。

監査委員会は、次に掲げる職務を行う。
 執行役等(執行役及び取締役をいい、会計参与設置会社にあっては、執行役、取締役及び会計参与をいう。以下この節において同じ。)の職務の執行の監査及び監査報告の作成
   株主総会に提出する会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関する議案の内容の決定

社長(執行役)を含む会社トップの不適切な職務執行が巨額粉飾を生んだ事件である。東芝巨額粉飾事件については、J-soxのような内部統制制度が機能しにくい面が存在する。即ち、内部統制制度とは社長(執行役)を頂点としての組織が運営・運用する制度である。トップが暴走した場合に、それを阻止する体制は、J-soxでは不十分であると私は考える。委員会設置会社ではないが、大王製紙事件や、オリンパス事件でもJ-soxは機能していなかった。

委員会設置会社の場合のトップ(執行役)の不正防止機能は、監査委員会の職務執行であり、その適正さに期待をしなければならないと考える。

3) 東芝の監査委員会

東芝の7月22日現在の監査委員会の委員は、伊丹敬之(委員長、社外)、島岡聖也(社内法務出身)、島内憲(社外)、斎藤聖美(社外)、谷野作太郎(社外)で全員6月総会で再任されている。経歴はこの東芝の株主総会招集通知を見ると外務省出身であったりで2)で書いたような執行役の不正を正す能力がどこまであったのかと疑問に思える面がある。

委員会設置会社の場合、1)において株主の利益にそった経営が期待できると書いたのであるが、逆にワンマン経営に陥る可能性も高くなるのである。即ち、一人または何人かが取締役と執行役を兼任し、この人が代表執行役のような執行役及び従業員のトップになる訳で、執行役から取締役会への報告は3月に1回で済ませることも多く(会社法417条4項)、監査委員会も取締役の開催と併せて3月に1回のペースとなることも多い。そして、実際に業務に携わっているのは執行役であるから基本的に全ての資料は執行役が準備する。取締役から執行役に対する質問についても、会社の業務に関する情報格差は大きく、各委員会の過半数を占める社外取締役が本質を捉えて執行役の会社業務について正すことには困難がつきまとうと言える。

監査委員会の能力についての疑問を書いたのであるが、任務を怠ったとなると取締役に対する株主代表訴訟の可能性が出てくる。これについては当然監査委員会の委員を含め東芝の取締役は認識しておられると思う。賠償上限金額を定めて就任していると思うが、今後の日本の会社の社外取締役はなり手があるのかとも思う。また経歴等で見栄えのよい社外取締役ではなく実務に優秀な職人的な社外取締役が望まれる気がする。

4) 日本型会社経営

独立社外取締役が取締役に就任することに反対するのではありません。東芝のように委員会設置会社とすることが日本の会社にとって良いことなのかという疑問です。企業には、それぞれ風土があり、一概に述べることは不適切と考える。しかし、日本型の終身雇用制度においては、委員会設置会社のガバナンスはうまく機能しないとの疑問が、東芝巨額粉飾事件を考えるにつれ強くなってきたのです。

代表執行役一人に、好きなように活躍させて、株主の利益拡大を最優先にする会社とするなら委員会設置会社も機能すると思う。年功序列的に社内から認められてトップになるのではなく業績回復や業績拡大を目指して競争相手から引き抜いてでもトップに据えたくなる人間がいれば連れてくるやり方の場合、委員会設置会社の仕組みはうまく機能すると思う。日本はやはり年功序列的なガバナンスであると思う。基本的には、社内風土・企業内容・人員等を的確に把握している人がトップとなり、リーダーとなって業務を執行していく。先輩を敬い、同じ釜の飯を食ってんだからと、遠慮なく意見を述べ、正すべきことは正していく。監査についても社内出身者の場合は、手心を加える面があるかも知れないが、不正の可能性を見抜くことが容易とも言える。

日本型会社ガバナンスを見直してみるべきではないかと思う。終身雇用や従業員第一というような経営姿勢から生まれるガバナンスも良いではないかと思う。株主利益優先なる経営方針やガバナンスがもたらす結果は、どうであるか、個々の会社毎に考える必要があると思う。どの会社のガバナンスの説明を見ても、金太郎飴みたいに思え、書いてあるだけではないのと疑ったりしてしまう。

5) 東芝の今後

東芝がこれくらいのことで、どうかなる訳ではないと考える。日本の将来を担う技術を保有する会社である。一方、それ故非常に残念でもある。社会に貢献することを最大の目的として会社を運営・経営をしていかれたいと望む。

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2015年7月22日 (水)

東芝の問題

東芝の粉飾事件は、日を追う毎に、問題が膨らんできているような気がする。時事ドットコムは、米国における東芝株の株価急落に起因する損失についての裁判について報道している。

時事ドットコム 7月22日 東芝に賠償請求=集団訴訟に発展も-米

米国の法廷での裁判であり、私は、陪審員制と理解します。陪審員制の場合、情状による判断が入りやすく、弱者救済に向かうことが多いと聞いたこともあり、東芝にとっては、厳しい判決となりうるように思う。

しかし、東芝は、何故こんなバカな粉飾をしてしまったのだろうと不思議に思う。日経は7月21日に、東芝、不適切会計問題を読み解くという記事を出しているが、社長の指示でそんな簡単に社員が粉飾決算に手を染めるのだろうかと疑問に思う。義侠心が多い社員もいる。最も、上の意向を汲んで行動する人もいるだろうが逆に社会的正義感が強い人もいる。社内監査部門もあるし、社内制度・組織では不正が生じないようガバナンスが働くようになっていると思う。そう考えると、社長が犯人ではなく、社員・就業者全員が一丸となって粉飾をしたのではとさえ思ってしまう。そうなると、会計監査人新日本監査法人は、どうなのだろうか?会社法423条の役員等の株式会社に対する損害賠償責任には会計監査人も含まれている。日本で、株主代表訴訟が提起された場合には、新日本監査法人が含まれる可能性もあると思う。

ところで、ウェスチングハウス(WH)は、どうなのだろうか?東芝の有価証券報告書(2014年3月期)を見ると、WHの全部の持分は東芝エナジーホールディングス(米国)が保有し、この87%を東芝が保有しているとの記載がある。東芝がWHの67%を買収したのは英BNFLからで2006年。(この東芝発表2006年2月6日には、54億ドル(約6,210億円、115円/ドルで換算)で契約を締結とある。但し、54億ドルは、米ショー・グループ(20%)、カザフスタンの国営原子力事業会社カザトムプロム(10%)と日本IHI(3%)の合計である可能性はある。2011年のWH20%持分追加取得はこの東芝発表2011年9月6日であり、米ショー・グループから。金額はこの日経2015年7月22日によれば、1250億円であるが、東芝の発表にもショーのプットオプション行使の決定とあり、ショーが6,210億円の20%で東芝に売却するオプションを保有していたと想定される。

そこで東芝のWH取得の投資額を考えると、6,210億円の87%である5,400億円と想定される。2014年3月末連結財務諸表におけるWHの資産は259億円が計上されており、のれんは全社合計で5800億円計上されている。東芝は米国基準で財務諸表を作成しており、のれんは規則的な償却の対象ではなく、5,400億円がほぼそのまま資産計上されている可能性はある。

どうなのだろうか?原発に明るい未来は考えられるのだろうか?特にWHの加圧型軽水炉の将来は、どうなのだろうか?仮にWHの持分を東芝が売却しようとして買い手が現れるのだろうか?米国政府・米議会や米国民にしてみれば、変な相手先への売却を認めないはずである。東芝のWH投資は更に混迷を深める問題である。

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2015年4月 7日 (火)

役員報酬14億円強を受領のユーシン会長兼社長

会計ニュースコレクターさんのブログ(これ)で知りました。自動車部品会社ユーシンの会長兼社長が一人で受け取った役員報酬14億円強が過去最高を記録したと東京商工リサーチが4月3日に報じた。東京商工リサーチのニュースはここにあります。

ユーシンは自動車部品等の製造メーカであり、過去2回社長を公募したことでも有名である。(参考:東洋経済 2014年08月29日 ユーシン、2度目の社長公募はどうなった?後継者選びに挑んだ80歳社長

なお、過去の役員報酬の支払い記録と業績を調べると次表の通りであった。

Ushin20153a

2014年11月期は12億5千万円の純利益であったが、連結業績は4億3千万円の赤字であった。2011年11月期を除き、連結ベースの方が業績が悪い。即ち、赤字子会社が多いことを意味する。

また、役員基本報酬にしろ賞与にしろ圧倒的に田邊耕二氏に対する支払額が多く、2014年11月期は86%が同氏への支払いである。優秀な人材が来れば、10億円を越える報酬も支払いますよと更に3回目の社長公募への布陣なのかも知れないが、分かりません。

考えれば、会社法以前の商法時代は役員賞与は利益処分として扱い多くの会社では株主配当金のより少ない金額を役員賞与の総額としていた。決して、それが正しいとは限らないが、会社法にだって次の361条1項がある。

第361条 取締役の報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益(以下この章において「報酬等」という。)についての次に掲げる事項は、定款に当該事項を定めていないときは、株主総会の決議によって定める。
一 報酬等のうち額が確定しているものについては、その額
二 報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法
三 報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容

ユーシンの112回定時株主総会(2013年11月期)招集通知を見ると、4号議案として取締役の報酬額改定の件とある。しかし、取締役の報酬額総額を年額10億円以内から年額30億円以内に改訂するという内容であった。個人別の役員報酬額は年1億円以上の場合、2010年3月期以後の有価証券報告書でコーポレートガバナンスに関する項目として開示が義務付けられた(参考)。従い、有価証券報告書が株主総会の後で提出される場合には、1億円以上であっても役員報酬は総額の開示で通用する。本当は、株主配当金や役員報酬については、株主総会で議論されても良いことと思うのであるが。なお、ユーシンの株主配当金は年間3億円弱。また、田邊耕二氏の持ち株は1%未満である。

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2013年11月 6日 (水)

雪国まいたけ事件から学ぶべきこと

雪国まいたけが過去の不適切な会計処理に関する調査報告書と社長の辞任を11月5日に発表した。日経の記事は次の通り。

日経 11月5日 雪国まいたけ、12年3月期に違法配当の可能性

雪国まいたけによる発表は、社内調査委員会の調査報告書の受領及び当社の対応についておよび代表取締役の異動(社長交代)に関するお知らせです。

日経記事に「2012年3月期の配当可能剰余金がゼロとなり、同期の株主配当金1億3300万円が全額違法配当になっている可能性がある」との文章がある。「調査報告書の受領及び当社の対応」とする方の会社発表の7枚目以降のページに社内調査報告書の要約版が添付されている。これを読むと、平成11年3月期以降から本年6月末までの間で、不適切な会計処理により13億84百万円の利益が過剰に計上されていると書いてある。結果、2013年3月末においては、連結決算の貸借対照表で純資産が13億84百万円減少し、単体決算で14億27百万円減少する。その結果として純資産額は、連結で8億15百万円、単体で6億1千万円となる。

一方、株主が払い込んだ資本金と資本剰余金並びに過去の利益の積立額である利益剰余金の合計である株主資本は、2013年3月末で連結で22億14百万円、単体で19億71百万円であった。その結果として、過去の利益配当において株主が払い込んだお金をたこ足配当した部分の金額(単体のみを対象として)が、私の計算では13億61百万円もあったことになる(19億71百万円マイナス6億1千万円)。これでは、2012年3月期の株主配当金1億3300万円に限定されない超巨額違法配当事件と思える。(結果は今少し待ちたい。)

そのような超巨額不適切会計処理が行われた背景であるが、日経記事には「経営者の強すぎたリーダーシップによる暗黙の重圧」なる表現があり、報告書要約版を読むと、「私たちは出来ない理由を探しません!出来る理由を見つけます! 私たちは妥協しません! 許しません!」との会社の行動指針があったことが書いてある。(15ページ)

背筋が寒くなる標語である。半沢直樹とブラック企業が頭に浮かんでしまうが、同時に戦前・戦中の日本の標語に連想が移る。「鬼畜米英。欲しがりません勝つまでは。」とかで、竹槍で銃と戦うなんて絶対に無理で、頭を使い、交渉力や国内政治と外交を含む分析力や企画力等で勝負すべきが、完全に間違っていると考える次第である。「それでも、お前は日本人か」なんて、こんな事を言ってしか相手との論争に勝てないのは無能力の証明と考えるが、それに似たような表現である。

企業にも政府にも社会にも、精神主義がはびこってはならない。相手の言葉も理解し、論理的、合理的に進めることができて繁栄があると信じる。

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2012年10月 1日 (月)

三洋電機の配当に関する株主代表訴訟判決に思う

配当可能益がないのに違法な配当をしたとして、元株主が井植敏元会長ら当時の三洋電機経営者15人に対して総額約279億円の三洋電機への支払を求めた株主代表訴訟の判決が28日にあり、大阪地裁は違法配当ではないとして、株主の請求を棄却したとのニュースがあった。

時事ドットコム 9月28日 井植元会長らの責任認めず=三洋電機の株主訴訟-大阪地裁

何故、これを本ブログで取り上げたかというと、三洋電機の財務諸表に関して金融庁が課徴金納付命令を出しているからである。

金融庁発表 2008年1月18日 三洋電機株式会社の半期報告書に係る金融商品取引法違反に対する課徴金納付命令の決定について

課徴金納付命令となった対象は有価証券報告書は2005年9月中間期半期報告書であり、この金融庁勧告の通り、純資産額が174,641百万円であったにもかかわらず、純資産額に相当する「資本合計」欄に226,872百万円と記載したと言うことであり、52,231百万円の粉飾決算である。なお、三洋電機の有価証券報告書は、2005年9月中間期半期報告書を含め、この三洋電機のWebからダウンロード可能です。

そうなると考えてしまう。元株主の申し立てのように、違法配当ではなかったのかと。即ち、三洋電機は2005年3月期の中間配当(配当支払い時期2004年12月頃)まで、1株あたり期末配当3円と中間配当3円を継続していた。1回の配当支払総額は55億円-56億円であり、元株主の賠償額279億円は粉飾額522億円より小さいのである。また、2005年9月中間期末における利益剰余金合計は、粉飾額522億円をマイナスする以前で既に1,913億円のマイナスを計上していた。

522億円のマイナスをどの時点で財務諸表上に認識するのが妥当であったのかは、当事者でないと、判断は困難である。ちなみに、監査法人は中央青山であった。

しかし、結果としては、三洋電機はパナソニックに買収されたのであり、日本航空と比べれば、ごく普通の企業であると考える。日本航空の場合は、株式を無価値にし、債権カットをして株主と債権者を泣かせた。銀行の損失は法人税の減収であり、国民の税金負担増大である。借入金・社債の債権カット額分は返済も利払いも不要になったのみならず、会社更生法適用による債権放棄として益金不算入の扱いを受ける。法人税さえ納付義務が当面なくなった。泣きを見るのは国民である。また、債権カットを実施し関係者の同意を得るためにと従業員の年金カットも行われた。三洋電機は、国民にこのような多大な犠牲を強いることはなかったのである。企業活動に関する一つの重要なことの一つは、政府は個別企業に関与してはならないことである。

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