朝日新聞2月10日号の一面で、この記事タイトルで表示するとは、クリック数で稼ぐSNSと同じようだ。 大新聞とは思えないと感じた。 その記事とタイトルとは、これです。
1) 無駄になっているわけではない
発電していない。 電気は生み出されていない。 生産して、生産物が捨てられているわけではないのです。 そもそも全量買取制度において、マーケット変動に関係なく生産した全量が買い取られ、代金が支払われることは、長期契約とは言え、市場経済原則に反すると誰もが考える。
全量を買い取らず、生産量を落とし、目一杯の生産をさせずに、少ない量を引き取り、引き取った分の代金しか払われないかと言えば、引き取っても販売先がないからです。 工場を建設して、完成後の市場変化により計画した量の生産ができないことはあることです。 それを他人のせいにしても、落語の話みたいと思う。
2) 資源エネルギー庁の説明
資源エネルギー庁の説明は、ここにあります。 発電制御とは電力の安定供給が目的です。 停電等供給停止を発生させず、契約した電圧と周波数でユーザーに電気・電力を供給することは重要です。 需要イコール供給となるようにコントロールするのですが、需要はコントロールの対象とせず、供給を需要に合わるようコントロールするのです。 再エネ発電のみならず、あらゆる電気発生装置・機器が発電制御の対象です。 但し、装置・機器の安全確保も重要であり、例えば原発は日本では出力一定の運転を行っており、発電制御の対象外です。
電線を流れる電気は貯蔵されないので、需給バランスの崩れは、電圧と周波数の不安定につながるのですが、それがユーザー内を含め電力供給網の多くの場所に設置された安全装置を働かせてスイッチの遮断、ひいてはその結果によってシーケンス的に生じる更に多くの安全装置の遮断につながる可能性があります。
電力広域的運用機関(ホームページはここ )が、電気事業法により設立・運営されており、電気事業に係る電気の需給の状況の監視、電気の安定供給のために必要な供給能力の確保の促進等の業務を行っている。 その結果、電気供給に関する公正な監視がなされ、安定供給が維持されていると考えます。
3) 太陽光の発電制御の実際
実際の九州地方における太陽光発電の出力制御を見てみる。 なお、出力制御とは、あらゆる発電機器・装置でなされており、電気回路・システムの安全な運用には欠かせないのである。 原子力発電は、出力変動を生じさせずに運転しているが、一定出力をキープすることにより安全を確保しようとする考え方です。
具体的に九州における電力供給・発電制御を見てみる。 2023年においては、4月9日は太陽光発電が発電制御により抑えられた日であった。 この日の九州地方の時間毎の電力供給は次図であった。
2023年4月9日の12時の需要は7,409MWであった。 これに対して、太陽光の発電供給力はこの時刻において9,782MWであったと想定されるが、実際にはその発電供給は3,934MWに制御された。 結果、差の5,849MWは発電されなかった想定電力と考えられる。 上図に於いて、黒線が需要であり、赤線が太陽光の想定発電量である。9時から15時までは、太陽光を抑制なしで発電したなら、需要の黒線を9時から15時に於いては上回る。
なお、需要が7,409MWであったとしても、揚水発電の揚水(ポンプアップ)運転を行って需要を増加させることは可能であり、同様に他の系統に電力供給を行って実質的需要(発電必要量)を大きくすることができる。 4月9日12時の揚水動力は1,406MWであり、中国地方系統への供給は1,308MWであった。上図において揚水動力は赤で、他系統への送受電は緑で示し、電力消費になっている場合は、ゼロよし下のマイナス表示とし、電力供給となっている場合はプラス表示としている。
別の例として、1日における太陽光発電がほとんど抑制されなかった日の電力供給・発電制御を見てみる。 2023年6月19日がそれ例で、次図の電力供給であった。
上の2つの図で抑制しなかった場合の太陽光発電は、大きな差は見られない。 4月9日と6月19日との最大の異なる点は電力需要にある。 4月9日と6月19日の需要量は、187,262MWhと235,201MWhであり、ピーク需要は8,908MWと12,044MWであった。
なお、年間を通じた場合、太陽光発電はどのようなになるか、2023年における九州地方での太陽光発電の毎日の発電量と抑制量は次図のようになった。
太陽光発電の場合、雨天日の場合は、ほとんど発電せず、日により発電量の差は大きい。 4月、5月は晴天なら発電量は多いが、暖冷房需要は少なく電力需要も小さい。 結果、太陽光発電は出力抑制が必要となる。
そもそも、太陽光発電設備が九州地方に多く、過密状態にあると言える。 次表は、資源エネルギー庁のWebページ(ここ )の特別措置法における再生可能エネルギー発電設備の導入量統計(2023年9月末時点)を地方毎の太陽光発電導入容量と地方の2023年発電量で示している。 なお、導入容量が都道府県単位であり、必ずしも電力系統事業者毎の需要量の地域とは一致しない。 しかし、九州地方については、導入量統計と需要量での地域に差は無い。
(A)/(B)が九州が11以上であり、他地域より大きい。 その結果が、太陽光発電の発電抑制となっているのである。 どのような場合でも、設備に投資をする場合は、その生産物のマーケットを考えるわけで、九州地方における太陽光発電の発電抑制は予測されたこととも言える。
本項における情報のほとんどは、電力広域的運用機関の系統情報サービス・でんき予報・広域予備率Web公表システムからです。
4) その他
パリ協定は、世界共通の目標であり温室効果ガスの排出量を削減し1.5℃に気温上昇を抑える努力をすべきです。 この目標の達成には市場の仕組みの構築も重要と考えます。 例えば、九州地方で安い電気が得られるなら、電気がガソリンより格安なら、九州地方は電気自動車がよく売れる。 電気自動車の充電料金が日にちと時間により高くなったり、安くなったりと言うのはどうでしょうか? それともグリーン水素でしょうか? 大規模太陽光発電設備の近くには水を電気分解して水素を生産する設備を建設する。 マイナスの電力価格が導入されれば、電力消費が金を生み出す。 賢い仕組みを考え出すことこそ、将来の夢を実現する方法と思う。
次の日経記事は会員限定となっているが、考えなくてはいけない問題である。
日経 2月6日 太陽光発電「終活」に難題 2030年代、廃棄費足りぬ恐れ
様々なことを考えることは重要です。 冒頭の朝日の記事のように無駄で終わっては悲しいことです。
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